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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep6 蒼空の魔砲師 Part9

再び蒼空へ舞い上がった魔砲師マギカガンナーミハル。


戦いの最中、彼女に聴こえたのは?

蒼空に黒い染みが無数に描かれていく。

フェアリアの海岸線には、国土防衛の為に集められた兵士達が集っていたのだが・・・


一機の黒い機体が駆け抜けて行った。

低空で飛行する小型機の後方には、地上からの対空砲弾が追いかけるように突きあがっていくが。


「馬鹿っ!あたら無駄弾だって解っている癖に!

 あの機体がどうして一機だけで突っ込んできたのか解らなかったのか!」


ミリア少尉が、味方の指揮官に悪態を吐く。


ミリアの考えはこうだ。

一機の敵機だけで突っ込んできたのは、自分達が居る場所を調べる為。

隠された砲台や、陣地の正確な位置を知る為なのだと。


「そんな事も判らないのか?!

 この後に来る地上掃射に耐えられるとでも思ったのか?!馬鹿め!」


味方指揮官に怒りをぶつける様に、ミリアが怒鳴った。


「もう、この陣地は裸同然になってしまった・・・」


最後は諦めに似た呟きしか出す事も出来なくなってしまうのだった。






蒼き空の上で・・・・


黒煙が落下する機体から流れ出す。


「5機目やな!そろそろ、一旦離脱するでミハル!」


機銃の先端が煤で黒く変色して見えた。


「そうだね、ホーさんがそう言うのなら」


後続する魔砲師が、白の魔法衣を翻して敵機編隊から離れだした。

白い魔法衣は、そこかしこに擦過痕が残り今の戦闘が只事では無かった事を証明していた。


「大分やられたなぁ、ミハルぅ」


自分も緑の魔法衣に傷跡が付けられているというのに、ミハルの身を案じるホマレ。


「そういうホーさんだって。

 あの編隊に二人で突っ込んだんだから・・・軽く済んだほうだよ」


ミハルが魔法でホマレの魔法衣を修繕しながら苦笑いを浮かべる。


「センキューな、ミハル。

 自分の方も修繕してくれや・・・な」


ミハルの魔法で治された魔法衣を払い、再度の攻撃に備えるホマレに。


「うん、だけどこのままじゃあ・・・」


残った敵機が爆撃を始めてしまうと眼を曇らせてしまう。


未だに27機が攻撃に向かっているのを確認し、焦りがミハルを支配する。


「そーやけどな、ミハル。

 こっちも精いっぱい戦っているんやから。

 爆撃される方はたまらんやろーけど・・・」


二人は敵編隊が二手に分かれて別々の目標へ照準をつけていくのに気が付いた。


「待てよ、ドックの方に行くのは解るんやが。

 もう一方って・・・何を狙ってるんやろか?」


ホマレの指さす方には、主力とは違う1編隊4機が爆撃進路を執っていた。

陸上に向かう敵編隊の目標とは何か?


二人はドックに向かう主力を叩くか、その4機に向かうのかを決めかねていた。


「4機だけで爆撃する位の僅かな目標なんやろな。

 味方の損害で考えたら、ドック方面の敵を叩くのが本筋なんやが・・・」


ホマレも多数が向かった主力を叩くべきなのではと、ミハルに訊いたのだが。

そのミハルはじっと4機の方を見詰めて、目を凝らしていた。


ー 聴こえた・・・呼ぶ声が。

  確かに私の名を呼んでいた・・・ミリアの声が・・・


呼びかけられた必死の叫びにも似た、友の声。

自分の名を呼び、別れを惜しむような・・・

切なき叫びが耳に届いたように感じたミハルが、聴こえて来たと思われる方角を見詰めていた。


「どないしたんやミハル?」



挿絵(By みてみん)



ホマレが呼んでも、片手で制したミハルが4機の向かう目標と思われる地上に目を向けたまま。


「ホーさん、ごめん。

 私はあの4機を追うから・・・爆撃させる訳にはいかないから・・・」


訳を告げずに魔法衣を翻して、光の円環を羽ばたかせ飛び出した。


「おっ、おいっミハル?!」


訳を告げられなかったホマレも、戸惑いつつ後を追う。




<ミハル・・・気が付いたようだな。

 あの敵が向かっている所には、そなたの友が居る事に>


毛玉の声が心に話しかけてきた。


切迫する事態に、ミハルは守護神ルシファーに頼みを告げる。


<ルシちゃん、お願い。

 もっとスピードを出させて!あの敵が爆撃を始める前に追いつきたいの!>


魔砲の力を速力へ転換出来るように頼んだ。


<よかろう・・・>


毛玉の了承する声がした瞬間に。


 ((ゴウンッ))


胸の宝石が眩く輝くと、足元の円環から延びる羽根が一回り大きくなって。


「うん、ありがとうルシちゃん!これならなんとか間に合いそう!」


スピードが急激に早くなった事に感謝する。


ミハルは真一文字に敵機に挑みかかって征く。

手にした機関砲をキラリと輝かせて。




「小隊長!2号車から負傷者を救出し終わりました。

 今の内に後退させましょうか?」


小型機の機銃掃射によって、小隊は2番車両を撃破されてしまった。

自分達の周りには、撃破された車両と破壊された陣地が薄く煙を吐き出し霞んで見えていた。


「いや、今更どこへ逃げても手遅れだ。

 それより、負傷者は3号車に収容して物陰に隠れるんだ。

 車両の中の方が敵弾の殺傷から逃れられやすい・・・」


キューポラから半身を出して、空を睨むミリア少尉が部下達に教える。


「いいか、敵の爆撃が始まって周りに爆弾が落ち始めたら、

 なんでもいい・・・叫べ。耳を抑えて大口を開けておくんだ。

 さもないと気圧で鼓膜を破られてしまうからな。

 直撃を受けない限り、爆撃では破壊出来ないんだ。

 我々の中戦車は・・・な!」


部下達を励ます意味を含めて、ミリア少尉は自分達の乗る車両の装甲を称えた。


「はっ、はいっ!小隊長!」


小隊長の微笑みに、部下達は一様に安心したような顔を頷かせた。

だが・・・当の本人の心の中は。


ー これまでにも何回も砲撃を喰らった事があったけど。

  本格的な爆撃なんて一度も受けた事がないもの。

  自分で言って、本当の処は解りもしていない・・・

  みんな、すまない。もしあの世とやらへ行く事になるのなら・・・

  皆と、一緒に行こう・・・死ぬのなら一蓮托生が戦車乗りの運命だから・・・


上空に数機の大型機が迫って来るのが見えた。

正面から爆撃進路を執って来る大型機の下部爆弾倉が開いているのが解り。


「来るぞ!敵は我々を潰しに来たようだ。

 諸君、それではまた後で・・・な」


ミリアは喉頭マイクロフォンを押して、全車に別れを告げる。

 ー 後で ー ・・・その一言にどんな意味を含めたのであろう。


ミリアはキューポラから車内に戻る際に、上空を見上げて呟くのだった。


「さよなら、ミハル先輩。

 これで最期かも知れません・・・最期に言わせてください。

  ありがとうございました!今迄の御恩に感謝致します!」


空に向けて敬礼を贈った戦車隊小隊長ミリア少尉は、心の中でも叫んでいた。


・・・そう。

訣別の叫びを・・・さよなら、と。




「アカン、追いつかへん!」


緑のホマレにも、蒼き魔法衣に追い縋る事さえも出来なかった。


「なんちゅー速さなんや!

 このウチが遅れをとるなんて・・・」


1編隊4機を血相を変えて追いかけるミハルのスピードは半端ではなかった。

高速を誇るホマレでさえ、引き離されていくのが信じられない気持ちだった。


「もっと・・・もっと・・・もっとぉ!」


ホマレを引き離すミハルは、それでもまだスピードが足りなく感じていた。


「ルシちゃん!後少し・・・もう少しで良いから速くならないの?!」


毛玉に増速を願うのだが。


<これ以上は無理だぞ!

 この速力が限界なんだ、ミハルの身体が壊れてしまう!辞めるんだ>


使徒の身体を考えて、守護神ルシファーが増速を拒むが。


「何を言ってるのよルシちゃん!

 こんな緊急事態に私の身体を気遣うなんて!いいから加速して!」


言い出したら聴かない損な娘にため息を吐いた神が更なるスピードを与えるのだった。


「間に合え!

 ミリアに、ひと傷でも与えるのなら・・・只ではおかない!」


瞳を怒りで滾らせたミハルが叫ぶ。

手にした槍が機銃ではなく、魔砲と化す。


「一撃で!

 この魔砲師の全力全開で!

 あなた達を噴き跳ばすっ!」


胸の魔宝石が妖しく赤く染まり抜かれて行った。

今、魔砲師ミハルの手にするのは魔砲と呼ばれる魔鋼の砲。

魔法使いが手にした力を増幅させて具現化させる魔法の砲。


「ミリアぁっ!今行くからね!!」


叫びとともに、魔砲師マギカガンナーミハルの瞳が輝く。


「エクセリオ・モード全開!

 これが蒼空の魔砲師ミハルの全力全開!


    エクセリオ・ブレイカー !!」


砲身が彼方の敵に向かって火を噴く。


1編隊4機の大型機に、一発の砲弾で全機を墜とせるのか?


光の弾が飛び行く。


それは、重爆4機が爆撃を開始する・・・ほんの数秒前の事だった。


ミハルの必殺奥義、<<エクセリオ・ブレイカー>>が敵に放たれる!


4機の敵に、たった一回の魔砲で全てを叩けるのか?

全力全開!

ミハルは友のピンチには、必ず現われ救ってこれたのだが?

今回は・・・どうなるのか?!

ミリアの運命は如何に・・・


次回 Ep6 蒼空そうくう魔砲師マギカガンナー Part10

君の全力全開の一撃は奇跡を呼び込む事が出来るのだろうか・・・

 ・・・人類消滅まで ・・・アト 129 日

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