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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part1

神軍が<薩摩>に攻撃を行っている時。


神の神殿ではミハリューが、リーンとグランを見下していた・・・


挿絵(By みてみん)

加純様よりありがたいFAを頂きました。

<<ものカッコいいミハリュー様>>です。

すげぇ・・・

デバイスロッドから紅き光が消える。


魔力の両刀剣が手の中で消えた。


瞳に映るのは横たわったままのバリフィス・・・

審判を下す女神バリフィスの姿。




「もう・・・これで・・・あなたの目覚めを妨げる者はいなくなったのよ。

 あなたを守護していた者はいなくなったのよ・・・バリフィス」


半ば虚ろな瞳を向けてミハリューがリーンに呟く。


「あなたが言う事を聞いてくれなかったから・・・

 私は消滅させたくもなかったグランを消してしまった。

 あなたが起きてくれなかったから・・・」



神の神殿の中、殲滅の女神ミハリューは見下ろしていた。

裁きの女神であるリーン・・・神名バリフィスの寝顔を。


「あなたが人間の味方をするなんて愚かな考えを持ったから。

 私は消さなくても良い魂を葬ってしまった。

 グランを・・・友達になってくれそうな魂を消してしまったのよ・・・」


見下ろす瞳には、恨みにも似た光が灯っている。


「さぁ・・・眼を開けるのよバリフィス!

 あなたをユピテルの元へ連れて行くから。

 全能の神ユピテルに渡すが良い、人の業を記した記憶を。

 人間ひとたる者がどれ程の罪を犯しているのかを!

 それが審判を下す神の使命だと思い出すがいいのよ!」


憎しみにも似た声をあげるミハリューの前で・・・

リーンの眼が薄く開き始めた。




挿絵(By みてみん)



_______________







それは最期のときを迎えた瞬間だった。

男はリーンの腕に抱かれて呟いた。


「リーン様、私は消えるでしょう。

 しかし、御守りする役目は残していけそうです。

 殲滅の女神ミハリューによって・・・」


ミハリューの剣に魂を斬られて消えて行くグランを抱きしめるリーンに、

消え去りつつあるグランが教えるのは。


「私の居た証をミハリューが覚えている限り、リーン様を護ることでしょう。

 人を滅ぼす事は出来ないでしょう。

 なぜなら・・・今彼女の中に芽生えたから。

 友になってくれそうな者を喪う事の辛さが芽生えたから。

 誰かを喪う事の無意味さが判り始めたから・・・」


殲滅するだけの女神の中に微かに芽生え始めた心がある事を。


「これが始まりなのです。

 私が消える事で、彼女は初めて失う事の無意味さに気付くのです。

 殲滅する事の虚しさと悲しみを・・・

 だからリーン様を喪わせはしないでしょう。

 殲滅の女神は私が倒したのです・・・」


リーンを見上げてグランが笑った。

消えて行くグランにリーンは頷く。


「そうね、グラン。あなたの言う通り・・・

 この娘はもう、殲滅だけを求める女神ではなくなった。

 友を喪う事の無意味さ、虚しさを知る人の心を持った。

 一番大切な心を宿し始める事が、あなたによって齎されたの。

 ありがとう・・・グラン」


感謝を告げるリーンの腕の中でグランは微笑む。


「リーン様・・・最期に一つだけお願いがあるのです。

 あなたを御守りする者が居る事を・・・お慕いしている者が居る事を。

 憶えておいて欲しいのです。

 ミハルは必ずここへ現れ、リーン様を助けるという事を・・・」


消えるグランが最後に言い残した。


リーンはグランの言葉を胸に刻み込む為にも、

消えてしまったグランを抱きしめる為にも・・・


「ええグラン、解っているから。

 ミハルは私を求めて此処へ来てくれる。

 私がどんな姿になろうとも・・・助けに来てくれる。

 信じ続けているから・・・忘れはしないから」


呟きながらミハリューの前で、崩れ落ちていった。






_________________






虚ろな瞳を自分に向ける金髪の乙女。

身体の中に閉じこもって目覚めなかった者が眼を開けた。


「漸くお目覚めねバリフィス。

 これで私の役目の半分が終えられた事になる。

 後は人間共を駆逐するだけ・・・まぁ、それも意味が無くなったけどね」


殲滅を司る女神ミハリューの前で起き上がった審判バリフィス神。

唯呆然と起き上がるバリフィスを観て、ミハリューが気付いた。


「あら、バリフィス。

 まだ心を閉ざして抵抗する気なの?

 あなたを護っていた・・・あれ?誰だったっけ?」


金髪の女神に守護者の名を告げようとしたミハリューが口籠る。


「確か・・・えっとぉ・・・」


記憶に留められていなかったのか。

それともワザと忘れたふりをしているのか・・・


「・・・グラン・・・」


審判の女神が呟いた。

ミハリューに教えたという訳でもないだろうが、か細い声で呟いた名がミハリューに聞こえた。


「うん?グラン・・・そうそう!

 そーいう名だったわね・・・えっ?!」


ミハリューは自分が語った名に、何かを思い出すかのように疑問符を掲げる。


「グラン・・・そう。

 そうよ・・・グランって名だった。

 あなたを護りし者の名は・・・グラン!

 私の遊び相手・・・違うっ、違う違うっ!!」


何かを思い出したのか。

急に苦しみだしたミハリューが頭を抱えて叫ぶ。


「違う・・・遊び相手だった訳じゃない!

 彼はバリフィスを護る為に私と闘った・・・私の邪魔をした。

 邪魔な男だった・・・筈なのに・・・」


頭を抱えて蹲るミハリューが、思い出そうと必死に審判の女神に訊いた。


「ねぇバリフィス!

 あなたなら覚えている筈よね、私がグランと闘っていた事を。

 私に抗って闘っていた男の事を!」


呆然と立ち尽くしている金髪の女神に記憶を取り戻そうと縋ったが、

審判の女神は答えてはくれなかった。


「どうして?!何故教えてくれないのよ!

 グランはあなたを護る為に最期を迎えたんでしょ・・・!」


思い出した・・・口から出た自分の言葉で。


「あ・・・あ・・・ああっ?!

 私・・・私が・・・グランを消しちゃったんだ・・・

 殲滅の女神ミハリューが・・・あの男を魂ごと消し去っちゃったんだ」


顔を手で覆い、指の隙間から記憶をたどる様に見詰める・・・バリフィスを。


「ああ・・・あああっ、バリフィスゥッ!

 なぜ・・・どうして?!

 どうして止めてくれなかったの?!どうして私を停めなかったのよ!

 あの剣士グランを私に消させてしまったのよぉっ?!」


絶叫するミハリューの前に居る審判の女神バリフィスは、何も答えはしない。

唯、泣き叫ぶ殲滅の女神ミハリューを見下ろすでもなく立ち尽くしているだけだった。


「私は・・・私はなんて愚かな事をしてしまったの?!

 折角仲間にしようと思っていた剣士を、消し去るなんて。

 あれ程の剣士なんて神々の中にもそうは居ないというのに!

 私と互角に戦える男なんて会った事もなかったのに!

 ・・・友達になってくれそうなひとだったのに・・・」


恋心にも似た感情を持っていた事に気付いた。

もし、同じ能力を持っていたのなら・・・

彼には太刀打ち出来てなかった事にも気付いていた。


「グラン・・・どうして?

 グランは何故バリフィスの使徒になっちゃったの?

 私の友達になってさえくれれば・・・消し去らなくても良かった筈なのに・・・」


口惜くやしさと悲しみが心に芽生えた。

殲滅を司った女神の中に。

感情を持たず、唯人を滅ぼす為に生み出された女神の中に。


金髪の女神バリフィスの前で、殲滅の女神ミハリューは変わり始めていた。

リーンを呼び覚ましたミハリュー!


遂に殲滅の女神によって審判の女神と化すのか?

それともリーンのままで居られるのか?

現れたユピテルの判断は?!

ミハリューはグランの図ったとおりリーンを護るのだろうか?


次回 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part2

君は新たな芽生えを感じ始める・・・光を感じて

人類消滅まで ・・・ アト 62 日

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