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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep4 神託の御子 Part4

<神軍>の艦隊が出撃の時を迎える。


司令官たる殲滅の女神ミハリューは艦隊を睥睨して確信した。


「今度は確実に勝てる」・・・と。

海上を埋め尽くすかのような大艦隊が進み征く。


荒い波を蹴立てて。


空を圧して飛び征く・・・空の大艦隊が。


豆粒の様にも見える護衛機を伴って・・・・




「あーっはっはっ!どうよコレ。

 これだけの艦隊で向かうのよ、負ける筈がないじゃないの!」


モニターを観て、満面の笑みを零す女神ミハリュー。

自信たっぷりな表情で艦隊を観て笑い続ける。


「たった一隻のふねには勿体ないけど。

 私は完璧を期すタイプなのよねぇ~っ、あははっ!」


腰に手を当てて、ひと笑いしてから思い出したかのように下僕に告げた。


「いいわね?!あなた達の成功の報告だけしか受けないから。

 私はまたあの男と遊んでくるから・・・撃滅したら報告しなさいよ?」


モニターに向かって命じたのだが、返信を聴いてムッとした表情となる。


「なんですって?

 第1艦隊は急遽進撃を取りやめる事になっただと?!

 誰に断って勝手な真似をするのよ!」


マシン語がその訳を伝えると、ミハリューの顔が真っ赤になる。


「あんの野郎っ!ふざけた真似をっ!

 糞親爺ユピテルめぇっ!私の艦隊を勝手に温存するなんて!

 第1艦隊を抜かれたら戦力の半分もが無くなった事になるじゃないのぉ!」


怒り狂うミハリューがまた神殿を破壊する。


荒れ狂うミハリューに下僕たるコンピューターが宥める。


「フッ!そうね。

 確かにあなたの言う通りだったわ。

 たかが一隻に半分になったとはいえ、これだけの艦隊が向かうんですもの。

 負けやしないわ、絶対勝てる。

 私としたことが冷静さを欠いたわ・・・」


下僕に宥められたミハリューの機嫌が良くなって破壊が停まる。

そして思い出したかのように、軽い足取りで歩きだした。


「じゃあ、あなた達に任せたわよ。

 私はバリフィスの処であの男と遊んでくるから・・・」


手を振って歩きだしたミハリューの姿が闇の中へと消えて行った。






剣を抜き放った男が言った。


「何度来ようが渡す訳にはいかん。

 我が君の目覚めは叶わぬと思え、女神ミハリュー!」


後ろに佇む白き女神を庇う様に前へと進み剣を突き出す。


「そう?それなら私を屈服させる事ね。

 それが出来ないのなら諦めておしまいなさいよ。

 使徒グラン、あなたと遊ぶのはもう飽きたのよね!」


見下すようにミハリューが笑う。


グランは後ろに居るリーンを振り返り、悲し気な表情の主を見詰めた。

力の差は今迄交えた剣戟けんげきで、嫌という程解っている。

この女神は自分との闘いを遊び半分でこなしているのだと。


今、ミハリューが言った通りならば、今回で決着を決めてくる。

もうリーンを護る事も抗う事も最期の一戦となる・・・


ー  眼に写る女神リーンとも別れの時を迎える事になる・・・


グランの脳裏には女神となる前の人間ひとたるリーンの微笑みと、

誓いを交わした娘の笑顔が走馬灯のように流れて行った。


ー  リーン様、ミハル・・・すまない。許してくれ・・・


グランは最期の時が迫った事を悟った。

目の前に居る邪なる女神を見据えて・・・


「貴様にリーン様を渡す訳にはいかない。

 今こそ我が全力をみせてやる!かかってこい!」


グランはリーンの前に立ち塞がり決闘を挑む。

心に秘めた決意を滾らせた瞳に力を込めて。


「グラン・・・そうまでしてバリフィスを護る理由は?

 あなたほどの騎士なら、我々<神軍>の将にもなれるというのに。

 なぜ・・・女神バリフィスを護る?

 なぜ消滅を掛けてまで挑むというの?」


ミハリューが問う。

そこまでして護る理由とは?

我が身を顧みず闘い抗う本当の訳とは?


遊びといいながら、本当はこの男の力を認めていた。

自分がもし女神の力を持たず、同程度の力の持ち主だったとしたら。


ー  これほどの剣士なのに・・・

   私だって心の中では認めているのに。

   グランはこの世でただ一人の好敵手・・・


剣を構えるグランに想った。


ー  私はこの男の事が好きになっているのかもしれない。

   これほどまでにバリフィスに尽くそうとする訳は?

   もし、バリフィスじゃなく・・・

   私を護る為ならこんなに尽くしてくれるかしら?


ジェラシーにも似た感情を抱きつつ、男の答えを待った。


「殲滅の女神と名乗ったなミハリュー。

 その訳は唯一つ。

 ・・・約束を交わしたのだ女神と。

 リーン様と・・・そして使徒たる者だったミハルと」


グランの答えはミハリューの期待していたモノではなかった。

剣を構える男の言葉は更なる疑問を沸き立たせる。


「約束・・・だって?

 そんなモノの為にグランは消滅を掛けてまで護ろうとするの?

 バリフィスとミハルとか云う使徒との約束だけで?」


ミハリューは解らなかった。

グランの言葉にどんな力があるのかを。

<<約束>>の意味も、願いも・・・


「貴様には解るまい。

 人たる者が誓いを共にする・・・その意味が。

 心を通わせ合った者同士が叶える為に力の限りあらが)う・・・願いが!」


((ドキン))


まなじりを決したグランの声に、女神たる娘の心が痛んだ。


ー  グランの言う言葉いみが私の胸に刺さる。

   私には心を通わせ合う者なんて居ない。

   共に誓い合うべき事なんて一つもない・・・


「それが・・・グランがバリフィスを護る訳だというのね?

 あなたが誓い合った者の為に尽くす理由だというんだね・・・」


霞む声でミハリューが確かめた。


「貴様が人を滅ぼすというのなら我の主は抗い続けよう。

 我の誓いを妨げるというのなら、我は闘う・・・約束を果たす時まで!」


答えた剣士の一撃が振り下ろされる。


 ((ギィイインッ))


ミハリューは両刀剣で一撃を受け止める。


「そっか・・・私にないモノをあなたは持っているというのね。

 誓いを交わせる友が・・・グランをこれ程までに強くしたってことなのね?」


剣を払いのけたミハリューが俯く。

口元を歪ませて・・・


「だったら・・・私も欲しい!

 グランの力とグランの想いを!

 私だけのモノにしてみたい!」


挿絵(By みてみん)



剣を振りかざしたミハリューの身体から紅き光が巻き起こる。

殲滅の女神たる娘が本性を曝け出し始める。


「私の姿を観て!

 この醜い女神の姿を!

 これが本当の私、この姿が女神に見える?

 私の姿を観た者はみんな蔑むの!

 <<お前は悪魔だろう>>って!」


黒いマントを靡かせ、赤黒い魔法衣を羽織る娘の姿。

そこに居るのは闇の化身とも思える<殲滅の女神>ミハリューたる娘。


赤黒い髪を靡かせ、グランの前に姿を現した闇に心を貶めた女神の姿があった。



「・・・ミ・・・ハ・・・ル・・・」


対峙する二人の後ろからリーンの声が呼ぶ。


「リーン様?

 ここに居るのは敵たる娘、女神ミハリューですぞ?」


グランがその名を言い間違ったかと思い口を挟んだが。


「グラン、ミハルはきっとここまで来てくれます。

 だから、あなたはここに留まらなくてもいいのよ?

 もう、十分助けてくれたんだから・・・ありがとう」


金色の髪を靡かせる女神の衣装を身に纏ったリーンがお礼を告げた。


「なにを申されます、御主人様。

 我はいつまでもお傍でお護りする所存。

 気弱な事を申されますな・・・」


グランの決意を悟ったかのように話すリーンに、下僕たる従者が痛む心で諫めたが。


「グラン・・・あなたはこの邪なる女神と刺違える気なのね?

 でも、それは叶わないの。

 この戦女神は消滅しない・・・刺違える事は出来ないの」


悲し気に見るリーンに、グランは声を失う。


「解っているのでしょう?

 でも、それでも。

 あなたは私を護る為ならどんな事でもやろうと誓っている。

 私はそんなグランを失いたくはない。

 あのみたいに・・・トアのように喪いたくはないの!」


自分を護る為に闘い果てた、使徒たる娘を思い出したのか。

リーンの頬に涙が流れ落ちて行く。


錫杖を手にし、涙を流すリーンを観たミハリューが言う。


「バリフィスも言ってるじゃない。

 グランはもう私と闘わなくてもいいのよ?

 もう抗わなくていいの、私のモノにおなりなさい。

 そうすればバリフィスにも手荒な事はしないから」


赤黒い瞳でグランを懐柔しようと試みてくるのだが、

当の剣士は即座に首を振り拒絶した。


「譬えリーン様がそう言われたとしても。

 我が友との約束にたがう事になる。

 貴様の軍門に下る事なんて断る!」


敢然と言い放ったグランに、ミハリューは衝撃を受けた。


ー  私の心が解ってくれないの?

   あなたを失いたくはないの、バリフィスと同じように。

   でも、あなたは断ってしまった・・・なぜ?


「あなたが言う友とは誰の事なのよ?

 その友の名は?

 バリフィスが喋った<ミハル>とかいう娘なの?

 そいつを消し去ったのなら話に応じてくれる?」


<グランを消し去りたくはない>

そう考えていらぬことを喋ってしまうミハリューに返されたのは。


「ミハルがお前などに殺される筈がない。

 あのは必ずここまで来る。

 そしてリーン様を救い、人類ひとを救ってくれるだろう!」


到底・・・訊き入れないと告げたに等しい言葉だった。


ミハリューは覚悟を決めた。

両刀剣に力を与えて・・・


「そう・・・これ程言っても。

 だったら、私の剣であなたを消し去ってあげる・・・」


ミハリューの顔から表情が消えた。

殲滅の女神ミハリュー本来の顔になった。


消滅させる事になんの躊躇いも持つ事ない。


<<悪魔のような女神>>本来の姿に・・・


悪魔の如きその姿・・・


ミハリューは女神バリフィスの下僕しもべグランと対峙していた。

悪しき身を呪いながら・・・・


一方ミハル達<薩摩>でも、来るべき決戦を前にして乗員達が不安を募らせていた


次回 終わる世界 Ep4 神託しんたく御子みこ Part5

君達は自分達が置かれた立場に戸惑う・・・いくさを前にして・・・

人類消滅まで ・・・アト 86日

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