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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep6 蒼空の魔砲師 Part6

ミハルは帰還出来た。

飛び発った時とは雰囲気が違う母艦に。


破壊された艦橋を見上げて、心を痛めるのだった・・・

艦橋を見上げて立ち竦んだ。


帰還した後、ホマレは直ぐにミノリ2佐を探して壊された艦橋に上がって行った。


「艦橋に直撃を喰らったんだ。

 指揮系統が無事に済んだとは思えない・・・どうなるのかな?」


ミハルは心配そうに破壊された艦橋を見上げた。




「ミノリ姉さん、艦長代理としての命令ですか?

 それとも・・・もっと上層部の判断ですか。

 この無茶な命令は・・・我々に死ねと命じたに等しいんやで?!」


ミノリ2佐に喰って掛かる3尉。

その貌は、信じられない命令を拒否していたのだが。


「私の判断・・・いいえ。

 これはフェアリア防衛を命じられた者全てに与えられた命令だと思いなさい」


硝煙の臭いが残る第2艦橋で、先輩の2佐と実施部隊小隊長の3尉の会話が途切れた。


後ろに立つ航空士官後輩に、ミノリは背を向けたまま窓から見える外部の景色を眺めて。

ただ一言繰り返すのだった。


「中島3尉、フェアリアに派遣が決まった時・・・こうなるのは覚悟の上だった筈でしょう?

 我が日の本と同じような目に、他国がならないよう務めるのが陛下の大御心おおみこころだと、

 そう考えて・・・そう自分に言い聞かせてきたんじゃなかったの?

 建前だけは・・・そう思う事にしたんじゃなくて?」


建前だけは・・・そう。

ホマレは望んでフェアリアへ来た。

日の本で闘い抜き、生き残った・・・自分だけが。


あの日最後まで海の上で飛んでいられたのは、たった独り自分だけ。


ホマレ上飛曹だけが生きて飛んでいられた、あの空で・・・あの戦いの後で。

それは悲しみの空。

そして悲劇は繰り返されるというのか・・・


黙って先輩の言葉を聞いていたホマレがポツリと呟く。


「ミノリ姉さん、次は自分の番やと言うんやね。

 神軍との戦いでみんな逝ってしもうた・・・あの空と同じやと言うんやね?」


寂しそうに、悲しそうに・・・辛そうな声が漏れ出た。


「今度は自分の国では無い所やけど。

 護って死ねるというのならそれでも良いんや。

 けどな、今度は仲間もこんな数しか居らへんのに、どうやって護り抜けと言うんや? 

 魔砲師って言えばウチとミハルの二人しか手練れは居らへん。

 後はヒヨコ達だけなんや、護れるとはこれっぽっちも思えへん・・・」


ホマレの呟きに、艦長代理ミノリが言った。


「散る桜、残る桜も散る桜・・・だよ、ホマレ」


窓を見詰めたまま答えたミノリ2佐の声が、覚悟を仄めかしていた。


「ミノリ姉さん、解った・・・ウチは覚悟を決めた。

 でも、ミハルは。ミハルだけは生かしておいてやりたいんや」


暗に、ミハルを指揮下から外す事を提案したが。


「彼女は・・・ミハルは知っているでしょうね。

 私達がどうしようとしているのかを。

 知ったうえで決して戦闘から逃れようとはしない。

 いや、むしろ自ら志願しても戦いに飛び立つ・・・友を護る為に」


ミノリが振り返り、ホマレの提案を一蹴する。

ホマレにもその事は考えなくもなかったのだが。


「せやかてミノリ姉さん、ミハルには家族が生きて待っているんや。

 ウチ等みたいに独り者じゃないんやで?!」


ホマレの言葉に微笑んだミノリがこう返した。


「だったら、ホマレが勧告してみれば良い。

 シマダ大尉が受け入れるかどうか。

 お前から話してみれば解るさ・・・」


ポンと肩に手をかけて、ホマレに勧める。





搭乗員室で硝煙を拭っていたミハルの元へ、ホマレが戻ってきた。


「どうだった、ホーさん。ミノリさんは何て言っていたの?」


先に話しかけようとしていたホマレが、気勢を先んじられる。


「い、いや。なんもあらへんかったわ。

 次の空襲までに整備と補給を間に合わせろってだけ・・・」


苦笑いをしながら答えるホマレの声を遮って。


「ホーさん、次に襲って来る敵って・・・さ。

 日の本に来襲した巨大な敵と同じ物なんじゃないの?

 確か、街を一撃で吹き飛ばす位の戦闘能力を備えた・・・空の要塞。

 ・・・違う?」


魔法の力を解除したミハルは、自前の私服に戻っていた。

その上着を脱ぎながら、


「だったらさ・・・今度は私も全力を出して戦わないといけないよね。

 日の本から救援に来て、闘って亡くなった人達の為にも、

 絶対に護り切らないといけないよね」


ホマレはミハルの覚悟に言葉を失う。

私服を脱ぎだしたミハルの背中に向けて、漸く出たのは。


「馬鹿っ!私達は確かに日の本から派遣されて来た有志連合軍やけど。

 ウチ等に気を使わんでええんやで?!

 ミハルは闘わんと、家族の元へ帰ればええんやで?」


ミハルに付き合う事はないと、そう言ったつもりだったが。


「あははっ、駄目だよホーさん。

 友達を見捨てて逃げ出すような事が私に出来る訳が無いのを知ってるくせに。

 私を有志連合軍に編入させたがったのは、どこのどなたでしたっけ?」


ミハルは脱ぎかけの服に手をかけたまま答える。


挿絵(By みてみん)



「ミハル・・・すまんっ!堪忍や!

 こないな事になろうとは思わんかったんや。

 もう少し時間があると思ってたんやけど、増援も間に合わんのや!」


頭を垂れてミハルに謝るホマレに、ミハルが答える。


「私もね。

 私にもあるんだよ?

 自分だけが生き残ってしまった戦闘の呪縛が。

 それに、たった独りで周り中敵だらけの戦場を駆け巡った時の記憶も。

 だから、ホーさん。

 私にも戦わせて・・・あなた一人で戦わせたくないから。

 力の限り、友を護る戦いを私にも手伝わせて」


背中で教える・・・悲しき戦場の誓いに、ホマレはミノリが言った言葉を思い起こす。


 ((ふうぅっ))


深いため息を吐いた後。

ホマレは腰に手を添えて、戦友に言った。


「ほならミハル。

 次の闘いでもよろしゅーにナ!

 ウチ等で、このフェアリアを護り抜いてやろーや!」


胸を張って、大切な友に宣言した。

自分達の運命がどうであれ。


唯、勝つだけではない本当の意味の護るべきモノの為に・・・


戦いの合間に。

艦長が変わりミノリが指揮を執る最中さなか


2人の空戦魔法師にミノリが言った・・・


「ミハルの魔砲力が頼りなのだ」・・・と。


それは新たに襲い来る敵に立ち向かえと命じたに等しい事だった・・・

たった2人の魔砲師に・・・闘えと命じたに等しい

群がる敵にたった2人だけで、抗えと・・・・


次回 蒼空あおそら魔砲師マギカガンナー Part7

君はこんな唱を知っているでしょうか?

 <<散る桜、残る桜も・・・散る桜>>

戦いに臨む者への鎮魂歌レクイエム・・・

・・・人類消滅まで ・・・アト 132日


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