第5章 蒼空の魔砲師 Ep5 暗雲 Part8
ホマレに捕まり連行されるミハル。
大人しくついて行く彼女に、呼びかける声が?!
見えてきたのは港の軍管轄部分。
一般人は立ち入る事が出来ない所。
勿論私服を着用しているミハルも誰何される事になる。
海軍の軍管区なのもあるが・・・・
「あーっ、この人はええんや。
こう観えても立派なフェアリア魔砲師で、陸軍大尉殿なんやで。
なぁ、フェアリア陸軍大尉ミハル・・・シマダ殿!」
付き従うというより連行するホマレ3尉に、
「(ぷんすか!)厭味?」
イジケルというか、怒るというか・・・なんと言えばいいのか。
ミハルは連れて来られた海軍検問所で誰何された。
しかも、ここはフェアリアだというのに日の本軍人が検問していた。
「どう言う事なの?
なぜ日の本海軍軍人が検問所を?
ここはフェアリア海軍軍港部の管轄だと思ってたけど・・・」
検問所の奥に見えるドックの端から、見慣れぬ艦首部分が覗いていた。
「あ・・・?!あれは?
あんな艦首を持った艦がフェアリアにあったかしら?」
じっとその艦首部分に眼を向けて気が付いた。
ー あ・・・まさか。あれは菊花紋章・・・
日の本軍艦の証・・・巡洋艦以上の軍艦にしか与えられない誉の紋章・・・だ
黙って見詰めたミハルの背中越しに、
「観ちゃったんや!
あ~あっ、観ちゃったんや!しーらないっと!」
小さな子供のようにホマレがはしゃぐ。
誰かに告げ口をするかのように・・・
「いうーたろ、いうーたろっ、ミノリ姉さんにいうたーろっ!
極秘艦を観ちゃったミハルをミノリ姉さんにいいつけたろっ!」
スキップするホマレがミハルの周りを駆け回る。
「・・・あのねぇ、観えてるんだから!
観えちゃうの・・・自然と!
それに誰の事よ、ミノリって?」
ミハルがぷんすかと怒りながら訊いた時。
「ホマレ3尉!極秘艦を観た者をここへ連れて来い!」
声高に呼ぶ女性の命令が飛んで来た。
「にひっ!キタキタっ!
ミノリ姉さんのお呼び出しやで!覚悟しーや、ミハル!」
スキップを止めたホマレがミハルの手を掴んで一目散にドックへと走り出す。
「ちょっ、ちょっとぉ!
話しがオカシイじゃないの!
観ちゃいけないんでしょ、ドックの中は!」
連れ込まれるミハルが精一杯の抵抗をみせるが。
「だってさぁ、ミノリ姉さんの命令やから!
仕方ないやんかぁ、命令を訊かへんかったら私までオシオキされるもん!」
まるでそこらの女学生のようにハシャグホマレに閉口し、
連れられるままドック内に走りこむ。
目の前にそそり立つのは日の本海軍式の艦橋。
ペゴダマストとは違い、塔型の艦橋。
頂上部に見える測距儀。
その下にある航海艦橋・・・そして。
「これは?!砲塔が並列してる・・・ですって?!
この艦って・・・どれだけ幅が広いのよ?!」
艦砲の事には詳しくはないが、主砲が並列しているなんて聞いたことも見た事も無かった。
「それも、この艦が極秘とされる理由なんや!
まあ、観ちゃったもんはしょうがないなー(棒)」
ホマレはミハルの手を曳きながら、艦との間に繋がれているタラップを駆け上っていく。
「艦の中まで連れ込んで、何を考えてるのよぉっ?!」
走りながらも、ミハルの眼は艦側に並んだ高角砲を観ている。
ー 単装だけど全砲シールドで覆われている・・・片舷に3門。
両舷で6門の対空砲・・・それに観た事も無い機関砲があるな・・・
昔のガトリング砲みたいな数門が束になっている機関砲。
ミハルは知らなかったがそれはベルト給弾式のバルカン砲とよばれる
高い連射性能を有する近未来の機関砲だったのだが、
ミハルには只珍しい兵器としか思われなかった。
ホマレは甲板を走り、後部のデッキにある開口部に辿り着くと、
突然停まり、姿勢を正して敬礼すると。
「中嶋3尉、只今フェアリア陸軍大尉、ミハル・シマダをお連れしました!」
誰かに向って報告する。
「そうか、ご苦労さん・・・」
先程の女性が返答するが、姿は見えない。
「あなたがフェアリアの魔鋼騎士・・・いいや。
魔砲使いの蒼き騎士、シマダ・ミハル現陸軍大尉ですね」
落ち着いた女性の声が見慣れぬ機械の上から墜ちて来る。
「あ・・・あなたが?
あなたが私を連れてくるように言った・・・」
「源田・・・稔元日の本海軍中佐。
今は有志連合軍2佐、改造空母<翔鷹>飛行長を務めている」
話を遮って名乗った士官を見上げるミハルの眼に、黒髪を短く刈った女性が映る。
前髪から覗く右の眼の上から頬まで、擦過傷が痛々しく残っている。
相手が2佐・・・つまり中佐と名乗ったので、体が勝手に姿勢を正してしまう。
ミハルが普段着のまま陸軍式の敬礼を贈ると、
「あん?そこに居られるのは魔鋼騎士なのか?
それとも一般人のミハル・シマダなのか・・・どっちなのだ?
中嶋3尉・・・君が連れてきたのは確かに魔砲の使い手なのか・・・な?」
機械から飛び降りた飛行長ミノリ2佐が、ミハルに近付くと。
「ぷぷっ!始まった・・・」
ホマレが意味有り気な笑い声をあげる。
「 ? 」
前まで来た2佐に、緊張しながら何を話されるのかと身構えていたミハルは。
一瞬何が起きたのか判らなかった。
(( バッ ))
(( シュッ ))
素早い動きでミハルの上着を締めていたベルトを外し、
前を肌蹴させると、続いてスカートを捲り上げる。
「・・・・なるほど。確かに日の本よりお洒落なのかも知れんな。
下着については流石西方の国だけはあると言うことか・・・
しかもそれなりに艶っぽい・・・フム」
2佐の言っている事は、それなりにマトモに聴こえなくもないが。
「流石!ミノリ姉さんです!眼の付け所が違います!」
ホマレが眼を輝かせて上官のスキンシップ(?)に、同調する。
「フムム・・・しかし、これだけでは確かめられんな。
ここにも魔砲力があるようだから・・・ぱふぱふ」
2佐が肌蹴させた上着の間に頭を突っ込み、胸の谷間に頭を擦り付ける。
「おおーっ?!これはミノリ姉さんの必殺技が炸裂したぁ!
伝家の宝刀!ミノリ姉さんのぱふぱふ攻撃やーっ!」
・・・・・。
「ぱふぱふ、ぱふぱふ・・・」
・・・・・・・・・・・・・。
<ミハル・・・おいっ、ミハル?!
ミハルが気絶している?!>
毛玉が胸の奥で呼びかけたが、ミハルは眼を開けたまま・・・気絶中だった。
ー ・・・どんな調べ方だよ、全く。東洋人ってのは・・・
毛玉は気絶したミハルの胸の中で悪態を吐くしかなかった。
ミハルは気絶した!
・・・なんだかなぁ。
ホマレも変態だけど、上司のミノリもそれを上回る変態だったか!
どうなる?損な娘ミハル?!
「もう・・・やだぁっ!」
・・・・だ、そうです。
次回 Ep5 暗雲 Part9
君は・・・気絶中か・・・ショウガナイ。ぱふぱふ続けるか?!
人類消滅する前に、ミハルが爆発しそうです・・・カウント停止中