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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part4

現れた女神ミハリューによって、イキナリ被害が出た。


それがミハリューの手に因るものだとは今はまだ判ってはいなかったが・・・

8隻のゴリアテ改級は後退を続けるように命じられていた。

それは敵から逃げる為ではない。

邪魔になるから・・・自分独りで十分だと判断しての命令だった。


「「殲滅の女神様から全艦に指令が下った。速やかにこの場から退け。

  繰り返す<全艦隊は後方に退避、巻き添いを喰らわないよう>後方に退避せよ」」


旗艦のコンピューターが全部隊に命令を伝達した。




有志連合軍前衛艦隊旗艦<金剛>の艦橋では、水雷戦隊に加えられた光弾の被害報告が齎されていた。


「第3水雷戦隊から警報。

 敵艦隊に<神>が下って来た模様なり。

 全艦に対空及び、回避運動を求めてきています!」


先任士官が艦隊司令官に報じた。

艦長が報告を受け、直ちに司令官に向けて訊ねる。


「司令官、本艦も回避行動を執りますか?」


髭の艦長が後ろに控える司令官を観て艦隊行動を訊ねる。

艦長が見詰める白い服を着た司令官が首を振って応えた。


「大矢君、必要ないよ。敵に神が降りたのなら・・・

 逃げた所で無駄だから・・・叩こうと思えば回避なんて無意味だよ」


白い服・・・白い魔法衣を着た司令官が苦笑いを浮かべて断って来た。


「敵に神が降りたというのなら、こちらも全力で立ち向かえば良い。

 全艦隊で相手になるだけだよ・・・こっちもね」


司令官は逃げずに立ち向かう決断を下した。

神に歯向かって勝たねばならぬと・・・人たる艦隊全力をもってして。


「判りました<金剛>の憑き神・・・祓狗はらいぬ

 全艦に魔鋼戦闘を下令します!」


白い魔法衣を着た司令官は艦長に頷く。

憑き神を宿した司令官が軍帽を脱ぐと、隠されていた髪が零れ出る。

肩下まで零れ出た蒼白い髪、白い魔法衣・・・そして。


「この<金剛>がお相手しましょう!

 我が憑代、仁科にしな偉子よりこの名に賭けて護ってみせましょう!」


祓狗を宿した魔法の娘は、金色こんじきの瞳を空から現れた敵神に向けた。





<神軍>の水上艦隊も空中艦隊も撤退していくのが見える。


それを追撃しようとしていた有志連合軍艦隊は陣形を変えていく。

まるで敵の空襲から主力艦を護るかのように輪形陣を布き始めた。


周りを囲んだ水雷戦隊の各艦は、

主砲を擡げて対空陣形である輪形陣の中心である戦艦<金剛><榛名>を護ろうとしていた。



単艦の<薩摩>は味方前衛艦隊と合同すべく進路を変えていたが・・・


「ミノリ艦長、前衛艦隊より無電です!」


艦橋に戻って来たミノリにミツル航海長が手渡した電文には。


「ふむ・・・合流せずに単艦にて行動せよとあるな・・・」


読み終わった電文をミツルに返しながら、意味を考えていたミノリが判断を下す。


「旗艦宛てに返信。

 <我貴艦隊との合流を取りやめる。再度の合流地点は艦隊合流点とする>以上だ」


囮艦隊としての任務を終えたと判断したミノリが、

有志連合軍主力部隊との合流を目指し進路を決定する。


「それでは前衛艦隊とは同道しないと言う訳ですか?」


砲術長のレナ3尉が口を挟んで来るのに頷き、


「同道出来るかどうかは前衛部隊が残存出来ればの話だ」


ミノリの顔が険しくなる。

前衛艦隊の指揮官が命じて来た事の意味を悟り。


「それでは艦長はあの部隊が全滅するとでも?」


敵からの攻撃に備えてでもいるのか、輪形陣を強固に備える部隊を指差したレナに。


「指揮官はそう捉えているようだがな。

 現れた敵の実力が自分達には抗し難いと考えての決断なのだろう」


<薩摩>に別行動をさせるという事は、

現れた敵がどちらを向くのかの確認も含めての事なのだろう。


前衛艦隊の壊滅を目論むのか。

それとも、最初の計画通りに<薩摩>単艦を狙うのか。


同じ場所に固まればどちらにせよ双方に被害が及ぶ・・・との判断だろう。


「いずれにせよ・・・戦闘は回避出来ない。

 各員に告げろ、対空戦闘配備に着け!

 魔砲師隊発艦準備となせ!!」


ミノリは敵がこちらを襲うかもしれないと踏んで、戦闘準備に執りかかった。


((ブブゥーウッ!!))


警報が格納庫に響き渡る。

30分の休息の内に急ぎ準備を整えていた整備班が一斉に受け持ち魔砲師の元へと駆け寄る。


「整備長!出撃可能魔砲師は13名中6名だけです!

 残りは魔法力の回復が間に合いません!」


掌整備長が出撃準備を整えて報じる。


「うむ、仕方がない。残った者の魔力回復を急げ!」


飛行甲板に居る6名以外は先の戦闘で少なからず消耗していた。

魔法力が戦闘に耐えれない程低下している者には、

魔法靴である<翔飛>を履いて空を飛ぶだけでも危険が伴う。

戦闘中に魔力が切れれば、即刻墜落していく事になるのだから。


「せやなぁー、6名だけでは味方の援護にもならへんわな」


味方の少なさに嘆くホマレとは対照的に、ミハルは気に病むでもなく言う。


「ホーさん、私だけでも良いでしょ?

 二人で何とかしなきゃいけないんだったら・・・やってみるしかないでしょ?」


お気軽そうなミハルに驚いたホマレが声を荒げて聞き返す。


「なにを呑気な事をいうとるんや?

 敵艦隊はまだ8隻も空中戦艦を残しとるんやで?

 確かに半分も撃沈されてしまえば後退するやろーけど・・・

 こっちも味方艦隊が来んかったらやばかったんやで?

 そんな敵が味方に襲い掛かるかも知れへんのや、

 たった二人の魔砲師で対処出来る訳が・・・」


そこまで一気に捲し上げたホマレの眼にミハルの微笑みが映り、黙らせてしまった。


「ホーさん、あのね。

 今現れたの、敵の中に強い力を持つ者が。

 その手強い者はきっと私を狙って来る・・・私に宿った女神を討つ為に。

 デサイアさんを狙って現われたと思うんだ・・・」


ミハルの微笑みがホマレには辛かった。

どうして少数でも良いと言ったのか。

なぜ自分と二人だけでも良いと言ったのか。


ミハルの微笑みには陰りがあると、ホマレは即座に見抜いていた。


「ミハル。

 アンタまさか・・・独りでその強敵ちゅぅー奴と闘おうとしてるんちゃうやろな?

 ウチに骨を拾わせる気やないやろーな?」


ホマレはミハルの顔に浮かんでいる微笑みの後ろにある悲し気な貌に気付いていた。


「そないな事誰がすんねんな!

 ウチはもう前みたいな事はごめんやで!

 大高の野郎が停めようがミノリ姉さんが引き留めても。

 今度ばかりはミハルの傍にいるんや!助けが必要になったら助ける!

 絶対に離れへんからな!ミハル!!」


がっしりと肩を掴んだホマレに告げられたミハルの眼から微笑みが消える。


「なぜ・・・私なんかと?

 私の中に居るデサイアさんを護る為?それが人の未来の為だから?」


いつもとは違う口調でホマレに訊ねるミハルに、


「何言うとるんやミハル!

 未来がどうとか、女神が必要やとか。

 そんなもん関係あらへんのやっ!

 ウチはミハルが大事なんや、とってもとーっても、大好きなんや!

 その大切なモンを護るのが、なんの問題があるっちゅーんや?!」


ミハルの肩を掴んで、真っ直ぐな答えを返して来るホマレ。

一瞬右目が赤く染まった・・・ミハルの。

その眼が閉じられ、再び開くと。


「よくぞ言った娘よ!そなたの心意気、確かに受け取ったぞ!

 我が憑代もこれで納得するであろう、そなたと伴に闘う事に」


女神デサイアがミハルを制して言葉に換えた。


「憑代ミハルはそなたを巻き込む事を嫌っておってなぁ。

 しかし、憑代だけでは勝てぬ事は間違いない。

 そこでそなたに頼みがあるのだ、ホマホマよ。

 ミハルをそなたの手で護ってくれぬか?」


訳が解らなかった。

神を殲滅する女神たるデサイアが口にした意味が。

なぜ人たる自分の力で神を宿したものを助けられるというのかが。


「なぜアンタはそないな事を言うんや?

 アンタがミハルの身体を使って闘うんやろ?

 ウチなんかの助けなんか必要ないんやないのんか?」


デサイアが闘うのなら、足手纏いになるだけなのではと思ったのだが。


「いいや、今回は最後の最後まで私自身で闘う事はしない。

 なぜなら、ミハルに目覚めの時が近づいているからだ。

 戦いの中で目覚めんとしているのだ、箱の中から・・・」


益々訳が判らなくなる。

この女神は何を言いたいというのか?


「ミハルが目覚めるやて?

 何にやねんな、それの意味するんわ?」


「<希望>に・・・だ」


ホマレの質問に一言で応えた。

ミハルの肩を掴んでいるホマレに。

それがどういう事なのかは教えてはいないのだが。


「ミハルが<希望>に目覚めれば、私は束縛から解放されるだろう。

 その時が近づいているという事だ、解ったか?」


解らない。

そう言い返そうとしたホマレの眼にはミハルの眼が蒼く戻ったのが映る。


「ミハル・・・どういうこっちゃねん?」


女神モードが自然と解除された事にも、デサイアが告げた事の意味も訳が解らなかった。


「えっ?!どういう事って訊かれても・・・さっぱり?」


ミハル自身も訊いてみたいと思っていたようなのだが。

ホマレに訊かれて思い出したように口に出したのは。


「デサイアさんに魔鋼機械から同化を解除して貰った時から・・・

 何かが変わり始めているみたいなんだ。

 私が教えた闇の力を受け取ってから・・・

 デサイアさんは私に何かを求めるようになったんだよ」


<薩摩>の魔鋼機械に同化して抜け出せなくなった時に、助けて貰った。

自分にあるルシファーから授かった闇の力を使ってから、

デサイアは何かを求めるようになった。

それが<希望>なのかどうかは知らないが、ミハルを乗っ取って戦おうとはしなくなっているようだった。


「それに・・・さっき見たゴリアテからの光弾と赤黒い光。

 あれはね、私を一度殺した時に現れた<あの>と同じ輝きを放っていたの。

 あの<殲滅の女神>だと告げた・・・ミハリューっていう神の輝きだったの」


ホマレに向かって思い出す様に言ったミハルが彼方に眼を向ける。


「なっ・・・なんやて?

 あの女神が・・・戻って来やがったんか?!」


一度は撃退したが、それはデサイアの力によってであって、

魔砲師ミハルの力ではない事を教えられていたホマレが顔を引き攣らせる。


「そう・・・今度は。

 今度こそ、勝負を着けに来たんだよ・・・ミハリューが」


視線の先にあるゴリアテから、女神ミハリューの笑い声がしたような気がした。


「そんな・・・あの無慈悲な女神が?

 人を滅ぼす女神が本気で掛かってくるんか?」


神の力を知るホマレには、それがどういう事なのかが漸く解った。


「その戦いでミハルは覚醒出来るんか?

 いや、その前に生き残れるんか?神と闘ぉうて・・・」


ミハルの肩から手を放し、ホマレは眼が眩むような思いになる。


「でも。戦わなければいけないんだホーさん。

 それが私の運命さだめだというのなら・・・」


ミハルはホマレに背を向けて覚悟を教えた。




海上の艦隊に警報が鳴る。

頭上に現れた人影らしき物に対して。


モニターに映るのは、人影から出ている巨大な魔力を示す値。

人影だというのに、まるで超巨大な物質を現わすかのような力を示す画像。


「現れたようだね、これからが本当の戦だよ。

 皆さん、敵が独りだけだと油断しちゃ駄目だからね?!」


ゆっくり降りてくる人影がやがてはっきりと映し出される様になる。


画面の中に映し出されてくるのは・・・


「あのが?

 あの目は確かに・・・純然たる女神。

 しかも・・・呪われし女神、人を駆逐する為に降りて来た死神!」


薄青い髪を掻き揚げて、祓狗を宿らせた司令官 仁科にしな偉子よりこが見詰める先には。


黒く澱んだ女神の魔法衣を纏ったミハリューが睨んでいた。

挿絵(By みてみん)




進み出てきた人影は殲滅の女神ミハリューだった。


手にするのはデバイス剣。

グランを斬った殲滅の女神ミハリューの力の表れ・・・


次回 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part5

人類消滅まで ・・・ アト 59 日

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