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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep9 Battle at Journey's End / 旅路の果てに立ちはだかる者  Part1

挿絵(By みてみん)



第3艦隊は遂に敵本地へと辿り着こうとしていた・・・

航宙戦艦<薩摩>を含む、有志連合軍第3艦隊は目的地点まで到達していた。


暗黒大陸とも呼ばれる島まで、後艦隊速力14ノットで2日の航程を残しているだけ。

それは敵の本拠地を航空攻撃の範囲に捉えたという事にもなる。


乗り込む魔砲師達にも、艦隊乗員にも緊張が奔っていた。


「全艦に告げる。

 本艦隊は予定の行動に移り、出現する敵艦隊との決戦を挑む。

 これより艦隊を接敵輪形陣とし、各艦は警戒を厳となせ」


旗艦<金剛>からの信号に了解を答える発光信号を送る。


「艦隊陣形変動、発動!」


見張り員から旗艦からの信号が伝えられた。


「よーそろー!面ーっ舵ぃーっ!」


ミツル航海長が舵を切りつつ艦長ミノリに報告する。


「本艦の船位、旗艦後方2キロ!直後方です」


艦長席に座るミノリが頷き、砲術長に命じる。


「魔砲師隊に発進命令を下せ。艦隊直掩隊発艦せよ!」


砲術長が復唱を返して来るのも耳に入れず、ミノリは直前の空を見上げて考えていた。


ー  頼むぞホマレ。お前だけが頼りなんだからな・・・


レナ砲術長の命令一過、白い魔法衣を羽織る魔砲師が飛び上がっていく。

いの一番に飛び立つのは・・・


「魔砲師隊発艦開始、一番騎はミハル1尉。

 本日も一番騎は魔砲師隊分隊長ミハル1尉です」


飛び上がっていく白い魔法衣姿に、ミノリは瞳を凝らす。


ー  ミハル・・・お前はどうしたい?

   女神となった島田美春しまだみはるは何を想う?


急上昇を掛けて空へと駆け上がる魔砲師隊を率いるミハルに想いを馳せる。


ー  ホマレよ、お前が護るんだ。

   女神ミハルを敵手に渡さない為に・・・希望を手繰り寄せ続ける為に・・・


白い魔法衣姿の二人を見詰め、艦長ミノリが願う。


「旗艦<金剛>より発信、<<これより会敵準備を為せ>>です!

 戦闘準備を下令しますか?」


航海長のミツル3尉がモニターに映る信号を読み取る。

思考を停止させたミノリが艦内放送用のマイクを握る。


「本艦はこれより合戦準備に入る。

 各員戦闘準備となせ、艦内配備第2警戒!」


ミノリの下令と共にブザーが鳴り響く。


「「本艦は只今より即座合戦準備に入る。艦内警戒第2種配置!」」


スピーカーから流れる戦闘準備命令に、乗員達が受け持ち配置へと走り出す。

艦内は下士官の指揮の元、高角砲台に駆けつける者達、高角機銃群に走る者達。

また、動力系統を受け持つ者達で一気に騒々しくなる。


「艦内配備、準備よし!」


各分隊からの報告を受けた砲術長が艦長に報告する。

戦備が整った艦内は再び静けさを取り戻した。


「・・・嵐の前。

 嵐の前の静けさか・・・また、血みどろの戦いが始まろうとしている」


編隊を組みつつ旋回している魔砲師隊を見上げるミノリには、

晴れた蒼空が、まるで灰色に澱んでいるかのように感じられてしまっていた。






「第2小隊は上空に。第3小隊は海上を観測して!」


魔砲師<薩摩>隊の分隊長を務めるミハル1尉が小隊ごとに任務を振り分ける。


「ミハルぅ、旗艦からも魔砲師隊が揚がってくるんやからぁ。

 そないに細かく分散戦でもええんちゃうか?」


二番騎配置のホマレ3尉が分隊長に意見をいれると。


「ホーさんっ、ここはもう敵のお膝元だって言われていたじゃない。

 どこから襲って来るか分からないんだから、警戒するのは当たり前でしょ?」


前方を見詰めるミハルが意見を取り入れず逆に気を引き締めろと命じる。


「へぇへぇ、解りましたよ。

 でもなぁミハル。ウチには解るんや、敵の臭いっていうもんが。

 今はその匂いがあらへんのや、そやからのほほんとしとるんやで?!」


引き締めろと言われたが、敵が現れない内は楽にしておけと言わんばかりに、ミハルに寄りそうホマレ。


「それに・・・な。

 ミハルを護るのがウチに与えられた任務でもあるんや。

 危なっかしい指揮を執らへんか、自分勝手な行動をせーへんか。

 ミノリ姉に直接命じられているんやさかいにナ!」


ホマレが今回小隊長を外され、ミハルの2番騎配置にされたのはミノリの命令だという。

分隊長ミハルのお目付け役を命じられたのだとホマレがにこやかに言った。


「ホーさん、それはねぇお互い様だよ。

 ホーさんも自分勝手に戦いたがる傾向があるから。

 私のお目付け役だけって訳でもないんじゃないの?」


艦長がミハルに対してのお目付け役に任じたというホマレに、

自分だけじゃないと言い返したが。


「も・・・って、言ったよな?

 じゃーやっぱし、ミハルも自分勝手に戦う気じゃーないんじゃないかいな?!」


ダジャレを言う位余裕をみせるホマレ。


「そっ、それは言葉のあやで!

 とにかくっ、ホーさんも私も勝手に行動しちゃいけないって言われてるのよ!」


振り返って言い返したミハルの眼に、瞳を細めて前方を探るホマレが映る。


「?!何かいるの?」


気が付いたミハルも遥か彼方の黒点に目を向ける。


「こいつは何や?

 敵の臭いがせーへんのに・・・来やがったのか?」


細めた目に疑問符を付けたホマレが呟く。


「それでも・・・敵の方から飛んでくるんだから。

 各小隊に集合を命じなくっちゃ!戦闘用意を!」


ホマレの解答を待たず、ミハルがマイクに指を添える。


「待つんやミハル!黒点は二つだけや・・・それも小さい。

 敵の偵察隊かも知れん・・・無闇に襲い掛かるのは辞めた方がええで!」


咄嗟にマイクから指を放したミハルが、ホマレの意見に従う。


「それじゃあ、どうしよう?

 私達だけで叩いてみる?偵察機なら報告される前に堕とした方が良くないかな?」


艦隊の発見報告を敵に発せられる前に墜としてしまう方が、セオリー通りじゃないのかと訊ねる。


「いんや・・・ミハル。

 もう敵には艦隊が居る事が解っているんや。

 せやなかったら偵察機を送り込んで来る訳が無い筈や。

 あの2機が何を探りに来たんか、何を目的に現れたのか・・・

 そいつを探ってからでええんちゃうか、墜とすんわ」


ホマレの考えは合点がいく。

ホマレの経験はミハルのそれを上回っている、空の上では。


「そっか・・・じゃあ、二人だけで廻り込んでみようか。

 あの2機が何を狙っているのかを調べる為に!」


ホマレの承諾を待たず、ミハルは廻り込む為の行動を開始する。


「了解やでミハル。

 そやかて危ないと判断したら引き返すからな、ええな?!」


後に続くホマレが、注意を与えるが。


「二人が一緒なら、危ない事なんてないよ。

 だって、撃墜王と女神が一緒なんだよ?

 敵が同じ数だからって遅れは取らないだけの自信があるもん!」


気安く答えるミハル。

この時、警告したホマレ自身も心の中では同じ思いであった。

2人に対抗できるモノなんて存在しないのではないかと。


・・・慢心が心を支配していたのだった。



やがて後上方に廻り込んだ二人が敵の背を執る事に成功し、


「ホーさん・・・あれって」


「ああ・・・ミハル。もしかすると・・・」


2人は背を向けて飛んでいるモノを見詰めて交わす。


「あれは・・・魔砲師?いいえ、女神?」


ミハルが良く見ようと前のめりに進みだす。


「待つんやミハル!

 あいつらは魔砲師やないっ!あれは・・・」


ホマレがミハルを停めて叫んだ。

その声に反応したのか、空に浮かぶ人影が振り返った。


「う・・・そ?

 あなたは・・・あなたは?!」


その顔にミハルが呼んでしまう。

見覚えのある顔を観て、戸惑いを隠せなくなる・・・


「どうしたんやミハル?奴を知ってるんか?

 あいつらは何者なんや?」


ミハルの異変に、ホマレが呼びかけた・・・が。


「そんな事が・・・ある訳ない。

 あなた達は・・・あの時。

 私を護る為に・・・消滅した・・・筈じゃなかったの?」


呆然と見据えるミハルが口走った。

その声に、振り返った二人の口元が醜く歪んだ。


ホマレはミハルの顔色が青ざめて行くのに気付く。

震える口元から零れだす名を聞きながら。


「ターム・・・アルミーア・・・・」



現れた二人。

ミハルの前に居るのは、かつての友の姿だった・・・


ミハルは2人に何を求めてしまうのか?

2人は何故ミハルの前に現れたというのか?


次回 終わる世界 Ep9 Battle at Journey's End / 旅路の果てに立ちはだかる者  Part2

君は心の中で謝るだろう・・・果せぬ想いに涙して


人類消滅まで ・・・ アト 35 日 !

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