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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep5 ジェットランド沖海戦 Part7

空が歪む。


必殺の一撃が双方から放たれる・・・相手を討破らんとして。

空中に浮かぶ双方の魔砲が唸りをあげる。


直線状に列を造り、連結させた破壊波を繰り出すゴリアテ改級戦艦。


方やリヴァイアサンの牙砲とミハルの魔砲を合体させた一撃を放つ<薩摩>・・・


両者は勝利の為、全てをこの一瞬に賭けていた。




槍先から魔砲の力が奔出する。


最大魔砲力を放つミハルに併せて、リヴァイアサンが吠えた。


いや、噴き出したと言った方がいいかも知れない。

リヴァイアサンはミハルに言われた通り、

パルス波を収束させる為に破壊波動を一気に噴き出す。

一塊に超音波を収束させる・・・まるで砲弾のように。


神軍の破壊波動が伸び来る前に、<薩摩>の魔砲口に蒼き光が集まる。

開かれた発射口に光が集い、強烈な閃光を放ち始める。


槍先から放たれた魔砲の力がリヴァイアサンの放った音波と合わさり、

圧縮された一塊の波動と化した。



「リィ君!これが私の全力魔砲力だよ!

 これがあなたと私の力の集大成!

 放て!光を!

 放て!仇名す者を撃破るためにっ!!


  ブレイカー・シュートォッ!!」


突き出された槍から光の弾が放たれた。

蒼き魔砲の光弾ゴッドイーターが・・・


挿絵(By みてみん)






司令コンピューターが発射を命じ、破壊波動が放たれた瞬間。

間違いなく<殲滅>を確信した・・・敵を。


6隻から繰り出された破壊波動は一直線に<薩摩>を捉えた筈だった。


「「あれは・・・なんの光なのだ?」」


モニターに映る<薩摩>から放たれた光に疑問符がつく。


モニターに映るのと同時に警告音が流れ出す。


「「強力な波動をキャッチ!危険危険・・・あれは海神の超音波ナリ!」」


機械に感情があったのなら、きっと動揺していたであろう。


「「なぜ、我が主達と同じ神の力を敵が保有しているのか?」」


動揺は疑念を呼び覚ます。

光の訳に、コンピューターは放ってしまった破壊波動の行く先に神が存在するのではと、情報を求める。


「「彼の敵には神が存在するのか?

  我が主に因ればバグの存在しか教えられてはいなかったのだぞ?」」


動揺は疑念を呼び、疑念は失望を呼ぶ。


「「敵に神が存在するのであれば、この戦法は間違いであった。

  海神の力が宿った敵艦にわざわざ一番の弱点を晒した事になった・・・」」


コンピューターは計算ミスを犯した事を自認する。


「「されど。今は6隻全力の破壊波動・・・よもや撃ち負ける筈はない」」


しかし、これ程の破壊波を撃破れる訳が無いと計算を繰り返した。


光点の集まり具合から判断し、破壊波を撃破れるか。

また、6隻全てを撃沈出来るかを・・・計算し直し、

導きだしたアンサーは?


「「僅か・・・万に一つ・・・いや。

  100万分の一の確率で・・・人間に狙える訳が無いが。

  一か所だけ我ら艦隊を全滅させれるポイントがある・・・」」


コンピューターは何隻かが破壊されても、残された艦でとどめを刺そうと判断した。


「「これは始めから計算内の事である。

  喩え隻が破壊されても、残った本艦が敵にとどめの一撃が撃てればいいのだ。

  海神の音波砲が再度放たれる前に・・・だ!」」


またもやコンピューターは相手が人間であると信じて計算しなおしてしまった。


「「人間に100万分の一が射貫ける筈が無いのだから」」



計算に頼り過ぎた者が一度狂わされてしまうと、修正をつけるのは並大抵の事ではないのか?






6隻の破壊波動が<薩摩>に迫る。


<薩摩>から放たれた蒼い魔砲の塊が、破壊波動の先端部分に突き立った。



霧状に伸び来たった破壊波動は蒼き弾に食い破られる。


波動が集中点を砕かれると、蒼き弾の圧力に負けて元来た方へと伸び始める。


最終破壊波動が壊れ、蒼き弾によって押し戻されていく。

発射した巨大な円環へと・・・


最前方のゴリアテ改級の円環が内圧により各部で爆発が発生し始める。

破壊波動を繰り出していた円環自体が破壊され、

その破壊波を受けた内部へと被害が拡がり始めた。


一隻目は脆くも一瞬で撃破されてしまう。



「いっけぇーっ!」


リヴァイアサンの叫びが後押しするかのように蒼き弾は勢いを失わずに次の目標へと突き進む。


2隻目、3隻目と次々に円環が破壊されて撃破されていく。


「後3隻・・・巧くいくのかな?」


自分が放った魔砲の威力に驚きも感動もせず、ミハルは祈っていた。


ーどうか・・・このまま全ての敵を撃ち祓って・・・


全力を出し切ったミハルの右手にある魔法石が、半ば輝きを失いそうになっていた。


ーこれ以上・・・もう一度なんて撃てない・・・魔力が尽きちゃったから・・・


魂だけの今、魔法力が尽きかけている自分に残された時が少ないのを悟っていた。


「ミハル?身体が・・・消えそうになってるよ?」


今迄はしゃいでいたリヴァイアサンもミハルの変化に気付いて声を掛けてきた。


「もう、やるだけやったんだし。

 体に戻った方がいいよ?闇の力を使える内に・・・ね?」


心配げにミハルに勧めるリィ君の背中で、ミハルは槍を片手に膝を着く。


「ほらっ!僕の事より自分の事を心配しないと!

 魔力が尽きたら戻れなくなっちゃうよ?!」


心配したリィ君が早く戻る様に促して来るのだったが。


「でも・・・まだ結果が・・・」


勧めを躊躇したミハルの身体をたてがみが包み込む。


「そこまで言うのだったら・・・僕がミハルを失わないように護るよ。

 だってミハルは僕の名前を探してくれる筈でしょ?」


魔力を身体から失わせないようにか。

それともミハルの魂を闇に貶めない為か・・・

リヴァイアサンは己が魂で、ミハルを包み込んだ。


「馬鹿っ、そんな事をしたらリィ君まで機械に閉じ込められちゃうよ!」


ミハルが包まれながら抗ったのだが、

半ば力を失った魂では包み込まれた状態から出る事は出来ない。


「あーっ、諦めちゃったら駄目なんでしょ?

 きっと元の身体に還るんでしょ?

 だったら僕に任せてよ、きっと魔法力が尽きてもあの神様が助け出してくれるよ!」


リィ君は一体誰の事を言ったのか?

どの神様が救ってくれると思っているのか?


「リィ君・・・私を庇ってくれてありがとう・・・

 でもね、ここから出るには闇の力が必要なの。

 神様には出来っこないんだよ?

 どうして神様が救えるというの?」


ミハルにもその事が解っているようだった。

だからこそ自分がリィ君だけは救おうとしていた事にも気付かれていたのかと思ってしまった。

鬣に包まれた状態ではリィ君だけを救う事が出来なくなっている状態で。


「ミハル!

 僕だけを救おうとしてたんでしょ?

 そんなの嫌だからね。僕だけを救っただけでは駄目なんだよ?

 だって約束したじゃないか、僕達は!」


リヴァイアサンの鬣に包まれたミハルの前に少年の影が現れる。


「リィ・・・君?!あなたが本当のリィ君なの?」


影に呼びかけたミハルの前に金髪の少年が現れる・・・


「そう・・・僕がミハルにリィ君と名付けて貰った者。

 この身体に宿らされた・・・時間を超えて来た者なんだよ?」


現れた少年の顔にミハルは声を呑んだ。


「・・・?!」


自分の元に現れてはいけない筈のその顔に・・・

ミハルの前に姿を現したのは?


目の前に居るのは、この場所に居てはいけない人の顔だった。


ミハルはその笑顔に手を伸ばすのだったが・・・


次回 終わる世界 Ep5 ジェットランド沖海戦 Part8

君はどうしても信じられなかった・・・そう、それが正解だ!

人類消滅まで ・・・ アト 72日

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