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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep7 蒼空に願いを Part7

ホマレは目の前に居る元上官、鋼の魔砲師ジュンに向き合っていた。


ミハルを助けようともしない、冷徹な人に・・・

岩山の如し巨大な戦艦の真下に、白い魔法衣が揺らめいていた。


紅い火の粉を振りかけられたように。


無数の弾幕に包まれて・・・・


見詰める者達は、いつ彼女が墜落するのか。

いつ力果てるのか・・・手を出す事も適わずに声を呑むばかりだった。




「私が命じられたのは、彼女が戦艦を破壊出来ないかった時。

 新空中戦艦<薩摩さつま>と共にフェアリアから後退する事・・・

 唯それだけを命じられてる・・・中島3尉、あなたもよ」


じゅんがホマレに告げたのは、ミハルを助けるでもなく唯見ていろと。

結果だけを確認し、状況如何によってはこの国を放棄すると明言したのだ。


「そんな馬鹿な!ミノリ姉さんが、そんな命令に従うはずがない!」


ホマレは鋼の魔砲師ジュンに抗う。


「私が受けてきた命令は有志連合軍統合作戦本部から出されたものだ。

 指揮下の艦船は命令に従わねばならぬ・・・軍人だというのならな」


冷めた赤道色の瞳が、ホマレを見据えた。


「馬鹿な!そんな命令が・・・ミハルは正式に有志連合軍に編入させられていやへんのに。

 唯仲間を・・・大切な人を護る為だけに闘ってくれているんやぞ!

 それを見て見ぬふりをするんやというのならっ、ウチは軍人を辞める!」


言い募るホマレに対し、ジュンがこう言い放った。


「いいか!あの魔砲師ミハルは特別なのだ!

 神と同化しているのだぞ?!我々人間の敵となった神軍の仲間なのだ!

 同士討ちとなるのならば、これ幸いだと想え!

 勝ち残るようならば味方にすればいい、神同士仲違させて潰し合えばいいのだ!」


冷血な魔砲師は、あたかもミハルを闘いの道具としてしか見てはいないのか。

ホマレに告げた言葉の端に、恨みを募らせた怨唆おんさが滲み出ていた。


鋼の魔法衣に、ホマレは目を剥く。

同じ血の通った人とも思えぬ冷血な言葉に・・・その瞳に。


「アンタは・・・あの時と同じ事をするんやな・・・

 ウチ等を見殺しにした紀州沖海戦と同じ手で手柄を立てる気なんやな?」


吐き捨てるような言い振りでホマレは項垂れた。





_____________________________________






魔法衣の端が千切れ跳んだ。

白い魔法衣の至る所に黒い染みが付けられ続ける。


紅い火の玉が魔法衣に当たる度に・・・



「うくっ?!

 痛タタっ、大丈夫ルシちゃん?まだ保てそう?」


服が破かれる度に毛玉に気遣う魔砲師ミハル。

その度に決まって毛玉は気丈に答える、心配いらないと。


「まだ、まだまだいけるぞ。

 これしきのダメージならば・・・ミハルは辛くはないのか?」


引き裂かれる度に、二人はお互いを激励し合い、心配するのだった。

唯一瞬のチャンスを待ち続け。


「もう少し・・・私の力があったのなら。

 今少しだけ私に力があったのなら・・・ごめんねルシちゃん」


掲げた右手を握り締めて、魔力の放出を続けるミハル。

巨大な戦艦を持ち上げる魔砲力にも陰りが見え始めてきた。


「何を言うのだミハル。

 これほどの力を持ち合わせる魔法使いなど人間には居らんぞ?

 流石は天使の生まれ変わり、ミハエルの生まれ変わりと言った処か」


毛玉は力の限りミハルを庇いつつ、褒め称えるが。


「そう?えへへっ、そう言われたらもっと頑張らないと・・・ね!」


ミハルには解っていた。

ルシファーが天使ミハエルの生まれ変わりである自分に、

どうあっても生き続けて貰わねばならないと考えている事に。

千年の誓いを果たす・・・その為に。


「ルシちゃん、この闘いが終わったら・・・見せてくれないかな?」


ミハルの問いかけに、毛玉が聞き返す。


「なにを・・・だ?」


ふっと息を吐いたミハルの答えに、毛玉が目を見開く。


「顔を・・・大好きなルシファーの。

 もう一度・・・見せて。そして呪いを打ち消してあげたい。

 あなたの呪いを・・・私の唇で」


挿絵(By みてみん)



それが心からの。

本当に願ってくれている事を知った毛玉が、一瞬戸惑ったかのように力を弱めてしまう。


  ((バシッ))


弾がミハルの肌を傷つけた。


「あうっ!ルシちゃん酷いよ!」


激痛に表情かおを歪ませたミハルが苦笑いを浮かべる。


「ミハル・・・そなた。

 私の心の内を・・・知らないのか?

 それにミハエルがどうされたのかも知らないようだな」


毛玉の声にミハルの方が訊ね返す。


「え?!それって・・・どいう事なの?」


毛玉は教えるかを躊躇して黙り込んだ。


「ミハエルさんが一体どうされたっていうの?

 天使ミハエルさんは神の国に戻って・・・・」


気が付いた。

今闘っているのが神の軍隊だと。

神の元に帰って行ったミハエルが、人に生まれ変わる事など許される筈が無い事に。

そして、戻ったミハエルがどうされるかを・・・


「ルシちゃん、ミハエルさんは。

 あなたの恋人ミハエルさんは・・・?」


怯える様に毛玉に訊いてみた。


「今はもう・・・ユピテルに消されていない事を祈るばかりだ。

 ミハエルの事だから、きっと奴らに歯向かっただろう。

 天使が神に抗うなど赦されない・・・ミハエルの事が心配だ」


耳を疑った。

毛玉の言葉は天使であろうが、神に背く事は出来ないという。

あの気丈な天使たる娘が、抗った事は間違いない。


ミハルは懐かしくも思える娘の姿を思い起こし、

千年前から続く約束を果たせるかが解らなくなった毛玉にどう答えていいのか、

どう慰めてあげればいいのか、言葉を選ぶすべもなくなる。


「ルシファー・・・」


呟くように名を呼びかけたミハルに対し、毛玉は気を逸らすように言う。


「だが、ミハルが本気でそう思ってくれているというのなら。

 私は嬉しく思うぞ、なにせ好きって言ってくれているのだからな」


苦笑いか、本当の笑みなのか。

測り知れずに、ミハルは戸惑う。


「ミハルの唇が私を求めるというのならば。

 この闘い、勝たねばならぬな!どうあってもっ!!」


突然の力の奔流に、ミハルの方が驚く。

毛玉はどこまで本気なのか・・・解らずに。


「ルシちゃん?あのねぇ・・・やる気出すタイミングが、ちょっとぉ?!」


毛玉に笑うミハルが右手に力を籠め直し、


「それじゃあ、約束したよ?勝てたのなら・・・絶対見せて?

 本当のルシファーを。

 人に生まれ変わる事を求めた神たる者の素顔を・・・ね!」


上空にある巨大な空洞部分から噴き出す風に髪を吹き流し誓いを願う。


「ああ!人が大切に願う事、それが約束というモノだったな。

 では今ミハルに約束しよう、この闘いに勝利して果たしてみせよう!

 人になる事を・・・千年の呪いから解放される事を!」


ミハルの胸の中で、堕神ルシファーが交わした約束。

果たして無事に遂げられるのだろうか?


まだ、敵要塞戦艦は攻撃の手を緩める事もなく、二人に襲い掛かっている。


いや、独りの魔砲師マギカガンナーミハルに向けて、

次なる攻撃を掛けようとしているのだった・・・・

ミハルの気持ちを毛玉はどう解釈しているのか。


一つの約束が2人の運命を握る。

千年の呪いを解放する為、2人は巨大なる敵と闘うのだった・・・


次回 Ep7 蒼空あおそらに願いを Part8

君は闘わねばならない、運命の使徒・・・堕神ルシファーの天使

 ・・・人類消滅まで  ・・・アト 120 日

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