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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者>  Part1

挿絵(By みてみん)

  <理>の女神ミハルの新魔法衣です


海戦が済んだ海上に浮ぶのは有志連合軍前衛艦隊。

髪の毛の先から靴先まで見詰められている。


司令官室を兼ねる艦長室に集う二人に。

いや、正確に言うと二人と一柱の神に。


「なんや、どこも変わらへんようにしか観えへんのやけど?」


ジトッと見るホマレがミノリとイナリに訊いた。


「うむ、確かに。

 どこがどうとは言えないな・・・」


肯定する艦長ミノリ。


「だがのぅ、確かに強力な魔力を感じるぞよ?

 この娘の中から神の・・・かなりの神力が観えるのじゃがのぅ」


ミノリに宿った狐の神が小首を傾げる声を出す。



ミハルが殲滅の女神を退けたのを観ていた二人と神が詰問の為に集まっていた。

帰還したミハルには何処をどうといって変わったところが見当たらない為に。


「あ・・・あのっ、さっき話した通りなの。

 私の中に居たもう一人の人格・・・と、いうか。

 デサイアさんは私の一部だった訳で・・・人間ひとと神の両方を認められたの。

 だから人であって神でもあって・・・トニカクっ見掛けだけは同じなんですっ!」


ジロジロ視られて困ったように説明を繰り返し、自分が神となった経緯いきさつを教える。


有志連合軍空戦魔砲師のユニフォームを着たミハルの姿は依然と全く変わらない。

どんな神になったのか、どんな力が秘められたのか。

観ているだけでは何も判らない。

狐の神イナリにとっても、目の前に居る娘の力を感じるのが精一杯だった。


「うむむ、神となったようじゃが。

 前とどう変わったのじゃろうかのぅ、声も話し方さえも変わらんようじゃが?」


つい半日前まで、宿っていた女神デサイアはミハルとは全く違う話し方をしていたのだが。

その宿っていたとされるデサイア自体がミハルの分身でしかなかったと言われて、

ミノリ達は困惑を隠せずに訊くしかなかった。


「つまりだ、ミハルはミハルであってミハルではなくなったと?」


ちんぷんかんぷんな質問をするミノリ。


「せや、ミハルは人であって女神じゃなく、女神で逢って人では無いと?」


益々混乱具合を深める二人に。


「ですからっ、人と女神の両方なんですってば!

 どう言ったら納得してくれるのですかぁ?!」


説明具合が足りないと思わないのか、ミハルはイジケ気味に答えた。

2人と一柱の神に自棄気味に答えても説得不足の感は否めない。


「私はリーンの元へ往かなきゃいけないんです!

 神の神殿とやらに往く為には神格を有さなきゃいけないんですっ!

 だから・・・女神となる事を認めたんです。

 人のコトワリを告げる女神に!」


必死に自分に解っている範囲の事を教えようと試みたのだが。


「ん・・・で?

 ミハルは人のまま女神になったんか?それとも純粋な女神になったんか?」


「ホマホマよ、それを訊くのならミハルは単純に人を辞めたのかと訊いたらどうじゃ?」


さっぱり伝わらなかったようだ。


((しょんぼり))


ガクッと肩を降ろしたミハルに助け舟が。


「あのね、ミハルは力は女神で、心は人のまま。

 裁きの女神って言っても、損な娘には変わりがないってことだよ?!」


観ておられなくなったのか、聴いててまどろっこしくなったのか。

龍の子リィ君がミハルの中から現れた。

羽根で空中を舞いながら。


「おおっ?!龍の縫いぐるみが進化してるで?!」


「本当だ!ミハルに宿った者が進化してるぞ?!」


2人が蒼い翔龍の縫いぐるみに驚きの声をあげた。


「そうさ、僕もミハルの力で進化したんだよ。

 リヴァイアサンから飛龍に、だから間違いなく神の力があるんだってば」


リィ君の言葉に二人が手を打って納得する。


「なるほど、リィ君を進化させたのはミハルの持つ力のおかげなんだな!」


ミノリが漸くミハルが女神の力を持つ者だと認める。


「良かったんか悪かったんか・・・もう女神モードを解除する事もなくなったんやな・・・」


何故かホマレがガッカリとした口調で認める。手をニギニギさせながら・・・


「あ・・・あのねぇ。端から言ってたのに・・・ホーさん残念!」


ミハルが胸をガードするかのように腕を組んで苦笑いを浮かべる。

漸く二人がミハルの事を知り、神格化した力が備わっている事を認めた。


「それじゃぁのぅ、そなたの事をこれよりどう呼べばいいのじゃ?」


狐の神が同格化した娘に訊いてきた。


「えっ?!」


訊かれた意味が解らずミノリを見る。


「そやなぁ、神様なんやもんなぁ。今迄通りって訳にもいかへんやろーなぁ」


手をニギニギさせるのを辞めずにホマレが頷く。


「そんな・・・今迄通りで善いよ」


改まる事を嫌って、ミハルが普通に接して欲しいと願う。

だが、ミノリもホマレも否定するように首を振って返す。


「えっ?!駄目なんですか?どうして・・・」


自分が別格扱いされるのかと思って悲し気に瞳を曇らせてしまう。

声を詰まらせたミハルに向かって艦長のミノリが言った。


「人間の世界に在って神となった者の総称は等しく神。若しくは権現様。

 信仰の対象となる者の名は、呼び捨てにしてはならんのだからな」


「・・・ワシはどうなっとるんじゃ?」


ミノリの答えにイナリがツッコミを入れたが完全に無視され・・・


「だからぁ、これからはミハルの事を<さま>扱いしようズ!」


ホマレが指を一本立てて言い切った。


「だから・・・ワシはどうなっとるんじゃ?」


またイナリが突っ込んだが完全無視される。


「・・・だぁ。そんなかしこまれるような呼ばれ方は!」


涙目のミハルが嫌がる。

そんなミハルを観ている二人が同時に言う。


「嫌か?だったら呼び捨てにするぞ?それでいいんだな?」


「ほーかぁ?せやったらイナリと同様に扱うで?」


2人に笑いかけられてミハルが眼を輝かせる。


「それで良いんです!それが良い!」


嬉しそうにミハルが願う。


「ナカーマ!」


イナリも納得声をあげる。

ミノリとホマレはニヤリと笑いかけ、してやったりと頷き返す。


「じゃあ、ミハルはミハルのままで。

 これからもずっとやで!ええんやな?!」


「うん!それが良い!そうして!」


ミハルが喜びホマレに力一杯頷いた。



((ビビーツ))


艦長室のインターコムが鳴る。


「「艦長!現海域から離れます。旗艦から発光信号を受けました。

  至急艦橋までお越し願います!」」


当直士官のミツル航海長から呼び出しがかかった。


「よし、直ぐに行く」


ミノリは艦長帽を手にすると狐耳と二本の尻尾を隠し、室外へと向かう。


「あの、私達は?」


ミハルも付き添うかと訊いたが、ミノリは首を振って。


「必要がある時に呼び出す。それまで待機しておけ!」


2人の魔砲師に飛空士として待機を命じる。


「ほなら、ミノリ姉さん。ウチ等はこれで」


艦長に対しての礼として、敬礼を贈って送り出す。

ホマレに続いてミハルも敬礼を贈り、


「これからの作戦はどうなるのか。分かりましたら教えてください」


早く暗黒大陸へ進撃したいのを心の内に秘める。


「ああ、これからが本当の反撃になる筈だ。焦るなミハル・・・様」


最期はワザとおどけてみせる程の余裕を持てという意味合いで答えて来た。


「あ・・・はい!」


背を向けて艦橋へと向かうミノリに姿勢を正して頷いた。





艦長室から連れ立って出た二人は最上甲板へと申し合わせる事も無いのに上がった。


海上には神軍との交戦で被害を被った護衛艦数隻が吐き出す黒煙で薄汚れていた。

ミハリューに因って出た被害は想像を超えて甚大でる事がわかる。


「やられちゃったね、ホーさん」


ミハルが女神にならなければもっと被害は深刻であっただろう。

もし、覚醒せずミハリューの手で滅ばされていたのなら。

艦隊は全滅し仲間達は倒れて、

その後には世界中の人間ひとが消滅の時を迎えたのかもしれない。


「でも、勝てたんやな・・・ミハルは」


ホマレは覚醒して敵に勝てたミハルを想う。


「うん・・・勝てた・・・表面上は。

 沢山の犠牲を払わされて・・・」


目の前に浮かぶ損傷艦が誘爆を繰り返し沈みゆく。

大破して航行不能となった駆逐艦を味方の艦が処分する為に雷撃を敢行する。


何人もの尊い命が奪われたというのか。

女神に因って齎された損害の多さにミハルの心が痛みを覚える。


「せめて・・・人的損害が少ないとええんやけどな」


旗艦<金剛>も掠られた光弾によって浸水してしまったのか、

僅かに傾斜して速力を落としているようだった。


「そうだ!<夕立>は?

 ミカ姉さんを送ってくれた駆逐艦は?!」


ミハルがたった一隻で敵艦隊を向こうに回して奮戦した艦を探す。


「ミハル、あそこにおるで」


ホマレがいち早く見つけて指し示す。

<夕立>は損傷も受けず味方艦を救援している。


「ほっ!良かった・・・」


味方の被害に心配していたミハルが息を吐いて安心した。

そして観えているかも判らないというのに敬礼を贈る。


「あの駆逐艦にはお世話になったから。

 あの魔砲師さんにはミカ姉さんを天国へと送って頂けたから」


感謝の敬礼を贈って謝意を示した。


「ミハル・・・これから・・・どうする気なんや?

 艦隊はこれから神軍との決戦に向かうと思うけど・・・

 神の中にミハルの想い人が居るんやろ?

 もし・・・その人が敵として現れてもうたら・・・どないするんや?」


ホマレはそっと気になり続けていた事を訊いてみた。


「・・・戦う・・・戦わなきゃいけないんだ。

 その為にも、女神になったんだから。

 敵の手に堕ちてしまったのなら、取り戻す為にも闘うよ。

 敵に捕らえられたままなのなら、救い出さなきゃいけないんだ」


敬礼を贈り続けるミハルが、ホマレに応える。


挿絵(By みてみん)



「だから・・・私は此処に居るの。

 人を護る為、人を導く為。

 そして等しく<希望>に導く為に・・・神も人も」


空を見上げてミハルは話す。

女神となった覚悟を。


「私は約束を遂げなければいけないんだ。

 ずっと・・・ずっと昔から決められていた誓いを果たす為に」


見上げる空は蒼く、どこまでも遥かに続いて観えた。


ミハルは仲間達に受け入れられた。

女神となっても伴に闘う事を・・・


一方ミハリューは?

真実を告げられようとしているのだった・・・


次回 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者>  Part2


君は自分が何故此処に居るのかを知る事になるだろう・・・


人類消滅まで  ・・・・アト  51 日

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