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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep7 蒼空に願いを Part9

ミハルは抗う。

毛玉は護る。


そして仲間達の魂は・・・集う!

渦巻く黒雲が一点に集まる。


錐状に尖った先端部分が下方に伸び出す。

それが最早単なる空気の集まりだとは思えなかった。


どれ程の威力が秘められているというのか?

巨大な空気の圧力がどれだけ破壊力を持つのか・・・


ミハルにも毛玉にも、解ってはいなかった。


挿絵(By みてみん)



「魔法障壁展開!

 ルシちゃんっ、まりょくを貸してっ!」


右手に全魔砲力を集結させたミハルが術を解放した。

頭上に魔法陣が形成され、金色の円環が光を放つ。


「うむっ、周りの砲撃も止んだからな!この勝負に賭けるぞ!」


毛玉も防御を中断してミハルに合わせる様に、魔法障壁に力を注ぎ入れた。


神たる者ルシファーの力を受けて円環がもう一つ現れ、二重の魔法陣と化す。


「さあっ、勝負の時だよ!ルシちゃんっ、弾き返そう・・・」


そこまでミハルが呼びかけた時。

上空で錐状になっていた黒雲が、瞬時に魔法陣に突き立ったのだ。


魔法陣の中心に突き立ったのは、鉛筆の芯のように尖った先端。

それが金色の魔法陣を突き破らんばかりに強烈に押し込んで来る。


魔法陣と霧状の雲がせめぎ合う。

突きたてられた所から魔法の火花が飛び散った。

それは魔法が削られている証・・・魔法が水蒸気を含んだ空気如きに負けている証。


「くそぅ!ミハルっ、まだ魔砲力は出せるか?」


毛玉が口惜しがるが。


「駄目だよっ、これが限界なのっ!」


ミハルは既に全力全開の魔砲力を放っていた。


頭上の魔法陣が雲に負け、光の粉を飛び散らせていた。

このままでは、二人の力が尽き霧状の雲に突き破られて・・・


「弾き返すどころの話じゃないぞ?!

 持ち堪えるのがやっとなのだから・・・まずいな」


毛玉が何とか凌ごうと全力を魔法陣へと注ぎ込み始める。


「全魔力を魔法障壁に注いでしまえば・・・横合いからの攻撃には対処できん。

 ミハルの身体が無防備になってしまう・・・が。

 ここはそうも言ってはおられんか!」


この状態をなんとかせねば、ミハル共々消し飛ばされてしまう。

考えを事態打開に向けた、毛玉が決断した。


「ミハル、私も全魔力を魔法陣に集中する。

 そうしなければ弾く事もミハルを護る事さえもできんのだ。

 もし、敵が他から撃って来る事になれば・・・・すまん」


ー  もう、護り抜けないかもしれぬ・・・


口が裂けても言いたくはなかった。

神たる者が守護すべき者に告げたくはなかった。

しかも、ミハルには。

ミハルだけには弱音を吐きたくはなかった、堕神ルシファーとして。


毛玉の苦渋に満ちた声を聴いたミハルが、首を振って応える。


「ううんっ、ルシちゃんは今迄ずっと私を護ってくれて来た。

 今度もそう・・・だからっ、二人で全力を放って弾き返そうよ。

 この黒雲を弾き返して、戦艦を突き飛ばしてやろうよ!」


ミハルは毛玉の心配を判っていながら、

全力を魔法陣へと向けて欲しいと願ったのだ。


「ミハル・・・そうだな。

 撃たれた時は、二人で旅立とうか・・・遠い旅路へと」


覚悟を仄めかした毛玉だったが、ミハルに言われてしまう。


「またぁ、そんな事にはならないよ!

 ルシファーは人になるの。勝利を収めて・・・ね!」


明るい声が毛玉の心に響く。

目の前にある絶体絶命の危機にも、ミハルという娘は友を気遣う事を忘れていないのか。


毛玉はいよいよ決心した。

必ず勝って、ミハルに告白つげるのだと・・・






「あれだ、あの雲だ!

 要塞戦艦の最終破壊兵器が放たれたんだ!」


且つて、日の本を襲った同じ型の要塞戦艦が紀州沖から攻めあがって来た時にも、

沿岸の砲台目掛けて放った破壊空気砲。

圧縮された水蒸気を含んだ空気の振動波が、砲台諸共市街地を消し飛ばした。


ミハルに向けて放たれたのは、強烈な破壊力を持つ衝撃砲の一撃だと解った。


「ミハルはあんな破壊波を受け止めたのか?!

 いや、あれを弾き返そうというのか?」


ホマレは眼前で繰り広げられる戦闘に、息を呑むばかりだったが。


「それが天の使徒の力だろうさ。

 あの娘が勝てればそれでよし。

 負けたのならば・・・撤退するだけだ・・・」


冷めた目で見つめるジュンの一言に、ホマレが目を剥く。


「まだ、そんな他人任せな事を言うんか!

 あのは死力を尽くして戦ってるっちゅーのに!」


怒りが仲間に向けられる。

ホマレの矛先はジュンなのだが。


「いいか、中島3尉!

 我々があんな戦いの中に踏み込んだって・・・

 助けに行っても足手纏いなだけだと、なぜ解らないのだ!

 護ってやりたくても、我々だけの力ではどうする事もできないのだと・・・

 おのれの力不足を恥じるだけなのだ!」


ジュンの声に、ホマレがやっと気が付いた。

大高2尉が、ホマレを停めた真の理由に。

このいけ好かない魔法師の上官は、ホマレの身を案じた訳では無かった。


闘うミハルに余計な手間と心配をさせない為。

それは、少しでも要塞戦艦との闘いに集中させる為でもあったのだ。

あの魔法少女に僅かでも勝機があるというのなら、勝って貰わねばならないから。


大高 隼 有志連合軍航空隊魔砲師2尉は、

勝利に必要な如何なる冷徹な命令でも、感情に流されずに出せる<鋼>の魔女だった。


その魔女が・・・鋼の魔砲師ジュンが教えた。

指先をミハルに向けて。


「残念だが・・・敵の方が上だったな。

 やはり神の使徒とはいえど、所詮は人のか。

 魔法で実体のある巨大戦艦を相手にするのは、無茶だったという事のようだ」


ジュンの指し示す空中に、今迄以上の渦巻く空気衝撃波がミハルに襲い掛かっていた。


魔法衣が千切れ跳び、

錐状の先端がミハルの胸に突き立っているように見えた。


「ミ・・・ミハルぅ?!」


叫ぶしか、ホマレに出来る事はなかった・・・


それはあまりに残酷な光景にも映る。

まるで、ミハルが太い錐状の黒い触手に突き抜かれてしまったかのよう・・・


突き破られたかのように、身体をそり返し胸を錐にあてがわされている。


戦況を見守る者達の眼には、闘う魔砲少女がいつ消し飛ぶのか。

いつ息絶えるのか・・・そうとしか映らなかった。




この時、ホマレもジュンも。

ミハルの身に起きた変化に気付いてはいなかった。

いや、ホマレ達に気付けないのは仕方がないだろう。


その変化とは、この世に顕れぬ筈の声によって・・・


神の御許みもとに召された魂達の声は、

神託を受けし使徒・・・天使でしか聴こえる筈もなかったのだから・・・




ミハルの危機に集まるのは・・・


ホマレ達が気付かないのは当然か。

毛玉の力だけでは、いや。

ルシファーをも狙う神軍の戦艦に、集まるのは魂達。

その魂達は失われる事も厭わない。

その魂達は神の御許から現れる・・・人を滅ぼす神の手から抜け出て・・・・


次回 Ep7 蒼空あおそらに願いを Part10

君達は自らの消滅さえも厭わないのか?大切な約束を守ろうというのか?

 ・・・人類消滅まで ・・・アト 118 日

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