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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep3 眼下の敵(リヴァイアサン) Part8

潜水艦隊は一隻を残して壊滅していく。


たった一隻の空中戦艦の攻撃で。

だが、最後に残った艦が砲門を開こうとしていた!

海上からの攻撃は、水中艦隊に衝撃を与え続ける。


今迄、どこの海でも経験した事もない出来事に、

コンピューターはあらゆるデーターを必要としていた。


リンクされる数十の回線が途切れ、その度にデータが喪われる。


浮上を掛けた艦が、一隻も残らず通信を途絶させた事によるデータの不足。


その不足を補おうと更に浮上させたが、結果は悪化を辿った。


「「何が起きた?何が起こっているのだ?」」


演算システムが答えを導き出す。


「「空中に居る敵に痛撃を与えるには位置を確かめねばならぬ」」


その結果が味方の損害を出し続けた。


「「だが、モグラ叩き状態を終わらせるにはどうすればよいか?」」


モグラ・・・つまり潜水艦が海面に浮上を掛ける事を意味する。

何隻もが浮上を掛けるたびに叩かれ沈んだ。


「「終わらせるには無照準で攻撃するか、敵が対処不能なほど、一斉に海上へ浮上するか?」」


だが、コンピューターは一つのデータを持っていた、味方に不利な。


「「巡航ミサイルはこの距離で撃っても明後日の方に飛んでいく事になる。

  ましてや、浅い深度に浮き上がらねばハッチから浸水して自沈してしまうだろう。」


メインコンピューターは結論を下す。


「「余に与えられしは、敵の撃滅。

  その他に与えられた命令はない。女神たる娘を沈めるのが余に与えられし命令」」


つまりが、全艦の一斉浮上と攻撃だった。


「「余を護れさえすれば目的は達せられる。

  余の破壊力を温存出来れば、敵を殲滅出来るのだ!」」


メインコンピューターはこう決断したのだ。

巨大潜水空母たる<リヴァイアサン>は・・・謝った結論を下した。

それは、敵が今迄闘ってきた人類の戦闘艦だと判断した為。


まさか、空中を飛ぶ事が出来る戦艦だとは思わなかった結果。

その主砲が、どれだけ危険なモノかを調べずに判断した結果だった。





「中央に控えていた巨大艦も浮上してきます!

 敵艦隊一斉浮上!浮き上がります!」


水中がざわめき返る。


全長数キロもある巨大艦が、浮上して来る。

気泡がまるで煮立つ鍋の様に沸き返る。


「どうやら業を煮やしたようだな。

 だが・・・間違いだ!」


ミノリは航海長に命じた。


「浮上する艦隊の、輪形陣真上に着けろ!」


更に、砲術長に向けて。


「爆雷投射!全弾残さずばら撒け!」



・・・そう。


潜水艦は海中深く潜んでいてこそ真価を発揮する。

位置を知られ、姿を曝け出してしまえば。

これほど弱い艦種はない・・・

ミサイルを撃つにしても、真上に陣取られてしまえば・・・


「砲撃戦!下方の水上に浮上する敵艦隊を殲滅する!

 総員傾斜に注意せよ。

 本艦はこれより左舷砲雷撃戦の為、左舷に傾かせる。

 傾斜角度に留意、総員何かに掴まれ!

 砲術員は揚弾に注意せよ!」


矢継ぎ早に命令が下る。

その中で第1主砲塔に居たミハルとホマレは・・・


「うわあっ?!無茶苦茶やんかミノリ姉!」


装填手のホマレが叫んだ。


「?!」


事態の把握が出来ないミハルが振り返ると。


「ミハルっ、何かに掴まるんや。

 でないと椅子から投げ出されるで!」


自分も装填手席にしがみ付いて身体を振り落とされないようにしたホマレが教える。


「えっ?どうしてなの、何を起こそうとしているのミノリ艦長は?」


言われた通り、射撃盤に取り付いたミハルが訳が解らず訊いた時。


挿絵(By みてみん)



「傾斜角度左舷40度、発動!」


艦橋からの一方的な命令が飛んで来た。


「ほえぇっ?まさかっ、損なぁっ?」


ミハルが目を廻す。

いきなり身体が左側に倒れて行くのを必死で堪えて。


「ミハルっ、砲撃を継続しろ!

 浮上する敵を殲滅するのだ!」


ミノリの命令は傾斜させた艦、左舷側にも発令される。


「高角砲、及びバルカン砲砲撃始め!

 魚雷発射管戦闘っ、全砲門開けっ撃てぇっ!」


身体を支えながら艦長の檄が飛ぶ。


砲を左舷に傾いた艦側に向けた、全火砲が火を噴く。


「ひぃいぃっ?!ほ、砲撃再開ぃっ?!」


前に傾く姿勢で狙いをつけて、ミハルとホマレは攻撃した。

それは前代未聞の砲撃戦となる。


片方の円環が水面下に沈み、下甲板まで海水に洗われた姿勢での砲撃。

ぎりぎり砲身が水に浸からない位置で、主砲が放たれる。

長10センチ高角砲が現れ出る潜水艦を砲撃する。


一方的に叩く<薩摩>に、どうする事も出来ない潜水艦隊。


高角砲の弾でも、通常潜水艦の外郭は貫かれ破壊されていく。

潜水艦外郭に穴が開けられると、そこからバラストタンク内に水が入り・・・


「高角砲でも沈められるぞ!一隻も逃がすな!」


各砲塔で、指揮官達が発砲を繰り返させる。

まるでゲームの様に。

一方的な戦いに誰もが勇んで弾を放つ。


((ドシュッ ドスン))


通常なら敵艦に向けて放たれる筈の魚雷までもが潜水艦に放たれた。

そして本来潜水艦に向けられる爆雷も。


一隻対艦隊の闘いは、とんでもない一方的な戦闘となった。


勝利を焦った無謀な命令が、敗者をより惨めにした。

巨大な潜水艦隊は一隻を残して、ほぼ壊滅状態と化した。


だが。


「「これでやっと捉まえた。あの艦を沈めれば事は足りる。

  余に命じられた絶対たる命令を遂行出来る・・・」」


<リヴァイアサン>のコンピューターが弾き出したのは。


「「余の砲撃でキャツ等を消し去ってくれる。

  余がなぜ<リヴァイアサン>と呼ばれるのか解らせてやろうぞ!」」


水面下で巨大な潜水空母が嘲笑った。


「「そのような弾をいくら打ち込んで来ても掠り傷にもならん。

  今に解るであろう、海神が人間に負ける筈が無いという事に!」」


コンピューターが指令を下した。

巨大潜水艦に・・・リヴァイアサンに。


水中で潜水艦が二つに割れる。

上下二つに・・・龍の顎が開かれるみたいに。


上下に割れた中核部分にあったのは・・・


((ギュルルルルッ))


巨大な電磁波ぱるすを起こす砲だった。


「「観るが良い・・・これが海神の槍だ!

  この光がリヴァイアサンの龍の槍なのだ!」」


電磁波を起こす巨大な砲が船体に併せて、水上へと向けられていく。


「「消え去るが良い!人のふねよ。

  このパルス砲をまともに喰らえばひとたまりもあるまい!」」


嘲笑う巨大潜水空母。

勝利を確信した海神ポセイドンの神獣リヴァイアサン。


今凶悪なる砲を放とうと船体を傾けていく。

その姿は・・・邪龍の如く・・・巨大だった。






「敵の主力艦が上方に傾斜中!」


ソナー室から報告されるまでもなく、ミハルはその姿を捉えていた。


「あんな大きな船が・・・何をする気なの?」


見詰めたミハルもその圧倒的巨大さに息を呑んだ。


しかし、報告を聞いたミノリに宿る者が警告する。


「奴め、悪あがきをしよる気じゃぞ?!

 海の王たる者のする手ではないのぉ、強烈な砲撃でこちらを打ち負かす気じゃ!」


狐の神が警告を発した。


「砲?水中から?」


話を漏れ聞いたミハルにも、信じられなかったのだが。


「まさか・・・アイツ。

 アレを撃つつもりなのか?」


ホマレには何が起きようとしているのかが解ったようだ。


「え?ホーさん、知ってるの?」


その時、モニターに映し出された敵が二つに割れて行くのが目に入った。


「そのまさかのようじゃぞ!急げホマホマ。

 一刻の猶予もならんっ!あの娘子を呼び覚ませ!」


イナリの呼びかけに答える様に、ホマレがミハルの元へ来て。


「あの潜水艦を倒さにゃぁいかん。

 ミハル・・・勘弁やで・・・」


呟いてからミハルの耳に聞こえる様に叫んだ。


「女神さんよ、あの艦に居るのは・・・海神だ。

 ウチ等を消そうとしている悪しき神なんや!」


ホマレが<神>の部分を強調して話し終える。

耳元で叫ばれたミハルが、驚いたように目を見開くと。


「ホーさんっ!びっくりするでしょっ。

 そんな大きく神、神って・・・か・・・み・・・?」


ミハルの右目が紅き色に染まる。


「そっか・・・奴は人を滅ぼす邪神なのか・・・

 ならば、私が滅ぼしても誰も文句はないわね?!」


女神の魔法衣がミハルを包む。


 ((ドォンッ))


力が溢れ出すように魔鋼のふねに行き渡る。


「私の敵は邪神。

 私の仇は海に潜む邪なる者!

 私が滅ぼすのは、神たる者!」


ミハルの右目が敵を睨んだ・・・

ミハル達の攻撃で壊滅した艦隊。

しかし巨大潜水艦は必殺の一撃を放とうとしていた!


女神モードとなったミハルは、敵を倒す事が出来るのか?

仲間を護り抜けるのだろうか?


次回 終わる世界 Ep3 眼下のリヴァイアサン Part9

君は圧倒的破壊力の潜水艦に挑む、魔砲の力で!

 人類消滅まで ・・・アト 95日

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