表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
416/632

第4章 女神覚醒 Ep6 ルーツ <自らの起源> Part1

皇王の寝室で3人は向き合っていた。


リーンの口から流れ出るのは救いを求める叫びだったのだが・・・

皇王が横たえた身体を起こしてリーンに言った。


「そなたを知る者は誰も知らさぬであろう。

 そなた自身の手で知らねばならぬ。

 己がまなこで知らねばならぬのだ・・・リーンよ」


皇王が言ったのは、トアが教えた事と同じだった。


皇王様おとうさま・・・何故ですか?

 何故教えてくださらないのですか・・・

 事実を話してくださらないのですか?」


瞳を澱ませたリーンが2人に尋ねる。


「そ・・・それは。

 神様の命なの・・・リーンが他の者から聴いてしまえば・・・」


そこまでユーリが喋った時。


 ((ガチャッ))


ベットに横たわっていた皇王が剣を抜き放った。


「言ってはならぬ・・・もし話すのならば。

 神の報いが国を滅ぼす・・・いや。

 この世界そのものを滅ぼす事となろう・・・良いかユーリ」


剣先を皇太子姫に突きつけた皇王が黙らせる。


「どうあっても・・・ですか?皇父様・・・」


求めに首を振った皇王とユーリに悲しみの涙をみせる。


リーンは居た堪れなくなって泣きながら走り去った。


皇父様おとうさま・・・とうとうこの時が来てしまいました」


ユーリが手にした電報を握り締めて言った。


「ユーリよ、あの娘が甦る前に。

 リーンが甦る前に神は覚醒させようとしているというのか。

 幼き魂は最早・・・甦らぬというのか・・・」


皇王も剣を鞘に納めて悲しみの嘆きを呟くのだった。



新しき政府の任命式が執り行われていた。


「リーン宰相姫はどこですか!?」


政務官補ルマが探し回っている。


「誰かリーン姫を見た者は居ないのか?

 武官達は知らないの?副官補トアは何処に行ったのよぉっ!」


侍女達に聴き回る次官補に、誰も居場所を答えられず、首を振る。


「あああっ!またカスター殿下に怒られてしまうっ」


次官補は困り顔で、リーンを探し回っていた。


「リーン様ぁ、何処へ行かれたのですかぁ?!」


涙目のルマの声が虚しく王宮に木霊した。







うら若き乙女が一人、王族の墓所に佇んでいる。


白い正装を着て、風にマフラーを靡かせた金髪の美女は、

後ろに結ってある紅いリボンをほどいた。


「ミハル・・・私。本当のリーンではないみたい・・・」


一つの墓の前で、金髪を風に靡かせる乙女は、虚ろな瞳で墓に刻まれた名を見詰める。


   <<リーン・フェアリアル・マーガネット>>


墓石には、確かにそう刻まれてある。


「誰なの・・・誰なの・・・」


口から出る疑問符。


   <<フェアリア暦新皇紀167年歿ぼつ享年10歳>>


「私は・・・私は・・・」


   <<フェアリア王女 花を愛でし乙女に永劫の安らぎを・・・>>


「誰なの・・・私って?」


挿絵(By みてみん)


王族の墓所。

そこにひっそりと建つ墓石の前で、金髪の乙女は紅いリボンを手に立ち尽くしていた。


「知ってしまったか・・・マーガネット」


白髪の中将は呟く。


「お前はいつか気が付くだろうと思っていたよ」


そう言ったドートル中将は、昨晩の事を思い出していた。




「叔父さん。ドートル叔父さん、話しがあるの・・・開けて」


その声にドートルは席を立ち、ドアを開けた。

そこには深刻な表情のリーンが立ち尽くしていた。


「どうしたのだマーガネット。こんな夜更けに」


招き入れるドートルが沈んだ顔をしたリーンに尋ねるが、

虚ろな瞳を向けただけで何も答えなかった。


「立ち話もなんだ。そこに座りなさい」


向い合わせの席を指し示すと、リーンは黙って席に腰を降ろした。


「一杯付き合わんか。ちょうど今、呑んでいたところだ」


グラスにスコッチウィスキーを注ぎながらドートルが勧める。


「ええ・・・頂きます」


グラスをリーンの前に置くと、手を着ける。


「どうだ、リーン。仕事の方は慣れたかな」


ドートルは、障りの無い話をふって様子を伺う。


「叔父さん・・・聴きたい事があるの・・・」


ドートルの考えはあっさり覆される。


<このは・・・マーガネットは何を言わんとしているのか。もしや・・・?>


ドートルは一抹の不安を覚えた。


「ねぇ・・・私はリーン・・・お父様の子、リーン・マーガネットなの?」


リーンの口からその言葉を聴いてしまったドートルは、目を見開き口を噤んだ。


「ねぇ、叔父さん。

 叔父さんなら知ってるでしょう?

 お願い・・・本当の事を教えて」


グラスに視線を落としたまま、リーンが尋ねる。


「どうして、そんな事を訊くのだマーガネット」


ドートルの返答にリーンが言った。


「そう・・・マーガネット・・・。

 いつも叔父さんは私の事をマーガネットと呼んでいたから。

 いつも、リーンと呼ばずにマーガネットと呼んでいたから・・・

 私がリーンでは無いと知っていると思ったの・・・だから此処へ来たの」


消え入る様な声で、ドートルに答える。


「マーガネット・・・本当の事を知ったとして。

 おまえはどうするというのだ?

 今迄リーンとして生きてきたマーガネットは何を求めて、これからを生きるというのだ?」


ドートルはリーンを見詰めて問い質す。


「解らない・・・本当の私を知ったとして、それが一体何になるのかも。

 でも私は、知りたいの・・・自分が何者なのかを。

 自分が何処の誰なのかと言う事を・・・」


リーンはグラスに残っていたスコッチを一気に呷った。


「マーガネット・・・私の口からおまえに教える事は適わない。

 おまえが誰なのかという事を口にする事はできないのだ。

 それは・・・誰にも出来はしないのだ。

 だが、リーンが何処に居るのかは教えられる。

 ・・・明日の朝、もう一度此処へ来なさい。

 私が連れて行こう、知るべき事実を見せてやる事が出来るから」



ドートルは昨晩の出来事を思い出していた。


その瞳には、立ち尽くす金髪の乙女の姿が映っていた・・・



自分が一体何者なのかを追い求める金髪の乙女。


その名は未だ、解らなかった。


自分を追い求める金髪の乙女・・・リーンは、

叔父ドートルに導かれて墓所へと辿り着いたのだった・・・


次回 ルーツ <自らの起源> Part2

君は自らのルーツを探る・・・そして


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ