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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者>  Part7

覚悟はしている。

戦う事は辞さない・・・


そう。

仲間に気付かれず・・・闘うつもりだった・・・

闇から現れ出てくる者がいた。


闇のベールを纏い・・・

暗黒大陸を飛び立つ物があった。


世闇に紛れて・・・




地球を半周した艦隊は目的地へと向かっていた。


「間も無くX点に到達します。

 全艦隊に一斉回頭を命じます・・・宜しいですか源田司令長官?」


白髪の司令官に参謀長が訊ねる。


「うむ、ここまで敵に見つからなかったのが不思議なくらいだな」


長官室で寛いでいる源田大将が参謀長に問う。


「はい。前衛艦隊に敵の注目が集まっている為でしょう」


なんの疑問も思い抱かないのか、参謀長が答える。

源田司令長官は回答に手を挙げて制し、申告通りで良いと命令欄を参謀長に返した。


「敵はこちらの動きをどう考えているのか?

 見つけられない訳がないというのに・・・だ」


自分達の艦隊に敵がどう迫って来るのかを考えて、源田大将は次の手を思い悩んだ。



有志連合軍遠征艦隊に他国の残存艦隊が加わり、その数は一気に膨らんでいた。

元からの日の本艦隊に加え他国からの艦隊が加わり、海面を覆うその規模は。


視界内に観える物だけでも4個の任務群に分かれている。

各任務群は戦艦を中心にした輪形陣を組み、各々が連携を執れるように位置している。

その数・・・戦艦16、巡洋艦24、駆逐艦140。

艦隊の上空には、敵艦や潜水艦を索敵する偵察機が無数に飛んでいた。


これだけの規模の艦隊を以てしても、源田司令長官は物憂げだった。

それは、敵の実力を知る者だったから。

空中要塞戦艦ゴリアテ級だけでも手強い相手だと知り、

未だ現れていない敵部隊にどのような敵がいるのか・・・

敵を知り己を知れば、百戦危うからず。


されど、未だに敵の実戦力は掴めてはいなかった。


「このまま・・・敵本土に侵攻して良いモノか?

 少数の犠牲を払ってでも敵を背後から襲う方が良いのではないか?

 敵の規模を・・・確認してからでも遅くはないのではないのか?」


作戦自体が無謀に思えてくる司令長官は、自らの行為を思い悩んだ。





_____________________





戦艦<金剛>を輪形陣の真ん中に据えた前衛艦隊は進路を東に執った。


目標は敵本土・・・暗黒大陸と呼ばれる未知なる島。

未だかつて誰も島から返った者は居ないという前人未到の島。


その方角から<神軍>の艦隊が出撃して来る事だけは知られてはいたのだが。

本当にその島から出撃して来るのか、確かな事は解ってはいなかった。




「いよいよ、やな。ミハル」


ホマレが二番騎の位置から話しかけてくる。


「そうだねホーさん。やっと・・・だよ」


蒼い魔法衣姿のミハルが答える。

その顔にはこれからの事を思い描くのか、険しさの中にも一抹の不安がある様に見て取れた。


「ミハルは友の事を思ってるんやな?

 大丈夫・・・きっと。きっと逢えるんやさかい心配せんでもええんや」


力づけようとするホマレの声に、頷きながらも前方を見詰めるミハルが・・・


「でもねホーさん。その前に・・・きっとまた現れると思うんだ。

 ミハリューって言う女神が・・・私を襲いに来る。

 私に勝負を挑んで来ると思うんだ・・・」


何かを感じ取っているのか、ジッと前を見詰めて答える。


「この間の女神が・・・また来るっちゅーんやな?」


圧倒的破壊力を持った女神に因って艦隊は相当の損害を払わされた事を思い出し、

ホマレは眉をひそめてミハルの覚悟を感じ取っていた。


「ホーさん・・・その時は。

 ミハリューとの勝負には手を出しちゃ駄目だよ?」


前を見つめ続けるミハルの背後で、ホマレはミハルの言葉に頷きはしなかった。


夕焼けが迫る艦隊は、哨戒配備を続けながら進む。

間近に迫る闇にも気付かずに・・・・



「ありゃ?ミハルは?

 分隊長は何処行ったんや?誰か知らへんか?」


肩にタオルを載せたホマレが野村整備2曹に訊いた。


「いいえ、見かけませんでしたよ?」


整備中の野村2曹がタオルで手を拭いながら答える。


「おかしいなぁ?何処へ行ったんやろか」


飛行甲板にも整備室のも見当たらず、ホマレが周りを観て首を捻る。


「3尉、私達も探しましょうか?」


ミハルを探すホマレに気を使って2曹が伺う。

訊かれたホマレは手を振りながら苦笑いを浮かべると。


「いや、ええんや、ウチが探すさかい。

 艦内から出た訳やあらへんやろーし・・・」


野村2曹に断ってから整備室を後にした。


「ホンマ・・・どこ行ったんやミハル。

 折角シャワーでも一緒に浴びようと思うたんやけどな・・・」


整備室から出たホマレが上甲板に出ると、月明かりが海面を照らしているのが眼に入った。


「今夜は満月か・・・怪異が起こるには最も相応しい夜やな」


見上げた沖天に輝くのは満月。

その満月の明かりがホマレの影を甲板に映している。


「こんな晩には何かが起こる・・・そう感じとるんやなミハル?」


身を隠したミハルが何を想っているのか。

ホマレには身に迫る危険を自分だけで乗り切ろうと考えた事に少し腹立ちを覚えた。


「せやけどなミハル。お前を護るんがウチの約束なんやで?

 お前独りだけに背負わせる気なんてウチには出来へん事くらい知っとるやろーに」


肩に載せたタオルを掴んで、もう一度整備室へと足を向けた。


背中から照らす月光が僅かばかり陰った事を、ホマレは気がついてはいなかった。





「闇が・・・来る」


宿る男の子の声が教えた。


「ミハルを狙う者がやって来た・・・」


龍の子リィ君が呟く。

ミハルの頭の上で・・・


「緊迫感ないなぁ、リィ君は」


齧られていたミハルが苦笑いを浮かべる。


「そういうミハルだって・・・そうなのかな?」


齧るのを辞めたリィ君が小首を傾げて肯定する。


ミハルは密かに上空へと舞い上がっていた。

夜間飛行の経験も無いというのに。


「多分・・・現れると読んでいたんだけど。

 本当に来たんだ、女神ミハリューが・・・こんな夜中に」


女神だとすれば夜討ちなんて掛けては来ないだろうと思っていたが。

満月に誘われる闇の様に、ミハリューはやって来たという。


「リィ君も感じてるんだから間違いないね。

 私もさっき感じたんだけど・・・ちょっとこの間とは違うような気がするんだよね」


夜間飛行をするのは初めてなので、なるべく水平飛行を心掛けてはいるのだが。


「ミハルぅ・・・真っ直ぐ飛んでくれないと落っこちちゃうよ?

 ほらっ、海面が近づいてるから!」


リィ君が指さして注意を促して来る。


「わっ?!本当だっ!」


思わず身体をのけ反らして反転上昇を掛けるミハルに。


「ほらほら!今度は周り過ぎっ!ちゃんと月を観て飛ばないと。

 自分の位置さえも判らなくなるよ?」


月明かりに浮かぶ海面を見詰めて、ミハルは冷や汗を掻く。


「解ってるよぉ・・・でも真っ暗で。

 自分では真っ直ぐ飛んでるつもりなんだけど・・・

 月明かりだけが頼りだなんて・・・困ったな」


沖天に輝く月に僅かながら雲が被さり始めた。


「もし・・・月が判らなくなったらどうしよう?

 海面さえも判らなくなったら・・・還る事さえ出来なくなるんじゃないの?」


母艦<薩摩>の影が薄っすらとだけ観えている。

艦隊は敵の潜水艦を警戒して、灯火管制を行っているから黒い影だけにしか映らない。


「その時はねぇ・・・日が昇るまで飛んでいるしかないよ」


リィ君があっさり、冗談めいた言葉で教えて来た。


「それこそ・・・ソンナァーだよね。

 お月様、陰らないでね?って事だよ・・・ね?!」


満月を見上げていたミハルが気付く。


「来たよ・・・女神ミハリューが。

 現れたよ・・・闇の女神が!」


同時にリィ君が気付く。

闘いを覚悟した声は、覚悟と決意を告げている。


「ミハル!女神モードになって!

 奴はもう本気モードになっている!」


リィ君がミハルの中に潜り込む。

女神の魔法衣姿になるミハルと共に闘う為に。


月明かりの中から紅い火の粉が降って来る。

火の粉に観えていたモノが近づくと、一斉にミハルに襲い掛かって来た。


蒼き魔法衣から、白き太陽神ユースティアの魔法衣へとチェンジしたミハルが、

襲ってきた紅い光弾を魔法陣で受け流す。


「いきなりなご挨拶ね、ミハリュー!」


月影の中から現れ出た少女に向かって呼びかける。


「私を倒すのを辞めてくれるかと思ってたんだけど。

 諦めが悪い人ね、あなたって!」


赤黒い魔法衣に身を包んだミハリューを見上げる。

まるで月の中から現れ出たような女神は、ミハルを見下ろしながら呟いた。


「お前を倒す!殺さずに・・・消滅させずに。

 それが全能の神が私に命じた役目。それが殲滅の女神に与えられた任務。

 <希望デザイア>を連行するのが我が務め!」


見下ろす瞳は闇に染まり、黒く澱み切っていた。


「殺さず・・・連行するですって?

 どういう意味よそれは?」


ミハリューが手にしたデバイス剣から紅き光が迸ったのを観て、

ミハルもデバイス槍を<理の女神>が持つ剣に変える。

蒼い光を放つ剣を右手に携え、対峙するミハルに。


「判らぬか?お前は神の神殿に来たがっていたではないか。

 そこで我が主に求めるが良い、世界の終わりを。

 その為にお前はこの世界に降りて来たのであろう?デザイアよ!」


宿っていたもう一人の自分を呼ぶミハリューに聞き返す。


「私は太陽神ユースティアになったの!デサイアさんはもう出て来ないわ!

 それに何のために世界を終わらせなきゃならないというのよ!

 なぜ私がこの世界に降りて来たっていうのよ!

 私は産まれた時からこの世界に居たんだからっ!」


返されたミハルの声に、ミハリューの眉が跳ね上がる。


「なんだと?!お前はまだ完全に覚醒しておらんというのか?

 ・・・ふふふっ・・・あーっはっはっはっ!!

 とんだお笑い話だなっ、女神ミハルは自分が何者なのかも知らずに神となったか?」


「どういうことなのよ?」


笑い転げたミハリューに、口を尖らせて訊いたが。


「知らぬなら知らぬでもいい!

 私の役割はお前を連行する事だけだからな。

 甚振り尽して身動き出来なくしてやる!」


デバイス剣を翳したミハリューが声と同時に斬りかかって来る


応戦するミハルも上空へと飛び上がり蒼き剣を斬り上げた・・・



挿絵(By みてみん)


現れたのは殲滅を司る女神ミハリュー。


闇夜に現われし者は前とは違うような気がした。

しかし、ミハルには隠し持った奥の手があった!


次回・・・闇が迫ります!!


次回 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者>  Part8

君は・・・現れし者に目を見開く?!蒼き眼で見た者とは?


人類消滅まで ・・・ アト 45 日!

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