魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep1街道上の悪魔Act15死闘開始
クーロフ達、そして村を守る為戦闘を開始する第97小隊。
リーンは村人達を救う事が出来るのか?
その時、ミハルの覚醒が始まる・・・・。
市街では戦車同士の闘いが始まっていた・・・
「分隊長!お先に逝きます!」
M3が重戦車に突撃を掛ける。
主砲の75ミリ砲弾がKG-1重戦車へ放たれたが、前面装甲で弾かれてしまう。
が、M3の突進は止まらない。
「やめろっ、ミリュー軍曹!」
クーロフの制止も無駄だった。
後数十メートルに迫ったM3に、KG-1の十字砲火が放たれる。
((グワッ ガガーンッ!))
数発の75ミリ砲弾を同時に受けてM3は爆発炎上する。
「くそっ、ミリュー!ミリューがやられた。
ロカモフ、後退だ。奴等を街道から離れさすぞ。
村の中へ入れるな!」
クーロフ大尉のM4中戦車は、砲撃を加えながら後退を続ける。
「大尉!あの娘が、酒屋の娘が逃げ遅れています」
ロカモフがクーロフに叫ぶ。
クーロフはペリスコープから酒屋を見ると、
瓦礫の中で必死に誰かを助け様としているアリシアを見つけた。
「アリシア!」
クーロフはその娘の姿が自分の教え子と重なる。
ー あの娘を助けねば!
クーロフがそう思った時。
「自分が行きます!」
そう叫んでロカモフがハッチを開けて飛び出そうとするのを、
「待て、ロカモフ危険だ!」
呼び止めるクーロフ大尉に若い上等兵が笑いかける。
「大尉、今度こそ自分は助けます。もう見て見ぬ振りは嫌ですから!」
そう叫んだロカモフは一直線にアリシアの元へ走った。
「ロカモフ!」
クーロフの叫びは、アリシアの元へ駆け寄りアリシアと共に白髪の老人を助けようとするロカモフには届かなかった。
((ドドドッドドッ!))
KG-1の機銃掃射が、アリシアと共にロカモフを薙ぎ払う。
ロカモフとアリシアはもんどりうって折り重なり倒れた。
「ロカモフ!アリシア!畜生っ!」
クーロフの瞳に倒れて動かない二人の姿が焼きつく。
「くそっ、悪魔めっ!これでも喰らえ!」
クーロフは自ら砲を撃つ。
((ガフッ))
75ミリ砲弾がKG-1の前面下部を撃ち抜いた。
一発の75ミリでは、そのKGは撃破出来なかった。
砲塔がクーロフのM4に狙いを定める。
ー ここまでか。神よ、どうか我々の罪を許したまえ
クーロフは最期の祈りを捧げて次の瞬間を待つ。
((ガッ ゴオオーンッ))
「!?」
撃破されたのはKG-1の方だった。
「何だ!?何が起きたのだ?」
KG-1はエンジンから火災を起し炎上する。
「一体何が・・・」
クーロフが燃えるKGから視線を村はずれの丘へ向けた時・・・
「あれはっ!フェアリアの3号型・・・シマダ君!」
丘の上に見た事も無い長砲身の3号J型が、
砲身から薄い発射煙をたなびかせて、そそり立っていた。
「撃破!奴等は此方に気付いたわ。重戦車が此方に向って来る」
リーンがキューポラで右手に宝玉を握り締めて、観測を続ける。
「ミハル、まだよ。
奴等が村から離れるまで、マクドナード達が村人を誘導出来るポイントに達するまで待って!」
照準器を睨むミハルに命じ。
「敵、重戦車3両。
此方に向って来ます。距離2000!」
キャミーの声に頷く。
「残り2両が村へ突入します。村の中に居るM4型と交戦中の模様!」
ラミルが残り2両の行動を報告する。
「くそっ!敵は分かれたか。一刻も早く止めなければ」
リーンは村が破壊されていくのを見て心が痛む。
「ミハル。行きましょう・・・全力で、悪魔達から村を守る為に!」
リーンの碧い瞳がミハルに求める。
自分よりも、もっと強い力を・・・魔鋼の力を。
「リーン、護りましょう。全ての人を、全ての魂を」
頷くミハルは右手にぐっと力を込めて能力を発動する。
「ミリア!魔鋼機械始動!みんなっ行くわよ!」
リーンが叫ぶ、青き光を宝玉から放って。
「了解!魔鋼機械作動!」
ミリアがグローブを填めた左手で赤いボタンを叩く。
((ブンッ))
車体が大きく揺れ、車内が瞬く間に青い光に満たされる。
ー クーロフ大尉、ロカモフさん。戦車隊の皆さん。
これが私の力、魔鋼騎士の力。
皆さんに救って頂いた私の本当の姿!
ミハルは右手の宝珠を見て想う。
右手の宝珠は碧き光を放ち出す。
神の盾を現す紋章がくっきりとその姿を表し、ミハルに問い掛けてくる。
「「 汝、我が力を解き放つ者。
我が力を欲する者よ。
目覚めよ、我が力と共に・・・」」
心に直接宝珠の意識が求めてくる。
力の解放を、覚醒を。
ー 私が求めるのはみんなを護る力。
みんなを護れる盾の力。
邪なる者から私の愛する人達を護る・・・
護り抜く事が出来る強い力!
ミハルの想いが宝珠に伝わる。
「「ならば唱えるが良い。
此処へ来たれと!我が神力と共にあらんと!」」
宝珠が碧き光を解放する。
ミハルの瞳が青く輝き、髪が蒼く染まる。
ミハルは右手の宝珠を天に掲げて魂の雄叫びをあげる。
「聖なる使徒の魂よ今此処へ!
聖魔魂!」
魔法石が輝く。
ミハルの身体に眠れる力を目覚めさせて。
瞬間、ミハルの身体が結界に包まれる。
力に身を任せるかのように、ミハルは眼を閉じる。
着ていたフェアリア陸戦騎ユニフォームが消え、新たな服へと変化する。
高位の魔砲使いだけが着る事を許されるという、魔法の戦闘服へと。
魔法衣・・・それ自体が力ある証。
魔砲の力を宿す者が羽織る、闘いの衣装。
ミハルの身体に羽織らされた魔法衣は蒼く、そして光に満ちていた。
蒼い上着。
各部に金色のラインが模られ、それ自体が魔砲力を表わす。
腰に靡くスカートのようなフリルには防御の力が。
そして腕に着けられた魔法石自体がミハルの力を表わすかのように、
蒼い古からの力を秘めて輝きを放っていた。
ミハルの瞳が再び開けられた時。
マチハは、現れた魔法陣からの光に包まれた。
リーンの宝玉とシンクロした宝珠が車体全体を蒼く輝かせる。
天に向かって伸びる蒼き光はマチハを変える。
車体が大きく伸び、3号戦車が5号パンターへ変貌した。
斜めに傾斜した前面装甲板。
幅が広くなった足回り。
重くなった車重を快速力で走らせる事の出来るマイバッハエンジン。
そして・・・47ミリ砲が75ミリ長砲身砲へ変わる。
車体の変形が終わると光が集約され、
前面装甲板と砲塔側面に<双璧の魔女>の紋章が碧く浮かび上がった。
「ミハル!この力は?」
リーンがミハルの魔法衣を見て驚く。
今迄で最も強い力を感じて。
「ミハル先輩っ!」
「ミハル!?お前・・・また強くなったのか!?」
「へっ、やるじゃねーか。そうこなくっちゃな、ミハル!」
ミリア、キャミー、ラミルがミハルを見て嬉しそうに呼び掛ける。
「みんな!行きましょう。皆を助けに、邪な者から救う為に!」
ミハルが聖魔砲騎士となって初めて言った言葉がこの一言だった。
「あれは・・・あの蒼き輝きが・・・ミハル・・・君?」
クーロフ大尉は始めてみるその輝きに目を見張った。
目の前で3号戦車が見る見る変わり、見た事も無い戦車へと代る。
大きく傾斜した前面装甲、長く太いその主砲。
どれを見てもKG-1と比べて力強く、頼もしかった。
「分隊長、あれはもしかしてシマダ君ですか?」
ドライバーがマチハを見て訊いてくる。
「ああ、あれは御美。<神々の希望>だ」
クーロフは炎上する車体から脱出もせず、神に感謝した。
「撃てぇっ!」
リーンが絶叫する。
「撃っ!」
ミハルの指がトリガーを引く。
((ズグオオオォッム))
長砲身砲から魔鋼弾が放たれ、
((ガッ! ズドドッ))
一撃でKG-1の砲塔が吹き飛び撃破する。
「二両目撃破!
二番目標、後退する左側のKG-1!
直接照準、距離1500。撃て!」
リーンの命令に照準器にKG-1の前面装甲に狙いを定め。
「撃っ!」
((ズグオオオムッ!))
狙われたKG-1は何とか弾こうと車体を斜めに向け様としたが間に合わず。
((ズドッ! バガーンッ!!))
もろに砲弾ラックへ弾を受けて消し飛んだ。
向って来た3両の内2両を撃破し、残りの一両を追う。
村の建物に身を隠そうと後退を続けるKG-1。
「村に入られる前に倒すわよミハル!」
リーンの命令に頷くミハル。
「次弾、魔鋼弾装填よし!」
ミリアが次発装填弾を半自動装填機に乗せて復唱した。
ミハルの目は建物に隠れようと斜め側面を見せて退がるKG-1に狙いを付ける。
「撃っ!」
ミハルの・・・魔鋼騎士の狙いは狂いが無かった。
狙われたKG-1は車輪を吹き飛ばされて動きを止める。
「車長!ミハル!残り2両のKG-1と、半軌道車が村の中へ逃げ込んだぞ」
ラミルが後ろを振り返って大声で知らせる。
「畜生っ!汚い奴等め。村を盾にするつもりか!」
キャミーが悪態を吐く。
建物を盾としたKG-1がマチハ目掛けて撃ってくる。
((ガッ!))
75ミリ砲弾がマチハの砲塔側面装甲を削る。
((ガッギイイイィンッ))
もう一両のKG-1の弾が前面装甲に当たり弾き返される。
「ぐっ!」
ラミルが歯を食い縛り、衝撃に耐える。
「くそっ、やられっぱなしかよっ!」
ラミルが悔しそうに叫ぶ。
ー このままでは、一方的に撃たれ続けるだけだ!
リーンが悔しそうに歯を食い縛って魔鋼力で耐えている。
いくら魔鋼の力で車体を強化していても、
キャタピラや側面を狙われたら撃破されないまでも、行動不能になってしまう。
「キャミー!味方部隊に連絡してっ!出来るだけ早く来て貰って」
リーンが来援部隊と連絡を取るようにキャミーに指示する。
「了解!」
キャミーが無線に取り付き、アラカン攻略支隊と連絡を取る。
しかし、その返事は・・・
「な、なんだとっ、そんな馬鹿なっ!話が違うぞ。
こっちはそんな事訊いちゃいない。
知らされていない!」
キャミーがレシーバーに耳を当てて喚く。
振り返ったキャミ―が喚いた。
「少尉!大変ですっ。
攻略支隊は停止を命じられてアラカンに来られません。
中央司令部の命令だそうです!」
キャミーは血相を変えてリーンに報告した。
「そんな馬鹿なっ!そんな命令知らされていない。
私には降伏勧告をしろとだけ・・・
中央軍司令部の命令ですって?」
その時、やっとリーンには解った。
この支隊が停止している訳が。
リーン達の小隊に陽動攻撃を命じていた訳が。
ー しまった。また中央軍司令部の罠に嵌ったんだ。
攻略支隊を送ったと報じておきながら途中で停めさせた・・・
私達が全滅した後に攻略支隊を前進させるつもりなんだ!
リーンが奥歯を噛み締める。
そして一縷の希望に託す様に、決断を下した。
「キャミー、攻略支隊指揮官宛連絡。
本隊指揮官リーン・フェアリアル・マーガネット第4皇女の名において命じます。
直ちに来援を請う。以上っ、急いでっ!」
そう叫ぶ様にキャミーに命じた。
キャミーが<心得た>という風に頷き無線機に向かう。
ー リーン少尉・・・とうとう名乗ってしまわれましたね。
でも、ありがとうございます。その決断を嬉しく思います、私は・・・
ミハルはリーンに背を向けたまま、心の中で感謝する。
村の中にはKG-1が2両、そして手付かずの歩兵隊。
マチハ一両では戦車と闘う位しか出来ない。
ー 味方が来てくれるまで、持ち応えなければ・・・
ミハルは味方が来てくれる事を願った。
いくら魔鋼騎だとはいえ、たった一両で闘うには無理があり過ぎると。
微かな希望に縋りたかった。
「少尉!攻略支隊指揮官了承!(直ちに前進ス)です!」
キャミーが明るい顔で振り返って伝える。
「よしっ!なんとかなるぞ!」
ラミルがガッツポーズを決める。
((ガッギュイーーンッ!))
また一弾が砲塔正面に当たり弾かれる。
「くそっ、ここは一旦退きますか?」
ラミルがリーンに判断を訊く。
ミハルはちょろちょろと車体を出したり引っ込めたりするKG-1に狙いを付けるが、
命中しなかった時には村の建物を壊し、
<もしかしたら逃げ遅れた人を傷着けるのでは>と、発射を控えていた。
そのKG-1の斜め奥に燃えるM4型中戦車が見えた。
ー !クーロフ大尉。
まさか・・・まだM4の中に居るの?
それとも脱出して歩兵と闘っているの?
早く助けに行かないと!
ミハルはリーンを振り返って、お願いしようとした時。
((ガッ ガーーンッ))
砲塔正面装甲にまた敵弾が命中した。
「これ以上此処に留まっていては、いずれ何処かをやられてしまう。
私の魔鋼力にも、限界があるから。
・・・ミハル、お願いがあるの」
リーンが思い詰めた様にミハルに話す。
「ミハルには辛いだろうけど。
村人を巻き込む畏れも在るけど・・・
市街戦に突入するわ。
本車を護る為、敵を倒す為に・・・」
リーンがミハルの心を気遣って訊く。
その心使いに、ミハルが頷く。
「リーンが命じるなら・・・
リーンが求めるなら、私はどんな辛い事だって耐えてみせる。
それが私の約束。
それが私の誓いだから。
心配しないで・・・私のリーン」
ミハルはリーンに微笑んで応えた。
「ありがとうミハル」
頷くリーンはみんなに命じた。
「来援部隊が来るまで、何としても村を護るのよ。一人でも多く救うのよ!」
決然と前を向いて、
「ラミル!市街戦に突入する。
キャミー!前方機銃用意。
ミリア!同軸機銃装填!
白兵戦に備えて!」
各員に決戦の指示を与えてリーンは宝玉を握リ締める。
聖魔鋼騎士となったミハル。その力で村を守れるのか。
リーンは決断した。村の中へ突入する事を。
敵兵が潜む村の中へ・・・・。
白兵戦、開始!
次回 死闘市街戦!
君は人を救えるのか?倒すのか?そして生き残れるのか?





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