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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第4章 女神覚醒 Ep3 護りし騎士 Part5

挿絵(By みてみん)


トアはいつもリーンの傍から離れない。

着替えているときでも・・・そう。

リーンが煙たがるのも解る気がする。

「トアっ!皇女副官補トア・フォウ少尉!」


ルマ政務官補が大声で呼びかける。


「リーン宰相姫が御呼びだぞ!何処に隠れた!?」


辺りを見回し探し回り、そっと後に目配せする。


「どう?居ない?」


その視線の先に居たリーンが小さな声でルマに訊く。


「はい・・・居ないようですね。大丈夫でしょう」


ルマも小声で答え、


「そんなに毛嫌いされているのですか?

 だったら、副官補を解任されたらどうなのです?」


眉間に皺を寄せるリーンに尋ねた。


「いや・・・それが駄目なのよルマ。

 トアを解任したら・・・お目付け役の人数を増やすって脅されているのよ。

 ユーリ姉様とカスターに・・・だから」


困った様に頬を掻くリーンにため息を吐くルマが、


「じゃあ・・・諦めて大人しく御公務に勤しまれたらどうなのです?

 こんなコソコソしておられるの・・・リーン様らしくないですよ?」


肩を挙げてリーンに言った。


「私もコソコソなんてしたくはないわよ。

 大体なんであんな鮟鱇娘を私に就けたのか・・・ユーリ姉様に訊いてみたいわ」


はぁ・・・と、ため息を吐くリーンに笑い掛けたルマが、


「私もどうして他国から来たばかりで、

 少尉に任官した娘が何故姫様の護身に就けられたのか聴いてみたいですね」


トアの少尉任官と皇女護身副官補就任について、訳を尋ねたくなった。


「そうよね・・・私も訊きたいわ。どうしてなのかしら・・・」


顎に指を当てて考えるリーン。


「そんな事より・・・いいのですか?リーン様。お出かけにならなくても?」


ルマがトアの居ない内に出掛けると言っていたリーンに訊くと。


「そうだったわ。今の内にグランと残党狩りに行かないと・・・」


慌ててリーンがグランを呼び出すと、


「それじゃあルマ、行って来るから。宜しくね!」


「はいはい。お気をつけて・・・お帰りは何時位ですか?」


素早く魔獣のふさふさの鬣を掴んでその背に乗る。


「そうね・・・晩御飯までには帰るから」


そう言うとグランを促し空へと舞う。

舞い上がったグランの背に向けて手を振るルマに微笑んでリーンが答えた。




「上手く撒いたつもり・・・ですの?」


魔獣の飛び去る姿を見詰めてトアが呟く。


「甘いですの。ワタクシからは逃れられない事を解らせてあがるの・・・ですの!」


ニヤリとほくそ笑む鮟鱇娘は飛び往く魔獣の後を追った。




___________





「其処までだ!皇女リーン。大人しく手を挙げるんだ」


荒地で男達の声が白き皇女に向けられる。


「我々を甘く見るのも程があるぞ!

 我々には武器がある事ぐらい知っている筈だがな」


キューポラから男が言い放つ。


「魔法を放つのなら、我々はこの砲を放つだけだ。

 あのバスに・・・子供達が載るバスに・・・な」


悪事を働く悪漢にリーンの手が握り締められる。


「卑怯者め・・・人質を獲るなんて・・・それでも元軍人なの?」


怒りに燃える瞳でリーンが悪漢を睨む。


「なんとでも言え。姫を捕らえれば恩賞が転がり込む。

 そうすれば楽に遊んで生きて行けるんだ・・・こんな糞面白くない時代でも!」


私欲を満たそうと試みる悪漢達に怒りを向けるリーン。


「だったらどんな手を使っても良いと言うの?

 人質を解放しなさい!あの子達にはなんの罪もないのよ!」


リーンが指し示すバスには数人の子供達が震えながら乗っていた。


「それは皇女次第だ。大人しく我々に捕らえられろ・・・さもなくば」


砲身をバスに向けた4号戦車から、男が言い放つ。


リーンは身を隠し状況を図る魔獣に対し、


「良いグラン。私が近付いたら。一気に方を着けるからね」


小声で作戦を言い渡した。


「御意・・・」


同じく魔獣が小声で了解した。


「さあ!両手を挙げてこっちに来い・・・変な真似をすればこの弾をバスに撃ち込むぞ!」


脅しを掛ける悪漢に、頷いたリーンが手を挙げて歩みだすと。


「良いか、少しでもおかしな真似をすればもう一台がバスを撃つぞ!」


悪漢がリーンの知らないもう一台の事を話した。


「えっ!?もう一台ですって?」


思わず確かめる為辺りに目を配ると、

少し離れた場所にもう一両の4号が砲身を向けて停まっていた。


<しまった・・・一両だけじゃあなかったのか!>


リーンが臍を噛んで悔しがった。


<それなら・・・グランを停めなきゃ・・・>


振り返ったリーンの眼には既に動き出しているグランの姿が・・・


「グランっ!待って、もう一両居るの!」


叫んだリーンの瞳には、目の前に居る悪漢達に襲い掛かる魔獣の姿が観えた。


「駄目っ!グランっ、もう一両が!」


手を指し伸ばしたリーンが叫んだが、間に合わなかった。


「ぐわあぁっ!」


グランが襲い掛かり悪漢が断末魔の叫びを挙げる。


「しまった!もう一両は?」


リーンはバスを狙うもう一両の4号に視線を併せて術を放とうとスペルを詠唱したが。


<駄目・・・間に合わない!>


砲口は既に狙いを定めていた。

思わず眼を瞑って砲撃を覚悟する。


だが・・・


「ぎゃあああぁっ!」


叫びはその4号から聴こえた。


「えっ!?」


瞳を開いたリーンが眼にしたモノとは。


「ホレホレ・・・皇女様に盾突いた罪は重い・・・ですの!」


蒼い魔法衣に身を包んだ鮟鱇娘が其処に居た。


「・・・なんで?トアが居るの?」


呟いたリーンが眼を点にして訊いた。


「天知る地知る・・・ワタクシが知るぅ。トア様登場ですの~っ!」


お調子者の声が高らかに叫ばれた。


「だ~か~らぁっ!どうしてトアが此処に居るのよ!」


大声で訊いたリーンに。


「ワタクシが来なければ危ない処だったのですの。

 後を追って来て良かったですの・・・です・・・の?」


睨まれて居る事に気付いたトアがビクついて語尾を濁した。


「どうして後を追って来たのよトア。

 私達が王宮から出て来たのをどうして知っているのよ?」


「そ・・・それは。リーン様アンテナって物が・・・あ。信じて無いですの?」


ジト眼で睨まれている事を知ったトアが冷や汗を掻く。


「トア・・・本当の事を仰いなさい。怒らないから・・・

 どうしてあなたは私の事をこうまでして護ろうとするのよ。

 なぜあなたは私に尽くそうとするのよ。

 何があなたの狙いなの・・・仰いなさい」


リーンが真剣な瞳でトアを睨む。


「それは・・・リーン様の事が一目で好きになったから・・・ですの」


その瞳からそっぽを向いてトアがはぐらかそうとしたが。


「そんな理由が通じるとでも思って・・・」


そこまで言ったリーンが気付く。

トアの髪飾りに着けられている緑の魔法石に。


<あの・・・紋章は。確か・・・>


「あなた・・・東プロイセンから来たと言っていたわね。

 トア・・・あなたの紋章は・・・王家の紋章ではなくて?」


リーンがトアに向けて尋ねた時、蒼き瞳が見開かれる。


・・・悲しみに満ちたトアの蒼き瞳が。

トアの髪飾りに浮き出る紋章。

東プロイセンの王家の紋章がどうして髪飾りに着いているのか?


その訳を知る事になるリーン。

運命が教えるリーンとの邂逅。

そして・・・


次回 EP4 闇・・・再び

君は何故皇女に近付いたのか?何故護ろうとするのか?

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