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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep6 蒼空の魔砲師 Part7

挿絵(By みてみん)



有志連合軍飛行士ユニフォームを着てみました!


本当なら次の章から着せようと思っていましたが。

先走ってしまいました・・・(笑)

フェアリアの艦隊は、入港していたほぼ全ての艦が多かれ少なかれ被害を受けていた。


「艦隊の内、出航出来るふねは早急に北方のガレン港に避難させよ。

 損傷が激しい艦は乗員をおかに上げる様に指示。

 急ぐように伝達したまえ」


フェアリア国防軍、臨時司令官のドートル大将が命令を下す傍で。


「叔父様、この国はどうなっちゃうの?」


幼さの残る言葉使いの、リーン第2皇女が訪ねてくる。


「宰相姫、御心配召さるな。

 我々には有志連合軍の後ろ盾がございますれば。

 そう容易く敵の跳梁をのさばらす事もございません」


心配そうな皇女に、諭すように話す年嵩の叔父が振り向いた。


「でも、叔父さんの顔が怖いから。

 本当に大丈夫なの・・・港が燃えていたようだけど?」


娘のような年頃のリーン皇女に、問い詰められて苦笑いを浮かべた司令官ドートルが。


「はっはっはっ、リーン皇女殿下は心配性ですな。

 まあ、一国の宰相なれば、致し方ありません事ですが・・・」


苦笑いの下に見え隠れする辛苦を、うら若い金髪の姫に見透かされているように感じていた。




軍港内の火災は防衛隊の消火作業にも関わらず、鎮火の目途が立たずにいた。

硝煙と黒煙が上がる中を、人々は走り回っているのだった。

逃げ出す者、火災に立ち向かう者。

そして死に逝く者を助けようと肩を貸す者・・・


軍港の内外は、まさに戦場だった。



「後、数時間もしない内に、敵の第2波が襲ってくると思われる。

 各員は持ち場において最善を尽くせ。

 損害個所の復旧が済み次第、本艦はドックを出て補給部隊の到着を迎えに行く」


源田2佐が命令を下す最上甲板に、生き残った乗員達が疲れた表情をみせて整列していた。


艦橋上部に爆弾を喰らった損傷部分を、

そのままにして取り敢えず艦の安全を図る事に決した艦長代理のミノリに。


「源田2佐、補給が来なければこの艦に搭載されてある魔鋼機械パワーユニットも動かせませんが?」


航海科士官で黒髪を後ろで束ねた、江名えなみつる3尉が質問というより現状を報告する。


「主砲の動力についても、高角並びに機銃群についても・・・同様です」


掌砲術長の矢作やはぎ 麗奈れな3尉も、栗毛の髪を靡かせてミノリに申告する。

二人は亡くなった先任士官達の後任として、

ミノリからそれぞれの担当部署を率いる主任に抜擢された者としての意見を述べたのだった。


「それは解っている。

 間に合えば・・・そう言ったまでだ」


補給物資を乗せた飛行船の到来如何いかんによって、

執るべき行動が違うと補足したミノリ艦長代理は、居並ぶ将兵に告げる。


「我々の行動によって、戦局が変わるとだけ伝えておく。

 この窮地を抜け出すには、並外れた努力が求められている事だけは間違いない。

 諸氏の健闘を期待する」


そう結んだミノリ艦長代理が、檀上をおりた。




「よう、ご苦労さん。

 邀撃戦では大分墜としたみたいだな、ホマレ」


搭乗員室に訪れたミノリを迎え、ホマレが敬礼を贈って迎えると。


「ミノリさん、これから私達はどう戦えばいいのですか?

 たった5人の魔砲師だけで、どう防ごうとお考えなのですか?」


有志連合軍の飛空士ユニフォームに袖を通しながらミハルが訊いた。


「うん、それなんだが。

 我々だけでは防ぎようがないから・・・後退しようと思うんだが」


言い辛そうに顎に手を添えて、艦長代理としての検討を述べる。


「後退?逃げるんかミノリ姉さん?」


咄嗟にホマレが訊き返してきたが、ミノリはミハルを見たまま黙っていた。

その顔に伺えたのは、言葉とは正反対の心つもりをしているかのように。

ミハルに答えを求めるかのように、まるで鷹のように鋭い瞳で見つめていた。


「姉さん?何を・・・ミハルに言わせたいんや?」


見詰合う二人の横で、ホマレが先程艦橋で話した事を思い起こす。


「ホーさん、ミノリ艦長代理はね。

 後退するなんてこれっぽっちも思われていないんだよ?

 私の魔砲の力で護り抜け・・・そう仰られているんだよ・・・ねぇ、ミノリ2佐」


ミハルの問いかけに、静かに頷くと。


「フェアリア皇国第1の魔砲師とは、どれ程の力を備えているのか・・・

 神の使徒とは、どれ位の戦闘能力を有しているのか。

 今、我々が頼りとすべきなのはミハル大尉の魔砲の力。

 神のイージスとは、どんな力があるというのか・・・

 その答えを私達に教えて貰いたいのだ」


抑揚を抑えた声で、ミハルに尋ねる。

その求めに、ミハルの胸の奥にいる神が現れる。

紅き毛玉となって。


「狐の神よ、我とミハルの力だけでこの国を護れというのは虫が良過ぎはせぬか?」


ルシファーの声がミノリの守護神に届く。


「コンッ、我はミノリの判断には口出しせぬ事になっておる。

 この娘の力にはなろうが、決断には反論しないと約束したのでな」


狐の神獣たるイナリの言葉がミノリの口から零れ出た。


「ならば・・・その娘にも闘って貰わねば、癪にそわん。

 ミハルだけに危険な賭けを背負わされるのは守護者として納得できん!」


いつになく毛玉が苛立った声を出してミノリの守護神に怒鳴りかかった。


「ルシちゃん・・・そんなに怒ったらいけないよ。

 戦争なんだから、命じる人の気持ちも考えてあげないと」


毛玉に向かって諫めるミハル。

その表情は、何かを決めて穏やかに見えた。


「ミハル、そなた・・・まさか?!」


ニコッと微笑んだミハルが頷きながら、


「うん、そのまさかだよ。

 ここから逃げたりしたら、フェアリアを護って戦う友達にどんな事が起きるか。

 私一人でどれだけ防げるか判らないけど・・・逃げ出すのは嫌なの」


有志連合軍の飛空士ユニフォームを着こんだミハルが毛玉に頼んだ。


「だから、ルシファー。

 私は闘う・・・敵がどれ程強力でも。

 譬えこの身が敵弾に曝され様とも・・・私は逃げ出さないから!」


ミハルの答えにミノリが頷く。

狐の神も・・・



「ミハル?!」


止めに掛かろうとした毛玉を遮って、ホマレがミハルの手を握り締めて言った。


「この阿保ぉう!この大馬鹿者おおばかもん

 ミハルは阿保や大馬鹿者や!ウチと同じ位の虚け者や!」


握った手に力を込めて。

涙を浮かべたその瞳は、決断に感謝するのか?

それとも慰めの涙なのか?


ホマレは握った手を放そうとはしなかった。


二人の魔砲師マギカガンナーに、毛玉も狐の神も。

唯、黙り込んで行く末を案じるだけだった。



  ((ブビィー))


控え室のスピーカーがけたたましいブザーを鳴らした。


「艦長代理、只今偵察に出ていた徴用監視艇から緊急電が入りました!

 至急第2艦橋までお越し願います!

 敵部隊第2波来襲、今度は本格的攻撃隊の模様です!」


スピーカーを見上げた皆の顔が強張った。

もう、後退する事も適わない。


唯、闇雲に戦うしか方法は無いと・・・


3人と二人の神が顔を揃えて頷き合った。

一時の休息も儘ならないというのか・・・


敵の進攻は停まらない。

ミハルは覚悟を決めていた・・・闘い続ける宿命に抗う事を諦めずに。


次回 蒼空あおそら魔砲師マギカガンナー Part8

君は友と語り合った、いつかは闘わずに済む時が来てくれるだろうかと・・・

 ・・・人類消滅まで ・・・アト 131日

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