第5章 蒼空の魔砲師 Ep6 蒼空の魔砲師 Part3
遂に始まる空戦!
ミハルは今、空の魔砲師に覚醒する?!
ホント?!
遠く・・・遥かな空から・・・・
胡麻粒の様に見える、小さな黒い物が無数に現れだした。
それに連れて、低くくぐもった何かの音が聞こえ出す。
陸の上からも観えたソレに、ある人は無関心に。
また、ある者は忙しく持ち場へと奔るのだった。
「敵機が70キロまで近付いた模様!
各員持ち場を離れるな!対空戦闘用ー意っ!」
地上部隊指揮官が、部下達に戦闘準備を備えさせる。
「対空砲火を掻い潜って来るヤツラに、注意されたし!」
分隊長の檄が飛ぶ。
だが、多くの兵員達は慣れぬ闘いに不安そうだった。
ー 当たり前だよね、今迄空の闘いなんて起きなかったのだから。
この世界に空軍なんて存在した事無かったんだもの・・・
赤毛の小隊長が空を睨んで想うのは。
ー ミハル先輩。私にもお手伝いさせて欲しかったのですが・・・
有志連合軍に編入されたかったのですけど。
今は、このフェアリアを護り抜く事が先決ですから・・・
一人キューポラから双眼鏡で海上遠く見詰めて・・・
「ミハル先輩、どうかご無事で・・・」
ミリア少尉は彼方で戦う魔砲師ミハルの身を案じ続けた。
「右2時の方向!
高度差200メートル・・・突撃開始!」
白い魔法衣が反転急降下に入る。
「了解っ!後続すんで!」
緑色のリボンが揺らめいた。
漫然と編隊を組んで、空を圧していた<神軍>の戦闘機隊の上空から2騎が降って来た。
密集隊形を組んだ編隊は臨機応変の体制を執れない。
いの一番に狙われるのは・・・
「敵の先頭を叩く!つづけっ!」
白い魔法衣が真っ直ぐ降下しながら筒先を的に向けて・・・・
「一撃を加えた後はそのまま下方に突き抜けるっ!」
急降下する2騎から黄色い弾が戦闘の2機に向けて放たれた。
(( ガン ガガンッ ))
25ミリ魔鋼弾が黒い機体に突きたった!
(( ボワッ ))
あっという間に2機が相次いで火を噴き錐揉み状態に陥る。
「このまま急降下で敵編隊をやり過ごす!着いて来てホーさん!」
撃墜に拘らずに、一撃離脱を図る。
「よっしゃーっ!了解ミハルっ!」
一番騎に続いてホマレ3尉が敵編隊の間をすり抜けてくるのを確認し、
敵が追いかけてくるかに注意を払う。
空中機動で勝る魔砲師の戦法は。
「多数の敵を惑わし続けて、戦意を萎えさせる・・・相手が人ならば。
だけど、今相手にしているのはマシン・・・人工知能を持つ機械。
唯我武者羅に闘う戦闘機械だから」
視線の端に、追いかけてくる敵機を捕捉した魔砲師が放つ次の一手は。
「ホーさん!このまま低空で敵をやり過ごすから!
敵機の射撃に当らないでね!」
後続する2番騎に注意を与えてから、姿勢を制御する。
ちょうど敵機が向って来る上空に身体を廻し、機銃を構え直す。
追いかけてきた2機編隊に的を定めて。
「海面すれすれまで降下を継続。
敵機が激突を怖れて引き返す所を下から狙い撃つ!」
普通の飛行機ならば旋回能力の限界点で必ず引き返すと読んだ。
白い魔法衣の魔砲使いの考えは間違ってはいないのだが、敵機は並外れた能力を備えていた。
「くっ!まだ追いかけてくるの?
このままじゃあ、こっちが海面に衝突しちゃう・・・」
引き返すポイント近くになっても追いかけてくる敵機に焦りが生じるが。
「ミハルっ!こっちも根性入れて突っ込もうや!」
2番騎のホマレが更にスピードを上げるように促してくる。
「そうだね、我慢比べって事よね!」
2騎は連なって降下を続ける。
我慢比べ・・・相手は機械だというのに?
ぐんぐん海面が近付いて来る。
目の前一杯に海面が競りあがって見える。
振り返ると敵のスピードが落ち始めているのが解った。
どうやら敵は限界点に到達してしまったようだった。
足掻くように機銃弾をばら撒いて、引き起こしにかかる。
「今だ!ミハルっ、撃て!」
自らも射撃を開始して、3尉が叫んだ。
((ドドドッ))
重い射撃音が海面に木霊する。
2人の魔砲師から放たれた弾が2機の下面を射抜くと。
射抜かれた所から火を噴き出し、もんどりうって海に水柱を上げて墜ちた。
「撃墜!撃墜!!」
ミハルは一降下で、4機の撃墜に納得顔で頷くと。
「これからは一撃離脱の繰り返しになる。
これだけの敵機に囲まれたんじゃぁ、只で済みそうにもないからね!」
僚騎のホマレに次に執るべき戦術を話す。
「そりゃそうや!ウチ等2人で相手にするには多過ぎるからなぁ」
ちらりと敵の数を探って、次に狙う敵を指で教える。
「ミハルっ、あいつ等を叩くのはどうやろか?
編隊を崩して取り残された殿に近い所に居るヤツやけど?」
ホマレに言われるまでもなく、既にその敵に的を絞っていたミハルが頷き。
「行きましょう!このまま低空で下方に廻り込んで・・・
急上昇で下から狙い撃ちます!」
2騎は連れ立って敵に向かう。
敵戦闘機の数はまだ46機以上居た。
ミハル達は、まだまだ闘わねばならない事を判っていた・・・
敵機が噴き出す煙で蒼空が濁り、火炎で空を焦がす。
戦いはまだ始まったばかりだった・・・・
空の戦闘は、あっという間に勝者と敗者を決める。
ミハルは引き続き祖国フェアリア防空の戦闘を継続するのだった・・・
空戦ナウ!
次回 Ep6 蒼空の魔砲師 Part4
君は僚機と共に敵に立ち向かう!数の上では圧倒的に不利だというのに?!
・・・人類消滅まで・・・アト 135 日