第5章 蒼空の魔砲師 Ep2 翔べ!魔砲少女 Part4
ホマレが話すのは。
日の本が受けた試練の戦闘。
初めに攻撃された国の実情だった・・・
蒼い海の彼方で・・・
「とうちゃん!急に雲が出てきたね」
小さな漁船に親子が乗って魚場へと向っていた。
前方の海上に、積乱雲が盛り上がる。
「おかしいな・・・今日の天気で、こんな入道雲が現われるとは・・・」
親子は急速に近付く雲を見上げ首を捻っていたが。
「とうちゃん!発動機の音が・・・」
息子が聴こえて来たエンジン音に気付いて父親に叫んだ。
父親も気付いて海上の音を探ると・・・
「あれは・・・海軍の軍艦・・・艦隊だ」
親子の前に現れたのは日の本海軍艦艇。
「あれは・・・我が日の本が誇る・・・連合艦隊。
いいか・・・よーっく観ておけよ。あれが日の本を護る最期の艦隊。
魔砲の艦隊の勇姿だ・・・」
積乱雲に向かう艦隊を漁船の親子が見送った・・・
___________
「あれは今から半年程前の事やった。
突然我が日の本皇国に対し、敵が現れたんや。海の彼方から・・・
初めは軍事施設を狙ったり、輸送船を沈めたりしてきていたんやがな。
遂に本腰を入れて攻めてきよったんや、<神軍>が。
圧倒的戦力と、破壊的火力で。
海の上でも水中でも、ヤツラに勝てる戦力は持ち合わせては居なかったんや、ウチ等は。
この翔飛が出来るまでは・・・な」
ミハル達の前で、元日の本海空軍少尉 中嶋 誉が、
一口カップから口に含み話を切った。
「中嶋3尉さん。それでどうなったのですか?日の本は?!」
マモルが生まれ故郷の安否を訊いた。
「敵の空中戦艦を撃沈した後。神軍は襲って来なくなったんや。
多分、日の本方面における親玉だったんやろう。
アイツを撃沈した事により当面、日の本には向っては来ないやろう」
マモルに教えたホマレは何かを耐えるかの様に、瞳を閉じていたが。
「日の本の脅威は静まったが。
大陸の反対側にあるエギレス、スペレンがウチ等と同じ様に戦いに巻き込まれたようや。
ついこの間、エライ損害を受けたようなんやが。
聴いとらへんかったんか?」
瞼を開けたホマレが問い掛ける。
「いえ・・・知りませんでした。そんな大事件が起きていたなんて。すみません・・・」
マモルはさも自分の失態のように感じているのか、下を向いて謝った。
「あ・・・君が謝らんでも。
知らなんだのはこの国の指導者達の所為なんやし・・・気にせんでええねんで」
慌ててホマレがマモルを宥める。
何故だかマモルの顔を真っ直ぐ観れずに、視線をずらしている。
<ははぁん・・・マモルに気があるんだな。ホマレさんは・・・>
女の子の感がピピンときたミハルが、2人を見比べて思った。
「それで・・・3尉さん。
日の本が勝てたのは、翔飛が実戦配備されたからなのですね?」
年上の女性に訊かれたホマレが、ミユキには言葉を改めて答えた。
「はい、その通りです。・・・あの、もしかして島田戦車隊副隊長?
かの勇名を馳せた戦車隊を率いた魔女中佐・・・シマダ・ミユキ中佐ですよね?」
姿勢を正したホマレが訊ねると、ミユキはニコリと頷く。
「はっ、初めまして!ウチ・・・いいえ、ワタクシは・・・」
シャッチョコばったホマレが名乗ろうとすると、
「もう、聴きましたから。少尉さん、いえ。3尉殿」
ミユキは微笑みながら制し、
「3尉、伺いたいのは魔法のブーツが齎した勝利なのかと言う事と。
敵の空からの攻撃以外には、現有戦力でも対処可能なのかと言う事。
そして・・・魔砲の力が。ミハルの力がどうして必要なのか・・・と言う事」
若い少女士官に訊いた。
ミユキに訊ねられたホマレが、一瞬の躊躇の後。
「ミユキ中佐殿。
お答え出来る事は2つです。
先ず、敵神軍は3軍を保有して攻撃を掛けて来ました、圧倒的科学力で。
ですが、日の本海軍全力で決戦を挑み・・・勝利を収められたのです。
・・・その勝利を得る為に・・・掛替えもない命を多く喪いました。
海の上でも海中でも・・・そして空の上でも・・・
翔飛があればこそ、勝てたとも云えるでしょう・・・」
ホマレが伏し目がちに教えた。
「では、最後の質問については?」
ミユキの質問に答えは返っては来ず。
ホマレは口を噤んだ。
「ミハルに翔飛を履かせたのは、大切な人を探し出す為なのです。
空を飛び、可能な限り早く救出させたいが為。
それ以外に私達がミハルへブーツを渡した理由はないのです。
戦わせる為に渡した訳ではないのですから」
ミハルの事を案ずるミユキが、ホマレに理由を質そうとするが。
「失礼ですが・・・ワタクシにはお答え出来かねます。
本件につきましては、上官にお聴き下さいとしか、お答えできません」
姿勢を正したホマレが拒否し、
「只今言いました通り、フェアリア陸軍大尉ミハル・シマダの能力の確認。
そして、魔砲師としての適性につきまして・・・
確認せよとの命令を受けた次第なのです」
自分の役割を告げた。
<なんて、身勝手な。だから軍隊なんて嫌なんだよね>
ミハルは自分の事だけに余計に腹が立った。
だが、父マコトは。
「なるほど・・・それでフェアリアにも機密情報を流して来たのですな、3尉。
日の本は戦闘が終る前に、すでに先を見越して手を打ってきた・・・と」
独り納得したかのように呟いた。
その呟きが耳に届いたのか、ホマレはミハルを観て言うのだった。
「はい、多分。
日の本で起きた悲劇が、世界中で起ころうとしていると踏んだのでしょうね。
ワタクシが観てきたような・・・悲惨な戦場と化すのを防ぐ為。
街が火の海になるのを防がんが為に・・・」
ホマレは自分が知る神軍との戦闘が、如何に悲惨であったかを話す。
「ヤツラ神軍は・・・人ではないのです。
いいえ。人の心を持ち合わせてはいないのです。
何故なら・・・無差別攻撃を仕掛け、老いも若きも。
男も女も・・・関係なく攻め滅ぼそうとしてくる奴等なのです。
それに奴等の兵器には・・・人は存在してはいない。
機械仕掛けの兵器だから・・・人が乗らない機械だけの存在なのですから」
ホマレの瞳に憎しみの炎が見て取れた。
「とうちゃん・・・発動機の音が・・・」
このセリフにピンと来た人は・・・お歳がバレマスよ?
解った人は・・・初代アニメ版をこよなく愛す人と思われます。
ミハルは空を翔べる事が知られてしまいました。
ホマレに因ってですが・・・
この後に待っているのは、否応もなく巻き込まれる事になる戦い。
どういった経緯で巻き込まれていくのか?
そしてリーンを救い出す事にどう絡んでいくのか?
「フェアリア」の伝統・・・戦場は無慈悲。
そう。
闘いの渦中で、君は生き残れるのだろうか?
次回 Ep2 翔べ!魔砲少女 Part5
君は空の闘いがどんな物かを教えられる・・・そう。実戦経験者に・・・
・・・人類消滅まで ・・・アト 169 日