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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep8 One They Call the Goddess<女神と呼ばれる者> Part1

挿絵(By みてみん)


女神と呼ばれる者・・・あいの女神ミハル

有志連合軍第3艦隊に組み込まれた<薩摩>・・・


向かうは東の果てにある暗黒大陸と呼ばれる謎の島。

神々が集うという島には、<神軍>の本拠地が在ると看做されていた。


前衛艦隊となった第3艦隊旗艦<金剛>に、次なる指令が届けられた。


・・・それは。



電文を読み返すミノリ2佐にレナ砲術長が訊く。


「どういう事でしょう?まだ敵艦隊の規模が掴めてはいないという事でしょうか?」


電文から眼を放した艦長ミノリが苦虫を噛み砕いたような顔で吐き捨てる。


「どうもこうも無い!我々に下されたのは、また囮になれという事だ!」


電文を丸め握り潰す。


「敵の注意を惹きつけろと命じられたにすぎん!」


吐き捨てるように言ったミノリが、荒げた声のままレナに訊く。


「レナ3尉、この電文を他の者に見せたか?」


「いいえ、電文の内容を知るのは通信長くらいですが?」


艦長の問いかけの意味を図りかねて答えたレナが気付いた。


「あ・・・シマダ1尉の件ですね?」


問われたミノリは黙って頷き、


「彼女には知らせるな。いいな!」


握り潰した電文に書かれてあった一つの文言が、ミノリにそう言わしめたのだった。


「はい、分かっております」


復唱したレナが砲術長席へと戻る。


ー  なぜ・・・こんな電文を?

   今は知らせる訳にいかないとミハルに口止めされていたのに。

   いくら暗号電文とはいえど。

   傍受した者には誰の事なのか解ってしまうというのに・・・


握り潰した電文に記載されてあった一行いちぎょうがミノリの感に障った。


ー  ミハルがどんな思いで知らせなかったのか・・・

   知りもしない者共が・・・余計な文を入れおって!


その一行とは・・・


ー  なぜだ?そこまでして敵の注意を我々に向けたいというのか?

   なにが<<死せぬフェアリアの娘を伴い>>だ!

   これでは誰の事なのか図らずとも解ろうものに!


握り潰した電文に眼をやり、ミノリは次の作戦に不快感を募らせていた。





________________






ミノリが案じた通り、暗号電波を傍受したのは一国だけの話では無かった。


主力艦隊から発せられた無電は前衛艦隊へと届く前に数地点を経由して届けられた。

発信地点を暴露させない為の行為ではあったのだが・・・




「艦長より報告があったのだが。

 どうやらアイツは生きていたみたいだぞ!」


走り込んで来た声が喜びに満ち溢れているのを感じさせる。


「ラミル分隊長、本当ですか?」


青みが差した銀髪を靡かせる少女が聞き返す。


「ああ、暗号電文を傍受したようなんだが。

 なんでもミハルらしい娘は有志連合軍艦隊に救われていたようだぞ?!」


フェアリア防暑軍服を着た銀髪の中尉が少女に答える。


「そうですか!やっぱりミハル大尉は生きておられたのですね!」


喜ぶラミルに目を輝かせて頷く少女は、白いオスマン帝国近衛士官の軍服を着こんでいる。


「そうさ!アイツはそう簡単にくたばる様な奴ではないんだ!

 ミハルは必ず生きていると言っただろう?」


親指を立てて喜ぶラミルが少女の肩を叩く。


「そうですよね、ラミルさんも私も。

 フェアリアからの一報に信じられませんでしたから。

 ミハル大尉は不死身なんですから・・・天使なのですから」


そう答えた少女にラミルが相槌を打ち、


「ああ、チアキ。その通りだ!」


ラミルも断じた。

2人が見詰める舷窓からは、オスマンが派遣した艦隊が観える。

有志連合軍の一国として派遣した水上艦隊の雄姿が。


挿絵(By みてみん)







「ちょうど良かったわ!マジカ、あなたに見せたい物があるの」


一枚の紙きれを掴んだユーリ皇太子姫が走り寄った。


「なによユーリ。そんなに慌てて?」


貴賓客ので、金髪のマジカが怪訝な顔で幼馴染に訊く。


「だいいちユーリ、ここは他国の姫が御出でになっている貴賓の間。

 しかも、友好国オスマン第3王女殿下がいらっしゃるというのに・・・」


大使として赴任していたオスマンからお連れした姫の前で、と言おうとしたが。


「それならばこそよ!

 きっと姫様もお喜びになられる筈だから・・・これを読まれれば!」


マジカの後ろに控えている緑の髪を結った娘を片目で観て、

子供の様にはしゃぐ幼馴染にため息を吐きつつも、マジカは電文を受け取る。


「なによ軍事電文じゃないの・・・って?!」


読み進めたマジカの表情が変わる。


「こ・・・これって?!本当の事なのユーリ!」


電文から顔をあげたマジカが訊く。


「私も今読んだ処なのよ!これは有志連合艦隊から発せられた本物なの!

 だから間違いはないのよ、これでやっと気が晴れたわ!」


マジカの手を掴んだユーリが微笑む。


「やはり・・・彼女は。

 ミハルは死んではいなかったのね?!

 そうと分かれば直ちにラミル達にも転送してやらなくっちゃ!」


マジカは部下でもあるフェアリア派遣隊長の名を呼んだ。


「ラミル達にはもう届けられたわよ、多分ね。

 それよりご心痛あそばされておられる姫君にお教えすれば?」


後ろで何事かと小首を傾げているオスマン王女に目で合図する。


「そうだったな!それを心配してフェアリアまでお越しになられた訳だから」


振り返ったマジカが、オスマン王女に畏まると。


「謹んでお話申し上げます、シャルレット王女殿下。

 かの魔砲師ミハルは存命しておることが判りました!」


マジカは勢い良く姫に伝える。

蒼い目を見開いたオスマン第3王女は伝えられた言葉に頷くと、にこやかに微笑みを浮かべて応えた。






栗毛の髪を靡かせた娘が走りながら呼びかける。


「マモルぅーっ!これを観てぇーっ!」


電信欄を握り締めたルマ政務官補が黒髪の士官に走り寄る。


「なんだよルマ?何をそんなに慌てているんだよ?」


飛びつく勢いの少女に振り向いた少尉が聞き咎める。


「これが眼に入らぬかぁ!」


((ドカッ))


勢いのまま、マモルに抱き着いたルマが電信欄を突き出しながら。


「ミハル姉がっ!ミハルが!生きていたのよ!!」


幼馴染の少年士官に張り上げるのは、歓喜の叫び。


「な・・・ん・・・だってぇ?!」


答えたのは・・・少女の叫び声。


「あ・・・ミリア少尉もいらしたんですか・・・」


ルマが走り込んで来たのは陸戦騎開発局。

通称、新型騎じゃじゃうま整備局。


手慣れの魔鋼騎士が集う場所。

そこに居たのは先の大戦で武勲を挙げたミリアとマモル少尉。


走り寄ったミリア少尉がマモルの手から通信欄を捥ぎ取り読み漁る。


「ルマ、ありがとう」


抱きしめた幼馴染にお礼を告げるマモルが笑みを溢す。


「ううん、大事なお姉さんだもん。

 私達にとって・・・マモルのお姉さんだから・・・」


顔を赤らめたルマがちょっとだけ言い直す。


「いぃやぁっぱりいぃっ!

 ミハル先輩は不死身だったわぁ~っ!」


思いっきりガッツポーズをするミリアが喜びを身体全体で示す。


「あのぉ、ミリア少尉。そこまでガッツリ決めなくったって・・・」


パタパタ手を振り、ルマが制したが。


「お前なんかに私の気持ちが判る訳がないわ!

 先輩は私のお姉さん・・・いいや、私の憧れ!私のいとしの人なんだから!」


・・・・


ルマとマモルが顔を引き攣らせる。


「ミリア少尉、リーン隊長が聴いたら・・・死を覚悟しなきゃならないですよ?」


ルマが呆れたような声で呟くが。


「いいえ!リーン殿下であろうと。

 今はこのミリアにとって最高の一瞬なのですっ・・・って申し上げれば。

 ・・・殺されはしないと思う・・・・」


はっと我に返ったミリアが口を窄ませた。


「それにですね。

 一番喜ばれているのはきっとご両親でしょうから。

 マモルのお父さんやミユキお母さんでしょうから・・・ね?」


口澱んだミリアに、ルマが微笑んで教えた。


「そうよね、ルマの言う通りだわ。

 マモル君、さっそくお知らせに帰れば?ここは私が後を引き継ぐから」


そういったミリアにマモルが首を振る。


「え?!どうして?」


ミリアが何故なのかと小首を傾げて訊く。

表情をやや厳しくしたマモルが空を見上げて言うには。


「まだ・・・帰って来てくれていないから。

 お母さんやお父さんに教えるのには早急だと思うから。

 ミハル姉が・・・帰って来てはいないのだから・・・」


寂し気に小声で言うマモルに、ルマもミリアも声を失う。


「それに。

 お母さんには解っていたらしいから・・・ミハル姉の宿命さだめが。

 もう・・・帰って来れない事が・・・人としては・・・」


呟く弟の姿に、ミリアは思い出していた。


2人の姉弟が辿った運命を・・・


ミハルが辿った・・・戦いの日々を・・・


「マモル君。でも・・・諦めてはいないんでしょ?

 きっとミハル先輩はここへ帰って来ると信じているんでしょ?」


挿絵(By みてみん)


ミリアは背を向けたマモルに訊く。


「ええ、勿論。

 でも、今度は・・・今度は僕が助ける番だと思っているんです」


ミリアに背を向ける弟は何かを決しているかのように空を見上げて答えるのだった。


ミハルの情報が世界を駆け巡る・・・


生きていた事に誰もが一安心したのだが。


この2人にとって、帰って来てくれるかどうかは未だに解らないと言うのか?

そして・・・独りの少年が旅立とうとしていた・・・


次回  終わる世界 Ep8 One They Call the Goddess<女神と呼ばれる者> Part2

君は大切な人を助けに行けますか?遥か彼方に居る姉の事を・・・


人類消滅まで ・・・アト 42 日

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