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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep6 蒼空の魔砲師 Part5

一合戦済んだミハル達。

その合間に起きたのは、戦争の悲劇を垣間見せた惨劇・・・


作者注・今回想像されるとぞっとする部分がございます。さらりと読み流してくださいませ

二手に分かれた半数近くの敵機が、真っ直ぐ軍港めがけて殺到して来た。


軍港周辺に配備されていたフェアリア国防軍の戦車大隊に、

中戦車小隊小隊長に任ぜられていた歴戦の少尉ミリアが居た。


「敵が低空で向かって来るまで発砲を控えろ!」


喉頭マイクロホンで指揮下の3両に命じた少尉の見詰める先には、

遥か沖合の空戦による黒煙が浮かんでいた。





敵小型機の大編隊が軍港上空に到達した。


「敵機の大編隊、本艦上空に接近!

 戦闘配置のまま待機!我々がドック内に居る事が判っていない模様!」


戦闘艦橋で指揮を執る士官達は、敵に見つかっていないと多寡を括っていたが。


「見張り所からの報告あり!

 敵編隊の一部がこちらに向かって来ます!」


スピーカーからの報告が流れ出た時、艦橋が緊張に満たされた。


上空で旋回しながら目標を選別していた黒い機体のキャノピー内にあるレンズが、

ドックに隠れていた有志連合軍<魔鋼戦闘艦>を熱源として認識した。


編隊から4機が急降下に移った。


「敵機直上!急降下!!」


艦橋上部の観測員の絶叫が伝声管を震わせた。





「ドックに直撃弾!」


部下の叫びに振り返ると、軍港端にある大型艦用のドックから火柱が立ち上っている。


「隠れていた船に、命中したようだな。

 ドックにまで攻撃するなんて・・・どんな船が隠れていたんだろう?」


ミリアは黒煙が立ち上る軍港を見詰め、

次に狙われるのが自分達が護っている、燃料タンクだと確信していた。


「海軍さんには気の毒だが、我々は自分達が護るべき場所を護るしかない。

 我々にも空が飛べればなぁ・・・」


ミリアはため息とも嘆きともとれる息を吐いた。

眼前に繰り広げられる殺戮と破壊に、自分達の末路を重ねて。





衝撃を受けた時、ミノリ2佐は飛行指揮所で弾薬の補給について考えていた。

突然観測員の絶叫が聞こえ、次の瞬間には弾き飛ばされるくらいの爆風が襲ってきたのだ。


「敵弾、艦橋上部に直撃!戦闘艦橋応答なし!」


艦橋との連絡を受け持っていた野村2曹が絶叫する。


「なんですって?!」


弾かれる様に艦橋が見える所まで出た2佐の眼に、黒煙に包まれた艦橋上部が映った。


「整備員!弾薬の補給に味方が降りたら、すかさず補給しろっいいな!」


艦橋目掛けて奔り出した2佐の命令に、野村2曹が敬礼する。



ミノリ2佐は爆弾の衝撃で曲がりくねったラッタルを上り、戦闘艦橋まで辿り着いた。


「うっ?!」


そこで観たモノとは・・・


「副長!・・・艦長!」


壁一面に血糊が貼り付き、辺り一面に肉片が飛び散っていた。

艦橋前部で爆発したのか、窓の部分が消失して、骨組みだけが残っていた。


「かっ艦長!」


数人の遺体が転がる中で、漸く人の形を保っている艦長を見つけたミノリが駆け寄ると。


「飛行長か、私の他に生き残った者はいるか?」


抱き起こした艦長が苦しい息を吐きながら訪ねてくる。

周りを見渡したミノリが残念そうに首を振ると、


「では・・・先任は君だな飛行長。

 この艦の指揮権を委譲する・・・君が艦長となれ、いいな」


初老の艦長がミノリに命じた。


「しかし、艦長っ!」


まだ息のある艦長を差し置いて、自分が艦の指揮を執る事に躊躇ったのだが。


「源田2佐、これからは君が艦の指揮を執るのだ。

 この艦を生かすも殺すも君の・・・いや。

 狐の神様が為されることなのだ・・・解ったな」


艦長の言葉にミノリは目を見開くと。


「判りました艦長。

 只今より本官が艦長代理を務めます・・・御心配なさらず・・・」


ミノリが応じた時には、初老の艦長は事切れていた。

息を引き取った艦長を横たえて、ミノリが先ず初めに命じた事は。


「只今艦長、副長が戦死された。

 本艦の指揮は、源田2佐が委譲を受けた。

 これより艦長代理として艦の指揮を執る!」


艦長代理としての伝達。

そして・・・


「被害状況を報告せよ。

 通信士官と航海担当士官は直ちに第2艦橋へ来たれ!」


艦の指揮を下部の第2艦橋で執る事を宣言した。



挿絵(By みてみん)







味方の艦隊はほぼ壊滅的被害を受けつつあった。


敵機は縦横に飛び回り、目標を捉えては銃爆撃を反復する。

対空砲火で数機にダメージを負わせたが、

敵には軽微な損害を与えられたとしか取れなかった。

このまま敵機に跳梁を続けさせたのなら、軍港は使用不可能になってしまう事だろう。


「味方の砲火が大分弱くなってきたな。

 相当な被害を受けているみたいや・・・残念やけど」


ホマレの呟く声が耳に入ってくる。

自分達に出来る事をしようと言ったミハルの心に影が堕ちる。


「アイツ等の良いようにさせるのは気が引けるのだが・・・

 かと言って殴り込もうにも、敵がばらけすぎているからなぁ。

 一機を狙えば他の奴等に囲まれてしまうんやろな」


ホマレの呟きは、ミハルの考えと同じだった。


「手を出せば・・・囲まれちゃう。

 でもこのままでは、味方の被害が増大して取り返しが利かない損害を受けてしまう」


ジレンマに堕ちた二人が敵の手薄な処を探していた。


回り込もうとしていた2人を発見した敵機が、慌てるように逃げ出した。


「なんや?

 なんで逃げるんや、ウチ等2人だけやのに?」


囲まれるかと思っていたのに、拍子抜けしたホマレが逃げる敵機を睨んで悪態を吐く。


「ホーさん、敵が逃げてくれたのなら、一度母艦に帰ってみたら?

 被害がどれ位なのかも気になるし・・・それに魔法力の補充を出来たらいいな?!」


ミハルは被害の程度を確認しようと勧めた。


「そやな!先ずは母艦に帰って補給をせなアカン。

 弾薬もやけど、腹ごしらえせな・・・ハラペコやからなぁ~」


ミハルと同じ様に魔法力の補充に食事を摂ろうと笑ったのだが、

その眼はとても笑っているようには見えなかった。


「ホーさん・・・うん。帰ろう」


魔砲師2人は連れ立って飛び発った母艦に帰った。

目にする事になる悲劇の現場へと・・・




ホマレとミノリは今後の事を話し合うのだが。

勝ち目のない戦と知りながら命じるものも、

命じられる者も・・・覚悟を決めざるを得なかった・・・


次回 Ep5 蒼空あおそら魔砲師マギカガンナー Part5

君は勝てるとしんじているのだろうか?いや、その前に生き残れるのだろうか?

 ・・・人類消滅まで ・・・アト133日

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