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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep4 悪嬢と魔砲少女 Part7

湯殿から揚がったミハルには判っていた。


待ち構えている者の影に・・・

湯殿から出たミハルは其処に佇む影に眼を向ける。



「あの、何かございましたか?」


シレっと銀髪のメイド長に訊ねる。

身体をぬぐいながら気に留めてない風体をみせつつ、

眼はメイド長の挙動に注目していた。


「ミハルさん、マリーン様に近付き過ぎよ。

 あなたは今日初めて此処へ来たというのに・・・馴れ馴れしくはないかしら」


キャメルの眼は何かを探るかのように、ミハルの妓体を見詰めている。


「はい、早くお嬢様に信用して貰いたくて・・・いけなかったでしょうか?」


ミハルはサラッと聞き流し、何事も無いかのような態度をみせる。

キャメルの視線を感じながら。


()()()()()()()()()()()()

 そうだったのね、()()()()魔法が使える・・・魔女。

 しかもそれなりにちからのあるって事が・・・ね」


ミハルを見回していたキャメルが、もう良いとばかりに踵を返す時に言った。


「あら・・・私が魔女だなんて。

 違いますよキャメルメイド長。

 私は魔女じゃなくて・・・魔砲(まほう)の使い手なんですよ。

 それに・・・魔女って聞えが悪いから、魔砲少女とでも言ってください」


キャメルに視線を向けずに背中で応えるミハル。

両者はそれ以上の会話を交わさずに別れた。


湯殿から遠ざかるキャメルの姿が見えなくなると。


「やはり・・・狙って来る気のようだぞ、ミハル」


脱ぎ捨てられたバスローブの中から現れた毛玉が注意を促す。


「うん、でも。それが私達の狙いでもあったのだから。

 相手がその気なら、受けて起つよ。決着を着けたいのはコッチだもんね」


隠れていた毛玉が出て来た事で、

脱ぎ捨てたバスローブを手に取り挙げてたたみながら答える。


「確かに、早急に決着を着けるのが狙いだったからな。

 リーンの魔法石を取り返し、行方の手懸りを掴まねばならんのだから」


そう言ってから、今の持ち主マリーンを見詰めようとして。


「そう言えば・・・ミハルよ。

 あのじゃじゃ馬令嬢はどうしたんだ、出て来んが?」


毛玉は湯殿の中を探るように見て訊いたのだが。

気がついたミハルが風呂場のドアを開けるとそこには・・・


「あああっ?!のぼせたの?マリーンちゃん?!」


眼を廻してひっくり返っている金髪のマリーンの姿があった。







開け放たれた窓から、()()()()が部屋の中に薄明かりを差し込んでくる。



「この子は、どれだけ寂しかったのかな。

 友達も作れずに・・・親からも手を差し伸ばされずに。

 たった独りで、愛を求めて・・・」


マリーンの髪を櫛つけて、ミハルは呟く。

公爵令嬢と云うだけではなく、

一族を売り、国を売った者の子として生きなければならない運命を想うと。


「辛かったでしょうね、悲しかったでしょうね。

 あなたと同じ様に辛い目に遭ってた人を知ってるから・・・」


ミハルは心の中に浮ぶ悲しげな微笑を思い出しながらマリーンの髪を撫で続ける。


<ミハル・・・現われたぞ・・・あの女が>


襟元の紅き珠から、毛玉が呼びかける。

ルシファーに云われるまでも無く、その影に気付いていたミハルが頷く。


「ミハル・・・お前が何をしようが、そのマリーンラルネットは我のモノだ。

 お前が邪魔しようがマリーンは我のマリオネットに過ぎん」


月明かりが当らない陰に居たキャメルの声が聴こえる。

その声色にミハルは聞き慣れてしまっていた。

低く闇の底から響くような邪な声に。


「やっと本性をみせてくれたのね、邪なる者。

 あなたの狙いは一体なんなの?

 マリーンちゃんを使ってメイドを虐める事が狙いじゃないでしょ?」


マリーンの髪から手を離して問う。


「お前に答える必要など無い。

 我が必要なのは数多の魂。この国を食い物とする者が我を呼んだ。

 我と契約してまでも権力を欲し、保身を願ったのだ。

 その娘の父、ローソニ公爵がなぁ!」


最早人間キャメルの姿は無く、醜く澱んだ闇に包まれた姿は・・・悪魔。


「そして我はこの国に居た前任者たる悪魔をも騙してやった、我が狙いの為に。

 トーアとか云う娘にけとそそのかして・・・

 甘い悪魔だった前任の悪魔トアは我の意のままに獲り憑いた、王族の娘トーアに」


嘲笑うキャメルが最後に言った。


「獲り憑いたトアが、自ら幾多の者を焼き尽くしたのだ。

 トーア姫の願い通りに。

 悪魔に寄り代とされたトーア姫は自らの行為で虐殺したのだ、男も女も。

 マリーン嬢が停めるのも訊かずに舞い戻った王宮の中で・・・」


一区切りづつ話すキャメルが悪魔の笑みを浮かべて知らせる。

ミハルはベットから立ち上がると、キャメルに巣食う者に訊ねる。


「お前が全ての元凶なのね?

 その元凶がどうしてマリーンちゃんを支配しようとしないの?

 只、悪戯に明け暮れるのが狙いな訳じゃないでしょうに・・・

 マリーンちゃんを使って何をねらっているのよ?」


ミハルの問いにキャメルに巣食う者が口を滑らせる。


「その娘には手を出せぬからだ。

 かたくなに魔法石を手放さない・・・

 無理に獲り上げようものなら自らの命をも断ってしまうやもしれん。

 そうなれば我は契約違反となり存在出来ぬようになってしまうからだ!」


ミハルにはこの一言で全てが解った。


ー キャメルさんに獲り憑いた悪魔は、ローソニ公爵と契約したんだ。

  マリーンちゃんのお父様と・・・公爵ローソニがこの悪魔を呼び込んだんだ。

  この悪魔が言ったように、権力と保身の為に。

  だけど、マリーンちゃんを殺せないのは何故?

  ・・・契約違反だと言っていたな、公爵はマリーンちゃんを殺そうとは想っていない。

  いいえ、違う。

  公爵は・・・マリーンちゃんを()()()()()()()()んだ。

  権力と保身の為に、悪魔と契約するような人だとしても、娘が愛しいようね。

  キャメルさんに獲り憑いた悪魔がどんな目的で此処に居るかは解らないけど。

  

  ・・・私に邪なる者を倒す理由が出来た。

      私にマリーンちゃんと公爵を助ける為に闘う必要が出来た・・・


ミハルの瞳が蒼に染まり始める。


<ミハル、ちょっと善いか?

 この女に獲り憑いている悪魔なのだが。

 こやつの言い分だと、使徒トアはまだ悪魔だった頃に騙されたというのだが。

 虐殺した魂は何処へ行ったというのだ?

 トアは私が神に戻った時に天の使徒たる者になった。

 闇に堕ちるのならイザ知らず、

 天使に昇華した者には、闇の世界に魂を送る事は出来ないぞ?

 トアは魂を持っては居なかった。

 トーアと共に犯した罪は悪魔として行った事。

 悪魔の甘言かんげんに騙されて行った行為は罪には値しない。

 つまり、騙したと言ったコヤツが全ての責を負うべき者なのだ。

 同族たる悪魔トアまでも騙し、魂を横取りするようなコヤツは滅ぼしてやるべきなのだ>


毛玉の講釈が終る。


「御苦労様ルシちゃん。

 つまり、マリーンちゃんの求めていたトーア姫は罪を犯してはいないという訳なんだね?

 悪魔に寄り代にされて気付かない内にやってしまった行為だったんだね」


ミハルがキャメルに身構える。


「随分勝手な言い方だこと。

 知られてしまったからには、お前には死んで貰うわ。

 ちょうど良い生贄いけにえとしてね。

 これからはマリーンといえども人をあやめて貰うから。

 その最初の人となって貰うわよ」


向き合ったミハルに向けて邪なる者が告げる。


 ((ひゅんっ))


何かが背後から襲い掛かって来た。


魔法石を蒼く輝かせた右手にロープが絡みつく。


「くっ?!」


反対の左手にも。

・・・そして。


「マリーンちゃん?!」


いつの間にか黒い軍服を纏ったマリーンが立っている。

その眼を澱んだ紅き瞳に変えて。


「さぁーて、ミハルよ。

 今からお前の処刑がマリーンによって執り行われるのだ。

 心を許したお前を殺す事でマリーンは一層闇の者に近付く事になる。

 そしていずれは我等の仲間になるのだ、

 父を殺し・・・契約を反故にする為にな!」


悪魔はいよいよ本性を剝き出しにして襲い掛からんとした。


「さあ、マリーンよ。()()()()()()()()()()

 引き裂いて、己が鞭に血の洗礼を与えるのだ!」


蒼くヒカル魔法の鞭を翳し、マリーンがミハルの首筋に先端を着ける。


「ミハル・・・服を破き隊(ふくをやぶきたい)だよ?」


マリーンがそっと呟く。


挿絵(By みてみん)


紅き瞳の色に気が付いたミハルが、キャメルに言い返した。


「悪魔!私はあなたを倒すからっ。

 マリーンちゃんを助けてみせるからっ、覚悟しなさいよ!」


ミハルの言葉にキャメルが命じた。


「マリーン嬢よ、ミハルを切り刻め!」

 


縛り上げられ抵抗が出来なくされたミハルに鞭が跳ぶ?!


勝負に自信有り気なミハルなのだが、その前に切り刻まれては話にも成らないぞ?


次回 Ep4 悪嬢と魔砲少女 Part8

君は悪嬢の中に真実の光を観た!悪魔との戦いに勝利を確信して!

  ・・・人類消滅まで ・・・ アト 152 日

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