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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep1街道上の悪魔Act14街道上の悪魔

挿絵(By みてみん)

クーロフ大尉の前に卑劣な歩兵部隊隊長が現れる。

アラカンの村で更なる惨劇が始まる。

ミハルはリーンに求める。

アラカンの村を、クーロフ達を助ける事を!


半軌道車から声が飛んだ。


「クーロフ大尉!貴様を更迭する。

 大人しく戦車から離れてそこに並ぶんだ。中隊全員でだ!」


あの卑劣な小太りの男が叫ぶ。


「さもないと村ごと焼き払うぞ!」


トドメの一言をクーロフ大尉に叫んで下品な笑い声を上げる。


「どうします?分隊長」


ロカモフがクーロフ大尉を見上げて訊いた。


「奴は本気だ、本気で村を焼き払うつもりだ。

 そんなことをさせる訳にはいかん。

 ・・・止むを得ない。言われた通りにしよう。

 ロカモフ、全車に命令しろ、各員降車」


「し、しかし。我々は敵と闘って散らねば・・・」


ロカモフが故郷の家族を想って瞳を曇らせる。


「ロカモフ、それは解るが、この村にはまだ住民が居るのだ。

 彼等を巻き込むことは我々の魂を地獄へ導く事となる。・・・諦めよう」


クーロフ大尉は苦渋の選択を強いられた。


「・・・解りました。分隊長の判断に従います」


ロカモフは無線のマイクを通して各車へ命令を伝えた。


中隊各車から嫌々乗員が降り出すのを確認した中隊長クーロフは。


「みんな、すまん。オレに付き合ってくれて」


クーロフは中隊全員に謝る。

そして半軌道車の男に呼びかける。


「責任は指揮官のオレにある。

 部下は命令に従ったまでだ。オレだけを処罰しろ」


そう大声で叫んだ。

しかし、男からの返事は辛辣な物だった。


「馬鹿め、貴様独りだけで済む訳ないわ。

 この村ごと皆殺しにしてやる。

 そうすれば誰も真実を口にする者など居なくなるからな」


下品な笑いを浮かべた小太りの男がクーロフに絶望を与える。


「なんだと!貴様正気かっ?!そんな事が許されると思っているのかっ!」


クーロフの叫びをよそに、集まった中隊員へ目掛けて近付いた半軌道車の機銃が狙いを定める。


後続する重戦車も、砲塔を旋回させる。


「やめろっ、悪魔め。撃つな、撃つんじゃないっ!」


クーロフの叫びは機銃の音と重戦車の砲声にかき消された。






「少尉っ、リーン少尉っ!」


ラミルが運転するバイクの後に立ち上がってリーンを呼んだ。


「ミハル!何があったの?村で何が起きているの!?」


リーンはたどり着いたラミルとミハルに問いただす。


「帝国軍が、村を襲っていますっ!」


ミハルが少尉に答える。


「何ですって?どうしてっ!?

 退却するのではなく、村を焼き払うつもりなの?」


リーンが血相を変えてラミルとミハルに聞き返す。


「違いますっ、増援に来た筈の敵が村を襲っているんです。

 元から居た戦車隊とは別の部隊が襲っているんです!」


ミハルがリーンに見た通りを話す。


「増援部隊が村を?」


リーンが怪訝そうにミハルを見た。


「そうです、小隊長。

 ミハルの言った通り奴等は仲間ごと村を、住民を焼き払うつもりです」


ラミルがミハルの言葉の捕捉を言う。


「何ですって!?どう言う事?友軍を撃つなんて・・・信じられない」


リーンが驚いて首を振る。


「あの人達は私を助けてくれたクーロフ大尉が、追放した部隊なんです。

 それを復讐する為に帰ってきたと思われます。

 リーン少尉、助けに行かせてください。大尉を、村をっ!」


ミハルは必死にリーンにお願いする。


「ミハル・・・でも・・・」

リーンは必死に頼むミハルに戸惑う。


「お願いします。まだ村には多くの住民が居ます。

 一人でも多く避難させなければ、また多くの人が殺されてしまいます。

 お願い・・・お願いです、リーン!」


ミハルはリーンの手を取って決断を迫る。

リーンは泣き出しそうなミハルの顔を見て想う。


ー  ミハル。

   本当のあなたに戻ってくれたのね。優しく強い私のミハルに・・・


リーンは昨日悪鬼の様な姿に堕ちたミハルを思い出し心の底から喜んだ。

目の前に居るミハルは、今迄以上に美しく輝いて見えた。


ー  でも、敵の兵力を考えると、危険過ぎる。無謀すぎる。

   とても奴らを追い払う事なんて出来ない


リーンは小隊の事を考えて躊躇してしまう。


しかし・・・


「少尉、行きましょう!」


リーンに向ってラミルが決然と前に出る。


「行きましょう。村を助けに!」


いつの間に来たのかキャミーが居た。


「私も行かせてください。悪漢共から村を助ける為に!」


ミリアが拳を握り締めてリーンに言った。


「オレ達も力になりますぜ。小隊長!」


キャミーとミリアの後からマクドナード軍曹以下整備班全員が揃って頷く。


「・・・あなた達・・・」


リーンは全員の顔を見る。

その全員の顔がリーンに村を救えと迫っている。

命令を求めている。


「ふっ、私は本当に良い部下を持った」


リーンの口から想いが零れる。

ゆっくりとミハルの手を離して、ぐっと全員を見回して命令を下した。


「命令!

 これより我隊はアラカンの村を襲う悪魔から村を守る為に出撃します。

 総員で!いい?これは正義の戦い。

 悪魔から住民を守る義勇の戦いよ!」


リーンの命令に全員が敬礼し、


「了解っ!」


リーンに復唱する。


「よしっ、総員戦闘配置!乗車っ!かかれっ!」


リーンの号令で、皆が走り出す。

ミハルは感謝の面持ちでリーンを見詰る。


「・・・ミハル、分が悪い戦いよ。覚悟は良い?」


リーンがポツリと言った。


人を撃つ事にもなりかねないと、リーンはミハルの心に訊いた。


「はい。譬え人を撃つ事になっても迷いません。

 彼女が教えてくれたから。

 思い出させてくれたから。

 強くなれって言ってくれましたから。

 もう大丈夫です、リーン・・・」


ミハルの顔は、今迄見てきた中で一番輝いて見えた。


「強くなった・・・強くなれたんだねミハルは」


そんなミハルの勇姿をリーンは眩しそうに見詰めた。



「先輩っ!これをっ!!」


砲塔側面ハッチに入るところでミリアが拳銃を差し出す。


「ミリア?」


差し出されたベレッタに一瞬躊躇し手を出しかねたが。


「うん!」


ミハルはそれを受け取って腰のベルトに差し込む。


「小隊長も、受け取って下さい」


ミリアが砲塔後部キューポラに乗り込もうとしたリーンに、ベレッタを渡す。


「解ったわミリア。さあ、行きましょう!」


リーンも拳銃を腰のベルトに差込み、マイクロフォンとヘッドフォンを着けて命令を下す。


「よしっ、戦車前進パンツァーフォーっ!」




「早く逃げろっ!村から出るんだっ!」


ロカモフ上等兵が住民達を逃がそうと必死に叫ぶ。


逃げ惑う村人達に機銃弾が撃ち込まれ、数人が凶弾に倒れる。


「畜生っ、犯罪者共めっ!」


ロカモフが戦車に近付こうとすると、目の前を機銃弾がなぎ払う。


「ロカモフ!反撃するより、住民の避難を優先するんだ!」


クーロフ大尉が何とか一人でも多く住民を逃がそうと試みるのだが。


((グワーンッ))


建物に重戦車の砲弾が撃ち込まれ、破片でまた数人の村人が倒れる。


「畜生っ!人非人共めっ!それでも人間か!悪魔めっ!!」


クーロフは自軍の重戦車に怒りを向ける。


「分隊長!闘うべきです。奴等は人間では有りません。

 奴等は敵です。

 我々と同じ帝国の誇りある軍とは思えません!」


ロカモフが闘う事を求める。


クーロフは生き残った中隊員を見る。

その顔はどの顔も怒りに燃え闘う事を望んでいる。


クーロフは決断した。

正義の闘いを。


「各員、手近な車両に乗れっ。

 相手はKG-1だ、敵わなくとも動けなくしろ。

 村人が逃げ出せるまで盾となって守れっ!」


決死の形相でクーロフは命じた。


「解りました。大尉っあなたの部下であった事を誇りに思います!」


一人の戦車兵がそう言って、別れの挨拶と敬礼をして走り出す。


「あの世で会いましょう!」


また一人が走り出す。

そして口々に皆決別の言葉を残して走り出した。


「ありがとう、みんな。

 あの世とやらでまた逢おう。こんな汚れた世界ではない所で・・・」


クーロフは皆を見送ってから、ポケットの写真を出して指で撫でる。


「さよなら、みんな。

 先生は約束を守ってやれない。許しておくれ」


そう一言呟いてからロカモフ達自車乗員に命じた。


「行くぞ、あの世とやらに奴等も連れて行くのだっ!」


決然と呼び掛ける。


「おう!」


4人の乗員は力強く頷く。









-  間に合って!

   お願い、神様どうかクーロフ大尉を、みんなを護って!


ミハルは照準器の中に見える炎と煙が立ち昇る村を見詰めて祈る。


全力で走るマチハと力作車。

リーンがマイクロフォンを通してキャミーに訊く。


「友軍が到着する予定時刻は?」


「はいっ、10:00です。後1時間!」


キャミーがキューポラに振り返って叫ぶ。


「それまで持ち応えれば・・・何とかなる」


リーンがレンズを通して燃える村を見る。


「敵は戦車に絞りましょう。ミハル、相手は解る?」


リーンの質問に、


「はい。クーロフ大尉の隊は全て中戦車です。

 新式のM4型が一両と、後はM3型。

 相手はKG-1重戦車に絞れます」


ミハルがキューポラを振り返って返答した。


「KG-1か。相手にとって不足は無いわね。

 奴等を村からおびき出すわよ。

 ミハル、遠距離射撃で此方に注意を向けさせて」


リーンはミハルに戦闘開始を命じる。


「ミリア!徹甲弾装填!

 目標っ村を襲う悪漢共!村の入り口で停車しているKG-1。

 距離2600。

 奴のどてっぱらにケリを入れてあげなさいっ!ミハルっ!攻撃始めっ!」


リーンの言い回しに、ミリアとミハルそしてラミルとキャミーがニヤっと笑う。


「ミハル先輩っ、徹甲弾装填よし。

 いくらでも撃って下さい。

 今日は全弾全弾種め一杯積んできています!」


ミリアが昨日ミハルが言った<魔鋼弾に全弾を代えろ>と言った事で多く魔鋼弾を積んだが、

徹甲弾も榴弾もそのまま積んでおいたのだ。


「ミリア・・・うん、解った。・・・やるよっ!」


ミハルはミリアに感謝の面持ちで頷く。


「はいっ!やりましょう。お姉様っ!」


決死の表情でもミハルの事を心底信頼しているのか冗談を言う。


ー  ありがとう、ミリア。

   私の事を信用してくれて、こんな私に気を利かせてくれて


「ミハル、お前の思う通りに走ってやる。

 お前の一部にしてやるから、命令しろ私にどう走れと!」


ラミルが前を睨みながらミハルに叫んだ。


「ラミルさん・・・解りました。お願いします!」


「敵の歩兵にかまうな。あたしが倒す。ミハルの邪魔はさせないからな。いいな!」

 

キャミーが機銃のボルトを曳きつつそう告げた。


「キャミー。解った、ありがとう!」


そして3人が一緒に唱える。


魔鋼騎士マギカナイトと共にあらん事を!」


ー  みんな、私を信じて・・・くれている


そっとミハルの肩に手が掛かる。

振り返ると、リーンがミハルに微笑み掛けていた。

その碧き宝玉を持って。


「はい!リーン。

 私も護ります。皆を、小隊を・・・全ての友を!」


ミハルの言葉に頷いてリーンが叫ぶ。


「ミハル!攻撃始めっ。目標っ敵重戦車!撃てえっ!」


ミハルの指が十字線に捉えたKG-1重戦車に向ってトリガーを引いた。



遂に戦闘の火蓋が切っておとされる。

敵の重戦車KG-1を狙うマチハ。

ミハル達の死闘が今始まる。

次回 街道上の悪魔  Act15

君は死闘の末に何を見るのか!

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