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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第4章 女神覚醒 Ep4 闇・・・再び Part5

悪魔と化したトーア姫。

そのままでは闇に侵蝕され、やがては魂まで喪う事となったであろう。


だが、主人たる者が与えたのは・・・光。

灰燼に帰した王宮で。


紅き瞳になったトーアが立ち尽くしていた・・・唯一人で。


闇の力で周りを薙ぎ払った悪魔フォウと同化した姫であった娘トーアが漸く気付く。


「ワ・・・ワタクシは・・・何をしていたの?」


周りに立ち上る炎と煙に眼を瞬かせる。


「トーア姫よ・・・これはそなたが求めた力が招いた結末。

 我と契りしそなたが放った力の威力・・・なのだ」


いつの間にかトーア姫の左髪に緑の魔法石が着いている。

その石からトーア姫の意識に悪魔フォウの声が流れ込んできた。


「え?

 ワタクシの力?

 ワタクシが放ったちから

 一体何がどうなっているの?」


混乱するトーアに、フォウの声が聴こえた。


「如何にも・・・我に望んだそなたの力。

 そなたが望んだ通り、仇名す者を滅ぼしたに過ぎん。

 トーアの願いを果たしてやったまで・・・」


声に促される様に、トーアは周りを見詰め愕然とする。


「こんな事・・・ワタクシは望んじゃいない・・・ですの。

 こんな酷い事を願ってはいない・・・

 お父様やお姉さまだって・・・望まれていない筈ですの・・・」


炎や煙の間からは、何人もの倒れた人影が見え隠れしている。


「ふふふっ、トーアよ。

 そなたは我と契ったのだ・・・悪魔フォウと。

 一度契約したからには、そなたの一存で反故には出来ぬぞ。

 そなたの魂が堕ちるまで・・・闇の中に貶められるまで。

 何度と無く他の魂を奪う事となるだろう・・・覚悟しておくがいい」


悪魔フォウの言葉がトーアの心に刺さる。


「そんな!

 ワタクシが錯乱していた時に・・・

 怒りで我を忘れていた時に結んだ契約ですの・・・

 こんな契約無効ですのっ!」


トーアは髪に着いた魔法石を外そうと手に掛けたが。


「え?嘘ですのっ!

 取れないっ、外れないの・・・ですのっ!?」


まるで、髪に張り付いたかのようにどうしても取れなくなった魔法石に、


「離れてっ!外してっ。ワタクシから出て行ってくださいですの~っ!」


無我夢中で外そうともがき叫んだ。


「言っただろう、一度契約したからにはそなただけでは外す事は叶わぬ。

 そなたが闇に堕ちる時まで・・・我が認めるまで。

 何度と無く人の魂を奪う事となるだろう・・・

 それが我が主・・・魔王様がお命じになられた事。

 力ある魔法少女の魂を求める魔王様の命令・・・」


フォウが緑の石から告げた・・・悪魔の謂れを。


「酷いですのっ!

 ワタクシは闇になんて貶められたくはないのですのっ!

 他人をこれ以上傷つけたくないの・・・殺したくは無いのっ、ですの!」


魔法石を抑えて叫ぶトーアに、フォウが嘲笑うかのように。


「無駄だ、トーアよ。

 死しても尚、そなたの命は・・・魂は我のモノだ。

 死んでもそなたの魂を闇に貶めるだけだ。

 逃げる事は最早、叶わぬと想え!」


残忍な言葉が投げかけられた・・・悪魔から。


「ああ・・・なんて・・・何て事をしてしまったのですの。

 これではお姉さまに死んでお詫びをする事さえ叶わない・・・

 お姉さまの元へ逝く事さえ出来はしないと言うのですの・・・」


絶望に瞳は澱む。

心は後悔の念に押し潰される。


悪魔フォウの策略に掛かったトーア姫の瞳は絶望と救いを求めて紅く染まった。

闇の瞳の色へと・・・







_______






「悪魔フォウだった者に尋ねる。

 それでは今のそなたになったのはいつの事なのだ?

 誰がお前を神の使徒に昇華させたというのだ?

 トーアがトアと名乗るようになったその訳を話せ」


魔獣グランが今は使徒たるフォウに訊く。


「一度に訊くな。

 我が神の使徒となれりは、我が主が<神>と帰したから・・・

 元々神であった我が主が、古き誓いに目覚められたからに他ならない。

 そしてワタクシにも求められたからだ。

 主に忠誠を尽くす、このフォウに・・・<<我に殉じよ>>と・・・」


フォウの紅き瞳を覗き込んで、魔獣の瞳が光を放つ。


「神に魔王がなれるだって?

 そんな話は聞いた事もない・・・戻るだって?

 魔王が神に戻るだと?

 お前の主は元々堕神だったと云うのか?」


グランの問いにフォウが睨みかけてくる。


「失礼な魔獣よ。

 堕神などと気安く呼ぶな!

 我が主は魔王となるまでは立派な神であった。

 何かの事実を知られる前までは。

 神の一族に追放させるまでは・・・」


紅き瞳を同じ紅い魔獣の瞳に向けて、言い放った。


「ふむ・・・では、今は神たるお前の主人は何が望みなのだ?

 お前が使徒となった時、トアとの契約も破棄された筈だ。

 なのに何故トアと同化しているのだ?

 未だにこの娘の力になってやっていると云うのだ?」


グランは向けられた瞳にも動じず、目の前に佇むフォウの目的を訊く。


「新たな契約は成されている。

 トーアはトアを名乗り、我が名を加えてまでも願ったのだ。

 我が主に・・・神たる<<ルシファー>>様に・・・」


使徒フォウは魔獣に教える。

トアを名乗り、新たな契約を結んだその訳を。


「魔獣グラン・・・

 我が主が神に戻られたのはフェアリアが戦争を終える少し前。

 このフェアリアで我が主が自らに目覚められたのは偶然の出来事が重なった為。

 ・・・そう。

 神たる<ルシファー>様に目覚められたのは一人の娘との邂逅・・・」


フォウが話したのはルシファーがどうして魔王を捨てられたのか。

何故神へと戻る事になったのか・・・を。


魔獣グランには初耳な話ばかりだった。

自分が知る前の・・・あの娘の名を聴く事となろうとは思いもしなかった。


人でありながら、闇と光の力を託されし・・・ミハルの名を聴く事となろうとは・・・


「魔王ルシファーが・・・我が契約主たる娘に力を授けたとは・・・

 魔王が人の娘に力を授ける事があろうとは・・・しかも・・・

 我が契約主たるミハルを護って、魔王ベルゼブブと遭い果てるなんて。

 その行為が元々神であった事に気付かせる事になろうとは」


魔獣は使徒フォウの紅き瞳を見詰める。

そこには嘘偽りの欠片も無い清さがあった。


「それで・・・フォウよ。

 神の使徒となったのは?

 悪魔だったフォウがどうして神の使いとなれたのだ?

 いくらあるじが神となったとしても、

 従属する者まで光を授けられるとは想えないが?」


グランの質疑に応じるトアは、


「ルシファー様が御命じになられたのだ、ワタクシに・・・

 悪魔だったフォウに従がえと命じられたのは、光に姿を換えられた魔王だった者。

 ワタクシは眩いバカリに輝く光を魔法石に受け、

 闇の者ではなくなったのだ・・・悪魔では無くなったのだ」


挿絵(By みてみん)



そしてフォウはトアの姿を換えて見せた。


「この姿に替われるのも神の使徒たるワタクシの力。

 魔獣よ、そこで観ているといい!

 我が姿がの天使とは違うと言う事を!

 ワタクシの魔法衣が神の力を纏った事を知るがいい!」


トアの瞳が紅く色ずく。

魔獣グランの前で少女の魔法衣が新たな変化を遂げて行った・・・


蒼の騎士たる魔法衣を纏う紅き瞳の魔法少女。

その姿は・・・闘う騎士に代わる。


左髪の緑の髪飾りが光を放ちつつ、トアの前にたゆたう。


光が魔法石からトアの姿を隠す程眩い輝きを放ち、


天から舞い降りてくる魔法の上着をその身に被せられ、


光の使徒トアに、白い戦闘着・・・魔闘着となって装着された。


挿絵(By みてみん)



白を基本にした魔闘衣。

蒼のラインが入った襟元。

金色のアクセントが眼を惹く神の使いたる紋章・・・


トアの闘う姿が魔獣の前にあらわされた。


「どう・・・ですの?

 これがワタクシの闇を祓う闘う姿。

 神たる・・・お方を護る為に。

 あるじから遣わされた使徒トアの姿ですの・・・

 ワタクシの願いを果たす為にも・・・ですの!」


魔獣グランの前で、蒼の騎士トアの目が見開かれ言葉使いが変わっていった。

 

口調が変わった事で、魔獣グランは気付いた。


自分の後ろに寝ていた筈の、リーンが見詰める気配に・・・


挿絵(By みてみん)


使徒たる者は新たな魔闘衣を披露する。

その姿にリーンは自らの運命に気付き始める。


そして愛しき娘の姿を観るのだった・・・夢とも想える空間で・・・


次回 闇・・・再び Part6

君は従う者と新たな契りを結ぶ・・・闇との闘いに覚悟を決めて

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