表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
488/632

第5章 蒼空の魔砲師 Ep7 蒼空に願いを Part2

巨大な空中戦艦を目の当たりにしたミハル。


果敢に挑む魔砲師2人は、進攻を食い止めるべく闘うのだった・・・が。

雲のベールを脱ぎ棄てた様に、円形の岩山が進撃を続ける。


複数の円環が中心部を囲み、巨大な質量を空中に浮かばせていた。

先程まで全貌が解らなかったが、今は円形の全体像がつかめるまでになっていた。


「直径は凡そ2キロ半。

 上下の高さは300メートルもあるんや。

 あれが日の本を襲った奴と同じならな!」


ミハルに教える緑の魔法衣を吹き来る風に靡かせた蒼髪の少女が、


「奴らの目標ははっきりしとる。

 間違いなく本土・・・フェアリアの中心部へと向かっているで!」


空中に浮かぶ巨大戦艦は一直線に、小国を灰燼に帰す作戦を執ってきている。

そう教えるホマレに、魔砲師ミハルが言った。


「だとしたら・・・どうだというのホーさん。

 私はみんなが居る皇都を護るだけだよ?

 どんな強大な敵が襲って来ても・・・今迄と何も変わりはしないから。

 悪魔の要塞がフェアリアを襲うというのなら。

 それを防いで、護り抜くだけなんだから」


目前まで迫り来た要塞の岩肌がぽっかりと開き、

そこから邀撃するかのように小型機が発進して来る。


「どうやら・・・それは願い下げのようらしいで。

 ミハル、先ずは邀撃隊を何とかしてしまわんといかんようやで!」


ホマレは魔砲ロッドを機銃に替えて、小型機に応戦する事を促した。


「そうだね、先ずは本体に攻撃しやすいように。

 邪魔な小型機を駆逐しなきゃ、近づきにくいもんね!」


自分も槍から機銃に替えて、戦闘態勢を執りながら。

出撃してきた地点を記憶に留めるのだった。






「敵空中戦艦出現!

 形式は本土を襲った円盤型戦艦と同じ物と思われます。

 けれども規模が拡大されている模様!」


見張り所からの観測報告が未だ修理が終わらず、

臨時に戦闘艦橋に使っている第2艦橋で、主だった士官達が戦艦と全く違う事で苛ついていた。


「まだ補給艦は到着しないのか?

 通信士、状況はどうなっているんだ?」


航海長のミツル3尉が伝声管に怒鳴るが、良い答えは期待出来なかった。


「今さっきも言いました通り、無電は封鎖されたままですから。

 なんとも答えようがありません、航海長!」


拡声器からの返事にミツル航海長はブチ切れたように椅子へ座り込んだ。


「補給が来なければ、この主砲だって動かせない。

 それに、新式の砲弾が来なければ当たったとしても全て無駄弾になるだけだから」


レナ3尉も、補給が滞っている事に苛立ちを隠せないでいる。

二人の若い士官オフィサーの後ろで、

艦長服のミノリだけが落ち着き払ったように腕を組んで座り込んでいた。

唯、艦首の方を見詰めたままで。


ー 我々のふねは、まだ目覚められてはいない・・・


ミノリ2佐は、半眼のままで何かを待ち続けていた。





軍港を無視して、巨大な岩山が空を進む。

陸上まで50キロ・・・時間にして後1時間と言った処か。




挿絵(By みてみん)




「これで7機目!

 もうすぐ弾切れになりそう。

 ホーさんはどう?弾は残ってるの?」


周りにはまだ数十機の敵が群れ飛んでいる中を、二人の魔砲師だけで応戦していた。


「そうやな、ざっと50発程残っている程度や。

 補給を受けるタイミングを計らんと・・・」


魔法陣から新たな弾倉を出し、リロードしたホマレが答える。

二人は次から次に飛び出してくる戦闘機との空戦で、

少なからず被弾していた。

白い魔法衣が擦過傷を受けて、煤けた様に所々(ところどころ)黒ずんでいる。


「魔法衣じゃなかったら、とっくに墜とされていただろうね。

 私の盾の魔法が効かなかったら危ない処だった。

 でも、このまま小型機を相手にしているだけじゃぁ、喰い止める事なんてできない」


ミハルは迫りくる敵戦艦を睨んで、焦りを隠せなかった。

小型機は戦艦の中から失われた数を補給し続けている。

5機を墜とせば5機を発進させ、10機墜とせば10機を。

まるで無尽蔵に繰り出せるぞと言わんばかりに。


「これじゃぁ、何機墜としてもキリがない。

 あの発進口を叩いて、出現させない様にしないと・・・」


敵機の出てくる場所は一つ。

洞穴みたいにぱっくりと開いた岩肌の中から出てくるのを確認していたミハルが、


「ホーさん!

 私があの射出口を攻撃するから、援護してくれないかな?」


魔砲の一撃で破壊を試みようと、頼んで来る。


「そ・・・そうやけど。

 出来るんか?相当今迄魔砲力を使っていたみたいやが」


ホマレがミハルの限界を心配して躊躇するが。


「任せて!まだブレイカーの一撃や2撃、放ってみせれるから!」


そう答えたミハルの魔法衣が、胸元に紅き宝石を着けたエクセリオ・モードと変わった。


「ふむ・・・その威力なら。

 ミハルの全力全開の一撃なら、破壊出来るかもしれへんな。

 賭けてみようか・・・魔砲師ミハルのブレイカーショットに!」


ホマレは敵小型機を牽制しながら、ミハルを促す。


「ホーさん!

 あの射出口を一直線に狙える所まで、エスコート宜しく!」


ミハルに頷いたホマレが緑の円環を羽ばたかせ、真一文字に切り込んでいく。

立ちふさがる敵機の群れに、機銃を乱射して。


ミハルは右手に持った機銃を槍に戻し、


「ルシちゃん!ブレイカーの出力を全開へ持っていってくれないかな。

 唯の一撃であの戦艦を破壊出来る程の威力まで」


宝石に願いを込めたのだが。


「ミハル、あの質量を唯の一撃で破壊することは不可能だ。

 精神世界ならばいざ知らず。

 この現実世界では魔砲の威力は限定されている・・・つまり。

 奴を破壊するにはミハル一人の砲撃では無理なのだ・・・」


毛玉の言葉に一瞬躊躇ったミハルが、それでも頼んだ。


「そっか・・・ブレイカーでも。

 だけど、それなら尚の事頼むよルシちゃん。

 あの射出口だけでも破壊しなきゃいけないんだから」


ミハルの願いに毛玉は難しい声を返す。


「ミハル、そののちは?

 あの岩山を喰い止める方策はたっているのか?」


守護神ルシファーの言葉にクスッと笑ったミハルが。


「何も・・・その場次第だよ。

 あんな大きな敵と戦った事なんてなかったし・・・」


場当たり的なこれまでの作戦を繰り返さざるを得ないと答える。

戦況次第で闘い、これまで生き残ってきた過去を思い起こし。


「瞬間瞬間で戦術は変わる・・・そう云いたいのだな。

 ふむ・・・善かろう。そなたに全てを賭けるだけだ。

 これまで通りに、これからも」


ルシファーの声に頷き、槍を握り締めたミハル。

前路を啓開するホマレに続き、真一文字に目標点に飛んで行った。


ホマレは立ちはだかる敵機に機銃を放ち、撃墜を果たす事より

追い散らす事だけに専念し続ける。

ミハルを射撃位置へと導く為に。


「準備はええか?

 もう直ぐ射撃ポイントへ着くで!」


後ろを振り返らずに射撃体勢を執るように促す。


「了解!

 射撃準備宜し!

 エクセリオ・ブレイカー発射まで2秒だけくれる?」


体制を整えて照準するまでの2秒間、敵からの攻撃を防いで貰いたいと伝えた。

ミハルの声に頷き、近寄ろうとする敵機を睨んで。


「目標点到達!

 周りの敵に構わず、撃つんやミハルっ!」


ホマレはミハルをガードしつつ、機銃を撃ち続ける。

近づいた一機がたちまち火を噴き錐もみ状態に陥る。


周りの敵に気を逸らす事なく、ミハルの眼は一点を捉えた。

敵機が飛びたってくる射出口を。


「撃ちます!

 ホーさん、私の軸線に載らないで!」


右手の人差し指が、魔砲のトリガーを引き絞った。


「私の全力全開!これがエクセリオ・ブレイカー!」


現れ出た魔砲の砲口から火の弾が飛び出る。


ミハルの魔力で極大化された魔鋼の弾は、軸線に載っていた敵機を薙ぎ切りながら

目標の射出口へと飛び込んでいく。


飛び立つ瞬間の敵機を巻き込んで、魔法の弾が開いていた射出口の内部に突き立った!


「やったな、ミハルっ!」


ホマレが喝さいを叫んだ。

ミハルも射撃の手応えを感じて魔砲を槍へと戻した。


 ((グワアアァンッ))


射出口から紅蓮の炎が噴き出され、

壊されたげーとがぐにゃりと出入り口を塞ぐ様子が見て取れる。

だが・・・それだけだった。


破壊は限定的に抑えられたのか、直ぐに炎も煙さえも治まってしまった。


「くそぅ・・・あれだけの破壊しか。

 ミハルの全力弾でさえも、あれだけのダメージしか与えられないというのか?」


ホマレが残念そうに言ってからミハルの元へと来て。


「目的の破壊は出来たんや、ここは一時的に引き返そうやないか」


しばし呆然としていたミハルの手を掴んだホマレが促した。


「う・・・うん。解った・・・・」


挿絵(By みてみん)



ホマレに促されるままに、ミハルも後退する事にした。

自分が撃った全力の弾でも、一部しか破壊出来なかった現実をの当たりにして。


「このままじゃぁ・・・フェアリアは。

 リーンの帰る場所がなくなっちゃう・・・約束を果たせなくなっちゃう」


振り返り見詰める空の要塞は、何事もなかったかのように悠然と浮かんでいた・・・

全力全開のエクセリオ・モード必殺魔砲でさえも・・・


ミハルは失望と共に退くのだった。


与えた損害も直ぐに修復されてしまった事に、ミハルは闘う術を失おうとしていた。

絶望感に苛まされ・・・


次回 Ep7 蒼空あおそらに願いを Part3

君は知らず知らずに助けを求めていた・・・心の奥に居続ける大切な女神ひとに・・・

 ・・・人類消滅まで ・・・アト 125 日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ