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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep8 One They Call the Goddess<女神と呼ばれる者> Part2

我が子を想うのはどの世界だろうと同じ。

自分の姉の身を案じるのは弟なら当然だろう・・・


我が身を闘いに委ねた事がある者ならば。

王宮から僅かに離れた貴族の館にも詳細が伝えられた。


「そうか、あの娘が生きておったのか!」


髭の大将が立ち上がり、執事が持ち寄った電文を読み漁る。


「そうか、ならば・・・あの娘はきっと何かの情報を掴んだという事だな。

 マーガネットがどうしているか、どこに居るのかを!」


ドートルが喜色を浮かべて執事に命じる。


「直ぐに王宮に向かうぞ!支度を急ぐのだ」


ドートル大将の命令で執事が慇懃にお辞儀して立ち去る。


「そうなれば・・・一刻も早く向かわねばならん。

 漸く仕上がった揚陸戦艦で・・・マーがネット救出の手配をせねばならん!」


陸軍総参謀長でもあるドートルは、これからの作戦を思い描きつつ王宮へと向かうのだった。





「ミユキ・・・やはり。

 あのは・・・ミハルは生きていたよ・・・」


ベットに臥す妻へと、教える。


「そう・・・でも。帰っては来てくれてはいないのね?」


見上げる夫の眼に問い直す。


「ミユキ・・・いずれ。

 いつかはきっと帰って来てくれるさ。

 例え・・・人間ひとの姿でなくとも・・・」


妻の手を取り、マコトが頷く。


「そうね、あなた。

 あの子は神の御子なのだから・・・私に与えられた天命さだめの子なのだから」


悲し気に夫に話すミユキの眼から、新たな涙が溢れ出る。


「ミユキ・・・思いつめては駄目だ。

 ミハルは俺とミユキの娘なのだから・・・

 神の御子だろうが、二人の娘には変わりはないのだから」


辛そうに答える夫に、顔を逸らしたミユキが呟く。


「そう・・・でもね。

 あなたにも話したでしょう?あの子が授かった時の話を。

 私の中に入って来たひかりの事を・・・」


ミユキの声が教えるのは・・・


「ああ、覚えている。

 ミユキが子を授かったのは・・・あの時の事。

 エギリスとの紛争を終える前、ミユキが陛下に直訴した時・・・」


思い出すかのようにマコトが答える。

頷いたミユキがマコトに振り返る。


「そう・・・私が武勲を賞された時。

 陛下に拝謁を賜ったおり、訴えた・・・戦争を辞めてくださいと。

 人は誰も殺し合う為に産まれた訳では無いと。

 欲望を捨てて・・・話し合う様にって・・・」


思い出を話すミユキが半身を起こす。

起き上がるミユキを手助けするマコトの手を取り、


「あの時、陛下は私に下問されたわ。

 お前は天の声を聴いたのかと。皇族に伝わる天の声を知る者なのかと。

 あの時は知らなかったけど、光が教えてくれた。

 そして・・・私に託されたの・・・」


ミユキはお腹を大事そうに抱えて話す。


「ミハルを授かった・・・光と共に。

 陛下が陰陽師の私に授けられた光の玉と、光の娘を。

 ・・・いいえ、<希望デザイア>を。

 神の娘でもある<希望デザイア>が、私に委ねられた。

 ミハルに渡した魔法石の中に込められた数々の想いと魂と共に」


日の本に住んでいた頃。

ミユキは元々魔法力が備わる陰陽師おんみょうじとして宮中に使える者だった。


その頃の国際情勢は帝国主義に固まり、各国が覇権を争う紛争が多発していた。

日の本も例無く紛争を各地で行い、支配権の確立を目論んでいた。

志那方面に進出するも、東洋に進出を目論むエギリスとの紛争は拡大の一路だった。


時に日の本で開発された<魔鋼騎システム>により、

一気に形勢を転換させるべく送り込まれたのが<魔女兵団>と呼ばれる戦車連隊。

そこには多くの魔砲使いが集められていた。

劣った車体でも魔砲の力によって敵と互角以上の闘いが出来た。


連隊の中にはにミユキの姿もあった。

しかも・・・副隊長という名目で。


外地に出征する事に反対していたミユキだったが。

想いとは裏腹に、闘いは彼女の魔砲力を必要としていた。

圧倒的な魔砲力を誇るミユキの前に、敵戦車達は為す術もなく壊滅していった。


「あの時の私は・・・闇の力に負けていたの。

 でも、あなたが救ってくれた。

 戦いの中で苦しんでいた私の心を取り戻してくれた。

 魔鋼機械を壊して・・・闇に堕ちようとしていた私を」


感謝の眼差しで思い出を語るミユキに、マコトが首を振る。


「いいや違う。ミユキは自分で心を解き放った、敵の乗員を救って。

 連隊からたった一両で敵陣へ突入し、降伏を勧告した。

 もう闘いを辞めようと・・・話し合った結果だよ」


ミユキの手を取り、当時の思い出に浸る・・・


「ええ、でも・・・あなたと逢わなかったらそれが出来たのかどうか。

 あなたが血に飢えた私の心を癒してくれなければ。

 私は確実に堕ちていた・・・死神に」


ミユキの言葉は感謝と共に自らの行為が如何におぞましい物であったかを教える。


「もしあの時、あなたが人のことわりを教えて・・・与えてくれなかったのなら。

 今の私は居ない・・・ミハルもマコトもこの世には居なかった」


薄く微笑むミユキに、マコトは黙って頷く。


「そう。

 あなたが居なければ私の今はない。

 あなたが教えてくれたから、ミハルが産まれたの。

 人の理を教えてくれたあなたの娘は産まれなかった・・・

 魔女に光を与えてくれたのはあなた。

 神の御子みこを授けられたのは私達の天命さだめだったのかもしれない」


微笑むミユキが語るのは、ミハルがどうして女神となったのかを教えているかのようだった。


ミユキがミハルを身籠った時の事。

光が宿ったという。

理を知る者に、神が贈ったのは<希望デザイア>というひかり


その娘が辿った運命を、母は悲しむのだ。

譬えそれが天命さだめだとしても、授かった子を失うのは耐え難き事。


「それがミハルの運命さだめというのであれば。

 私が代わってあげたい・・・叶わぬ事だとしても」


ミユキはマコトに縋り付いて新たな涙を零す。


「俺も・・・同じだよ。

 ミユキが代わるというのなら、俺がお前の身代わりになる。

 ミハルだけに背負わせる必要なんてないのだから」


泣きじゃくる妻を抱き絞め、マコトは天を仰ぐ。

まるで神を呪うかのように。

いや、天に祈りを捧げるかのように・・・




ドアの外で二人の話を立ち聞きしていた。

中へ入る事も出来ずに。


「父さん、母さん・・・僕は・・・僕が」


拳を握り締め、マモルは呟く。


「きっと・・・僕が。

 僕がミハル姉を助けてみせるから。

 だから・・・往ってきます!」


心の中で謝りを告げて、マモルはドアの傍から離れた。


「僕は仲間と共にミハル姉の元に往くから。

 みんなと一緒に・・・ミハル姉を助け出してみせる。

 今度は僕がミハル姉を助けに行く番なんだから!」


ミハルから渡された宝珠を握り締めて、マモルは征く。


フェアリア海軍基地へと。

そこで待つ、新造艦<フェアリア>へ乗艦する為に。


仲間達と・・・こころざしを共にする者達と向かう為に。



挿絵(By みてみん)




総参謀長が発令した作戦に参加する為に・・・



フェアリアに嵐が撒き起きる。

友を想う者達が集い、新たな戦場へと向かう・・・


<神軍>との決戦に、ミハルの仲間達が総力を結集する時が近付いていた・・・


次回 終わる世界 Ep8 One They Call the Goddess<女神と呼ばれる者> Part3

君は新たなる闘いに生き残る事ができるのか?(ひさかたぶりだなぁ・・・)


・・・でもっ、次回はミハルたん登場・・・で?損な娘振りを発揮?!


人類消滅まで ・・・アト 41 日

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