魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep2伝説の魔女と皇女Act1おおっ!一階級特進だっ!
アラカンで苦戦した小隊に閑日が訪れた。
久しぶりにゆっくりと体を休めている小隊員達。
そんな小隊に珍しい客がやって来る。
今Ep2は、ほのぼのしてくださいっ!
ほんわかしてくださいっ!
<双璧の魔女>の伝説が、剣と魔法の物語が語られて行きますっ!
でわ、どーぞっ!
参謀肩章を着けた者達が集っていた。
「これにて橋頭堡を確保した事と為り、エレニア東部への道が開けました。
我が第1軍は戦車1個師団を持って侵攻を開始しました。」
メガネを掛けた少佐参謀が説明を終えて座る。
ここは中央軍司令部。
参謀長を前に、エレニア攻略作戦の計画が発動した事による打ち合わせが行われていた。
「敵の防衛部隊の勢力は?」
参謀肩章を吊った中佐参謀が情報参謀へ問う。
「敵2個師団が市街地で駐留中です。
戦車200両程と思われます。他に歩兵の人員は約2万名程かと・・・」
情報参謀は手にした報告欄からのデータを読み上げる。
「それでは我が軍より勢力が大きいではないか。
こちらの第1軍は1個師団180両。
それも補給が満たされた時だ、実際は150両にも満たんのだぞ」
中佐参謀が机を叩いて怒鳴る。
「中佐。それは我が方に魔鋼騎が無い場合であろう。
一両の魔鋼騎で敵10両以上は撃破出来よう」
メガネを掛け直しながら一番奥の参謀長が中佐参謀に言い放った。
「閣下。ですが数が全てでありますから。
いくら魔鋼騎とて、数が少なければ話になりません」
中佐が反発したが、参謀長はニヤリと笑う。
「データは揃ってる。
魔鋼騎一両で16両も撃破した中戦車が居るぞ。しかも、重戦車も含めてな」
「重戦車も含めて16両!?誰なのです、その撃破王は?」
中佐参謀が訊くと参謀長ヘスラーは口を歪めて笑った。
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「気をつけっ!敬礼!」
古城の基地に一両の大型車が止まり、中から一人の大尉参謀が金髪を靡かせて降車する。
「久しぶりだな、此処へ来るのも」
その人はマクドナード軍曹と整備班が敬礼する中を答礼をかえしながら指揮官室へ向う。
ユーリ・フェアリアル大尉は古城の旗場に翻るフェアリア国旗、
青地に双頭の獅子の旗を見上げて呟いた。
程よい湯加減が身体を休める。
「ふわぁ、今日も整備、整備で休む暇もねえっ。」
キャミーが湯船でぼやく。
「何言ってんだ、キャミーお前はいいなぁ無線機なんだから。
私は毎日毎日オイルに塗れ、重いキャタピラを持ってだな・・・」
キャミーとラミルがお互いの配置における苦労話を言い合っている横では。
「ミハル先輩。傷の具合はどうです。まだ痛みますか?」
心配顔をしたミリアが湯船の中を近付いて来る。
「うん。まだ少しだけ。でも、大分良くなったから」
左腕を上げて肩の傷の具合をミリアに見せるミハルに近寄り。
「本当ですかぁ?もっと良く見せてくださいよぉ」
下心一杯のミリアが指をワキワキさせながら眼を輝かせる。
そんな事なぞ気に掛けていない無防備なミハルに。
「にゅふふっ、セーンパーイッ!」
思いっきり抱き着こうと飛び付くミリア。
((バコッ!))
リーンが風呂桶でアッサリ撃破する。
「何を血迷っているの?ミリアは」
ミハルは横に浮かんだミリアを見て、キョトンとしている。
「あははっ、軽戦車一両撃破ですね少尉」
キャミーがそれを見て笑った。
「全く。身の程知らずな奴だな、ミリアって奴は・・・」
ラミルも呆れ顔で笑う。
「はあ。ミリアのミハル好きも、大概にしなさいよ」
リーンが額を押えて呆れる。
「ほえ?どうかしたのですか?」
何も知らないミハルが3人にポワンとした顔で振り向く。
「ミハルぅ。基地に帰ってから少しぼーっとし過ぎじゃない?」
リーンが少し心配そうに訊きながらミハルの横に座る。
「そ、そうですか?・・・そうなのかな」
ミハルはリーンの心配に小首を傾げる。
「まあまあ、少尉。少しくらいいいじゃないですか。疲れが溜まってたんでしょう」
ラミルが気を使ってミハルを庇う。
「でもまあ、前みたいに考え込んで悩んでるって感じじゃないし、暫くほっておいたらどうですか」
キャミーがお気楽にリーンに提案する。
「そうね、マチハの修理にもまだ時間が掛かるし・・・
暫くはそっとして置いてあげようかしら・・・ね?」
リーンはミハルを見て微笑んだ。
「少尉・・・あの」
ミハルがリーンを見て何か言いたそうな顔をしている。
「ん?何?ミハル、何か言いたい事があるの?」
リーンが小首を傾げてミハルが何を言うのか待つと、
「・・・あの、私よりこれ。ほって置いていいんですか?」
ミハルが横で風呂に浮かんだままのミリアを指す。
「うわあっ!ミリアの事忘れてたっ!ちょっと、助けなさいよ!」
リーンが慌てて3人に呼びかけた。
哀れ・・・ミリア・・・
リーン達が搭乗員室へ戻って来ると、そこには。
「ユーリ姉様!何時来られたんですか!」
その人を見た途端に、リーンの表情がぱっと明るくなる。
「よっ、魔鋼騎士殿。久しぶりだな!」
椅子に腰掛けたユーリ大尉が書類から目を上げて気安く挨拶する。
同行していたミハル達は慌てて挙手の礼をする。
「はははっ、そんな格好で敬礼されてもなぁ」
笑いながら答礼するユーリに顔を赤らめたリーンが言い訳する。
「あ。その、今・・・お風呂上りだから・・・ごめんなさい」
リーンが恥ずかしそうに言い繕った。
「はっはっはっ、そうか。仲が良くて結構っ!」
ユーリは5人に対して笑い掛けた。
5人共、顔を赤くして自分達の姿を恥じる。
風呂上りで首にタオルを掛けたまま下着姿のラミル。
長い髪をタオルで巻いてランニング姿のキャミー。
湯船で溺れたミリアに肩を貸すランニング姿のミハル。
その肩で真っ赤な顔をして目を廻しているミリア。
そして長い金髪をタオルで巻き上げランニング姿のリーン。
どう見ても上官に向う姿ではない。
・・・断じて無い。
ユーリはそんな姿の5人に笑いつつ、気軽に話しかける。
「はははっ、リーンは変わったな。
今のリーンは凄く活き活きとしている。
あの泣き虫リーンとは大違いだぞ。はっはっはっ!」
膝を叩いて大笑いされたリーンが。
「ユーリ姉様、ちょっと笑い過ぎです。皆の前で恥ずかしい事言わないで!」
リーンが抗議するのを手で制して。
「はははっ、いや。すまんすまん」
まだ笑いながら手をパタパタ振る。
「本当に変わったな、リーン。安心したよ。
戦場へ出たからどんな風になっているかと心配していたのだがな」
ユーリは笑いを止めて、リーンを見詰めて立ち上がる。
「良く無事で、生きていてくれた。リーン、良かった!」
思いっきりリーンを抱締めて嬉し涙を零す。
「ユーリ姉様。・・・ありがとう」
2人は暫くそのまま抱き合っていたが。
「姉様。此方には何の用で?」
リーンが来訪の理由を訊く。
「ああ。申し渡す事項があってな。リーン達に」
ユーリが机の上にある書類を取ると、傍に控えているミハル達に振り向く。
「お前達全員に、小隊全員に・・・だ」
書類を指でピンと弾いてニヤリと笑う。
「え?小隊全員に・・・ですか。姉様?」
リーンが小首を傾げて訊くと、
「そうだ。お前達第97小隊にだ。おいっ其処のケースを開けてくれないか?」
ユーリは銀髪のラミルに机に置いてあるケースを開ける様に指差す。
「は、はい?!」
ラミルがケースを開けるとその中にあるモノが光る。
「こ、これって。もしかして、武功勲章!?」
ラミルが目を点の様にして固まる。
ケースの中には銀色に輝く双頭の獅子を模った勲章が小隊員全員分入っている。
「姉様っこれをみんなにっ?」
リーンが驚いて姉の顔を見上げる。
「まあ、そうなるな。
撃破16両のトップエースの仲間入りだからな。受け取るといい」
ユーリがリーンの肩を持って微笑む。
「は、はいっ。嬉しいです!」
リーンもユーリに礼を言って微笑む。
キャミーが目を輝かせて、リーンを観ると。
「や、やりましたね。少尉っ!」
リーンに祝辞を言うとユーリが指を横に振ってもう一つ付け加えた。
「違うわよ。リーン中尉って言わなきゃぁ」
「へ?」
キャミーがキョトンとした顔でユーリを見詰める。
「どう言う事なの、お姉様?」
リーンが訳を知りたがる。
「今、あなた達全員に武功勲章を渡した事になるわよね・・・」
ユーリがフンッと胸をそり返す。
「え?はい。そうですけど?」
ラミルが訳が判らないって顔で上官に訊ねる。
「ひえっ!武功勲章ですか?
・・・って事は私達全員一階級昇進したって事になりますぅ!」
突然訳に気付いたミリアが叫ぶ。
「そう。そう言う事。解ったかしらリーン中尉」
ユーリが悪戯っぽくウインクする。
「え、えっと。はい?!」
リーンが突然の事で戸惑っている傍で、悪戯っぽい笑顔のユーリが。
「じゃあ、皆にも配ってあげなさい。・・・そこの君っ!」
ユーリがミハルを指差して呼ぶ。
「は、はいっ!」
ミハルは突然呼ばれて姿勢を正す。
「後で話があります。呼んだら指揮官室に来て頂戴」
一瞬だけ厳しい顔となって要件を告げた。
ドキリとしたミハルがどう答えてよいか迷う内に、
また優しい顔となったユーリが皆に言い放った。
「さあ!車の中に美味しい物を積んで来たわ。皆で昇級祝いをしなさいな」
笑顔でリーン達にお土産が有る事を告げた。
ユーリ大尉とリーン中尉に誘われたミハルが心配するユーリ大尉に訳を訊くと、
<双璧の魔女>の伝説を教えられる。
教科書に載っていない本当の伝説を・・・
次回 これが本当の伝説の始まり?
君は昔話を夢見心地で聞いていた・・・





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