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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep2 生者(いけるもの)と死者(しにゆくもの) Part3

突きつけられた銃を見るミノリ艦長。


呪われた瞳に隠された何かに気付いたというのか?


銃の持ち主に気がついたようだった・・・


その時、ホマレの手が!!

筒先を睨んだ艦長が訊ねる。


その瞳は何を表しているのかと。


目の前に居る者が、誰なのかと。




「あなたは神だと言ったわよね。

 あなたに宿る神の名を教えなさい、私に」


拳銃を突き付けた少女の姿をした何者かが問う。


「教えたくなければそれでもいい。

 だけど、そうなればあなたの宿主たる娘共々、私が消滅させるまでだから」


この少女は神を消し去ると言い切っている。

そんな事が出来るのは、上位の悪魔か・・・神そのものだけだった。


ミノリは突き付けられた拳銃に見覚えがあった。

久しくは見ていないが、それは確かに覚えている。


「まさか、あなた・・・戦士の拳銃を?

 その銃をどこで手に入れたの?

 それは海軍の砲術魔砲師にしか渡されない物だったのよ?!」


日の本海軍砲術科で、恩賜おんしの銃として数人にしか渡された事が無い銃に見覚えがあった。


「しかも・・・その14年式には・・・名が彫り込まれている筈。

 その拳銃が誰に賜ったかを見せなさい。

 銃に掘られた名を・・・見せるのよ!」


突き付けられた銃にも臆せず、ミノリは逆に命じた。


「もしかしたら・・・あなたはシマダ・ミカ少尉に逢ったの?

 その銃に掘られた名が、全てを明かす。

 さぁ、真実を告げるのよ!」


それは狐の神が宿った言霊だったのかも知れない。

言葉はミハルを惑わす。

手にしていた銃底に刻まれた名は、神を喰らう娘を動揺させた。


「シ・・・マダ、ミ・・・カ。

 島田 美夏・・・美夏姉ちゃん・・・・」


一瞬自分を取り戻したかに見えたミハルの声だったが。


「それがどうしたというのだ。

 この銃が誰の物だろうが構わない。

 私は神を殲滅する女神ミハル・・・神は私のかたきだ!」


もう一度銃を構え直し、


「さっさと娘から出てこい!さもないと・・・」


指をトリガーに掛けて、容赦はしないという前に。


「ミハル・・・胸。前より大きくなったかなぁ・・・」


ホマレが後ろから現れ・・・


「なっ?!何をするっ!無礼者め!」


女神状態のミハルの胸を・・・・?


挿絵(By みてみん)



「なぁミハル。もうその辺で辞めなはれな。

 ミノリ姉さんも困るさかいに・・・なぁ?!」


元に戻す方法に気が付いたのか?!


「気が付いたんやミハル、ウチは。

 どうやったら気が付いてくれるのかを。

 空でもそうやったやろ?初めて話した時も・・・

 ミノリ姉さんにされた時も・・・気絶したほどのショックを受けてたんやろ?

 つまり・・・ショックを与えれば・・・戻ってくれるんやろ?」


揉みしだきながらミハルの反応を見詰める。


ー ・・・いや、あの。だからって・・・損な・・・・損な方法とは?!(作者・笑)


ホマレの行為を唯唖然と見つめるミノリ。


「うにゅぅっ・・・ホーさん?」


頬を赤らめたミハルが震えている。


「気付いたのかミハル?!よかった・・・ぼげぇっ?」


ホマレの絶句が聴こえた・・・肘鉄を喰らった声が。

で・・・・


「うわぁっ!なんで?なんで拳銃握っているのよぉっ?!」


錯乱したようだ、ミハル本人が。


「そりゃないで、ミハルぅ。

 今迄のはなんやったんや、ホンマにぃ・・・」


鳩尾に一撃を喰らったホマレが脂汗を垂らして言い募る。


「え?何の事??」


全く身に覚えが無いのか、惚けた様な答えが返って来る。


「しゃーないか、呪われているんやし・・・ねぇ、ミノリ姉」


狙われた本人を宥めようと先手を打ったホマレだったが。


「ホマホマ、ワシじゃよワシ!

 イナリじゃ、今はのぅ・・・じゃから気にせんでもええんじゃ。

 だが、そこなる娘にはどうやらとんでもないものが宿り居ったようじゃの」


ミノリの姿で、ミハルを指し示す。


「はい?私ですかミノリ・・・い、いやお狐様?」


イナリと告げられて恐縮するミハルに。


「うむ、そなたじゃ。

 たいそうなモノを宿らされたようじゃのぉ・・・こいつは問題じゃのぅ」


腕を組んだミノリのイナリ様が、小難しい顔でミハルを観る。


「え・・・ええっと?どう問題なのでしょうか?」


見詰められたミハルが後退るが。


「はい、ミハルは逃げない」


ホマレに取り押さえらえてしまう。

頷いたイナリのミノリが、ミハルに迫ると。


「ふむ、どうやら呪いをかけられたようじゃのぅ。

 それも罪深いモノを・・・悪霊と化した人の呪いが観えるぞよ。

 戦いに散るべき魂達の無念の怨念がこの娘を苦しめておるようじゃのぉ」


神の力を行使して、ミハルに掛けられた呪いを教えた。


「怨念?

 ではどうすりゃ―怨念が消えるんや?

 どうすれば怨念はミハルからなくなるんや?」


ミノリに掴みかかって狐の神を問い質す。


「無茶を言うな、ホマホマよ。

 そう簡単に怨念は消えはせん、まぁ・・・ここに怨念おんねんってナ?」


・・・・・

くだらないダジャレを無視して、ホマレはミハルに言うのだった。


「イナリの神様はほっといて、ミハルに掛けられた呪いってなんなんや?」


真剣な声に、ミハルもはっとして。


「うん、それがその・・・自分達を殺した者を葬って欲しいらしいんだ。

 でも、それがあまりにも抽象的で。

 対象があまりに大き過ぎて・・・困ってるの」


自分に掛けられた呪いを教えようとするのだが。


「だって、自分達が戦いも行えずに死んだのが呪わしいって言われても。

 戦いで死んだのなら相手も解るんだけど・・・

 戦わずして死んだというのなら、相手は誰なのか・・・もうさっぱりだよ?!」


・・・・


ホマレもミノリのイナリさえも、口をあんぐり開けて言葉を失った。


敢えて言うのならば・・・


<ミハルって。死んでも損な娘だったんだ・・・Orz>





「んで?どうすりゃいいんや、稲荷様?」


しばらく経って、ホマレが訊ねるが。


「これはもう・・・成り行き任せというやつだのぉ」


神様も匙を投げたか?


「ええ~っ?!私、いつまで呪われたままなんですか?」


流石にヤバイと感じたミハルが涙目で訊くけど・・・


「今言うたように、成り行き次第じゃのぅ」


お稲荷様がどうにもならんと・・・匙を放り投げた。


「いやぁーっ?!そんなぁ・・・酷い!」


神様にも見捨てられたというのか?

って、ミハルは女神では?


「それはまぁ、この際於いておいて」


やはり見放されていたようだ。

ミハルは座り込んでイジケテしまった・・・


「ブツブツ・・・いいんだ、私なんて・・・」


ほっときましょう!


「そなたはなぜ、ミハルを監視していたのだ?

 なぜ、逃げるような真似をする?」


イナリは鋼のジュンに訳を訊ねる。


「あなたが、イナリの神様なのかは知らないけど。

 答える義務なんてないでしょう、軍規に反した訳でもないんだから」


答える義務が無いと、ジュンが撥ねつけるのだが。


「ふむ、なるほど。

 肉親を取り戻したいのか?いや、肉親ではなく恋人か?

 どちらにせよ、誰にそそのかされたのだ?

 どうせ邪なる者だろうがのぅ」


ジュンが心を見透かされて驚愕の表情となる。


「ど、どうして?なぜその事を?誰にも話していなかったのに?!」


自らあっさりと認めたようだ。


「それで?ミハルがどうやって生き返ったのかを調べていたんじゃな?

 こそこそ調べず、堂々と聞けば良いモノを。

 それでじゃ、誰がそなたを唆したのじゃ?」


イナリはジュンの答えを待たずして言いのける。


「そなたに悪意を持たせ続けるのは心の闇じゃろぅ?

 自分の行為が疚しいと思い続けているのは解っておる筈じゃ。

 じゃが、死した者は還ってはコン。

 どれ程願ぉても、叶わぬ事なのじゃ・・・解っておろうに」


ジュンはイナリを見続ける。

イナリは核心部分を告げる。


「そなたに悪意を抱かせ続けているのは、そなたの勲位がそうさせておるようじゃのぅ。

 鋼の魔砲師と持て囃されておるのが、

 如何に自分を殻の中に閉じ込めておるのか。

 全ては己が招き寄せた事じゃと、なぜはっきり申さんのじゃ?

 そなた自身が邪なる者と化す前に、取り戻す事じゃのぉ。

 己というモノを・・・鋼の魔法衣を纏いし者よ」


ジュンが俯き震えている。

ホマレはイナリに感謝する。

そして、ミハルは?


「2尉。

 あなたが自分の行いを悔い改めなくては。

 あなた自身で償わなくてはいけない事もあるの。

 それが、本当の自分を取り戻す事にもなるのだから!」


ミハルが自分を見捨てて帰還した娘を見据えて言う。


「あなたの周りで起きた事は解らない。

 でも、これだけは云えるの。

 死んだ人は還っては来ない、人間なら。

 どんなに願ったとしても・・・だから。

 だから、死んだ人に報いてあげられるのは、生き残った者の務めだと思うの。

 だって、生きているからこらこそ、死んだ人の事を想えるんだから!」


ミハルはこれまでの事を思い起こしながら諭した。


「で、でも。私は死んだ者を生き返らしたい!

 戦いで死んだ戦友を取り返してみたいだけなんです!」


それは生きる者が死者を冒涜するに等しい言葉。

それは生ける者の慢心を示す言葉。


「あなた・・・あなたも。

 きっと解るでしょうね、一度死ねば。

 どんな気持ちで死んで逝くのかを・・・知れば。

 あなたも・・・死んでみる?」


挿絵(By みてみん)



ミハルの声が冷たく流れた・・・

ミハルは悲しげに言った。


「あなたも・・・死んでみる?」


言葉の中に秘められた意味が、あなたには解るでしょうか?



次回 終わる世界 Ep2生者いけるもの死者しにゆくもの Part4

君は信じられるだろうか?いいや、信じてあげなければいけない。その瞳に隠された事実を!

 ・・・人類消滅まで ・・・アト 106 日

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