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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep3 眼下の敵(リヴァイアサン) Part11

神の結界の中で・・・


ミハルの姿の女神が邪なる者と対峙する。

暗闇の中に結界が張られる。


そこはもう、邪なる者の在処ありか


そこに揺蕩たゆたうのは強大なる闇の力。




「やはり・・・闇に染まっていたか・・・」


女神は結界の中で呟く。


「そなたを闇に染めたのは誰か?

 海の王たる者を闇の者と化したのは誰なのだ?」


暗闇に蠢く者に、蒼き髪の女神が問うた。


「姿を現すが良い。

 私は此処に居るぞ、そなたが欲した力の在処はここにあるぞ!」


右手に持った聖槍を突き出すと、女神はいきなり術を放った。

槍の先から光輪だ飛び出し、周りをその光で照らし出した。


「醜いな・・・闇に堕ちたその姿は。

 海の神とも思えん・・・いや、最早もはや神でもないのか」


挿絵(By みてみん)



照らし出された蠢く者の姿は、邪龍とも云える海の王が闇に堕ちた異形なる者。


「そなたの憑代よりしろだった船は、私の憑代が破壊した。

 もう、人間世界ひとのよでは活動出来まい。

 大人しく私に滅ぼされてしまうがいい!」


巨大なウミヘビにも、ウツボのようにも見て取れる海の王が紅き瞳で女神を睨んだ。


「馬鹿を言え、たかが憑代を失っただけで!

 お前の言いなりになるとでもおもったか、小娘めが!」


怒気を孕んだ瘴気が流れ出る。

邪なる海の王たる海神獣が女神の前に鎌首を擡げる。

その頭から延び出ているたてがみを揺るがせながら。


「貴様が殲滅の女神ミハリューのバグとかいう小娘だな?

 女神の力を宿していい気になっておるようだが。

 それも今、これまでと思え!

 この余に喰らわれて、人間共と運命を共にするがいい!」


蒼髪の女神に向かって、海神獣<リヴァイアサン>の意識が飛んだ。


 ((バシンッ))


邪な意識は、女神の持つ聖槍によって弾き返された。


「そなた・・・何か誤解しておるようだな。

 私がバグだとか言ったが、誰の失敗作だというのだ?

 私の名は戦女神・・・神と名乗る者を滅ぼす<殲滅の女神>デサイア。

 知っておらぬのか、私の事を?」


突き付けられた女神の槍を睨むリヴァイアサンには、

どう答えてよいのか判らなくなる。


「貴様が殲滅の女神を名乗るとは!

 しかも神に敵対するなど笑止千万!

 バグならバグらしく消え去るが良い!

 本物の女神ミハリューが居る限り、神が滅びる事などない!」


リヴァイアサンは女神たる娘に、牙を剥く。


「・・・愚かな。

 私の力を知れば解るだろうが、今はまだ完全体になり切ってはおらぬのでな。

 一撃で葬ってやれぬのが痛恨ではあるのだが・・・

 その邪なる仮初の姿を、撃ち祓ってやろう!」


女神の右目が妖しく光る・・・紅き色で。


「ほざけ!小娘の分際で!!」


リヴァイアサンは女神がミハリューのバグだと思い込んでいる。


「お前を喰らってから女神ミハリューをも味わってやる!

 殲滅の女神を喰らえば、余に勝る者は居なくなるのだ!」


その言葉が海神の欲望を表わしていた。

海神だけでいる事を善しとしないこの邪心が、姿までを醜くしたというのか?


海神獣リヴァイアサンはデサイアと名乗った女神に挑みかかった。

海の中の王だけに留まる事を嫌い、全地上までもその傘下に治めんとして。


「なるほど・・・そなたの欲が闇へと貶めたか。

 ならばその欲望を捨てるが良い。

 私がその<神を名乗る者>を喰らい尽してやろう!」


女神デサイアが聖槍を構えて海神獣リヴァイアサンと対峙する。


邪龍の如き頭を繰り出し、一飲みにしようとするリヴァイアサン。

その動きを軽やかに避けたデサイア。

だが、リヴァイアサンは横目で見て笑う。

避けたデサイアの足に海獣の鬣が絡みついた。


「?!」


声を上げる暇も与えず、鬣がデサイアを絡め獲った。


「くっくっくっ!動けまい娘よ!

 その身体を粉々に砕いてくれる!」


胸から下をぐるぐる巻きにされたデサイアが切り離そうと槍を持ち替える。


「そらそらっ、どうした?!もう終わりか?」


リヴァイアサンの勝ち誇った声が響き渡る。


挿絵(By みてみん)



「絞め殺してやろうか?一飲みに喰らってやろうか?」


余裕を見せるリヴァイアサンの鬣が、デサイアを包み込んでいく。


「余はどうせならば虐振いたぶってから徐々に喰らい尽してやるのが好みだ!」


鬣にくるまれた娘の姿が見えなくなった。


「ふふふっ、口ほどにもない。

 所詮はやはりミハリューが言った通りの、失敗作か・・・」


勝ち誇った邪龍が鬣に包まれた娘に嘲る。


女神デサイアはどうする事も出来ないのだろうか?

リヴァイアサンに喰われてしまうのだろうか?




「娘よ、起きなさい。

 ・・・これから言う事を良く聞きなさい」


誰かに起こされた。

眼を開けるとそこには・・・・


「あなたは?誰?」


ミハルは目の前に居る白いローブを羽織ったひとに訊ねる。


「私はそなたの身体に宿りし女神。

 そなたを憑代に選んだ女神デサイア」


名乗る娘はミハルよりも年上に観える。

金色の髪を靡かせている姿は・・・


「まるでリーンのよう・・・リーンが現れたみたい・・・」


ポカンと見詰めるミハルに、女神デサイアは話しかける。


「そなたに与えられた呪いを解かねばならない。

 そなたを本当の憑代たる者にするには祓わねばならない。

 この海神獣リヴァイアサンを・・・海神ポセイドンの魂を・・・」


自分が呪いを掛けられて生き返った事を思い出す。


「私の呪いが解けるの?

 でも、どうやったら?」


ミハルの問いかけにデサイアが答える。


「目の前に居る海神獣を倒せばよい。

 神を名乗る邪なる者を打ち倒せばよいのだ、小奴の邪気を払えば良いのだ!」


戦女神が白いローブを靡かせて答える。


ミハルはデサイアが見せた結界の中で闘っている相手を見せられ。


「いっ?!ひいぃっ?嘘っ、こんな馬鹿でかい蛇・・・きゅぅっ?!」


爬虫類が苦手で、観た瞬間に卒倒しかける。


「馬鹿者っ、ここは神の領域。

 相手は蛇なんかじゃなく、リヴァイアサン。

 海蛇なんかではない、正真正銘の海獣だ!」


デサイアが慌ててミハルを正気に戻そうとする。


「海獣だか何だか知りませんが、無理ですっ!

 私っ、爬虫類が大の苦手なんです!」


眼を半分廻したミハルが抵抗を試みるが。


「あっそう・・・今自分が置かれている立場が理解出来ていないようね。

 今、あなたはこの海獣の鬣に捻り潰されようとしているのよ?」


デサイアが鬣に包まれている姿を映し出す。

ミハルは呆然と自分の姿を観た・・・口をパクパクさせながら。


「このままほっておいたら。

 間違いなく穢されて、喰われる事になるけど?

 あなたの嫌いな蛇野郎に・・・ね?」


白いローブの女神デサイアが悪戯っぽく言うと。


「そんなのんびりしている場合じゃないでしょぅ?!

 どうすればいいのか教えてください!

 こんな蛇に食べられちゃうなんて、死んでも死にきれないからぁっ!」


涙目のミハルは、デサイアに縋り付く。


「あらあら。

 やる気になったようね!

 それじゃあ、先ずは槍でこの忌まわしい鬣をぶった斬りましょうか?」


ミハルの気が女神と同化した。

左目が蒼さを増し、魔砲の力を呼び覚ます。


「神の領域だというのに、あなたの力はあなどれないわ!

 どうやったらこんな力を人が持てたのかしら?」


デサイアが感心しつつも不思議がる。


「えっと・・・いろんな経緯があったの。

 いろんな経験と与えられてきたの・・・私に」


女神に伝える事実。


「この力は神たる人にも、闇の者にも授けられたの。

 とっても大事な人に・・・ルシファーに授かったんだよ?」


想い人の名を告げた時、デサイアの顔が強張った。


「人を護り闇に貶められた神にか?

 そう私にもインプットされてはいたのだが・・・

 そやつとそなたの関係はなんだ?」


鬣の中でミハルの心は力を放つ。


「女神デサイアはどう思うか知らないけど。

 ルシちゃんは私にとって掛け買いのないひと

 きっと今頃は人間ひとに生まれ変わってくれていると想うんだ。

 きっと今でも一緒に居続けるのを願ってくれていると想うんだ・・・

 だって・・・愛してるから・・・」


<フッ!>


デサイアがため息のような息を漏らした。


「憑代たる娘が、まさか神に恋をしていたとは。

 私は神を名乗る者を殲滅する戦女神ワーリーン

 今そなたを憑代としたことを嬉しく想うぞ!」


デサイアはミハルに笑いかけた。

ツンとした顔だったデサイアが微笑むと、その顔がリーンに見えてくる。


<リーン・・・まるでリーンだ・・・そうか!

 そうだった!リーンの力を授かったんだった・・・私は!>


見詰める先のデサイアが、リーンの力の表かとも思えた。


「デサイアと名乗っていたけど。 

 あなたはリーンの力の表れなの?

 私にリーンが授けてくれた力が、具現化したものなの?」


ミハルは金髪を靡かせる女神に訊ねる。

マリンブルーの瞳が見開かれる。

金色の髪とブルーの瞳・・・そして麗しい唇。


「どう想おうがそなたの勝手だ。

 だが、私は完全に目覚めた訳では無い事だけは覚えておくが良い。

 私は殲滅の女神デサイア・・・神を名乗る者を滅ぼす女神」


ミハルに告げたその顔には、先程見せた微笑みはもうどこにもなかった。


「さあ、そなたの力で邪なる海神を滅ぼしてやれ。

 そなた自身で呪いを打ち破るがいい!」


促したデサイアが力を槍に与えた。


「解った!

 私自身の手で呪いを破らなきゃいけないんだよね!

 そうしなければ呪いは解けないんだよね!」


槍を構えたミハルの魔砲が炸裂する!


「エクセリオ・モードォ!全力全開っ!!

  エクセリオ・ブレイカーっ、えぇっ!!」


魔砲が鬣を噴き消す!

一撃が光を放つ。


女神デサイアと同化したミハルの魔砲が放たれる時、


邪なる海神の心を討つ!


次回 終わる世界 Ep3 眼下のリヴァイアサン Part12

魔砲が唸る時、君は神たる者の心を開かせる・・・

 人類消滅まで ・・・アト 92 日

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