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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep5 ジェットランド沖海戦 Part2

海戦の最中だというのにミハルは砲手としての役割を果せなくなっていた?


何故かといいますと・・・

空中に浮かぶ要塞戦艦が炎に塗れる。


8隻の艦隊に果敢に挑むは唯の一隻。


航宙戦艦<薩摩>唯一隻・・・





「主砲ゲージ魔砲力維持限界まで後5斉射!」


モニターに紅く警告ランプが灯り続けている。

撃ち続けるレナも気が気ではなくなっていた。


確かに普通の魔鋼弾の威力より遥かに凌ぐ破壊力を有してはいるが、

その反動は砲身自体にも影響を与え続けていた。


「ミハル1尉!間も無く臨界点を越えてしまいます!

 こちらからの砲撃指示に関わりなく撃てるだけ撃ってください!」


レナ3尉の声がヘッドフォンから流れ出ていた・・・が。


「ミハル1尉?!復唱はどうしたのです?返事をしてください!」


レナの呼びかけに応じないミハルを不審に思ったミノリが。


「モニターで確認するのだ、急げ!」


砲塔内を映し出すカメラの視点を、砲手席に併せたレナの眼に飛び込んできたものとは。


白い魔法衣に身を包んだミハルがリィ君に肩を揺さぶられていた。

蒼い髪と瞳のまま、デバイス槍に手を添えて。


「どうしたミハル?!何が起きている龍の子?」


状況を把握する為にリィ君に訊ねたが、砲撃音に邪魔されてか龍の子に反応は無かった。


「レナ、砲撃中止!このまま砲撃を続ければ砲身が焼け落ちるぞ?!」


電探射撃の中止を命じられたレナがスイッチを切った。


((ドォウウン))


だが、射撃は停まらない。


「艦長!射撃継続されますっ、砲手側で勝手に撃ち続けています!」


モニターに浮かぶミハルは、

まるで何かに取りつかれたかのように無意識に射撃を行っているように見えた。


「いかんっ、魔砲力が暴走したのか?!

 いや、女神の力が勝手に射撃させているのか?!」


ミハルの顔を大写しにした画面を大急ぎで調べた。


ー  左目も蒼い・・・ならば女神モードではないというのか


魔法衣も魔砲師の形状である事を確認し、女神モードではないと判る。


「レナ!砲塔内のスピーカーを最大にしろっ!

 龍の子に聞こえるように、砲撃音に掻き消されないくらいにだ!」


ボリュームを最大にしてリィ君に気付かせようとミノリが考えた。


「「龍の子!ミハルは一体どうなったというのだ?」」


マイクを執って砲塔内の二人に呼びかけた。





ー  私はみんなを護るんだ!

   このふねを護れなければ神々の元へなんて行けないんだから。

   たった独りで行こうたって無理なんだから・・・


ミハルは砲撃を続ける砲塔内でデバイス槍に力を込めていた。


ー  私の力が敵を撃つ為に必要だとしたら、全力で放ち続けるから。

   みんなを護る為に必要だとすれば全てを与えてもいい。

   この魔砲に・・・超電磁砲スーパーレールガンに!


魔鋼の力で変形した砲身に力を与え続ける内に、ミハルの意識が奪われ始める。


ー  私・・・どれだけ持つかな・・・もう、目の前が白くなってきた。

   女神モードになるのかな?それとも魔力切れで気絶しちゃうのかな?


4斉射めで、早くもミハルの意識は飛んでしまいそうになっていた。


ー  まだ、海戦が始まったばかりなのに・・・

   砲手の役目を果たさなくっちゃいけないのに・・・


もう、モニターに映る敵もゲージさえも判らなくなった。


ー  そう・・・だ。リィ君はどうしちゃうの?

   私が気絶しちゃったら龍の子リィ君はどうなっちゃうの・・・


意識が飛ぶ瞬間、ミハルは最期に呼んだ。


「リィ君・・・ごめんね・・・私・・・もう駄目みたい・・・」


ミハルの頭に載っていた龍の縫いぐるみが異変に気付いたのはこの時だった。


「えっ?!ミハル?ちょっと、どうしちゃったのさ?!」


飛び降りた龍の子が肩を揺さぶった時には、ミハルの意識はどこかへ飛び去っていた。


唯、砲手の務めを未だに果たそうと身体が勝手に射撃を続けて。






「ホマレ分隊士!<薩摩>はやりますねぇ!」


小隊員の喜ぶ声がヘッドフォンから流れてくる。

その声に応えるまでもなく、目の前には2隻の巨大艦がのたうち墜落していく様が観える。


ー  ミハル、やっぱり凄いで。

   アンタの魔砲は世界一なんや!


今の今迄、あれ程世界中から恐れられてきた巨大空中戦艦を唯の一隻で砲撃し、

集中砲火にも負けず、逆に2隻も撃破したミハルを褒め称える。


ー  それにアンタもな、イナリはん!


集中砲火を何とか最小限の損害で切り抜け続ける、

魔法障壁を展開し続けるイナリも褒め讃えた。


そう、数分前の事。

巡航ミサイルが対空砲火を掻い潜って4・5発、魔法障壁に突き当り爆発した。

ホマレは煙に包まれた<薩摩>がどれ程の損害を受けたのかと心配したが、

爆焔が消えた後に現れた<薩摩>に感動したものだった。


ー あれ位の損害で済んだのは、やっぱりイナリが神様の証か。

  いつもヒョウキンな狐様だと笑っていたんやけどな。

  やる時はやるんやな・・・流石やで!


砲撃を続ける母艦に載る二人の神に感謝と尊敬の眼差しを向けて笑う。


「さーてぇ、ほんならウチ等は空戦一本に絞ろうやないか!」


まだ飛んでいる敵小型機を指差し部下に命じ、機銃の弾倉を替えた。





________________





ちょうど、揚弾されるタイミングだった。


「「おいっ!龍の子よ。ミハルに何があった?!」」


ミノリの声がリィ君に届いた。


スピーカーから聞こえたミノリの声に、我に返った縫いぐるみが声のする方に向くと。


「解らないんだ!急にミハルが喋らなくなって。

 気が付いた時にはこんな状態になっちゃったんだよ!」


ミハルの魔力を食べる事で人の言葉を話せるようになっていた縫いぐるみが答える。


「「それで?ミハルはまだ砲撃を続けられているのは何故だ?」」


ミノリの質問に首を振る縫いぐるみは。


「だからっ、解らないと言ってるの!

 このままだと、ミハルが壊れてしまうかもしれないんだ!

 止めて、停めさせてよ!なんとかしてよ!」


ミハルの肩を揺さぶり続けるリィ君が必死に助けを求めてくる。


ミノリは異常なミハルを見詰めて思いついた。


「「しょうがない!こうなったら奥の手を使うまでだ。

  龍の子よ、ミハルの耳元で<神が来た>って叫ぶのだ!」」


ミハルの中にいる女神を呼び出す強硬手段に打って出た。


「ひえっ?!そんな事をすれば・・・うんっ、仕方がないね!」


龍の子もミノリの奥の手を受け入れる。

自我を失っているミハルの耳元に近づいて、思いっきり息を吸ってから。


「ミハルぅ!気が付いてっ。

  <神が来たぁっ>

 女神デサイアさんっ、ミハルを停めて!」


女神を呼び出す合言葉を叫んだ。


自我を失っていても、女神たる娘に届くように。


・・・・・・


リィ君は見詰めている。

ミノリは女神たる者がどう対処するのかを待っている。


・・・・

・・・


左目が赤くなった。


・・


「ねぇ、女神さんでしょ?」


リィ君が恐る恐る訊ねると。


「そうだが?また神など居らんのに呼び出したな?」


ヒクヒク顔を引き攣らせたミハル・・・いや、デサイアが現れた。


「やったぁ!成功したんだ!」


龍の子が喜び勇んでデサイアに飛びつく。


「そなた・・・呼ぶのはいいが。

 ミハルの中へ強制退去させるのは許さんぞ?!

 あれは・・・女神にとって屈辱以外の何物でもない・・・」


((ぴと))


女神モードの魔法衣に替わっているデサイアの胸元に飛びついたリィ君の手が。


「女神様、強制退去されたくなかったらミハルを助けて?」


胸元に縋り付いて見上げながら頼んで来る。


「きっ、貴様っ!リヴァイアサンの分際で女神を愚弄するのか?!

 その手を離さんか!どこに縋り付いているのだ!」


デサイアがリィ君の手を放させようとしたが。


「・・・揉むよ?強制退去させちゃうよ?嫌だったらミハルを助けて!」


縫いぐるみは女神を脅す。


「・・・貴様。この後どうなっても良いというのだな?

 我が憑代ミハルを助けた後、八つ裂きにされても良いのだな?」


ヒクヒク頬を痙攣させた女神が脅しかけるが、リィ君は気にも懸けずに。


「その時はその時さ。

 デサイア様がミハルを助けてくれれば・・・嫌だね」


女神と縫いぐるみが言い合う姿に、ミノリはため息を吐く。


「「どちらでもいいから、ミハルを気付かせてくれ。

  さもないと敵の攻撃でみんな死んじまうぞ?!」」


艦長の声にミツルとレナが含み笑いを浮かべた。


「艦長さんが言ってる通り!デサイアさんはミハルを助けるの!

 急がないと神軍とやらにみんなやられちゃうんだって?

 解りましたか女神デサイア様!」


縫いぐるみが手をワキワキさせて女神に告げた。


「うっ、ううむ。よかろう・・・暫し待て!」



挿絵(By みてみん)



デサイアが内なる処に向けて力を放った。



「おい、ミハル。我が憑代、そなたは何故気を失ったままなのだ?」


身体の中に呼びかけると。


「あっ!デサイアさんっ、どうやら魔鋼機械に私の魔力が食べられちゃってるみたいなの!」


ミハルが涙目で現れる。


女神デサイアが小首を傾げて聞き返す。


「食べられた?喰われたの間違いだろうに!

 それで?

 そなたを気付かせるにはどうすれば良いのだ?」


肩を竦めて聞き返されたミハルが、困ったように教える。


「簡単なんだけど・・・今は無理かもしれないの」


「今は無理・・・なぜ?」


ミハルに向き合うデサイアが、ある事に気付いた。

身体の中だというのにミハルの下半身が消えていた。


「そなた・・・亡霊か?

 魂をも喰われているようだが・・・」


ミハルの身体が半分消えかけている事に気付いたデサイアが、

手を翳して真相を調べると・・・


「なんだ、そういう事か。

 この船の機械に喰われかけていたのだな?」


いとも容易く言いのける。

憑代の魂が喰らわれ掛けているというのに、デサイアはそんな事かと翳す手を降ろした。


「だってぇ、戦闘中なんですから。

 砲撃を辞める訳にもいかないでしょ?」


自分の魂を削ってまでも、仲間を護りたいと願っているミハルにデサイアはため息を吐く。


「それで?そなたは喰われ続けても良いというのか?

 今直ぐこの船の機械を停めれば、それで助かるだろーに?」


少しづつ身体が消えて行くミハルを見据えてニヤリと笑いかけるのだった。



魂を喰う魔鋼機械・・・


この<薩摩>に備えられた機械とは?


闘いは未だ決着を観てはいない・・・


果たしてミハルはこのまま喰われてしまうというのか?




ミハル「損なぁーっ?!」


・・・・な、訳ないだろ?


イナリ「ワシの事も忘れんでくれ・・・」


・・・忘れてました・・・





損な娘として正常運転中?のミハル。


相変わらずの状態に周りの者達だけが慌てていたが。

女神デサイアはミハルの魂に教えていた時、

とんでもない話が巻き起こる??


次回 終わる世界 Ep5 ジェットランド沖海戦 Part3

おおい?!海戦はどうなってるんだぁ?!

 作者も先に進められんぞぉ?!困った困った・・・Orz損な作者

人類消滅まで ・・・アト 77 日?!

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