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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep2 翔べ!魔砲少女 Part7

ミハルとホマレはお互いの過去を振り切るように握手する・・・


それは新たな友の誕生。

それは新たな運命の誓約・・・

 食べ終わるのを待っている給仕係りのミハル。


お盆を胸に携え、甲斐甲斐しくメイドのように尽くしている姿を見て。


「ミハルはん・・・アンタ道を誤ったな。メイドになれば良かったんちゃうか?」


微笑ましく思えたホマレが言った。


「あ・・・えっと。ありがとう・・・実はね、私って去年までは兵卒だったんだ。

 初めて戦闘に出た時は一等兵だったんだ・・・勿論士官の従兵も経験したから」


頬を掻いて苦笑いするミハルに、ホマレは眼を見張る。


「な・・・なんやて?

 今は大尉のアンタが?一年前は一等兵?信じられへんわ・・・」


ミハルを変な生き物を見るような眼で見回したホマレが呟く。


「それには訳があってね・・・いろいろと。

 で・・・私は給仕係りが得意なんだ」


ニコっと笑うミハルの瞳を見上げたホマレが下を向いてしまった。


「あれ?私なにか気に触る様な事を言った?」


急に下を向いてしまったホマレ3尉に気を配って訊ねると、意外な答えが返ってきた。


「いいや、違うんや。

 ウチと同じなんやと思うてな・・・ミハルはんも」


ぽつりと話すホマレに、何があったというのか?

自分と同じというホマレの過去に触れてもいいものなのかと自制していたミハルに。


「訊かへんのか、ミハルはん。

 ウチに何があったんかと・・・何が同じなのかと?」


ホマレは暗い表情で呟く様に言った。

其処に居るのは、闘いに澱む悲しみに満ちた瞳をした人の姿。

過去の自分と同じように、何かを背負い苦しむ姿に観えた。


「ウチはなぁ・・・友達を見捨てた鬼なんや。

 自分を庇って死んで逝った友の犠牲の上に・・・

 撃墜王と呼ばれているだけの()()なんや」


澱んだ瞳のまま、ホマレは語った。


「何人も・・・友達が死んだ。同期の友、小隊の列機。

 ウチがまだ駆け出しの兵曹だった頃、敵機の猛攻を受けて全滅に追い込まれた時。

 みんながウチを護って倒れていった。

 あれはちょうど半年前の事やった・・・」


遠い眼をしたホマレは語り続けた。

まるで親しい戦友に語りかけるように。


「最後の決戦を終えた時、ウチは独りになっていたんや。

 空にはウチの他には誰も翔んではおらへんかった・・・

 まるでウチが敵も味方もみんな墜したみたいに・・・ナ。

 爆煙の中で、ウチ独りが飛んでいたんや・・・みんなを殺した死神のように」


挿絵(By みてみん)



ミハルには経験があった。

自分独りだけが生き残ってしまった戦場。

辛く・・・悲しみの戦場。

生き残った自分を攻め立てる自責の念。

ホマレが語った過去は、自分の過去と重なった。


「ミハルはん・・・アンタも。

 アンタも過去にそんな悲しい事があったんやろ?

 ウチには解るんや・・・アンタの瞳を見ていると。

 飛行船でアンタを初めて観た時、気付いたんや。

 ああ・・・この人もウチと同じ眼の色をしていはるんやな・・・って」


ホマレはじっとミハルの瞳を見詰めて言った。


<ホマレさんは、あの時。

 飛行船の中に居た私を見ていたんだ。私の瞳に気付いていたんだ>


見詰められた瞳同士が、お互いの気持を伝え合った。


「ホー・・・さん。

 中嶋なかじま ほまれ3尉。

 あなたの事をこれから()()()()って呼ぶ事にするわ。

 私と同じ宿命さだめを背負った人だったのだから・・・親友として。

 そう呼ばせてくれない?()()()()


はにかんだ様に微笑んだミハルに、ホマレも求める。


「ほんならウチもミハルはんの事、()()()()って呼ぶわ」


ニヤッと笑いながら呼び名を決めてくる。


「い・・・いやあの。普通に呼び捨てでいいから。ミハルって呼んでくれればいいの」


ホマレの笑みに苦笑いを浮かべて、呼び名を改めて貰おうと頼むミハル。


「よっしゃ、そんでええわ。ミハル大尉殿なんて呼びにくかったしな」


頷いて了承したホマレに、口を尖らせたミハルが。


「一度も大尉殿なんて呼ばなかったクセに。ホーさんは・・・」


最後は笑みに変えたミハルとホマレが同時に手を伸ばし、握手を求め合った。


「宜しくね、先生!」


「よろしゅーに!魔砲少女のミハル。ウチの友達!」


2人は堅く誓い合う。

真の友になる事を・・・



2人が握手を交わす姿を見ている者が小声で言った。


「これで・・・あの子も。

 ミハルも必然的に闘う事になる・・・3尉と伴に」


女性の声が、ミハルの運命を告げる。


「そうだね・・・これで()()とも闘わねばならなくなってしまった。

 僕達は()()()に辛い運命を背負わせてしまった・・・

 いずれ訪れる悲しみに満ちた運命を」


呟かれた女性の声に応えるように男の声が、後の運命さだめを臭わせた。


「私達は・・・今は只、祈る事しか出来ないのね。幸運を願うしかないのね・・・」


悲しみに満ちた声が、幸運を求める。


「ああ・・・そうだな()()()。今は彼女達に頼むしかないのだから」


金髪の皇太子が涙を零す妃を抱締めた。







__________




早朝のもやが薄く残る中、2人は飛び上がっていた。


「なんや・・・やれば出来るやったんやな、ミハル!」


手を組んで飛行状態を観ていたホマレ3尉が声をかける。


「うん・・・なんだか今日は調子が良いみたい。

 昨日までとは全然ちがうんだよ、思うままに翔んでくれるんだ翔飛しょうひが!」


飛行状態は昨日までとは全く違っているようだった。


「ふ~ん・・・昨日から突然何かが変わるものなのか・・・って。

 待てよ、まさかっ?!」


ホマレはある事に気付いて自分の翔飛を観た。

翔飛に着けられている金色のバッチが微かに揺れているような気がした。


「くっ、やはり・・・現われるのか?ヤツラが・・・」


ホマレは握り拳を震わせて、空の彼方を睨み付けると。


「ミハルっ、今日の訓練は・・・違う。

 これからの飛行は・・・実戦になるんや。

 ミハルは急いで地上に戻るんや、ウチは武器を装備したら迎撃インターセプトするさかい!」


大声で飛行がやっとのミハルに教えた。


「え?!どうしたのホーさん。実戦って・・・警報も鳴らないのに?」


ミハルが振り返ってホマレに聞き返した・・・時。


「ウチには解るんや・・・敵の匂いが。

 怖ろしい戦いの匂いっちゅーモンが・・・判るんや!」


ホマレの瞳が、言っている事が嘘ではないと告げていた。


「ミハルっ!急いで降下するんや、地上へと。

 これから先はウチら魔砲師(まほうし)の仕事なんや。

 飛ぶのがやっとのミハルには荷が重いで!」


ホマレは手を掴んで強制的に地上へと向い、王宮の中庭へ戻ると。


「いいか!警報を鳴らすように言ってくれや!

 直ちに全力迎撃戦の準備にかかれって。

 ウチの所属する空母祥鷹(しょうよう)へ・・・飛行長源田2佐に連絡を!」


誰彼構わずに頼み込むと、壁に凭れ掛けさせていた銃を握る。

光に包まれた機銃が、緑色の()()()に変わった。


挿絵(By みてみん)


「これより有志連合軍 くう3尉中嶋 誉。

 迎撃の為に発進します!」


ミハルに眼を合わせずに飛び立とうと魔法衣に力を込めた。


「待てよ・・・中嶋3尉!」


飛び立とうとしたホマレは呼び止められる。


声は意外な処からかけられた。

危急を告げるフェアリア。


ホマレの感通り、敵は進攻してくるのか?


空の魔砲師ホマレとその仲間達が迎え撃つ。

それは一人の魔砲少女を空の闘いへと誘う戦闘となる!


次回 Ep3 空戦魔砲師  Part1

君は望まざる闘いの渦中へ踏み込んだ・・・友を救う為に!

  人類消滅まで・・・ アト 166 日

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