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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep5 ジェットランド沖海戦 Part1

挿絵(By みてみん)


海と空の狭間で・・・


光と闇の狭間に・・・


人たる者達が抗っていた

 女神だった筈の姿は醜く澱んで観えた。


紅き剣を持つ姿は邪なる者と似ていた。


そう・・・悪鬼の様にも見えるのだった・・・



「観るが良い!

 お前達が待ち望む者の最期を!

 お前達を救うべく歯向かう者の最期を・・・な!」


ミハリューがリーンに向かって嘲笑った。

目の前に出現させたモニターを指差して。


「私の下僕達に因って、ズタズタに引き裂かれて消し飛ぶ様を!」


嘲笑い、蔑むように剣士を見下ろす。


「私達、神の意志に逆らう者は何人たりと赦さない。

 私の手に掛かれば如何なる者とても消滅を免れない・・・

 それが神とても同じ事なのよ!

 いいえ、私のバグとして生まれた娘だろうが同じ事なのよ!」


リーンをも嘲笑うミハリューが、呪われし言霊を吐く。


「どうかな・・・殲滅を名乗る女神よ。

 あの程度の艦隊でミハルを倒せると思っているのなら・・・

 お前は自分の力をも過小評価している事になるんだぞ?」


倒れ込んでいる剣士グランが皮肉に歪んだ顔を向ける。


女神ミハリューの剣で傷ついたグランを庇うリーンも、

モニターに映る戦いを見据えて人たる者の力を想う。


「ミハリュー、あなたは人の力を侮っている。

 人類ひとが神の力を真似る事を忘れているのではなくて?

 敵の力を我が物とする・・・

 技術力をあなた達神は人に授けてしまった事を!」


今迄人の中で過ごした記憶を想い、戦争に使われる力を教える。

実際に闘う者達の戦闘能力よりも、

戦争では後方にいる武器生産者達の闘いの方がより一層厳しいのだと。


相手に因って被った損害を技術でカバーする。

未知なる武器を敵が手にすれば、自らも対抗手段を造る。

そう、敵の技術を真似る事も辞さない。

敵を打ち負かすだけの武器を造る事こそが、

勝利への近道だと歴史も教えているのだから・・・


2人を見据えていたミハリューの顔が更に醜くゆがむ。


「だとしたら、どうだというの?

 神の軍隊に歯向か得られる武器を手に出来ると思う?

 こんな僅かな時間で・・・一年も経たない時間の中で。

 数世紀も先の技術を自らのモノに出来るというの?

 あなた達こそ人間を買い被っているわ!」


ミハリューはこの時忘れていた。

自分達が手にした文明力を人たる者達が作り上げて来た事に。

そして・・・


リーンが首を振って女神ミハリューに教えた。


「あなたはこの世界の矛盾を忘れている。

 この世界を創った者が何故魔法力を人に渡したのかを。

 魔法を使えるようにした・・・その事実を」


魔法・・・この世界に存在している矛盾点。

あってはならないすべを人に授けたのは創造者たる神なのだと。


「?!」


気が付いた・・・闇に染まりし女神が。


「どうやらやっと気が付いたようだな、ミハリュー!

 人に魔法を授けた事の意味が。

 神の軍隊は無敵では無い事に・・・


 そうだよミハリュー、神が本当に試しているのは我々全て。

 神界と人界、どちらが勝つのか・・・戦争ゲームを観ているだけなのだ」


グランが女神を逆に嘲笑う。


「な・・・なんだと?!

 そんな馬鹿な事がある訳が無い!」


ミハリューの自信が揺らぎ始める。

リーンとグランが話す全てが現在の状況に当て嵌まっているから。


「ミハリュー、あなたの力は何故授けられたと思う?

 あなたのバグだというミハルになぜ打ち負かされたの?

 どうして世界は神の想う様にならないというのかを考えた事はあるの?」


軽い眩暈を覚えた。

自分の存在意義なんて、考えた事も無かった。


それにリーンの言った通り、神ならば何故人と闘わねばならないのか。

神ならば人を粛罪するのに戦争など必要ない筈なのに、

何故戦っているのか・・・意味も無い事なのに。


「ユピテルの<槍>なら・・・戦争なんてせずとも唯の一撃で世界を滅ぼせる筈。

 どうしてバリフィスの記憶が・・・観察者の記憶が必要なのか。

 人の中で過ごした者の記憶が必要なのか。

 それがユピテルが持つ<槍>の起動スイッチだとでも言うのか?」


混乱する殲滅の女神ミハリューが後退る。


紅き瞳が戻って来た。

闇に囚われた女神の瞳ではなく、心ある女神の瞳へと。


挿絵(By みてみん)



「私は・・・何故人を殲滅しなければいけない?

 女神バリフィスの記憶をユピテルに差し出せば済む事じゃないの。

 無駄に時間を使うなんて神のする事じゃないわ。

 そうすればあのバグだってイチコロじゃないの・・・」


ミハリューはグランに向き直ると。


「そういう事だったら、あなたを排除してもバリフィスを目覚めさせる。

 早くユピテルに差し出して、無駄な戦いを終えてやるだけよ!」


剣を突き付けた。


「それが人を滅ぼす殲滅の女神ミハリューの務めと言うのなら・・・

 私はもう迷わない、あなたを消し去る事に」


紅き瞳でグランを庇うリーンを見据える。


「バリフィスを庇って闘ってきたあなたに敬意を表すわ。

 グラン、最期にもう一度だけ訊ねるわ。

 私達の仲間に入らない?あなたを消し去りたくはないの・・・解って?!」


降伏を勧告するミハリューにグランは黙って首を振る。


「そうよね・・・あなたほどの剣士が主人に逆らうなんてないものね。

 最期まで・・・立派だわ。

 この手で消し去るのは辛いけど、これがあなたの運命。

 この剣であなたを滅ぼすのが殲滅の女神ミハリューの務めなの。

 ・・・さようなら、グラン」


ミハリューの剣が手元に手繰られ・・・


「グランは消させない!私の友をこれ以上奪わないで!」


リーンがグランを庇い立ち塞がった・・・が。


「邪魔をするのならバリフィスの心ごと斬るまで!」


身体の内なる結界に居るリーンごと、ミハリューは消し去る事も厭わずに剣を突き立てた。


((バシュ))


突き出された・・・剣が切り裂いた。


「ああっ!グランっ!!」


リーンの絶叫が結界の中に響き渡った・・・・








白き魔法衣。


蒼き髪・・・マリンブルーに輝く瞳。


魔砲少女は闘い続ける宿命。


魔砲を放つ戦艦の中で、少女達は決死の思いで闘っている。



仲間を信じ、己が力を使い。

持てる全力を振り絞り闘うのだった。


たった一つの命を滾らせて。




女神ミハリューの下僕たる艦隊は、同じ神が乗る敵へと砲火を放ち続ける。


空に浮かぶ戦艦はあらゆる手で攻め寄せる。

海に浮く寧猛は邪魔する者を排除せんと攻撃を続けた。


空と海を黒き煙で覆わせながら・・・





リーンの願い。

それは人類が何時までも存続できる事・・・

それがミハルと再び逢えるたった一つの方法なのだと想っていた・・・


女神を宿したミハルの闘いはまだ終わりを迎えるには早かった。

仲間と共に戦う魔砲少女の約束はまだ果されてはいなかった・・・


次回 終わる世界 Ep5 ジェットランド沖海戦 Part2

君は魔砲に囚われてしまう・・・あの秘密兵器のように魂を・・・


人類消滅まで ・・・アト 78日!

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