表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
420/632

第4章 女神覚醒 Ep7 罠  Part1

挿絵(By みてみん)


暑中御見舞い申し上げます



リーンは神が宿ると言う祠に辿り着いた・・・


リーンは光の中に居た。


そこは誰も入れない聖域。

そこは何人も干渉出来ない世界の入り口・・・


門が開くと、そこは一瞬にして別の世界へと変わった。


「ここは?・・・ここが?」


呟く声に、何者かの声が答えた。


「そう。

 ここは神の居る場所。

 <神の祠>なのです。

 ・・・お帰り、我が娘・・・」


その声に、金髪の乙女が目の前を振り仰いだ・・・


「あなたは光を求めて此処へ来たのですか?

 それとも、崩壊を求めて此処を訪れたのですか?」


眩く輝く光の中から声が聴こえる。


「あなたは此処へ戻って来た。

 人の世を知って再び此処へと還って来た。

 さあ、あなたの観てきた事を、私たちへ示すのです」


光は娘に尋ねる。


「あなたが見てきた全てを・・・あなたが知った人の想いというものを全て」


光の中でたゆたう金髪の乙女に求めてきた。


「私は・・・誰なの?私は一体何者なの?

 私の本当の名は何というの?」


乙女は自分を求める。

知らず知らずに手が指し伸ばされていく。


「そう・・・あなたは此処での記憶が無いようね。

 ここから人間と伴に外へ出てしまったのだから。

 あの人間の娘と同じ姿で出て行ったのだから。

 忘れてしまったようね、自分が何の為に存在しているのかを」


光が乙女に告げた。


「忘れた?・・・そう。

 私は何者なのか・・・名前さえ忘れてしまった。

 だから・・・教えて、私の名を。

 本当に名乗るべき・・・名を!」


手を指し伸ばして答えを求める。


「いいでしょう。

 あなたの求めに答える前に、神たるあかしを差し出すのです。

 あなたが神である証を示すのです」


光の求めに乙女は戸惑う。


「私が神?どういう事?」


だが、光は乙女に答えず、


  (ビシャッ)


眩い光で乙女を照らし、


「確かに認められました。

 あなたが我等が娘である事を。

 あなたは我等が<検証神>-バリフィスーであると認めます」


光の声が名を告げた。


「バリフィス?それが本当の名乗るべき私の名だというの?」


金髪の乙女が訊いた。


「そう。

 あなたは人間を検証する者として人間の世界へ出て行った。

 人間が<神>とあがめる者、バリフィス。

 最期の審判を下す為に野に降りし神よ!」


バリフィスと呼ばれた乙女が光を見詰める。


「私が人間を調べる?どんな理由があって調べるというの?」


バリフィスは光に尋ねる。


「教えましょう、あなたは忘れているようですから。

 我々は人間が神と呼ぶ()()

 この人間が住む世界を監視する者として存在している・・・

 此処とは違う次元より来た者なのです」


バリフィスは光の声を黙って聴いている。


「あなたは人間界で聴いた事でしょう。

 千年程前に、巨大な隕石がこの世界に墜ちたと。

 そしてその影響で空に電解層が出来、人は空を高く飛ぶ事が出来なくなったと。

 それは我等がこの世界の人間を閉じ込める為。

 空を高く飛び他の星へ行くのを防ぐ為に施したのです」


<では・・・何の為にそんな事を?>


喉まで出掛かった言葉をバリフィスは光の声に押し留められた。


「この世界の人間は、生存する価値を持ち合わせているのか。

 それとも悪しき者として我等の粛清を受け、滅びの道を歩むのか。

 それはあなたが決めねばならないのです<検証する者>バリフィス」


「私が人の未来を決めねばならない?

 どうして私が神で、どうしてこの世界の未来を決めねばいけないの?」


バリフィスと呼ばれた乙女が光に訊いた。


「それはあなたが検証してきた筈だから。

 人の世界へ出て、身をもって調べた筈なのだから。

 あなたの意志が全てを決するのですバリフィス。

 何故ならあなたは人ではない、我等の中から造られたモノ・・・

 人造人間・・・あの王女リーンのDNAから造ったコピーでしかないのだから」


王女リーンのDNAからこのバリフィスと呼ばれし者は造られたという。

だが、この乙女にはなんのことやら解りはしなかった。

この時代の記憶しか持たないリーンであった者には。


「何を言っているのか私には解らない。

 解った処で、私が人の世界を滅ぼす訳がないでしょ!」


頭を振って拒んだ乙女に光が告げる。


「あなたはこれより我等の元へ戻る事になるのです。

 あなたが経験した出来事を全て我等の元へ知らせる為に。

 そして我等監視者の総意を、あなたが決める事になるのです。

 この世界の人間が同じ過ちを繰り返さぬと判断出来るか否かを」


光が王女リーンのDNAで造られた娘、バリフィスに告げて。


「さあ!バリフィス・・・あなたの記憶装置メモリーを渡すのです」


光がその乙女に注がれる。

王女リーンだった者が辿った数奇な物語は、光によって何一つ残さず吸い取られていく。


「あ・・・ああっ、私の今迄が全て・・・

 王女リーンがこの場に来た時からの記憶が全て出てくる・・・

 私が王女リーンとなった時からの・・・」


バリフィスと名乗るべき乙女は全ての記憶を光に渡した。


「データ転送完了・・・バリフィスよ、眼を開けなさい」


光が元王女リーンに告げた。


「眼を開ける?

 私はずっとあなたと話していたじゃない。光の中で・・・」


そう言って初めて気付いた。


「あっ!」


本当の自分が居る場所に。


金髪の乙女リーンと名乗っていた娘が眼を開けて周りを観ると、


「ここは?・・・一体?」


フェアリア皇国王女リーンを名乗っていた自分が居る場所。


そこは見知らぬ機械が周りを埋め、何かの装置に座っている自分に漸く気付いたのだった。


挿絵(By みてみん)



バリフィスと名乗るべき乙女は戸惑う。


自らの宿命さだめを知って。

人の業を知ってしまい・・・

そして、自らの責務に希望を捨てるのか・・・


次回 わな Part2


君は愛を捨てるというのか?悲しみの果てに・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ