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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep1 殲滅の女神 Part1

「魔鋼騎戦記フェアリア」

 第6章 終わる世界


挿絵(By みてみん)


 空は今しがたまで穏やかだった。


そう。


ほんの数分前までは。


突然の嵐に、人は皆思った・・・自らの終わりを。


空に一塊の黒雲が現れ、やがてそれが自分達へと向かって来る時。


人は畏怖の念を抱くのだった・・・終末を怯えて。






西・・・大陸の西。


そこはもう、人が住んでいられるような土地では無かった。


空が荒れ狂った後、人も建物も・・・文化さえもが喪われていた。


神の粛正によって。


神の軍隊が滅ぼした・・・人を。


それは人知を超えた、悪魔の如き所業。


人は皆、いつか訪れる最期の時を怯えていた。



・・・そう。


人類に残された時間は少ない。


神が許した時間は限られていた。


人類に最期の審判が下され、消滅させられるまでの残り時間は・・・・



・・・・ アト  113 日 ・・・・










「出航よーい!ラッパを鳴らせ!」


艦橋からの命令で、ラッパ手が吹き鳴らす。


 ((タカタカターン タカタカターン))


日の本海軍式の出入港ラッパが辺りを震わせた。


「艦長・・・往きましょうか?」


今は有志連合国海軍所属となっているが、

元々が日の本軍人が操るふねなので、日の本式の命令方式で操艦している。


「うむ。航海長、往こう」


ぶすりと艦長の源田2佐が出航を命じた。


「了解!出港します!両舷げんそーく!おもーかぁーじ!」


航海長の江名えな みつる魔法科3尉が、速力ゲージを見詰めながら声に出す。


「本艦復動力にて航行開始、現在速力6ノット!」


出入港ラッパが鳴り止むと。


「本艦外港部に向け進路を切った。只今速力半速!12ノット!」


徐々に速力を増し始める。


「外海に出たら、敵の哨戒網に警戒せよ!」


砲術長の矢作やはぎ 麗奈れな魔法術科3尉が、探信儀、電探双方の配置に命じた。


波を蹴立てて増速する軍艦。

軍港から出ていく艦を、岸壁で見送る者達が手に手に帽を振る。

それは他国から来た艦についても同じ。

闘っている相手が同じという事よりも、

手を振って別れを惜しむのはどこの国でも同じだという事。


「外海に出る。

 戦闘旗を掲げろ、合戦準備!」


一歩外海に出てしまえば、そこはもう敵の哨戒圏内。

自国の領海であっても、敵はいつ、どこから襲ってくるかは分らない。

それは闘っている相手が、尋常でない証。

そこは敵のテリトリー・・・深海から襲いかかる潜水艦の行動範囲なのだから。


「探信儀、反応なし!電探周り100キロ圏内に敵影無し!」


砲術長が艦長に報告する。

まだ、黙って艦長席に座ったままの源田2佐が軽く頷いた。


艦は速力を増しつつ、目的地へと向かっていた。

10月の海は穏やかに揺らめいている。

その中を唯の1隻で艦は進む。

幅広い艦腹を波に洗われながら意外な速力で・・・


艦には見慣れない円環が6基ついていた。

司令塔は太い塔型。

幅広い艦体の前部には、主砲が2基並列に配置されている。

つまり艦腹はそれほどに太いという事だ。

主砲が前甲板に2基配置されているが、後部には見当たらない。

あるべき筈の砲がない理由は、そこに発着甲板があるから。


発着甲板?・・・そう、この艦には航空機が搭載されているのだろうか?


答えはNOノーだ。

この世界には、満足に戦果を齎せられる飛行機は存在しない。

速度が増した飛行機が宙がえりを打つとなると、

どう考えてみても高度2千メートルは必要だ。

だが、この世界には特別な事情があったのだ。

それは、高度千メートルから2千メートル付近に存在する魔階層。

いや、電解層といった方がいいだろう。

そこに上がれば、金属はスパークを発して破壊される事になる。

まるで電子レンジに金属を放り込んだ時の様に。


ならば、なぜ飛行甲板が付けられているのか。

その答えは?



「本艦上空に魔法師隊が到着。着艦許可を申請しています」


スピーカーから、後部着艦指揮所からの報告が入る。


「許可する・・・」


源田艦長の命令で、直ちに着艦指揮官が誘導灯に火を灯した。


直列し角度が付けられた誘導灯の灯りが後方に廻り込む魔砲師達の眼に入った。


遠くに見える蒼い影が、次々に着艦コースに載って降りてくる。


「航海長、風に向けろ」


艦長の命令を受けて、ミツル3尉が操艦する。


「よーそろーっ、風に向けました!」


艦尾の旗が、真っ直ぐに吹き流される。


「着艦始めっ!」


着艦指揮官の命令で、整備員達が着艦配置に就く。


それを待っていたかのように、灰色の一番騎いちばんきが降りて来た。


まるで地に降り立つかのように、甲板に足を着けて前方の格納庫まで入っていく。


「中隊長、大高2尉着艦!」


整備員が取り付いて、武装を預かる。

急ぎ足で飛行甲板を開けた整備員が、すぐさま手を挙げて指揮官に知らせる。


「宜しい、次!」


散開し、着艦の順番を待つ上空の魔砲師達の中には。


「航宙戦艦<薩摩さつま>か・・・」


蒼髪を靡かせた魔砲師が居た。


「あいつも・・・一緒やったら・・・」


白い魔法衣に緑の蝶ネクタイ・・・緑の円環。


魔砲師達全員が着艦を終えた後。


「どんなに心強かったんやろな・・・」


降着体勢になった魔法師が呟く。


「緑のホマレ、着艦するで!」


一言叫んで甲板へと降りて行く。


手にしたロッドを握り締め。


その手に着けられた紅いリボンが目に映えた・・・



神軍との闘いは続いていた。


フェアリアにて新装備を搭載した航宙戦艦<薩摩さつま>が出航していく。


その中に、歴戦の魔砲師緑のホマレが居た。


心に秘めた想いを胸に・・・


ふねは出て行く・・・戦いの場へと。

しかし、その場所は意外な所で待ち構えているのだった!


次回 第6章 終わる世界 Ep1 殲滅の女神 Part2

君達は戦さふねに乗り込んだ・・・敵に勝つ為に造られた空の戦船に・・・

 人類消滅まで ・・・アト 113 日

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