表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
566/632

第6章 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者>  Part5

挿絵(By みてみん)


今日がクリスマス!

これが・・・損なボッチモン?!


「確かにリーン居ないし・・・」ミハル

闇が支配するかのような大陸。


黒い霧に覆われた島・・・大陸とは言い難いかもしれない。


そこにあるのは神の神殿と揶揄される巨大な都市のような物が聳え立っていた。

直径数十キロに亙る城壁の様な物に囲まれた都市。

人が居住している様子は観えない、無人の都市・・・


死に絶えたかのような都市にあって、

煌々と灯りが灯っているのは中心に建つ高き尖塔。

頂上部分に付いている岩のようにごつごつした何かが薄青い光を放っていた。


薄青き光を放つ尖塔頂上部・・・

それに秘められるのは一体何を意味するというのか?

誰が・・・なんの目的でこのような都市を造ったというのか?


死に絶えたかのような都市・・・

その住人は何処に行ったのか・・・どこに居るというのか。


都市は何かを待つかのように静まり返っていた・・・・





宇宙そらから眺めていた。


新たな月の中から。


それが始まったのを・・・終末が訪れたのを。


紅く焼けただれたかのような地球ほしの最期を観ていた者が呟いた。


「神よ、赦したまえ。我らが行為を・・・」


人類の消滅する瞬間を観て、脱出に成功した者は懺悔の言葉を吐く。


「人類は冒してはならない罪を犯してしまった。

 自ら滅びの道を突き進み、押してはならいボタンに手を掛けた。

 終焉を齎すスイッチを押してしまったのだ・・・」


脱出者は人を呪う言葉を吐く。

地表に居る全ての人類を死に絶えさせた、終末兵器を使った愚か者への怨嗟を。


蒼かった地球ほしが、たったの一回で赤黒く澱んだ。


全人類がその兵器によって死滅した。


造られた悪魔の兵器。

使用を認めた者さえ、生き残る事は出来なかったであろう。


科学の進歩は人類に幸福を齎す筈だった。


だが、機械文明が往き付くところ・・・

機械に頼り過ぎた人類は自らの幸福を取り違える事になった。


機械は独断で人類の抹殺を進め始めた。

欲と嫉みを捨てきれない人類に機械が警鐘を鳴らしたのはいつの事だったか。


国と国のいがみ合い、人と人のいがみ合い・・・

やがて人類は冒してはならない領域へと手を伸ばした。

寿命の延命・・・命の再生・・・そして、新たな人の創造。

自分達に替わって戦いをさせる、人造人間を手にかけてしまった。

命を人造人間に吹き込む技術は、神か悪魔の所業にも等しい。

既存の人類達は人造人間を造り、ありとあらゆる実験を行った。

どうすれば人類は生存していけるのか。

如何にすれば敵を倒せるか・・・そして。


自らの命を永遠に生き永らえさせ得るのか・・・を。


入れ物が死に絶えても記憶や意識を転移出来るのならば、自分は永遠に生きる事になる。

そう結論付けた愚か者は他人の幸福を嫉むようになる。

自分より幸せ、自分より裕福、自分より友が多い・・・


それは国家間でも同じだった。

他国に対しての嫉みが次第に増幅し、やがて人造人間本来の任務を与える事になった。


人造人間同士の争い・・・戦争を。


だが・・・愚かな人類は過ちを犯した。


人造人間達の離反。

意識を持つようになった人造物達は意図しない戦いに駆り出される事に反旗を翻した。


それは人類が冒してはならなかったパンドラの箱から取り出した闇・・・戦争。

戦争によって破滅へと転がり落ちる事になったのだ。


人造人間の中に意識が芽生え、オリジナルを死滅させる選択を決断する。

終末・・・戦争。

オリジナルか、新造者達か・・・人か機械か。


人類は新造人間達に因って駆逐されて行った。

人類に残されたのは脱出しどこかの星に移住するか・・・死滅するしか残されてはいなかった。


脱出者達は月面に都市を建設し状況を見守った。

地表に残された人類が滅び逝くのを。


そして残された人類は<希望>を脱出者に託し、殲滅を図った・・・人造人間を。


自分達も滅びるが、<希望>を後に残す為。

悪魔の兵器を使う決断を下したのだ。


人類の消滅を。

新造者達も伴に消滅させる為に、終末兵器を使用した。


赤黒き闇の如き閃光ひかりが地表を襲い、人類の命を奪い去った。

既存の人類と、新たな人類・・・双方が一瞬で消え去ったのだ。


紅き地表に数多の亡骸が転がる。

既存の人類も、新造人間達も・・・・




月面に逃げた人類の中に創世を司る者がいた。


間違った文明により人は自ら滅んでしまった。

人類を地球ほしに戻す前に、考えるのだった。

もう一度人類が同じ轍を踏まない為にはどうすればよいのか。


考えた末に思い至ったのは。


<<人類をこの地球ほしに住まわせる前に新たな人類を造らなければならない>>


科学者が思ったのは新たな人類が適正かどうかを見届けてから、移住する事。

神にも等しき行いを、観察者として見届けようとした。


だが。

創世を司る者は落胆した。

送り込んだ者達は、前世と同じ繰り返しを行うばかりだったから。


<<人類そのものが変わらねばならないのか?>>


戦争を激化させる再生人類に呆れ果てた観測者は、自ら消滅を手掛けた。

リピートされる過ちを消すかのように。

在地の人類に悪魔の技を放った。


文明のやり直し。

1000年もの月日が掛かったというのに・・・消滅させた。

あの時と同じように・・・人類を人が殲滅させたのだ。


全能の神が放つ殲滅兵器ケラウノスの如き、終末兵器を作動させて。


観測者たちは同じ行為を繰り返すのだった。


千年毎せんねんごとに・・・審判を下し。

地表に月の欠片で造った都市を墜とし。

人類に幻滅を抱き、失望を覚え。

殲滅を繰り返し、新た生んだ人類には変化を与え続けた。


人に超能力を与えた・・・失敗だった。

世界に神たる者を与えた・・・闇が産まれた。

人類に<希望>を贈った・・・見つけられなかった。


もう、何度目なのかさえも判らない。

地球ほしの寿命さえもが尽きるかも知れない。


観測者は諦めようとしていた。

だが・・・観測者の中から独りの女の子が地表へと降りた。

もう耐えられなかったのか?

それとも在地の人類に<未来>を与えんとしたのか?

月に居る観測者たちはその女の子に賭ける事にした。


女の子は新人類に降り立った。

人類に与えられたパンドラの箱の中へと。

パンドラの箱・・・それはつまり<人間ひと>そのもの。

人は箱の中から見つけようと探した。

人は探し求めた・・・<未来きぼう>を。


観測者達は女の子が覚醒するのを待った。


人類が女の子に気付き、覚醒の手助けをする事を祈って。


もう二度と押してはならないボタンに指を掛けたまま・・・


<<大魔王サタン>>と名付けられた終末兵器の作動スイッチに指をかけて。



「「人は<ことわり>を見つけられるだろうか?

  見つけたとしても渡してしまうのだろうか?

  また・・・<無>に戻ろうとするのだろうか?

  人間ひとは闇から抜け出せるだろうか?」」


最期の審判を下す者は指を掛けたまま、その時を待っている・・・月の裏側で。








___________







「目覚めよミハリュー。

 そなたは殲滅を司る女神として生まれ変わったのだ。

 もはや使徒ではない・・・人を滅ぼす神となった。

 人を滅ぼす女神となった、我が手によって。

 この全能なる者の求めるのは人類ひとの消滅。

 地上に生ける者全ての消滅・・・<無>なのだ」


ユピテルと自らを名乗る者が神の使徒であったミハエルに告げる。


美しかった金色の髪は赤黒く染まり、蒼い瞳は闇へと染まった。


「私を呼び覚ました者に告げる。

 求めるのは人の殲滅だけなの?

 本当に求めるのは・・・何が欲しいというの?」


赤黒き瞳で影たる者に訊ねた。


「余が欲するのはそなたの生まれ変わりとしてこの世に出た者。

 その中に眠る<人の理>・・・希望と名付けられしモノ。

 それが覚醒し我が手に堕ちれば、審判が下されよう。

 この世界の往き付く先が闇に覆われ、<希望>が失われた事で。

      <<無>>

  に、戻らせる審判の時が訪れるだろう」


闇の中から告げられるのは人の消滅。

求められるのは<希望>の消失。


「それが私の務めだというのなら・・・

 今こそ殲滅を図ろう・・・人間ひとの世界を終わらせる為に」


ミハエルだった使徒が、女神と化す。

女神となったミハリューが忠誠を誓う。

全能の神ユピテルの前で。

ユピテルを名乗る悪魔の前で。


復活を遂げんとする機械の前で・・・


「そうだミハエル・・・いいやミハリュー。

 千年の永きに亘り尽くしてきた人類に終止符を打つのが役目だと心しろ。

 お前の生まれ変わりとして覚醒する筈の娘を連れだせ。

 余の前に<ことわり>の娘を連れてくるのだ・・・その時こそ。

 余は観測者たる娘を喰らい、<無>を撒き散らすだろう。

 その時こそ、千年の永きに亘り地上にのさばる者達に消滅を与えん。

 永遠と続く地球ほし宿命さだめ通りに・・・

 この大魔王サタンが殲滅するのだ!」


人工知能は自らを大魔王サタンと呼んだ。

古から続けられた粛清を司る者として・・・


悪魔に貶められた神託の使徒。

自らの記憶を改竄かいざんされたとも思わず。


この世界に神たる者は存在しないのか?

本当の神とは・・・?


未来を託された観測者たる娘は、漸く目覚めた。

その力をもう一人の観測者に託し。

自らを救わんとする娘に、人類の希望を託して。


ことわり>を司る・・・女神に。



告げられたのは闇の中。


話されたのは世界の終わりと始まり・・・

人類はどう足掻いても滅び行く運命さだめなのか?


次回 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者>  Part6

君は知らず内に魔力が戻るのか・・・日の光を浴びれれば?

人類消滅まで ・・・ アト 47 日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ