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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part11

女神同士の闘いに決着が・・・


ミハルとミハリュー・・・仲良く喧嘩しな・・・


挿絵(By みてみん)

その光が自分に与える影響を知り、自らの存在理由が失われつつある事を知った。


ミハリューが放った光弾を片手で受け止め、いとも容易く打ち消した女神ミハル。



僅か数分前には考えもつかなかった。

現れた娘が自分の失敗作だと教えられていた。

だが、覚醒した人間ひとは女神となって現われた・・・自分より上位の女神として。



「話が違う・・・

 こんな事があっていいもんか!

 お前が太陽神きぼうに成れる筈が無い・・・なかった筈なのに?!」


ミハリューは恐怖心から知らずに後退る。


「お前の中に与えられたバリフィスの力が・・・変化させたというの?

 それともお前とバリフィスの力が合わさったというの?」


恐怖に彩られた瞳が睨む。


「女神になるだけならまだしも・・・私より上位の神に成れたのは何故だ?!」


指を突き付けているミハルに真実を求める。

それはまだ、ミハルの事を自分のバグだと思い込みたいから。



「ミハリュー、あなたの言った事の半分は正解。

 でも、あなたの影でもなければ偽物でもないの私は。

 私は女神としての力と、人としてのことわりを託された者。

 この世界を正そうとする者達の味方・・・そう・・・<裁きの女神>」


ミハリューの前でミハルが立ち上がる。

今迄の女神の魔法衣とは違い、タイトスカートがロングスカートへと変わっている。

黒ずんでいたマントが蒼き鋼のマントとなっていた。


「ぐぅっ?!アダマン鋼・・・神のはがねを纏えたというのか?」


ミハリューの叫びは途切れる事になる。

二つに割れた海から現れた者の姿を見せつけられて。


((ズバアアァッ))


光弾を受けて水柱に隠されて姿が見えなくなっていたリヴァイアサンが空に浮きあがって来たから。


「何いぃっ?!」


蒼い身体に映えた羽根。

両腕両足が付いた姿。

巨大さは更に強く、力強く海面を叩く尾は長く。


「馬鹿なっ?!翔龍だとぉっ?神の天魔・・・ドラゴニス?!」


蒼き龍はミハリューを睨んで天をける。


挿絵(By みてみん)


蒼清せいじょうなる瞳で睨みつけてくる翔龍に乗った女神の姿に恐怖は驚愕となる。


「嘘だ・・・私は悪い夢でも観ているんだ。

 こんな事が許される筈が無い・・・昇龍に乗った太陽神なんかが居る訳が無い」


赤黒き瞳から涙が溢れる。

恐怖と驚愕・・・そして口惜しさで。


「ミハリュー、あなたに訊ねたい事があるの。

 リーンは何処に行けば逢えるの?どうすれば返してくれるの?」


翔龍に乗る女神が訊いて来る。

蒼き髪を靡かせ、右手を突き付けて。


「あ・・・あああっ?!

 そっそうよ!バリフィスの記憶を渡しなさいよ!

 そうすればバリフィスは壊されずに済むのっ!」


ミハリューが思い出したかのようにミハルに言い返す。

自分が負けたとしてもバリフィスの事だけは護ろうと考えて。


「お前が持つバリフィスの記憶デバイスを!

 そうじゃないとバリフィスが分解されてしまうのよ!

 お前にバリフィスが託した記憶をこっちによこしなさいよ!」


勝負は二の次にして、ミハリューは此処へ来た本来の目的を告げる。


「デバイスをよこさなかったらバリフィスはユピテルに壊されちゃうの!

 私はあの男に約束したのよ、バリフィスを護るって!

 人間共の事なんかよりバリフィスを護る方が大事なんだからっ!

 そうじゃないと約束を果たせない・・・

 そうしなければグランとの約束を守れないんだからぁ!」


叫んだミハリューが手を指し伸ばす。

どうしてもそれが欲しいのだと泣きながら。


「あなた・・・グランを知っているのね?

 私の友をどうしたというの?答えなさい・・・」


翔龍に乗ったミハルが訊ねる。

答えねば力ずくで答えさせようとさせるかのように指先をミハリューに突き付けて。


「お前・・・グランを知って・・・そうか?!

 お前がグランの希望?!お前がグランとバリフィスの希望だったのね?!」


今更・・・ミハリューはミハルという名を何度と聞いていたのに。

まさか人間が自分の知っている女神と使徒の友だとは思いもしなかったのか?

それとも心が否定し続けていたのか。


「もう一度訊くけど。

 あなたはグランに何をしたの?私の大切な友達に何をしたの?」


冷めた声が答えを求める。

それが裁きの神の声、ユースティアたる者の声にしか聞こえてこない。

ミハリューは太陽神ミハルが何を求めて訊いているのか知っている。


そう。

自分には罪があるのだから。

上級神である太陽神ユースティアが裁くのは人だけではない事も知っているから。


「わ、私はっ!私は悪くないっ!

 悪いのはバリフィスを護って消滅する事を認めたグランの方なのっ!

 私に逆らって闘い続けたグランなのよぉっ!」


裁きの神が指先を突き付けてくる。

ミハリューは太陽神ユースティアの鉄槌を怯え、真実を語る。


「バリフィスに訊いてみれば解るから!

 グランはバリフィスを護る為に消えたのよ、自分で選んだんだから!」


後退り逃げる方法を考えるミハリューの眼にゴリアテが観えた。


ー  もう・・・逃げるしかない。

   こんな所で裁きを受けるいわれはないんだから!


瞬間転移で神の神殿に逃げ込みユピテルに助けを乞うしかないと考えて、

なんとか言い繕う事を考える。


「そうよっ!あなたの考えている通り。

 私がグランを消滅させた・・・でもそれは任務だったからよ!

 バリフィスを目覚めさせる為の!

 眠り続けていたバリフィスを目覚めさせる為に、

 どうしてもグランを消さねばならなかったのよ!

 目覚めを妨げているグランを消さねば起きてくれなかったバリフィスにも原因が・・・」


太陽神ユースティアの指先が自分の額に光を当ててくる。


「ひぃっ?!待っ待ちなさいよっ、ちゃんと話しているんだから!」


自分を裁きに懸けようとしていると思ったミハリューが取り乱した。


「あなた・・・グランを消したのね?

 あなたが私の友に手を掛けたというのね?」


金色の光を指先から出し、ミハリューにポイントするミハル。


「待ちなさいってば!私はやりたくてやった訳じゃあ・・・」


「・・・解ってる」


冷たい答えがミハリューを恐怖のどん底へ貶める。


「だっ・・・だったらっ!

 この光を停めてっ、停めてよぉっ?!」


そう言いながらも後退り、ゴリアテ迄逃げ込めるタイミングを計っていた。

後僅かの所・・・ゴリアテからの照射範囲に近づけた。


「ミハリュー、あなたはグランの事が好きになりかけていた。

 なのに・・・なぜ?

 友を求めようとはしなかったの?

 愛する事を拒んでしまったの?

 私はそれが聴きたいの・・・その心がどうして光を求められなかったのかを」


ミハルが求めていたのはミハリューに光があるかどうか。

闇の心だけに染められているのかどうかを・・・裁いていた。


「えっ?!

 グランを消滅させた事では無いの?

 私の心を裁くというの?」


ミハリューの身体が停まる。

未だに光をポイントされているというのに。


「そう。罪は裁かれなければならない。

 だけど自ら望んで行った訳ではないんでしょ?

 だとすれば何故あなたは罪を犯したのかを裁かねばならない。

 命令だけで友になるべき者を消滅させてしまった、

 あなたの心にも聴かねばならない筈よ?」


ミハルの言葉に立ち停まる。

殲滅の女神として、神に背かんとする者は仲間だろうが容赦なく滅びを与えて来た。

それは自分が殲滅を司る女神だから。

全能の神ユピテルの求めだと教えられてきたから。


だが、ミハルの言った通り。


ー  あの時。

   確かに心が一瞬痛んだ。

   確かにグランを救いたかった・・・なのに。

   なのに・・・私は彼を失う事を拒まなかった・・・


思い出した時には心が痛みだす。

好きになりかけていた男を自らの意志とは逆に滅ぼしてしまった事で。


「私は・・・確かに友達になってと言ったわ。

 でも、グランは拒み続けた。バリフィスを目覚めさせようとする私に。

 でも・・・それでも。

 私は彼を手に懸けたくはなかったのよ・・・」


心からの本音が零れだした。

自分の剣で倒れた剣士の顔を思い起こして。


「・・・神になんか・・・なりたくなかった・・・」


ポツリと本音が零れだす。


そして自分に光を突き付けたミハルを睨み返すと。


「私は・・・私はお前が憎かった!

 私のバグとして生まれた筈の、お前の事が!

 人間ひととして生まれ、友達や肉親に囲まれ育つお前の事が!

 私にない温かさや優しさを持つお前の事が憎かった!

 神の私に与えられ無かった幸せを感じるお前がっ!憎いんだ!!」


恨んだ理由を叫んで教えた。

睨む瞳から涙を零して。


「そう・・か。

 ミハリューは人の心を求めていたんだね?

 神では無くて人に憧れていたんだね?

 友達や父母、兄弟の温もりが欲しかったんだね・・・

 それじゃあ、ミハリューの罪は問えないね?」


ミハルの声が優しさを取り戻した。


「ミハリュー、グランの件は闇に染まりし神の命令であったと認める。

 あなたを粛罪する、粛清しゅくせいじゃなくて粛正しゅくせいだよ?」


ミハルの指から当てられていた光が消えた。


「えっ?!赦してくれるの?」


拍子抜けしたようにミハリューが聞き返す。


「勿論、女神に二言は無いよ?」


微笑むミハルに眼を丸くしたミハリューがポカンと口を開けてしまう。


「でもね・・・教えて欲しいんだ。

 リーンに逢うにはどうすれば良いのかを。

 あなたが言うバリフィスってに逢わなきゃいけないんだ」


呆然と逃げる事を忘れて佇むミハリューにミハルが頼んだ。

自分が女神に成らざるを得ない本当の理由を。


「私、リーンのペットなんだ。

 だから御主人様の元へ帰らなきゃいけないんだよ?

 ペットなら御主人様を護って戦わなきゃいけない。

 御主人様の元に駆けつけなきゃいけないんだよ。

 だから・・・教えて欲しい、リーンを取り戻す方法を!」


呆然としていたミハリューの眼が再び邪なる光を放つ。


「い・・・や・・・だ・・・

 嫌だ嫌だ嫌だぁっ!バリフィスは誰にも渡すもんか!

 喩え太陽神に頼まれたって教えるもんか!

 バリフィスを渡す位なら・・・私と一緒に消滅させてやる!」


まるで子供のように嫌がるミハリュー。

子供が訳も分からず駄々を捏ねるのとそっくりだった。


ミハルが駄々を捏ねて後退っていくのを困ったように観ていた時。


「お前になんかバリフィスを渡さないからっ!

 悔しかったら神の神殿まで奪いに来なさいよ!

 暗黒大陸の中心にある神の神殿まで来ればいいのよ!

 どうせユピテルの親爺に消滅させられるに決まってるけどね!」


ゴリアテの空間転移装置の照射範囲に入ったミハリューが踵を返して逃げ込む。


「今日はこれ位でお終いにしとくわ!

 今度会ったらユピテルの親爺に手助けして貰う事にするから!

 覚悟しておく事ね!

 人と女神のあいの子!ミハル!!」


((シュンッ!))


音もなくミハリューの姿が掻き消された。




空に浮かぶのはミハルを乗せた翔龍。

太陽神ユースティアが乗るドラゴニス。


「良いのかいミハル?」


頭の上の女神に龍が訊く。


「うん・・・いいの。

 リーンの居場所が判ったから」


女神モードを解除したミハルが自分の力で空に浮かぶ。

ミハルが女神ではなくなった事に因り、空中から巨大な飛龍の姿も消えていた。


「でもさぁ、厄介な事にならないのかなぁ?

 ミハリューを神の神殿にもどしちゃったら・・・」


いつもの通り、ミハルの頭に載ったリィ君が心配げに訊いて来る。


「大丈夫。って、いうより。

 この方がリーンの為になるんだよ、リィ君」


ミハル達の前に<薩摩>とホマレが近づいて来る。


「だって・・・ミハリューが言ってたもん。

 リーンを奪われたくないって。

 それだけ大事なんだから、酷い事をしないよ絶対に。

 きっとリーンを護ってくれると思うんだ!」


近付いて来るホマレに向かって手を振りながら、そっと訳を龍の子に教える。


「そっかぁ、なるほどね。

 でもさぁ・・・問題があるよミハル」


リィ君がため息を吐きながらミハルに言った。


「どうやってそこまで行くのさ?

 敵だってはいどうぞって通しちゃくれないだろうし・・・

 ミハル・・・考えてなかっただろそこまで?」


((たらり))


リィ君はミハルの汗を見逃さなかった。


「リィ君っ!空飛んで往こうっ!

 翔龍モードで空を飛んで往くのっ!」


泡を喰ったミハルの声がそれを証明していた。


「考えてなかったんだね・・・やっぱり」


ふぅっと大きく息を吐いたリィ君が呆れてしまった。

でも、それがミハルらしいと笑いがこみ上げてくる。


「でも、ミハルは女神になってもミハルだよね・・・善かった!」


「・・・なにか。物っ凄くっ、馬鹿にされたような気が・・・」


龍の子の笑い声がミハルの呟きを掻き消した。



挿絵(By みてみん)




空にはいつの間にか蒼空が戻っていた。


艦隊戦も終了し、敵味方双方は離れて戦闘に発展する事は最早なかった。


ジェットランド沖の海戦はこうして人類側の勝利と終わった・・・




どうやらジェットランド沖の戦いも終ったみたいです。


ですが、ミハリューは逃げ帰り神軍は未だに健在。

ミハルの願うとおりリーンの元へ行けるのでしょうか?

闘いはいよいよ敵の本丸に向って行くのです・・・


次回 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <ことわりを司る者 >Part1


君は知らされる事になる、味方にも被害があった事を・・・


人類消滅まで ・・・アト 52日

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