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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep1街道上の悪魔Act16死闘市街戦

敵KG-1 2両との市街戦を挑むマチハ。

村の中で待ち構えている敵に75ミリ砲を放つミハル。

今、村の中は修羅場と化す。

変化したマチハは進む。

敵へと・・・敵KG-1重戦車へと。



ー  クーロフ大尉、今行きます。持ち応えて、死なないで!


ミハルは右手の宝珠に更に力を込める。


「戦車前進!まずは右側のKG-1を狙う。突撃開始!」


リーンの号令でラミルは急加速で突っ込む。

ミハルは砲塔を出来るだけ側面を晒さない様に傾けて跳弾を狙う。


((ガッ キイィーン))


ミハルの思った通り、左側のKG-1が砲塔側面を狙って撃って来たがギリギリの処で弾く事が出来た。


「ミハルっ、KG-1が退がる。追うか?」


ラミルがミハルに指示を仰ぐ。


「いえ。建物の角で車体を90度旋回させてください。

 そして車体前面装甲を活かして斜めに後退。

  敵に側面を見せない様に!」


ミハルの指示に頷き、急ブレーキを掛け信地旋回させる。


「敵KG-1、車体前面を見せて後退中!」


キャミーがいち早く、敵の行動を知らせて、


「敵、発砲!」


<ガッ ギイィーンッ>


キャミーの警告と同時に車体斜め前方で弾を弾いた。


「今です!全速後退!」


ミハルは照準器を睨んだままラミルに命じた。

砲塔が建物の影から出ると同時にミハルの指がトリガーを引く。


((ズグオオォムッ))


零距離射撃の一弾はKG-1の砲塔正面を貫く。


((グオオオォンッ!))


一撃で砲塔を車体から弾き飛ばす。


挿絵(By みてみん)



「一両撃破!残る一両は中戦車の陰に隠れやがった!」


ラミルが街道上に停止し炎上し続けるM4の車体を盾として隠れたKG-1を観測する。


「くそっ!M4が邪魔になって撃てないぞ!」


キャミーが悔しがり注意がKG-1に向いた時。


「敵歩兵!右舷に3人!」


ミリアが敵歩兵に気付き報告する。


「しまった!」


キャミーが慌てて機銃を向けようとするが、死角に入られてしまう。


「ミリア!Sマイン投射!急いでっ!」


対人兵器であるSマイン。

それは投射されると調整秒時で空中、或いは地上に落ちて爆発する手榴弾の様な物。


「はいっ!」


ミリアは天井に付いてある投射装置にSマイン筒を入れて右舷に合せて飛び金を引く。


((ポンッ))


軽い発射音がして・・・


((ガンッ カンカンカン))


Sマインが空中で炸裂し、内部に装填されていた鉄球が車体に雨の様に当たる音がした。


「はあ、はあ、はあ・・・」


ミリアは自分が放ったSマインで3人の男が倒れている事に荒い息を吐いていたが。


「うっううっ、げほっげほっげほっ。」


むせ返り青白くなった顔を背けた。


ー  ミリア、辛いよね。人を撃つ事は・・・


ミハルはミリアの気持ちが誰よりも良く解る。



「他に近付く者があれば食い止めて!」


リーンは何とか早くKG-1を倒して市街から脱出しようと焦る。


「ミハル!左舷、9時にも敵兵っ!」


ラミルがペリスコープで歩兵を見つけて警告する。

敵兵数名が手に手に大型手榴弾を持って迫って来た。


ー  今はもう、撃つしかないっ!


ミハルは砲塔を旋回させて、近付く敵兵目掛けてペダルを踏み込む。


((ドドドドッ))


ついにミハルは初めて同軸機銃を発射した。


慌てて建物の影に逃げ込む敵兵を、7・7ミリ機銃でなぎ払う。

思わず目を瞑りたくなるが照準器から目を離す訳にはいかず、一連射だけでペダルから足を離した。


ミハルが砲塔を横に向けた事を知ったKG-1が、空かさず側面を狙って撃つ為に飛び出してくる。


「ラミルさん、右舷に信地旋回!ミリア、砲塔手動旋回!リーン少尉も!」


ラミルが車体を斜めに向ける。

ミリアもリーンも手動旋回ハンドルを廻す。

もちろんミハルも左手で廻しつつ狙いをKG-1の砲塔へ向けた。


ー  間に合えっ!


ミハルの指がトリガーを引く。


((ズグオオォムッ))

((グオーンッ))


発砲音が重なり合った。


((ガンッ ギュイイイィンッ))

((ズドッ! ズダダーンッ))


ミハルの放った砲弾をもろに受けて、KG-1は砲塔を吹き飛ばされた。


「うっ!ぐっ!」


キャミーが苦痛のうめきを上げる。


車体前部右舷転輪基部に、KG-1の75ミリが命中し薄い側面に弾が食い込む。

衝撃で車体右舷前方に座っているキャミーに、取り付けてあったビスが跳ね飛び右手を傷つけた。


「キャミー!」


ラミルがキャミーを気遣って声を掛ける。


「大丈夫っ、掠り傷さ!」


キャミーは右手の傷を押えて、痛さに耐える。

押えた右手から血が流れ出ているのを知ったリーンが叫ぶ。


「ラミルっ、キャミーの手当てをっ!

 ミハル、ミリア、敵の歩兵に注意!近付けないで!」


リーンが即座に命令を下す。

自らもキューポラで観測を続けながら。


「車長!今の一発で右舷動力系破損!右舷転輪動きませんっ!」


ラミルがリーンを振り返って深刻な被害が出た事を報告する。


「くっ、しまった。

 もうマチハで村から出る事は出来ないか。総員脱出用意!白兵戦よっ!」


リーンがマチハの放棄を命じる。


今だ紋章を掲げたままのマチハ。

煙も噴かず、ただ右側のキャタピラが切れて動けなくなっただけなのに、斯座しているその姿。


「みんな!脱出して。

 私が食い止めます、早く逃げてください。

 脱出したら車体後部に隠れて。

 私が機銃を撃っている内に村から離れて!」


ミハルが砲手席から皆へ向って指示を出す。


「待ちなさいミハル。

 あなたを置いて逃げる事なんて出来ない!」


リーンが反発する。


「そうです先輩を置いて逃げるなんて事、出来ません!」


ミリアも直ぐに反対する。


「ミリアお願い、榴弾を装填して・・・」


ミハルがミリアに頼んで来る。


「えっ?榴弾を・・・ですか?」


ミリアがミハルを見詰めて訊く。


「うん。装填し終わったら直ぐに脱出して。・・・お願い」


ミハルが照準器を見ながらミリアに頼む。


「いっ、嫌です。ミハル先輩も脱出しましょう。一緒に!」


ミハルはミリアの言葉に返事せず、


「ラミルさん。キャミーをお願いします。

 必ず生きてバスクッチ曹長の元へ、愛する人の元へ帰して上げてください」


ミハルの言葉に、


「解った。解っているからお前も来るんだミハルっ!」


ラミルはキャミーを抱えて脱出を急かして来る。


「リーン少尉、早く3人と共に脱出して下さい。私が防いでいるうちに!さあ!」


ミハルは照準器に写った敵兵に向けてペダルを踏み込む。


((ダッ ダッダッダッ))


同軸機銃が連射を撃ち込んだ。


「ミハル!駄目よ、あなたも一緒に」


リーンがミハルに命じるが、


「大丈夫です。私は死にません。

 だって、約束しましたからリーンを護るって。

 小隊の皆を護るって。

 だから心配しないで・・・リーン」


ミハルは一瞬だけリーンを見上げて微笑んだ。


「ミハル・・・きっと、きっとよ!」


その笑顔を見て、リーンは決心する。


「ミハルを除いて全員退去。

 マチハを放棄、安全な所まで避難します。いいわね!」


そう言ってリーンは宝玉をピストルに持ち替えた。

リーンが宝玉の力を停めた事で、マチハの姿が3号J型に戻る。


「さあ!早く、私が食い止めている間に!」


ミハルがまた機銃を撃ち出す。

近寄って来た敵歩兵が建物の方へ隠れた。


「今ですっ!脱出してっ!」


ミハルの声にもまだミリアは決めかねていた。


「嫌、嫌です先輩。・・・ミハル先輩」


ミリアは側面ハッチから出ようとしない。


「早く!行きなさいっ!何をぐずぐずしているのっ!」


ミハルはミリアに振り返って、叱り付けた。

そして・・・


「私も必ず後から行くから。・・・ね、ミリア」


ミリアはその時気付いた。

ミハルが優しく微笑んでいるのを・・・


「・・・!センパイ。必ず!必ず脱出してくださいっ!」


ミリアは叫ぶ様に言うと、ハッチから転げ出た。


ー  ミリアありがとう・・・


ふっと息を吐き、照準器を睨み付けてペダルを踏み込む。


(ガッ ガッ ガッ ガガガッ))


同軸機銃が吼え、建物に撃ち込まれる。


ー  ターム。あなたの気持ち、少し・・・解ったよ


ミハルは歯を食い縛り機銃を放つ。

盾を失ったマチハに敵弾が当たる。


((カンッ!カン!ギイーン!カンッ!))


小銃弾と、対戦車銃があちらこちらに命中し軽い命中音がひっきりなしに続く。


ー  これではもう脱出出来なさそう・・・

   みんなは無事逃げ切れたかな。

   私が粘れるだけ粘れば、みんなの方に敵が行かなくなる。

    そう思うよね・・・タームも


ミハルはタームが行った同じ行為をする。

誰かを庇う・・・それが死への行為だとしても。


((チャキッ))


ミハルの左手は腰の拳銃を取り出す。


ー  最期は、この拳銃でラバン軍曹と同じ様に・・・


覚悟を決めたミハルは最期の時を待つ。


((ダッダッ カシュ カシュッ))


ー  同軸機銃の弾が・・・切れた・・・


ペダルを踏み込んでも機銃弾が出ない事を悟ると。


「ふっ、フッフッ。最期は砲手らしく、一発を撃って散ろう」


ミハルが笑みを浮かべて、ミリアが最後に装填した榴弾を何処に撃とうか考えた。


ー  出来れば戦車と闘って死にたかったな。カール兵長みたいに・・・


ミハルはこれまで闘って倒して来た相手を想って、少し寂しく感じた。


そして見つけた。

此方に向って機銃を撃ってくる半軌道車に居る人物を。


ー  あ、あの人だ。あの小太りの少尉・・・

   そっか、最期の弾であの人を倒せるんだ。この村に悲劇を齎したあの人を!


マチハの砲塔が静かに旋回する。


ー  さあ!最期の砲弾だ。

   決めてみせる、終らせてみせる。この闘いを!


ミハルの指がトリガーを引いた。





「ぎゃははっ、死ね死ねっ皆死んでしまえ。オレに盾突いた者は皆死んでしまえっ!」


小太りの指揮官が生き残っている村人に向けて車載機銃を撃ちまくっていた。

自分だけが想う様に出来ると多寡を括って。


「親分!フェアリアの戦車が生きています!」


突然横に居た兵士がそう言って逃げ出す。


「何だとっ、乗員は皆脱出したんじゃなかったのか?」


振り返って見た3号J型の砲塔が、此方を狙って旋回しているのが解ると。


「やめろっ、撃つな!撃つんじゃねえ!」


腰が引けて喚く事しか出来なかった。



ー  あなたの様な人が居るから・・・

   あなた達みたいな人が居るから戦争が終わらない。

   憎しみが憎しみを生むのよ!


ミハルの瞳が半軌道車に狙いを付けた。


ー  さよなら、私。

   さよなら優しかった昔の私。

   私は今変わる。人に目掛けて撃つ事が出来る戦鬼に・・・


指が躊躇いも無くトリガーを引き絞った。


((ガッ バッガアーンッ))


ミハルが放った砲弾が半軌道車を粉々に砕いた、あの小太りの男と共に。


ー  ああ。村の人達の仇、戦車隊の仇。そして、私の想い出の仇。

   全て討てた様な気がする。

   もう、何もかもが終った様な気がする・・・


やはり、ミハルはどんなに鬼になろうとしても優しさを失わなかったのだ。


心の中で人を撃つ事を躊躇い続けて来たその優しさ故に迷い、苦しみ続けて来たミハル。


今、彼女に闘いの終止符が打たれたかにも思えた。


ー  最期の時が来たみたい


((カン! カンカンカン))


車体を雨霰の様に銃弾が襲う。

照準器に近付いて来る敵兵の姿が見える。


左手に持ったベレッタを右手に持ち替えてゆっくりと自分の頭に近付ける。


ー  リーン少尉、どうか御無事で・・・この国を救ってください。

   ラミルさん、いつも私を信じてくれてありがとう。

   キャミー、曹長と仲良く2人で幸せになってね。

   ミリア、あなたが2人目だったね。優しくしてくれて、慕ってくれて嬉しかった。

   ・・・・

   みんな、みんな生きて、生き残って。

   それが私の願い。私の守りきれなかった約束・・・

   ありがとう、今迄楽しかった。

   皆と出会えて・・・

   こんな私を支えてくれて・・・

   ・・・さようなら・・・


ミハルの瞳にみんなの笑顔が映される。


「ターム。

 ごめんね、私今からあなたの元へ行くね。

 許してね、約束守れなくて・・・」


ミハルは拳銃をこめかみに付ける。


その時、ミハルの瞳に温かい光が差し伸ばされる・・・


覚悟を決めて、みんなとの決別を告げるミハルに光が現れる。

その光が言う。

「諦めるな」と。

ミハルは光の中で誰と会うのか。

そしてミハルに救いを求める魂が・・・・

次回 Act17 死線を越えて 

君は誰を護れますか、誰を護りたいですか

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