第5章 蒼空の魔砲師 Ep3 空戦魔砲師 Part2
2人の魔砲師が空へと翔び立つ。
空の上で待ち受けているのは・・・空戦!
2人は相次いで地を蹴る。
緑の円環と金の円環が上空へと昇って行く・・・
ロッドを持って、身体を捻るとミハルに呼びかける。
「ええか、ミハル。
先ずは空の闘いに慣れなぁアカン。
執り合えずウチに付いて来てくれへんか。
ウチの2番機になって、戦闘に慣れてくれへんか?」
初めての空戦を前に、心算を教えた。
「うん!解ったよ、そうする」
ミハルが了解すると、ホマレの右手に持たれていたロッドが機銃に変わった。
「そろそろ・・・会敵準備といこか。
ミハルも槍から銃に戻すんや・・・戦闘準備!」
咄嗟に敵と遇った時に備えるホマレが、ミハルへ促す。
「了解っ!こうだね・・・」
槍を一振りして魔鋼の力でデバイス槍を銃に変える。
「そーや、よぅ解っとるやんか!」
微笑むホマレにミハルも笑い返す。
「そりゃぁ、私だって一応は戦闘経験あるから。戦車で・・・だけどね」
ミハルの返事にホマレが頷き、更に高度を上げて行く。
後続したミハルを観て、周りの状況を確認する。
遥か港上空に芥子粒のようなモノが見えた。
「うん・・・あれはどうやら人間のようだ。
我が方の魔砲師が迎撃に揚がったみたいだな・・・」
警報が鳴った事で、味方にも情報が伝わっている事を知っているホマレが呟くと。
「ミハル、味方と合流しよう。敵がどれ位の規模で襲ってくるんか解らへんから」
味方の方に向けて進路を変えた。
「味方は海の方角から攻め寄せて来ると読んどるみたいやな・・・」
つい、ミハルの事を忘れて味方へと近寄り始めた時。
「ねぇホーさん。
あの黒いのは味方?雲の上にいるけど?」
ミハルがホマレに他にも味方がいるのかと訊いて来た。
ミハルの声が耳に届いた瞬間、ホマレの口が叫んだ・・・勝手に。
「ミハルっ!逃げるンや!敵の腹の下へ潜り込むんやっ、はよぉっ!」
振り返りざま、ホマレの必死の叫びがミハルを突き動かす。
身を捻り速度を増して、現われた敵の下方へ潜り込んだ・・・のだが。
「アカンッ!ミハルに狙いをつけやがったのか!」
雲の中から現れた2機の敵機がミハルを追い始めた。
「こりゃぁ、とんでもない初陣になってもうたな・・・ミハル」
その2機を追いかけるホマレが空戦を覚悟して呟いた。
「なーんでぇっ、私を追いかけてくるのよぉっ!」
逃げながらミハルは叫んだ。
後方から2機の黒い機体が狙いを定めようとしているのが眼の隅に入る。
「軸線に載せられたら・・・撃たれる」
黒い機体に付いている銃口。
前方に向けて機体前下部に付いている2丁の発射口が不気味に観える。
2機が連なって向って来る。
その後にホマレが全速で追いかけて来てくれているのも解った。
だが・・・
「ホーさんが来てくれているけど・・・間に合いそうに無いな」
どんどん近寄ってくる黒い機体。
ミハルは近寄る敵機を見詰める。
< 本体から伸びる円環が4つ。
その円環の中にある筈のプロペラが無い・・・空洞だ。
どうやって飛んでいるんだろう。まさか魔法の力で飛んでいるとは考えられないけど。
それに、良く見れば4つの円環は微妙に動いている。
固定されているんじゃないんだ・・・ >
その時には解らなかったが、<神軍>の黒い機体が飛べる秘密はその円環にあった。
4つの円環は自在に向きを変える事が可能で、
急上昇も反転も、瞬時に執り行える・・・機体が保てば。
人が乗っていれば失神してしまう強Gでも、
内蔵されたAI知能が壊れさえしなければどんな動きにでも対応する事が出来る。
正に接近戦用の機体とも呼べた・・・
軸線を外しつつ、ミハルは敵を観測する。
「このまま翔び続けていてもらちが明かないな・・・どうしよう」
まだこの時、ミハルには余裕があった。
空で初めて戦うというのに。
それは戦車戦で培われた戦闘への自信がそうさせていたのか。
自分が狙われているというのに、何故だか敵を観ているだけの余裕があったのだ。
「翔飛にも大分慣れてきたみたい。
殆ど違和感を感じ無い程・・・これならやれそう・・・だよね」
銃を握る手に力を込めて、射撃諸元を調節する。
「望遠鏡を使う程の距離じゃないし・・・それに撃ってみない事にはクセも解らない。
腰打めで撃ってみよう・・・魔鋼弾を」
このまま鬼ごっこを続けるのに嫌気が差したミハルが、反撃を意図する。
「それには敵に射撃の機会を与えなきゃ・・・もっと近寄らせて」
ギリギリまで我慢して、先に敵を撃たせて。
そこから反撃の一撃を狙おうとするのだった。
ホマレはミハルが何を企てているのかが直ぐに解った。
「何するっちゅーんや?そないな事、玄人がするもんやろ?
ミハルには出来るんか?相手はお見通しなんやぞ?!」
危険な賭けを匂わせているミハルの動きに、ホマレは注目する。
「せやけど・・・先ずはお手並み拝見といくか。
危なかったらこいつで助けるさかい・・・な」
手にした銃を前方の2機に宛がい、ミハルの腕前を様子見する事に決めた。
「まあ・・・初めての空戦で出来るのなら・・・苦労せんわ」
ニヤリと笑う撃墜王の魔砲師。
ホマレはミハルを信じる事に決めていた・・・
「さあ!来なさい。あなた達に魔鋼騎士の闘い方を見せてあげるからっ!」
ミハルは敵機の軸線にワザと捉えられる・・・
突然襲われたミハル。
現われた黒い機体に追われ、遂に反撃を決意するのだが・・・
空の上でも魔鋼騎士の力は健在なのか?
それともやはり2次元の戦車兵には荷が重かったのか?
次回 Ep3 空戦魔砲師 Part3
君は空の闘いに挑む。それが全ての始まりだと気付かずに!
人類消滅まで ・・・ アト 164 日