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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep4 悪嬢と魔砲少女 Part4

服を破かれても動じないミハル。


そうか、君も成長したのか・・・って。


違うのか・・・

ドアから出た所で、銀髪のメイド長が佇んでいる事に気付く。


「なんだ、キャメルか。何か用か?」


金髪を搔き揚げたマリーンが紅き眼で睨んだ。


「お嬢様、あの者は如何なされたのですか?」


部屋の中に居るであろう新入りのメイドの事を訊ねて来る。


「ふんっ、いつもの通り・・・剝いてやったよ。それが何か?」


あっさりとメイドを苛めた事を話すマリーンに、


「さようで・・・で。何か言いましたか、あの者は?」


キャメルが瞳を細めて、メガネをツイッと直す。


「いや、悲鳴を上げたくらいかな。どいつもこいつも同じ・・・つまらない」


マリーンは吐き捨てるように悪態を付く。

メガネの内にある瞳が妖しく光る・・・キャメルはマリーンを見詰め続ける。


「うん?まだ何か・・・う・・・」


見詰められたマリーンの眼が、キャメルの瞳に吸い寄せられていく。


「お嬢様、あの者にご注意あそばせ。

 決して胸のネックレスを手渡さないよう・・・いいですわね?」


その声は、まるで闇の中から聞えて来るかのように冷たかった。


「・・・判った。そうする・・・キャメル」


メイド長に頷くマリーン。

公爵令嬢マリーンの瞳が、更に紅く染まっていった。




「どうやら・・・アイツが何かを企んでいるようだぞ。

 ミハルの狙い通りだったな・・・メイド長が真犯人のようだが・・・さて」


ミハルの横に浮ぶ毛玉がドアの外で話される会話で、結論を下す。


「そうだね・・・ルシちゃん。キャメルさんが何かを企んでいる事は判ったけど。

 何が目的なのか・・・マリーンちゃんを利用して何を狙うのか。

 まだ、様子を観なきゃ判らないね」


ミハルはルシファーと共に、この館で起きている怪異を調べ、

公爵からの依頼とリーンの魔法石の返還の為に潜り込んだのだった。


「まあ、イキナリ服を破かれるなんて思わなかったけど。

 公使館でローソニ公爵から聞かされていたからルシちゃんにも頼んでおいたからね。

 確かに悪嬢には違いないわよね・・・リーンったら・・・」


ふふふっと笑うミハルに、眉を顰めるルシファーが。


「余裕だな、ミハル。

 しかし・・・私には耐え難い屈辱だったのだぞ?

 目の前でミハルの肌が剝きだしにされていくのは・・・

 護りし者たるこのルシファーにとっては、これ以上無い程の屈辱だった。

 もしミハルが事前に止めていなかったら、この館ごと消し飛ばしていただろうに」


物騒極まりない事を毛玉が震えながら言うのに、ミハルは苦笑いする。


「まあまあ・・・ルシちゃん。この後もどんな目に遭わされるか解らないから。

 ここぞという時まで、我慢がまん・・だよ?」


自分の事なのにあっけらかんと毛玉に話すミハル。

そんなミハルを唖然とした顔で見詰めたルシファーが、


「やはりミハルは・・・()()()なのだな」


諦めた様にため息を吐いた。




「ミハルさん、お茶の時間ですよ。お嬢様に差し上げてくるのです」


キッチンから給仕係りの声が聴こえる。


「はい!只今」


掃除を辞めたミハルが、ティーセットの載せられたカートを受け取りマリーンの部屋まで押して行った。


「お嬢様、お茶のお時間でございます」


ノックをする前に室内に向けて伺いをたてる。


「お嬢様?中に入っても宜しいでしょうか」


ノックを繰り返し伺いをたてる。

しかし、返事は無い。

中にマリーンが居る事は確かなのだが。

ミハルはそっと襟元の紅き珠に手を添えてから。


「お嬢様、失礼致します。お茶が冷めますので・・・」


ドアノブに手を掛けてゆっくりと廻す。


中の様子を伺いながら、そっとマリーンを探すと。


「あ・・・寝てるのね」


ベットに横になっているマリーンの姿を観たミハルは、それが本当のマリーンの姿なのだと気付いた。

横たわる少女の姿。

灰色のドレス、穢れ無き金髪が頬にかかる。

まだあどけない少女の無防備な姿に、ミハルは釘付けとなる。


「こんな幼い子に・・・何があったというのかしら。

 リーンの魔法石が齎した力は、何の為にマリーンを悪嬢と化したのかしら・・・」


眠るマリーンの胸に懸けられた蒼き魔法石。

中に薄っすらと剣が浮き出ている、まごう事無きリーンの魔法石。

悲しみの心と疑問が入り混じり、ミハルは思わず見詰めてしまっていた。


紅き瞳が開いた。

その瞬間、マリーンの服が黒い軍服と変わる。


「お前・・・本当に失礼な奴だな!また剝かれたいのか!」


起き上がったマリーンが魔法鞭を出してミハルに迫る。


「お嬢様、お茶のご用意が整っております」


ミハルはマリーンの言葉が聞こえなかった振りをして、手早くティーセットを机に並べる。


「今日のお茶菓子は、ワッフルでございます。

 お茶は如何致しましょう?お砂糖とミルク、それともレモンでしょうか?」


淡々と作業を続けるミハルに、マリーンの怒りが納まる。


「お前・・・私のメイドならば、お茶の煎れ方位覚えておけ。

 私が酸っぱい物が嫌いな事位知っておけよ・・・いいな!」


ワッフルに載せられたカスタードクリームを指で一掬いして舐めると更に機嫌が善くなる。


「うにゅ・・・甘くて美味しい。

 このクリームが私の心を慰めてくれるのだ。

 甘い物が私の嘆きを癒してくれる・・・唯一つのモノなのだ」


マリーンは椅子に座ってワッフルに舌鼓を打つ。


「お嬢様は何で心を痛められておられるのですか?

 何を嘆かれておられるというのですか?」


ミハルが傍に控えながら訊ねる。

ナイフを停めたマリーンの眼がミハルを睨む。


「お嬢様・・・もし好ければ私にその訳をお教え願えませんか?

 少しでもお話頂ければお役に立ちたいと想うのです、このミハルが」


真剣な瞳で見詰めるメイドに、公爵令嬢マリーンラルネットが瞳を大きく見開く。

・・・そして。


 ((ガシャンッ))


マリーンが魔法の鞭を出してテーブルごとティーセットをひっくり返す。

勢いに負けて、ミハルは床に投げ出されてしまう。


「何かお気に召さない事がございましたか?」


倒れながらもマリーンに訊くミハルに。


挿絵(By みてみん)



「よくも・・・そんな減らず口が利けたものだな!

 お前はメイド、私はその主人たる娘!

 主人の役に立つ者とは、あるじに無駄口をさせないように務める者だ!」


魔法鞭が唸りを上げてミハルを襲う。


ビリビリと服が引き裂かれ、倒れたままのミハルが目を閉じて我慢する。


「どうだ!ナマイキなメイド!

 私の鞭はお前の()()()()()()のだ。

 この魔法鞭は服だけを破く。

 身体には傷一つ着けはしない、だが。

 怒らせるのならその体を切り刻む事も出来るのだぞ?」


床に倒れたままのミハルに、マリーンが鞭を突きつけて言い放つ。


ゆっくりと瞳を向けたミハルが主人に抗う。

いや、マリーンラルネット公爵嬢に訊ねる。


挿絵(By みてみん)



「あなたは何に怯えているの?

 あなたの心は何を怖れているというの?

 私には判るの、あなたは・・・悲しみの中に居る事が・・・」


ミハルを睨むマリーンの顔が悲痛な色に染まった。



マリーンの悪嬢ぶりは公使館に来た公爵によって知らされていた。


再び服を破かれたミハルが訊く。

<<あなたは何故悲痛な瞳をしているのか>>と・・・

ミハルはマリーンの秘密を知る事が出来るのか?

秘密を知ったのならば、救いを与えてやれるのか?


次回 Ep4 悪嬢と魔砲少女 Part5

君は瞳の奥に秘められた悲しみを癒してやれるのか?次回伝統(?)のお風呂回!

・・・人類消滅まで ・・・アト 155 日

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