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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep6 蒼空の魔砲師 Part8

警報が鳴り、敵が現れた事を告げていた。


挿絵(By みてみん)



ミハルは大急ぎで魔法力の補給をするのだった。

水平線の彼方にから迫りくるのは、雲霞の如き黒い塊。


それに向けて、残された砲台が仰角を掲げる。

海上の艦も、陸上の高角砲も・・・


「対空戦闘!目標軍港に迫る敵航空機械、撃ち方用意!」


各砲台の指揮官が決死の表情で空を見上げ、指揮棒を目標に向ける。


「いいか、先程の戦闘で解っただろうが。

 狙って当たるもんじゃない事が。

 私達の戦車砲で対空砲火を打ち上げても焼け石に水って事が。

 だから今度は、敵の攻撃の邪魔を出きれば良いと考えるんだ。

 いいな、弾をばら撒くだけが戦闘ではないと心掛けろ!」


赤毛の戦車少尉が、生き残った部下の3両に命じる。

眼に双眼鏡を当て、目標を攫んだ少尉ミリアが最後に呟いたのは。


「ミハル先輩、今度ばかりは唯では済みそうにありません。お別れです・・・」


自分の周りに配備されていた他隊の車両は、

無駄弾を撃った挙句目標にされて戦力の半数近く失わされてしまっていた。


「次は・・・私が狩られる事になるでしょう。

 いいえ、我々戦車は航空攻撃に晒されれば、無力なのだと思い知りましたから。

 あの規模の攻撃を喰らえば・・・目標にされるのは・・・

 撃破されるのは火を見るよりも明らかでしょう・・・」


ミリアはここで陣地を護り、死ぬ覚悟を心の内で決めていた。


「ミハル先輩・・・出来れば最期に伝えたかったです。

 先輩の事が好きでしたと、姉のように慕っていたのだと・・・

 それだけが心残りです。・・・さようなら」


ミリアは蒼い空一面に迫りくる敵を睨んで両手を握り締めるのだった。





「呆れた奴やな、ミハルは・・・」


心底ため息を吐くホマレが機銃を確認しながら、

傍で山盛りにあったぼた餅を平らげつつある、魔砲少女に悪態を吐いた。


「だって、腹が減っては戦が出来ぬって言うじゃない」


一つが握り拳ほどもあるぼた餅を両手で掴み、モクモクと食べるミハルが反論しつつ。


「せやかてなぁ・・・そないによう腹に納まるもんや。

 ウチなんて二つがやっとやったのに・・・底なし胃袋め!」


ホマレが口を押えて、うっぷと咽返る。


「私の魔砲力は食べ物を要求するんだよ、これが・・・」


嬉々として甘いぼた餅を口に運び続けるミハルが言い訳のような返事をすると。


「ほーか?そんならしょうがないけど。

 そんなに餡子あんこ食べて、太らんのか?」


 ((ギクッ))


ホマレの一言に首をギギギィっと巡らせたミハルが。


「だっ、大丈夫だよ!食べた物は魔砲力に還元されるんだから・・・多分」


冷や汗を垂らして言い返した。


「半分は自分の好みで食べてるんやないのかいな?

 ミハル・・・餡子・・・好きなんやろ?」


そっけない感じで訊かれたミハルが。


「そー。

 餡子なんてフェアリアに来てから食べる機会が無かったからね・・・って?!」


挿絵(By みてみん)



思わず本音が出た・・・・

引っかかったミハルに、思わず噴き出し、笑う魔砲師ホマレ。


「あーっはっはっはっ!やっぱ、ミハルは素直で良い子なんやな!」


腰に手を当て、大笑いされたミハルも釣られて笑う。

笑い終えた二人が、ユニフォーム姿で整備班員に向けて命じた。


「そろそろ出撃するから。

 機銃弾装填確認よろし・・・発進準備にかかる!」


食べ終えたミハルも立ち上がり、


「今度は初めから全力で行くから。

 全弾魔鋼弾を装填してください・・・お願いします」


デバイスの槍に機銃をシンクロさせて、魔法の弾を装備させた。


「装填よし、予備弾倉にも装填完了!」


野村2曹が申告する。


「艦橋から指示、発艦急げ。

 直ちに発艦し、敵より高度をとれ・・・との命令です!」


発進準備が整った二人の士官が、発艦促進機に近づき。


「ミハル・・・いくで!」


「うん・・・ホーさん。今度はホーさんが1番騎を務めてくれないかな?」


ホマレが先に促進機に載って、親指を立てる。


「解った・・・着いて来るんやで、ミハル!」


頷いたホマレ3尉が、発艦指揮官に合図する。


「中島3尉、発進!」


指示灯が赤から青に換わり蒸気カタパルトが射出される。


緑の円環を羽ばたかせたホマレの姿が、上空へと駆け上がって行った。


ー これが最期になるかもしれない・・・


ミハルは足元の甲板を見詰めて思い、翔飛くつを地に押し付ける。


「離れていてください。全力で戦う姿へと、変身しますから」


ミハルが整備員達に告げて、右手を掲げる。


ー ルシちゃん・・・私を抗う姿に替えて。

  一番強い力を放てる姿へと・・・成らせて!


ミハルの願いにルシファーが応える。


「シャイン・トゥ・エンバランス! エクセリオモードォ!」


ミハルの体が金色に包まれる。

髪が蒼く染め抜かれて、瞳が群青色に変わった。


光の中で変身が始まる。



蒼髪を靡かせて光の空間に揺蕩たゆたうミハルの身体は、

ユニフォームが一つ、また一つ・・・魔法衣に替えられ纏われていく。


白い魔法衣を羽織った胸元に、

ルシファーの力を宿した紅き宝石が羽を伸ばした蝶のように貼り付いた。


薄っすら眼を開けたミハルの腕に蒼きナックルガードが3重の装甲を纏う。


翔飛が金色の円環を足下に描かせる。

それから伸びた金色の羽根が羽ばたいて、

金色に輝く粒が舞い散り、魔砲少女ミハルの姿を包み込んだ。



「装着完了!発進しますっ!」


整備員達に報告した魔砲師マギカガンナーミハルの右手が上がった。


「シマダ大尉っ、発進!」


指示灯の青い光が後方へと流れ、直ぐに体が打ち出される。

ホマレの後を追い蒼空に駆け上る二人の魔砲師に、整備員達が帽子を打ち振っていた。




「ミハルっ、それが全力の魔法衣っちゅーもんなんやな?」


ミハルの胸に輝く紅き装飾宝石を眺めて、物珍し気に訊くホマレが気付いた。

今迄のミハルに無い、きつめの瞳に。

青さの深い、吸い込まれるような輝きに。


「ホーさん、これが私の全力。

 神托の使徒たるミハルの姿・・・エクセリオモードなんだ」


左髪に付けたピンクのリボンが揺らめく。

蒼き髪に映えるリボンが、ホマレの眼に焼き付いた。

自分の前に立つ魔砲師が、

まるで克て一度だけ見た事のある深淵の女神のように映ったホマレが、

頭を振ってからもう一度ミハルの姿に目をやると。


「ホーさん?どうかしたの?」


見詰められているのに気付いた白い魔法衣の使徒が、少しだけ微笑んだ。


「ミハル・・・ミハルが観えたんや。

 あの人の姿に・・・日の本を護ってくれた・・・あのお方に」


ホマレの声に小首をかしげたミハルが、


「あのお方?・・・それは誰の事?」


そう訊いた時の事だった。


「来よったで!ミハルっ!」


ホマレの叫びがミハルの声を打ち消した。





ホマレの叫びと連動したように、辺り一面に対空砲火の弾幕が開いた。


「敵は護衛の戦闘機隊を前面に繰り出して、後続する攻撃機隊に経路を与える気やな!」


ホマレに続いて上昇を続けて、敵機の行動を見守るミハルに。


「ウチ等は後続の攻撃機を叩く。

 護衛機が戻ってくる恐れもあるから、そこにも注意せなアカン。

 攻撃隊をあの数のまま陸上に向かわせたら、どれ程の被害が出るか想像も出来んからな!」


ホマレの言うのももっともだとミハルは思った。

戦闘機隊に続いて向かって来るのは、一度手合せした事のある重爆。

殲滅17型と呼ばれている6枚フィンの着いた大型機。

戦闘機の何倍もの大きさを誇り、

容易く撃墜出来なさそうな防御力を持つ危険な敵だった。

それが群れを成して飛び来る様は、ミハルにも危険度の高い敵と映った。


「あの数に二人で挑めば、護衛機が来なくても。

 防御機銃だけでも脅威だよね?」


ミハルの問いに、ホマレがにやけて。


「そやかてな、ほぅっておくほど人が良い訳やあらへんやろ?

 防御砲火を掻い潜って一機でも多く叩くんが、ウチ等に求められた務めって事なんやろーしな!」


ミハルに向かって攻撃準備を促す。


「まぁーたく、ホーさんってば。

 殲17には機銃じゃ歯が立たないって言ってたのは誰でしたっけ?!

 私の魔鋼力で出現させられるのは75ミリ戦車砲キャノンガンまでだからね?」


ミハルがデバイス槍を機銃に変換させて愚痴ると。


「それで結構!

 いいや、今回は機銃でええんや。

 なんでかと言うとやな、魔砲力切れでまた卒倒されても適わんし。

 一撃で落とせるのは一機だけなんやから・・・勿体ないわ!」


そう言ったホマレが自分の機銃を差し出して。


「こんな事やろうと思うて、今回は特別な魔鋼弾を用意させといたんや。

 この弾はな、徹甲榴弾いうてな。

 装甲に喰い込んだら高熱を先端から噴き出して厚い防御壁を食い破る・・・」


ホマレが弾の種別を得意そうにミハルに教えていると、


「破砕徹甲弾ね、それならフェアリアにもあったけど?」


頷きながらミハルがとうに知っている事を伝えると、得意半面がっくりと肩を竦めた。


あっさり答えてしまったミハルの前で、独りの損な娘がイジケル。


「そっか・・・フェアリアにもあったんだぁー・・・そっかぁ・・・」


イジケルホマレに苦笑いを浮かべて、


「まぁまぁ。それより突入タイミングに近いよ?

 どう?ツッコミマスカ(棒)」


1番騎に促す。

微笑みを浮かべるミハルに向かって、機銃を構えなおし。


「せやなぁー、ほなら・・・イッチョウ派手に行くで!」


身体を翻した緑の魔砲師が急降下に入る。


「了解!」


後に続くミハルも、機銃の安全装置を解除しながら身を翻した。




二人の魔砲師が編隊中央上空から、逆落としに突っ込んで来るのを紅いレンズが捉えた。

一斉に上方防御機銃座が、鎌首を擡げて・・・


 ((ダダダッダ))


突っ込んで来る魔砲師目掛けて発砲を開始した。


4機編隊が都合8つ。

併せてその数32機。


重爆撃機の編隊は密集体形のまま、フェアリアに向かって突き進んでいた。

再び飛び上がったミハル。


今度は全力で迎撃するつもりだったのだが。


敵の大型機は仲間の方へと向って行く。

その時、ミハルの耳に聞えて来たのは?


次回 Ep6 蒼空そうくう魔砲師マギカガンナー Part9

君は大切な友の声を耳にする。闘う戦友の叫びが君の心を突き動かす!

 ・・・人類消滅まで ・・・あと 130 日

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