表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
583/632

第6章 終わる世界 Ep9 Battle at Journey's End / 旅路の果てに立ちはだかる者  Part4

挿絵(By みてみん)


ミハルが神の神殿に向った時。


新たな艦隊が向っていた。

ミハルの弟を乗せた艦隊が・・・

護衛の艦が小舟に観える。


輪形陣を組んだ艦隊中央に位置する戦艦の圧倒的巨大さが際立って見える。


ジェットランド沖を高速で進む艦隊は、小規模ながら東へと向かっていた。

有志連合軍艦隊を追いかける進路で。


「待ってて・・・ミハル姉さん」


甲板で海風に吹かれるマモルが呟く。


「あーっ、こんな所に居たんだマモル。

 みんなが探していたんだよ?独りでどうしたの」


茶毛を両肩に掛かる処で結ったルマ少尉が話しかけて来た。


「ルマか・・・どうもしやしないよ。

 風に当たりたかっただけさ、独りで・・・ね」


振り向かずに答えたマモルの前に廻り込んだ幼馴染のルマが、

風に当たっていると答えたマモルの瞳を見上げる。


うそ・・・独りっきりで何を想ってたの?

 ミハル姉の事でしょ?今頃どうしているんだろうって」


青みを加えた黒い瞳のマモルの眼がルマに向けられる。


「まぁ、そんな処かな。

 でもなぁルマ。

 ミハル姉が生きている事は解ってから考えたんだ。

 どうして何も知らせなかったんだろうって・・・

 みんなが心配している事が解らない筈は無かったというのに」


ミハルが何を想って、何を考えていたのか。

マモルにはどうしても判らない事だった。


「それね・・・マモルはミハル姉の気持ちが解らない?

 私だったらだけど・・・こう考えるよ」


マモルから海の方に向き直ったルマが手擦りに手を置き。


「ミハル姉はきっと覚悟を決めていると思うんだ。

 もしかして・・・だよ?もしかして、自分が本当に帰れなくなるとしたら。

 一度行方不明になった自分の無事を知らせちゃったら、マモルはどう思う?

 直ぐに帰って来ると思うじゃない。

 知らせちゃったらみんな絶対帰って来るように呼び掛ける筈でしょ?

 でも・・・目的があるから帰れない。

 帰りたくても帰れない・・・そしてこの後自分がどうなるかも判らない。

 そう考えたら、教えたくても教えられないんじゃないかな・・・

 ミハル姉は人一倍優しいから・・・

 マモルやご両親に余計な心配を掛けさせたくはないんじゃないかな?」


波頭を見詰めたままマモルに話しかける。


「ルマも・・・そう思うんだ。

 僕もミハル姉なら・・・そうすると思うんだ。

 だから僕達家族は迎えに行く事に決めたんだ・・・

 姉さんが目的を遂げる手伝いを兼ねて・・・ね」


ルマの横に立つマモルが空を見上げる。


「この空のどこかで。

 この空の行き着く先にミハル姉は居るんだ。

 リーン様を救い出す為に・・・戦っていると思うんだ」


頭一つ分背が高い男の子の真剣な瞳に、ルマの眼が釘付けになる。


「いいなぁ、ミハル姉は。

 マモルに慕われて・・・私にもその半分くらい注いで欲しいな」


幼馴染というカテゴリーに縛られる自分の立場に、少々悪態を吐いてしまう。

ルマは以前からマモルが好きだった事を未だに打ち明けてはいないのだが。


「ルマなら十分仲良くしてるじゃないか?」


マモルの言う仲良くとは友達としてなのを理解して。


「んーっ、もうっ!マモルの鈍感!」


自分から言い出せないツンデレ娘がマモルの足を蹴った。






「旗艦<フェアリア>から信号!一斉回頭用意!」


護衛隊の各艦が戦艦の発光信号を読み取り、舵を併せる。


フェアリア皇国から出撃した新造艦の群れが、一斉に北東へと艦首を向ける。


「艦隊進路300度よーそろ!速力17ノット!」


変針を遂げた艦隊が速力を増していく。



「全艦輪形陣を維持したまま速力を20ノットまで増速!」


艦長の命令で信号員が即座に命令を下達する。

艦隊は旗艦<フェアリア>を囲んだ陣形のまま北東に進む。


「島田司令!本艦只今20ノット」


航海士が司令でもあり<フェアリア>艦長を兼ねる島田少将に復唱する。


「よし、後2日あれば戦線に辿り着ける。

 有志連合軍主力と敵艦隊の戦闘に間に合わせられますね」


メガネの淵を直した艦長へ砲術長が言う。 

艦長帽とメガネを直した島田少将は二人のオフィサーに黙って頷いた。


「副長、しばらく操艦を願う・・・」


島田少将が不意に立ち上がると艦橋に備えられたエレベーターに足を向けて命じる。


「艦長、艦橋を出られます。

 操艦は副長があたります!」


銀髪を肩口で切り揃えた中佐が承諾し、復命する。


「・・・頼む・・・」


エレベーターで艦橋から降りる島田艦長の姿が見えなくなると。


「司令官、また中央人工頭脳室メインエーアイルームに行くんだ?」


航海士が隣の砲術長に呟く。


「ああ、司令官の日課だからな・・・」


答えた砲術長も肩を窄ませる。


「そこっ!当直中に無駄な会話を交わすな!」


銀髪の副長に窘められた若い二人の士官が首を竦ませた。




島田少将は艦内を歩いていく。

<フェアリア>に備え付けられた巨大なコンピュータールームへと。


厳重に防御隔壁がめぐらされてある扉を解除して室内へと入る。


モニターと機械の照明が点滅する中を島田司令官は歩み寄ると。


「「あなた・・・どう?

  もう直ぐなんでしょ?」」


女性の声がモニターから流れ出てくる。


「ああ・・・後2日って処だな」


答えた司令官が艦長帽を取り、眼鏡をモニターに向ける。


「もうすぐ・・・逢えるさ。あの子に・・・」


モニターに映る人影に向かって笑い掛け・・・


「私達の娘に・・・ミハルに」


機械の中に封じられているひとに言った。


「「ええ、あなた。もう間も無くですよ・・・

  ミハルに逢えるのは。ミハルを取り戻せるのは」」


戦艦<フェアリア>の魔鋼機械室から、夫婦の声が流れ出していた・・・






______________





「おおーいっ!そこのスパナを取ってくれ!」


銀髪の中尉がハッチから手を伸ばす。


「はーいっ!これですよねラミル分隊長!」


もう一人の銀髪を靡かせる少女が手渡すと。


「おう、チマキか。

 お前がどうして艦載戦車室にいるんだ?」


微笑む銀髪の少尉に向かって訊ねる。


「えーっと、その・・・暇なもんで」


苦笑いを浮かべるチマキと呼ばれた少女が。


「それはいいとして、ラミル分隊長。

 いい加減チマキって呼ぶのを辞めて貰えませんか?

 私にはロール・チアキっていう名があるんですから!」


少尉が中尉に名前についての誤りを正して貰おうと言うが。


「わぁーてるって!部下が居る時は言わんから。

 私とお前だけの時だけだから安心しろ!」


笑い声で返されたチアキ少尉が苦笑いを浮かべる。

目の前には歴戦の愛車があった。


「それにしても分隊長。

 艦隊決戦に戦車なんて必要なのですか?

 私には無駄かとも思えるのですが・・・」


ラミルが整備する<マチハ>改を見上げて小首を傾げた。


「それだから戦争の素人は困るんだよ。

 いいかチアキ、こいつが必要になる・・・いずれは。

 空と海だけで戦争が終わる事はないんだ!

 必ず陸戦騎が必要になる・・・敵を陥落する為にな!」


操縦席ハッチから砲身を見上げて、ラミル中尉が言い切った。


「はぁ・・・そーいうもんなんですかね?」


二人のフェアリア軍人が乗っているオスマン海軍艦隊の前方に、

ゴマ粒に等しい細かな点が見え始めていた。


近付くにすれ、その数は次第に増え続け、やがては観える限りの海上を埋め尽くしていく。


「「我がオスマン艦隊は、有志連合軍主力艦隊との合流を遂げた。

  これより艦隊に編入し、指揮下に入る!」」


有志連合軍の大艦隊は暗黒大陸迄、あと2日の航程を残すだけだった・・・


各国から終結する有志連合軍艦隊。


<フェアリア>に乗る者達は等しく願う。

ミハルが無事である事を・・・そして。


人類消滅を食い止められることを・・・


次回 終わる世界 Ep9 Battle at Journey's End / 旅路の果てに立ちはだかる者  Part5

君は闘う術をどこに見いだせられるのか?誰と共に闘おうというのか?


人類消滅まで ・・・ アト 32 日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ