第6章 終わる世界 Ep8 One They Call the Goddess<女神と呼ばれる者> Part4
何時しか誰も思い出せなくなっていた。
この世界に本当の<神>が居た事を。
人が縋る・・・信仰対象の<神>たる存在が居た事を。
何時の頃からだろう・・・神が神では無くなったのは・・・
人たる者が<神>と名乗る様になったのは。
そう。
人が神と為れる筈は無いというのに・・・だ。
何時しか誰もが頼る<神>では無くなった。
人を滅ぼすのが<神>というのならば・・・人は<神>に縋ろうとは思わなくなった。
<神滅の真理 第7章 神の系譜より>
((カジカジカジカジ・・・))
龍の子リィ君はいつもの通り、ミハルを齧っている。
空の上でも・・・
「ミハルぅ、今日はまた・・・派手に齧られてるようやけど?
龍の子・・・そんなに齧っても魔砲力は無くならへんのか?」
燦燦と降り注ぐ太陽を浴びる空の上で、ホマレが目を丸くする。
「うん、太陽が出てるから。
それにリィ君最近大喰らいになったの知ってるから」
苦笑いを浮かべるミハルが空を見上げて陽の光を浴び続ける。
「そりゃー聞いてたけど。
特に今日は派手に齧ってるで?」
ミハルの頭に載って齧りついているリィ君を指差し、あっけに取られて訊き直す。
「ホマホマ!今日は特別なのっ!
だって、あの女神がやってくるかもしれないんだから!」
女神との戦いに備えての大喰らいだとでも言いたげに龍の子が教える。
「なんやて?あのミハリューとかいう女神がか?
なんでそないな事が解るんや?」
ミハルがミハリューを煽った事を知らないホマレが訊き返す。
訊かれた龍の子は、しまったとでも思ったのかまたもや齧りついて誤魔化そうとしたが。
「ホーさん、実はね。
私がミハリューを煽ったの、リーンを取り戻すにはどうすれば良いのかって。
こちらから出向くよりその方が話が早いかなって思っちゃって。
ミハリューの事だから、私に直接文句を告げに現れると踏んで・・・ね」
リィ君を庇うかのようにミハルの方が答える。
ホマレにはミハルの作戦の意味がもう一つ理解し難かった。
「で?ミハルはあの女神にどうしようって考えてるんや?
まさか捕まえるとでも・・・思っとらへんやんな?」
女神を捕まえて、捕虜交換でも企んだのかと思って訊いて来る。
「ううん、そこまで考えた訳じゃないよ。
どうしたらリーンを返してくれるのか、何が望みなのかって。
話し合えればいいかなって・・・そう思ったんだ」
陽の光を一杯浴びたミハルがホマレに笑い掛ける。
「ミハル・・・ホンマに。
ホンマにあんたって奴は・・・女神のような娘やな」
ため息を吐くホマレが、ミハルのほんわかさ加減を言葉に表すのを辞める。
「そう?そうだよ私は女神なんだよねぇ。困った事に・・・ね!」
太陽に向かって両手を拡げ、ミハルは微笑んだ。
ミハルが殲滅を司る女神を待っている時。
当のミハリューはと言えば・・・
「何故よユピテルの親爺!
私が出向いてアイツから奪えば良い事でしょう?」
モニターに映る影に吠えていた。
「どうしてバリフィスを解体するというのよ?!
記憶デバイスがそこ迄必要ならばデザイアを捕まえれば済む事じゃないの!
それに人間共を殲滅するのは私に任せていた筈よ!
時間もまだ満ちてはいないというのに?!」
人類の消滅まで与えられた時間はまだ数十日残っている筈だと聞き返す。
「「ミハリューよ、時間が問題ではない。
我々に歯向かう神が居る事が問題なのだ。
奴等をこのままのさばらせて置けば人間共は調子に乗って攻め寄せるだろう。
そうなる前に・・・消滅させるが得策かと思う」
モニターの影が含みを持たせた言葉を選んだ。
「ユピテル・・・その話しぶりだと。
まるで人間共に苦戦する・・・いいや。
我々神が人間共に負けるとでも言ってるみたいに聞こえるわよ」
全能の神たるユピテルにミハリューは嘲笑う。
神たる者に歯向かう人間など、どれ程のモノかと。
「けど。
アイツは・・・あのデザイアという娘は別だ。
人間に味方し、神に背く・・・大罪を行おうとしている。
このまま放っては措けない、私のバグとしても・・・だ」
ミハリューの眼が妖し気に染まる。
それはまるで呪われし者が闇を与えられたかのように邪な瞳の色であった。
「ミハリューよ、デザイアを連れてくるのだ。
そうすればバリフィスは破壊せずとも善くなるぞ?
記憶装置を授けられた、あの娘さえ捕らえられれば良い。
それが唯一つの解決方法だと覚えておくのだ」
ユピテルの影から怪しげな光が噴き出す。
その光がミハリューに浴びせかけられると、紅き瞳に魔力を秘めた文字が現れる。
「いいかミハリューよ、デザイアを連行するのだ。
それまで・・・その娘の身は私が預かる事にする」
有無を言わさぬユピテルの声が命じた。
リーンを人質として差し出す事を認めさせるかのように。
呪法によって操られてしまっているかのような瞳を向けていたミハリューが頷くかのように観えたが。
「「リーン様を護れ、我が君の身を奴に差し出すな・・・」」
誰かの声がミハリューの中で叫んだ。
それが誰であるか・・・その声が何を求めたのか。
「私のバリフィス・・・誰にも触らせない・・・」
声に反応するミハリュー。
操られる身体に背き、声が零れ出る。
「私の心に残るのは・・・彼。
彼が求め続けた・・・護れと。
自分に替わってリーンを護れと・・・グランが求めた」
瞳に映っていた呪法が掻き消える。
「ユピテルといえども、私のバリフィスに手を出すのは認めない!
私からバリフィスを奪う事は断じて認めないっ!」
赤黒き瞳から呪文が消え去り、リーンを護るかのように抗う。
「ほぅ・・・私の命じた事に背くというのかミハリューよ。
面白い・・・ならば一度だけ待つ事にしようではないか。
今一度そなたにチャンスを与えよう、最期のチャンスを」
ユピテルを名乗る影が細く笑う。
「これが最期と心得るが善い、バリフィスを壊されたくなければ・・・
デザイアを連れてくるのだ・・・この神の神殿に」
最期のチャンスだと言い切る影が、リーンを見下ろしながら命じた。
「判っているわ!
アイツをここまで連れて来れば良いのよね。
それさえすればバリフィスは私だけのモノにすると約束しなさい!
ユピテル、約束よ!いいわね!」
影に対して約束を強要するミハリュー。
「善いだろう・・・そなたがしくじれば。
バリフィスは直ちに破壊する・・・記憶デバイスを回収する為に」
最期のチャンス・・・
その意味が当のミハリューには解ってはいなかった。
次は無いという事だけがミハリューの記憶に残った。
ミハルを連れて来る他に、リーンを救う道は残されていない。
・・・暗示を掛けられてしまっている事に。
モニターから影が消える。
「バリフィス、安心して。
必ずアイツを連れて来るからね・・・必ず!」
振りかるミハリューが何も言わないバリフィスに微笑む。
「私がきっと自由にしてあげるから。
大切なバリフィスを壊されて為るモノですか!
バリフィスは私のモノなんだから、誰にも触れさせたりしないわ!」
立ち尽くす女神に寄り添って頬を撫でるミハリューに、審判の女神は答える事はなかった。
心が閉ざされたかのように、唯何かを待つかのように…
ミハルの誘いに乗るのか?
ミハリューはリーンを護ると言うが?
さて。
新年明けてしまいましたねぇ(遠い目)
おめでたいのかそうでもないのか・・・
まぁ、今年もぼつぼつやらかしますW
損な娘ミハルの物語はまだまだ先が見得ていませんW
「今年の目標?なにそれ・・・美味しいの??」さば・
「今年こそ損な娘を脱却する!」ミハル
「ああ・・・損なけしからん娘・・・ね」さば・
「ああああああああああ?!」ミハル Orz
「どうぞ 今年もお付き合いくださいませ 」 キャラ一人を除く皆で
「・・・・そんなぁーっ?!」けしからん娘
次回 終わる世界 Ep8 One They Call the Goddess<女神と呼ばれる者> Part5
君はあの娘がどんな存在なのかを知ることになる・・・意識の中で
人類消滅まで ・・・ アト 40日 !!