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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep4 神託の御子 Part10

水上では駆逐艦<早蕨>が、空中では魔砲師達が。


そして今、航宙戦艦<薩摩>が砲撃戦を始めようとしていた・・・・


神軍の水上打撃艦隊は支離滅裂な隊形に成らざるを得なくなった。


たった一隻の駆逐艦が艦隊の中まで殴り込んできた為に。



機械だけしか存在しない艦隊の中に潜り込んで来た敵艦に、

コンピューターは攻撃手段を持たなかった。

敵がレーダーに映らないステルス艦だという事は確認した。

敵を捉えるにはモニターに映るモノを攻撃しなければならない。


指揮を執るメインコンピューターは直接狙いを定める方法を選択した。


ミカの乗る駆逐艦<早蕨>にも、敵弾が襲い掛かる。

何発かが至近弾となり、艦体を傷つける。

外板が水圧で破断され、浸水が起きる。


だが、魔法の駆逐艦はたちどころに修理して戦闘を続けるのだった。


「まだよ!まだ終われない!<薩摩>を護り抜くまでは!」


照準器に瞳を着けたまま、ミカが叫んだ。


挿絵(By みてみん)






前方の空の雲行きが怪しくなってくる。


突然低気圧にでも遭遇したというのか?

現れた黒雲の中に何者かの存在が伺われる・・・金属の物体らしき影が。


「敵空中要塞戦艦8隻を確認!大艦隊です!!」


砲術長の元に、電探レーダー室からの報告が入る。


「今の距離は?」


ミノリは落ち着き払って訊き返す。


「距離80キロ!速度20ノット!高度300にて巡航中です!」


振り返ったミツル航海長が即座に答える。


<薩摩>の速力との合算速力は相対スピード50ノット。

直ぐに砲撃可能距離に突入してしまうだろう。


「どうやら、味方前衛部隊と合流するまでに砲撃戦になるだろう。

 本艦だけの攻撃力では太刀打ち出来るかどうか・・・」


モニターに映る黒雲を睨んで、ミノリは覚悟を決める。


「やるしかなさそうだな・・・主砲、超電磁砲スーパーレールガン射撃準備をなせ!」


レナ砲術長に砲雷撃戦の準備を急がせた。


「イナリよ、お前の力が必要だ。

 防御は任せる・・・本艦を護れ!」


宿り神に自分から出て、艦の中枢部にある魔鋼機械へと入る様に命じた。


「コーンッ、その必要があるようじゃのぅ。

 彼奴等きゃつらの攻撃をいつまで持ち堪えられるかは判らんがのぅ」


いつになく真剣な言葉で、狐の神が応えた。


「頼む、私はここで全てを観なければならんから。

 勝利か敗北かだけではなく・・・その真実を・・・な」


身体から狐の神が抜け出て行くのを感じながら、ミノリは前方の敵を見詰めていた。




「リィ君!いよいよ本格的な戦いになるよ。

 もしも私が人事不詳になった時は・・・あなたの考えで動いて。

 最期の最後まで諦めないで・・・いいね?」


女神デサイアがいつの間にか体の中へと戻っていた。

女神の記憶が残っていないミハルは、

艦橋からの指令に従い砲撃準備に掛っていた。


「うん・・・ミハルの言う通りにするから・・・」


なぜか真っ赤な顔になって手を見詰めているリィ君が上の空で答える。


「?どうかしたの?」


縫いぐるみを横目で見ながら訊ねたが、当のリィ君は苦笑いを浮かべて呟くのだった。


「ホマホマたんが教えてくれた通りなんだ。

 女神を追い返すには・・・一番てっとり早い方法なんだ・・・」


自分の掌を見詰めて、ニギニギするリィ君。


「へんなリィ君・・・」


記憶が無いというのは、実に恐ろしいモノです・・・・



「「砲撃準備は整いましたか?」」


レナの声がヘッドフォンから聞こえる。


「只今準備終わりました!

 出力正常、電磁砲射撃態勢に移ります!」


コントロールパネルに表示されている解除ボタンを押し込んで、主砲を魔鋼状態へと導いた。


砲塔から突き出た砲身が蒼き光に包まれて、上下に二分割される。

上下に割れた砲身には、まるで雷のような電気スパークが奔る。


「主砲砲撃用意よし。

 電磁砲発射可能!装弾します!!」


魔砲に鋼弾たまが装填される。


「目標敵空中戦艦ゴリアテ改級、一番先頭の奴から砲撃せよ!」


艦長ミノリの砲撃指示に従い、照準を併せるレナ砲術長。

電探と、光学測距儀を併用して偏差値を計算する。

このまま双方が進むとしての照準点を弾き出す。


「主砲、第一射は砲術長が射撃します。

 電気信号を艦橋へ廻してください、その後は命令に応じて射撃を行います!」


魔法使いたるレナ3尉の腕前を信じるしかないミハルは黙って操作パネルのボタンを押す。

主砲2基4門がレナの照準に因って旋回を始める。

弾を装填した砲身が敵に併せて仰角を擡げる。


「今度の敵は前とは違う・・・そう。

 今度は油断なんてしてくれない。

 ・・・今度こそ本当の勝負を着けに来ているんだ」


モニターに映る黒雲はどんどんこちらに近づいて来る。

群雲の様に連なった雲は、その数8つ。

つまりあの巨大戦艦が8隻も束になって襲い掛かって来たという事。


ミハルは今迄の戦闘が幼稚にも思えてしまった。

これから起きる戦闘こそが、本当の戦争なのだと感じていた。


眼下に見える海上では、<早蕨>と水上艦隊が闘っている。

健闘を続けているミカ達を想い、

どうか最期まで闘い抜いてと願いを込める。


彼女達が闘ってくれている間に空中の艦隊との勝負を決めなければ、

空中と水上から両面攻撃を受ける事になる。

<薩摩>艦上にいる者は、勝敗の行方をおもんばかるのだった・・・




空に浮かぶ黒雲が弾けた。


そう!弾けたのだ。

それが意味する処とは・・・


「敵空中戦艦砲撃開始!

 今の距離40キロっ、こちらの有効射撃範囲外からです!」


逼迫した叫びが艦橋を支配する。


「魔法障壁を展開せよ!

 イナリよ頼むぞ!」


ミノリの発令で、魔法のバリヤーが艦を包み込む。


敵<神軍>の戦艦は砲撃だけではなく。


「敵戦艦巡航ミサイルも発射!」


白煙を曳いてミサイルが飛び来る。


「対空砲火、バルカン砲射撃始め!」


即座に迎撃態勢がかれる。


飛び来た戦艦の砲弾が魔法の壁に防がれて弾き返される。

弾かれた弾が水上に落下して水柱を上げた。


「敵空中戦艦ゴリアテ改級の砲弾は弾ける事が出来たが。

 巡航ミサイルは弾けるか解らないぞ!

 一発も近寄せるな!

 全て叩き墜とせ!」


数十発のミサイルが一度に襲い掛かって来る。

その全てを撃墜出来るかどうか。

今、<薩摩>は史上空前の攻撃を一身に浴びようとしていた。


「・・・これだけの攻撃を受けて、無傷に済ませられるのかどうか。

 譬え無傷に済んでも、これからどうやって戦えばいいのか・・・

 私の魔砲だけでは一隻と刺違えるのがやっと・・・でしょうね」


ミハルは寄せ来る艦隊を睨んでそう考える。


「だけど、諦めたりはしないから。

 だって負けちゃったらリーンを助ける事も出来なくなっちゃうから・・・」


右手の魔法石から蒼き光が沸き立つ。


「これがこの世界で生きる人達の希望を護る戦いだと言うのなら。

 私は勝たなきゃいけないんだ。

 私達は勝たねばならない・・・生きる為に。

 願いを果たす為に・・・

 私の女神・・・リーンを救い出すために!」


デバイス槍を右手で掴んだミハルの魔砲力が放たれる。

魔砲に・・・超電磁砲スーパーレールガンへと。


「臨界点越えます!

 これは?!ミハル1尉の全力なのですね?!

 女神モードでもないというのに・・・凄い!」


砲術長席に座るレナがゲージが振り切れたコンソールメーターに驚く。


「砲術長!何を感心しているのだ。

 砲撃始め!目標敵主力艦隊っ、撃て!」


ミノリが命じる・・・射撃開始を。


「はっ!はいっ!主砲電探射撃始めっ!」


電磁砲が蒼き光を放つ。

ミハルの魔砲力で飛躍的に増大した射程距離を活かして。


「主砲発射っ!撃ちぃー方ぁー始めっ!」


レナの指が射撃ボタンを押し込んだ。




<薩摩>は艦隊との砲撃戦を挑む。


敵戦艦8隻を相手に、孤艦で・・・唯の一隻で。


射撃する砲塔の中で、ミハルの姿が変わって行く。


魔砲師たる姿へと。


魔砲を放つあるべき姿へと。


白い魔法衣に身を包み、睨むのは・・・


「私は負けない。

 必ず乗り切って見せるから・・・必ず勝って見せるから。

 待っててリーン!

 待っててね私の女神様!!」


蒼き両目が敵艦隊を見据えていた・・・・


決意の戦場。


ミハルは自らの想いを込めて闘おうとしている。


魔砲の力と培ってきた砲手の腕で・・・


次回 神託しんたく御子みこ Part11

君は世界の始まりを知る・・・この世界に生きる全ての者を想いつつ・・・

 人類消滅まで ・・・アト 80日!

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