第5章 蒼空の魔砲師 Ep2 翔べ!魔砲少女 Part3
光の円環から伸びた羽根が羽ばたく。
ミハルは蒼空を翔ぶ・・・魔砲の能力を放って!
ー 蒼空に光の軌跡が描かれる
「ほぉぉっ、金色とはナ。
確かに稔姉さんが言っていた通りなんや・・・な」
見下すホマレが金色の円環を足先に出現させた魔砲少女に呟いた。
「うわあぁっ?!嘘みたい・・・浮かんでいる。
違うわ、飛んでいるんだ・・・私。
今・・・空の上で。自分の力で翔べているんだ!」
ミハルは足下に迫っていた地上がどんどん離れて、再び高度を執り始めた事に感激していた。
「私でも翔べるのね!私にだって飛ぶ事が出来るんだね!」
感激の初飛行体験に、魔砲少女は目を輝かせる・・・のだったが。
上昇を続けながら、ハタと気が付く。
「ちょ・・・ちょっと待って・・・これって、どうやったら進行方向を変えれるの?
どうすれば地上に着陸出来るの?みんなの元に無事帰れるの?」
慌てる損な娘。
慌てれば慌てるほど・・・
「ひぃやあぁぁっ?!停まらないぃっ?どうしてぇっ!」
ミハルの絶叫が虚しく蒼空に流れるだけだった。
スピードも上昇も変わらず。
只・・・
「ひょえぇぇっ?!眼・・・眼が廻るぅっ!」
暴れた為にバランスが崩れて、グルグル体が捩れ回ってしまっていた。
その様子を地上で眺めていた皆が。
「あんなに廻って。よっぽど嬉しいんだな?」
お気楽に勝手な事を言いあっていた。
「だああぁっ?!気持が悪くなってきたよぉ!
もう停めてぇっ、廻るの停まってえっ!うええぇ・・・」
ぐるぐる眼を廻し、助けを求めるミハル。
「あひゃあぁっ?!もう・・・らめぇ・・・」
気絶寸前まで眼が廻り、呂律までおかしくなって・・・
それでも上昇旋回は続いているという・・・ある意味、無慈悲。
「あちゃぁ・・・こりゃあかんわ。世話の焼けるやっちゃなぁ」
状態を観て、ホマレが額に手を当てる。
その魔砲師たるホマレがミハルの元へと跳び出すと。
「アンタ!ウチに掴まりぃっ!そのまま上昇を続けたら・・・電解層に入ってまうで!」
ミハルの傍によって声をかけた。
「ひいぃんっ、たしゅけてぇ・・・ホマレたん・・・」
眼を回したミハルが手を差し出した・・・が。
「わあっ?!馬鹿っ!ウチまで巻き込むつもりかぁっ、アンタは!」
勢いのついた旋回力をそのままに、ミハルに掴まれたホマレもそのまま旋回してしまう。
「この馬鹿ぁっ?!翔飛の力を加減しなアカンやろーが!
とりあえずっ、魔法力を停めるんや!」
ミハルに掴まれたホマレも同体に旋回させられた為に、2人の体が失速してしまった。
「うぎゃっ?こんどはおっこちるぅ?」
ミハルが喚くのを無視して、ホマレは真っ直ぐ地上目掛けてスピードをあげる。
「よー、見ときな。これが失速した時に回復させる方法や!」
声に気がついたミハルは、眼を開けてホマレを見た。
ミハルの視線に気付いたホマレが微かに微笑む。
地上まで後50メートル程に迫った時。
「ほぉいっ、旋回急上昇!」
身体を捻ると、足先を地上へ向けた。
ホマレの緑色の円環が大きく羽ばたくと、落下スピードを弛めてやんわりと地上へと降りて行く。
「今回はこれで終わりや、ミハルはん。
アンタが飛べる事が解ったんやからナ・・・上出来や」
そう言ったホマレに抱かかえられたまま、地上に降り立つ。
「はにゃあぁ・・・」
地上へ降り立ったミハルは眼を廻したまま、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「大丈夫かい、ミハル姉?」
「しっかりするんだ、ミハル?!」
先程までお気楽に言い合っていた皆が、ミハルの状態を見て声をかける。
「アンタ等、その人を介抱したってぇーな。
初めて空を飛んだんや、そないなってもしゃーないわ。
無事に進空も済んだ事やし・・・ブーツの状態も確認出来たし・・・な」
ミハルの周りを囲んだ皆に、ホマレが言う。
「あなたは?
さっき言っていたヤポン海空軍所属の飛空士さんなのですね?
でも、どうしてミハル姉を飛ばせたのです?」
マモルが魔法衣を解除したホマレに訊くと。
「うん?なんや・・・アンタ等。
話を聴いとらへんのか?この国の軍部から・・・上官から」
逆にホマレが呆れた様に訊ねると。
「え?いいえ。何も・・・聴いておりませんが」
マモルが聞いて居ない事を答えると、訊いた本人がため息を吐き。
「なんちゅー呑気な国なんや。
ウチらの報告を受けて居た筈やのに・・・今迄なにしとったんや?」
腰に手を添え天を仰ぐ。
「あ・・・あの?どう言う事でしょうか?
僕達には何も知らされていなかったので・・・教えて頂けませんか?」
マモルが丁寧に伺うと。
「はん・・・この子はちゃんと心がけていはるんやな。
しっかりしたええ子やないか・・・日の本男子はこうでなくっちゃナ」
マモルにだけ微笑みかけると、周りに居る者達を一瞥する。
「ほなら。教えたる・・・ウチらがこの国に派遣された訳を!」
ホマレが話しだすのは、日の本の実情。
この国へと赴いてきた本当の訳・・・それは。
ホマレがじーっと、皆の真剣な表情を見ながらポツリと零す。
「なんや・・・アンタ等。人が軍略上秘密事項を話そうというのに。
立ち話させんのか?
ついでに何か飲ミモンでも、って。用意してくれたら嬉しいんやがなぁ」
ホマレの呟きに皆がガクッと姿勢を崩した・・・
ホマレが話したのは遠くフェアリアから離れた国で起きた悲劇。
機械の軍隊に立ち向かった一国での闘いについてであった。
ホマレによって知らされた世界の現状に、ミハルは瞳を伏せるのだった・・・
次回 Ep2 翔べ!魔砲少女 Part4
君達は新たな敵の存在を知る・・・その名は<神軍>と呼ばれていた。
・・・人類消滅まで・・・ アト 170 日





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