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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第5章 蒼空の魔砲師 Ep1 空へ Part6

金色の輝きがミハルの足元から湧き上がる・・・が?

音も無く、金色の魔法陣は消え去った。


ミハルの足に履かれたブーツは光が消えた後、

何事も無かったかのように元のまま、そこにあった。


「なーんだ、何も起きないじゃないか、お父さん!」


マモルが、がっかりしてマコトに言った。

ミハルに何か、変化が起きるのかと期待していたようだが。


「う~む・・・失敗か」


マコトも残念そうに頷いてしまう・・・が。


「でも・・・ミハルには新しいブーツをあげられたから良いじゃない」


ミユキは残念がるマコトを庇う様に言って、


「サイズはどうかな、ミハル?」


履き心地を訊ねた。


「・・・え?えっと・・・これ。

 お父さんが造ってくれたんだよね?なんだか不思議な履き心地なんだよ。

 まるで・・・空でも飛んでいるみたいに・・・体が浮いているみたいに。

 ふわふわするみたいに・・・体が軽く感じるんだ」


ブーツを見ながらミハルが答える。


「フーン・・・そうなんだ。

 いいなぁ、僕にも造ってよお父さん」


マモルが羨ましがって、造って欲しいと父に頼んだ。


「そうか?マモルにも造ってあるから、後で履いてみると良い」


既に造ってあると聞いてマモルが喜んだ。


「ホント?やったぁ、今履いている靴が小さくなって・・・嬉しいなぁ」


無邪気に喜ぶ弟に微笑んだミハルが、


「ありがとうお父さん。

 でも、このブーツには魔鋼機械が組み込まれているんだよね?

 どんな時に使えばいいのかな?」


マコトに本来の使い道を訊いた。


「それは・・・まぁ。

 必要になったら発動するんじゃないか?

 多分本国では実際に使われている筈だから・・・敵と闘う為に」


気になる一言をマコトが言ったが、ミハルは聞き流してしまった。


「必要になったらって・・・早く走れるようになるとか?そんな処なの?」


ミハルの問いに、マコトは笑みを返すだけだった。


「ま、良いか。必要にならなくても、こんなに軽いんだから」


足踏みを繰り返して、ブーツの軽さに上機嫌で納得したミハルが、


「じゃあ、明日の朝は早起きしてリーンの足取りを探すから、もう寝るね」


両親に<おやすみ>と言って、ミハルは士官次室を後にした。


後に残ったマモルと両親はミハルの後姿を見送った後で、

とある現実にあった出来事を、秘かに話し合うのだった。

真剣な表情で・・・・




_____________





ミハルは王宮の敷地内にある、昼尚暗い森を抜けた所にある洞窟まで来ていた。


「ここが?こんな古びた洞窟が。()()()だって言うの?」


目の前にぽっかりと口を開けた、苔生した洞窟。

ここが神の祠だと教えられなければ、只の洞窟にしか思えなかっただろう。


「ここに神が居るなんて思えないんだけど?ルシちゃんには何か感じられる?」


胸元に居座っている毛玉に訊ねるが。


「私も神なのだが・・・こんな古びた洞窟の中になんて住みたくないな。

 って、事で。私にも感じる事は出来ないな」


毛玉がミハルから離れて、洞窟の中まで覗き込み。


「ミハル。確かに何も感じる事は出来ないが・・・手懸りの様な物が転がっているぞ?」


毛玉に誘われたミハルが洞窟内に眼を移すと、苔の間に何かが光った。


「毛。

 白く、長い・・・たてがみの毛。

 もしかしなくても・・・ミハルの下僕たる聖獣が残した、鬣のようだな」


「グラン?!グランがこの祠に来ていたの?」


ルシファーに教えられた白い鬣の毛を拾い上げたミハルが、グランを思って胸に押しいだく。


「ミハル・・・どうやら。

 グランは何かを知ったようだな。その上で失踪した・・・リーンと共に。

 私の使徒であるトアと云う娘に宿りし者も・・・一緒だったようなのだが」


毛玉が此処へ来る前に気が付いた事を話し始める。


「ミハル、私の使徒にもリーンを守護するように見張らせていたのだが。

 グラン共々、リーンを護って行方知れずとなったのだ。

 どうやら畏れていた事が現実になろうとしているようだ・・・・

 それは・・・リーンが女神に覚醒する事なのだ」


毛玉はミハルが何か訊くのだろうと思っていたのだが。


「ルシちゃん、リーンは・・・ね。

 私の女神様なんだよ?ずっと昔に出逢った時から・・・そう感じていたの。

 だから・・・そうなんじゃないかって。

 ずっと想っていたの・・・私がミハエルさんの力を授かった時。

 私の前でリーンが言った事があるの・・・

 <<ミハルは神の使い。そのミハルに命じる私は女神なんだよ?>>って」


まだ、戦争に身を置いて闘いに明け暮れていた頃。

落ち込む自分を元気付けようと、リーン中尉が言った言葉を思い出した。


「ミハル・・・そなたは知っていたと言うのか?

 リーンが・・・バリフィス神だと云う事を。

 裁きの神、バリフィスだという事を知っていたのか?」


毛玉に訊かれたミハルは首を振り応える。


「ううん・・・知らなかった。

 知りたくは無かったよ・・・人であって・・・人ではない。

 神のリーンなんて・・・知りたくはなかったんだよ?

 でも・・・リーンが神様ならどうして覚醒しなければいけなかったの?

 人のままでは駄目だったの?」


ミハルが逆に毛玉たる神、ルシファーに訊き返す。


「そうなのだ、ミハル。

 リーンは・・・神に目覚めては駄目だったのだ。

 リーンは神に覚醒しては為らなかった・・・人を滅ぼす神に。

 裁きの神バリフィスに覚醒してはいけなかったのだ・・・」


ルシファーが辛そうにミハルに答える。


「私が堕神となった訳。

 それはリーンみたいな監視者たる神と闘った為。

 人間を監視し、理想通りに行かなかった世界を滅ぼす神々に私は反撥した・・・

 だが、多勢に無勢・・・私は敗北し神界を追われる事となって、闇に貶められたのだ」


ルシファーが堕ちた訳。

それは人を護るべき本当の神たる者が、人間を監視し滅ぼす神達に敗れた為だという。


「ルシちゃんが貶められたのは知っていたよ。

 ルシファーが優しくて、本当は神様に近い魔王だって想ってたもん。

 でも、そんな訳があったなんて・・・知らなかったよ」


ミハルは毛玉に答えてから洞窟の外を見る。


「何か・・・音が聴こえない?ルシちゃん」


突然ミハルが何かに気付いて洞窟を出た・・・


  ((ウウ~ッ ウウウゥ~ッ))


どこか遠くで警報が鳴っている。


「何かしら・・・警報だなんて・・・」


突然の警報に、ミハルは音の鳴っている方角を見た。


「えっ?!」





それは何の前触れも無しに起きた。

誰も想像した事も無い破壊。



黒煙が遠く港の方角で立ち昇っていた。


「まさか・・・事故?いいえ・・・攻撃を受けているの?」


黒煙は港の方角からどんどん移動している・・・こちらへと。


「ミハル!これは訓練じゃあない!

 これは闘いだ!戦闘が起きているようだぞ!」


毛玉に言われるまでもない。

ミハルの目に映ったのは黒煙を噴き上げる街並み。

誰がどのようにして破壊を繰り広げているというのか。


「いけないっ!早く王宮に戻らなきゃ!

 お父さんとお母さん、マモルにみんなっ!

 護らないと、助けないと!」


ミハルは洞窟を飛び出し王宮へ走り出した・・・


「ミハルっ!何かが襲い掛かってくるぞ!」


胸に宿るルシファーが叫んだ。

ルシファーの声に空を見上げたミハルの目に。


「あっ?!あれは・・・あれは確か。

 フェアリアに還る途中で遭遇した黒い機体?!」


ミハルの瞳に映ったのは、空飛ぶ魔法少女に撃墜された機体と同じ物だった。


挿絵(By みてみん)


ミハルは父マコトから譲り受けたブーツを履き、<神の祠>へと向かうのだったが?


そこに在ったのはグランの鬣だけだった。

神となってしまったというのか、リーンは?

謎は晴れぬまま危機が迫るのだった・・・


次回 Ep1 空へ Part7

君はあの人にもう一度出逢うのだった・・・とんでもない魔法少女と!

 ・・・人類消滅まで・・・アト 174 日

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