第5章 蒼空の魔砲師 Ep5 暗雲 Part9
気絶していたミハル。
やっと気がついた時・・・
ー 頭がくらくらする・・・私どうしちゃったんだろう?
何故だか悪夢を観たような気分だった。
誰かが胸の中から呼びかけて居る様な・・・
<ミハルっ?!どうしたんだ?
何故気絶したのだ?このままこいつらの勝手にさせておいてもいいのかい?>
いつも一緒で、神たる者の声が聴こえている。
だけど、何故だか判らないが、胸の間を擦られて居る様な感覚が・・・・
ー ・・・って?!
「わあぁっ?!まだやってたのぉっ?」
時間がどれくらい経ったのかも判らないが、2佐の頭は未だに・・・
「ぱふぱふ・・・」
((ひくっ))
ミハルの頬が引き攣る。
「いい加減に・・・しなさいよぉっ!」
右手から炸裂する魔法が・・・いいや、拳骨が。
((すかっ))
ミハルの右手を寸での処で避けた2佐が。
「むぅ・・・これでは判らん。
魔砲でも撃って貰わんことには・・・な」
避けたミノリ2佐が、ミハルに迫る。
「さあ!撃って御覧なさい!本気の一発を!」
余裕の顔でミハルに嗾ける。
チラリとホマレの顔を観たミハルが思い出す。
<そう言えば。
ホーさんが現われた時にも・・・こんな事があったっけ。
私の魔砲力を測る為に、エッチな事をしてきたっけ>
ホマレのニヤニヤ顔を見たミハルが、2佐に向き直ってから。
「あの・・・ミノリ2佐。
私が本気を出すとでもお思いですか?
この蒼き騎士たる魔砲師ミハルの攻撃を
受け流せるとでもお思いでしたら、大間違いですよ?」
右手の魔法石を差し出して警告する。
「ミハルっ、アカンって、そんな事ミノリ姉さんに言ったら!」
聴いていたホマレが慌てて停めたが。
「ホーさんは黙っていて!こんな破廉恥な事されて黙っていられますかって!」
半分本気で怒るミハルの言葉に、ホマレは頭を抱える。
「しもうたーっ、売り言葉に買い言葉やったかぁ!」
頭を抱えて後退り、逃げの一手を計る。
「ミハル大尉、あなたの魔砲力・・・測らせて貰うわよ?!」
ミノリの手が魔法陣を描き出し、結界を作り出す。
「なるほど・・・かなりの使い手のようね・・・でも!」
ミハルが相手の力量を測るかのように身構えると。
ミノリが左手を差し出し、手の先に防護魔法陣を描き出す。
緑の魔法陣がまるで行く手を遮るかのように円を描き、呪文が輝く。
「そんな魔法陣!簡単に突き破ってあげるからっ!」
ミハルの攻撃魔砲力が右手の先に飛礫となって収束し始める。
「ふふふっ、それはどうかしら・・・ね」
ニヤリと笑う2佐に構わず、魔法を放とうとしたミハルに。
<待てミハルっ!奴の魔法陣は!>
何かに気付いた毛玉が叫んだが。
「シュートォッ!」
ミハルの攻撃魔砲が放たれてしまう。
ニヤリとほくそ笑むミノリ。
眼前に迫る魔砲の光に、防護魔法陣を押し出す。
「力はなかなかだけど・・・ね。
知識量はまだまだ荒削りのようね、ミハル大尉は!」
<いかんっ!>
成り行きを覗っていた毛玉が叫びながら、防護術を繰り出す。
((カキュンッ))
ミハルの放った魔砲力がミノリの防護魔法陣に吸い取られて・・・
向きを替えてミハルに向って来る。
「うわっ?!」
慌てて自分の魔砲力を弾き返そうとしたが間に合わなかった。
((バキュッ))
間一髪の処で、ルシファーの防護魔法が間に合って、魔力が打ち消される。
「ほほーうっ、ミハル大尉。
あなたは誰かに護られているようね・・・あなたより余程強い魔法力を持った人に」
ミノリが結界を解除しながら肩で息を吐くミハルに言った。
「はぁはぁ・・・そうよ、私にはルシちゃんが居てくれるから・・・」
肩で息を吐きながら、胸の中に篭もる毛玉を呼び出す。
「私がミハルの守護者たる者だ、見知っておけ・・・って?!」
現われた毛玉をいきなり摘んだミノリが。
「なんと?!毛玉が喋ったか!
これは初めて観たぞ。
これは実に面白そうだ・・・貰っておくぞ」
ヒョイとポケットに納めるミノリを唖然と見送るミハル。
開けた口を閉め忘れるホマレ。
「大体判った、ミハル大尉の魔力がな・・・
この守護者たる毛玉にこそ力があると言う事も!」
ポケットに納めた毛玉をポンと叩いて、上機嫌で笑う。
「うわわっ?!ルシちゃんっ?」
「ひゃああぁっ?!ミノリ姉さんっ、その方は・・・」
ミハルとホマレが慌てて2佐に相手が誰で、どんなモノ名のかを教えようとすると。
「なんという・・・非常識な娘だ・・・
日の本人は、礼儀という物を知らんのか?!」
再びミハルの胸から現われ直した毛玉が憤慨する。
「わあぁっ?!ルシちゃんっ、一言断ってから出て来てよぉっ?!」
ミハルがビックリして眼を廻す。
「そ・・・そうか、神様だから当然か!」
ポンと手を叩いてホマレが納得する。
「神様・・・だと?この毛玉が・・・か?」
ミハルの前に現れた毛玉に向って信じられないと肩を竦めるミノリ2佐に。
「まあ、良く言われるが・・・その通り。
私はミハルを守護する神たる者、ルシファーだ」
毛玉が尊大に言うと、またミノリが掴まえて。
「あなたが彼の有名な堕神ルシファー?!
見た目と古代伝承とではこうも違うのか?!」
毛玉の嘴を摘んでブンブン振り回す。
「あわわっ、ミノリ姉さんっ!いくらなんでもやり過ぎやで!」
恐れ戦くホマレが止めに入るが、
「ルシちゃん・・・許す」
ミハルが守護神ルシファーを許可する・・・人に対しての戒めを。
((ボンッ))
嘴を握って振り回していたミノリが焦げた。
「うわぁーっ、言わんこっちゃない・・・」
ホマレが頭を抱える。
ミハルがどうだといった顔でミノリを見据える・・・が。
「はぁーっはっはっはっ!これは本当に神様なんだな。
私を黒コゲに出来るとは!確かに西方の神たる者のようだ!」
普通ならば焦げたりしたら卒倒する筈なのに、意にも介せずミノリは笑う。
「むむっ?!お前・・・人ではないな?
正体は何者なのだ?言ってみよ!」
紅き毛玉がミノリの正体をいぶかしむ。
「ふふふっ、そちらが西方の神なのならば・・・
私の守護者もまた神たるお方・・・私の後ろにおわすのは・・・」
((ピョコッ))
ミノリのお尻にひょっこり出たのは。
「な?
なんだその尻尾は?!」
2本の尻尾が、フリフリされる様を観て。
「ミノリ姉さんには・・・お稲荷様が憑いておられるんや・・・これが」
ホマレの解説に、ミハルと毛玉が顎を外す。
「なんですってえぇっ?!狐の神様がぁっ?!」
ミハルにも聴き覚えがあったようだ。
毛玉にも東方にいるとされていた狐の神様に、初めて会った事に驚きを隠せなかったようなのだ。
「わーっはっはっ!どうだ、驚いたか!」
ひょっこり現われた狐の尻尾に、惑わされるミハルと毛玉。
「あああっ、もう・・・神秘の世界に突入しちゃったのね・・・訳が判んなくなって来た」
「ミハル・・・私にも少々慣れが必要なのだが・・・な」
少女と神様が汗を垂らして狐憑きの魔女を見詰める・・・のだった。
ミハルも毛玉もあまりの事に唖然とする。
まあ、いきなりな展開だからショウガナイが。
狐憑きの上官に天使な少女、毛玉の神・・・・まさに、異世界ですな。
ミハルに向き合う狐憑き娘。
戦いの前に何を話すというのか?
次回 Ep5 暗雲 Part10
君は敵の存在を教わる、強大なるその戦力を・・・
・・・人類消滅まで ・・・アト 140 日