第4章 女神覚醒 Ep3 護りし騎士 Part4
リーンは夢現の状態でベットに横になっていた。
身に迫る危険に気付かず。
危険?
「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」
安らかな寝息が聞えて来る。
そっと足を忍ばせてベットに近付く者は金髪の娘の顔を見下ろす。
「このまま・・・目覚めず。
このまま・・・気付かず。
このまま・・・眠り続けると云うの?
・・・あなた様は・・・リーン。
いいえ、我が主人・・・女神たる人、人たる女神・・・」
茶色の髪を搔き揚げたトアがリーンの寝顔を見詰めていた。
<やはり・・・コヤツはリーン様の何かを知っている・・・
油断出来ないぞ・・・もしリーン様の身に危害を加えようとするなら・・・排除するまで>
部屋の片隅からリーンを守護する魔獣グランが見張りながら考えていると。
<む? 何をする気なのだ・・・服を脱ぐとは?>
目の前でトアが制服を脱ぎだしたのに眼が惹き付けられる。
<うむむ・・・これは。
役得・・・じゃない、何を考えておるのだ?ごほん・・・>
どんどん裸になるトアに動揺する魔獣グラン・・・
「あふぅ・・・あったかい・・・」
ごそごそ・・・
「なんだか・・・夢でも観ているのかしら。
・・・まるでミハルと一緒に寝ているみたい・・・」
リーンは寝惚けてうつらうつらと瞳を開けた・・・ら。
「な~んだ・・・ミハルが居る・・・そっか・・・これも夢なんだ。
そっか・・・そっか・・・にひひ・・・」
横で白い肌が見えたような気分になって。
半分夢心地で眼を瞑ると。
「はにゃぁ・・・ミハルぅ・・・ペットになぁれぇ・・・むにゃ・・・」
夢の中でミハルと戯れる。
「ほらほら・・・こんなにキスマークつけて。
ミハルぅ・・・可愛いよぉ・・・にひひ・・・」
温かい肌に唇を這わし、ニンマリと微笑むリーン。
「ひゃあっ・・・リーン。リーン様ぁ・・・そんなご無体なぁ、ですの」
・・・・・
「にゃ・・・にぃ?」
聴こえた声にリーンの眼が覚める。
「ま・・・さ・・・か・・・この声は・・・?」
リーンの顔が引き攣る。
「ポ・・・ですの」
・・・・
「ギャアあああああああああああああああああっ!?」
断末魔の叫びがリーンの私室を揺るがした。
「はあっ、はあっ、はあっ!?」
息を切らしてリーンが飛び起きる。
((がばっ))
絹の布団を跳ね除けると其処にはやはり・・・
「トアっ!?そこで何をしているのよぉっ!」
一糸纏わぬ姿で寝そべっている魔法少女・・・いや。
鮟鱇娘がリーンを見上げて微笑んでいた。
「はぁい、リーン様。もうお目覚めですの?」
紅く頬を染めて甘えるように言うトアに。
「そ・・・そこで何をしているのかって、訊いたのよ!」
怒りに震えるリーンに悪びれず答える鮟鱇娘。
「リーン様に抱かれていました・・・ですの!」
((プチンッ))
どこかがぶち切れた音が聴こえた・・・気がした。
「あ・・・な・・・た・・・ねぇ。死にたい訳?」
ぷるぷる震えて手を握り締めたリーンに。
「だってぇ・・・抱き寄せて来たのはリーン様の方ですの。
ワタクシの首筋にキスしてきたのは、リーン様の方ですの!」
((プチ プチ))
切れ続けるリーンのコメカミ。
「あ・・・の・・・ねぇ。そうまでして私を怒らせたい訳?」
ぷるぷる震えるリーンの頭から湯気が立ち昇る。
「怒っちゃ・・・や。なのですの・・・」
飽く迄悪びれないトアが微笑む。
「この私を此処まで怒らせたのは久しぶりよ。
逆の意味褒めてあげる・・・さあ、覚悟完了?」
リーンが指をトアに向けて覚悟を仄めかす。
「あわわっ、そんな御無体な。抱き寄せたのはリーン様ではないですの~っ!?」
「言い訳無用・・・って。私が?トアを?」
怯えるトアにリーンが惚けた様に訊き直す。
「そうですの~っ、リーン様がワタクシを抱き寄せたって言ってるではないですか。
ワタクシは無実なの、ですのーっ!」
首をぶんぶん振って許しを乞うトアに、
「私がトアを?・・・どうして?」
「知らないですの~っ、横で寝ていたら突然襲われた・・・ですのーっ」
・・・・
(作者注・トア・・・自爆したな・・・)
プルプル震えるリーンが問い質す。
「一つ訊くけど。トアは此処で一体何していたと云うの?」
「はい。添い寝をしていたのですの!」
問われた事に素直に答えたトアに。
((チュド~ン))
魔法が炸裂した。
___________
「酷い・・・ですの」
涙目のトアが呟く。
「そのくらいで済んだ事に感謝して貰いたい位だわ」
パジャマのままのリーンがミハルのリボンで髪を括りながら答えると。
「リーン様ぁ、酷いですの。
ワタクシはどなたと間違われたのですの?」
((ぴくっ))
リーンの体が硬直する。
「なっ、何を?」
慌てて言い繕うリーンに。
「だってワタクシを抱きながら違う娘の名を呼ばれておられましたですの。
その<ミハル>って娘の名を・・・どなたですの?」
「う・・・あなたには関係ないわよ。
ミハルとあなたは全然違うんだから・・・」
トアに問われて動揺するリーンに、言ってはならない事を尋ねる鮟鱇娘。
「どう違うと言われるのですの?もしかして・・・胸の大きさとか。
それとも首筋のライン?あっ、解ったですの!匂いですの?」
((ぼかっ))
リーンの拳骨が墜ちる。
「根本的に違うのよ、あなとは。
ミハルは・・・ミハルってねぇ。すっごく可愛いの・・・比べ物にならない位!」
そう言って教えるリーンに、トアが訊き募る。
「どう、違うというのですの?そのミハルって娘と?」
訊かれたリーンの頭の中にミハルの姿が映し出される。
「ミハルはねぇ・・・私のペットなの!
いつもニコニコ微笑んで私に甘えてくるの。
白くしなやかな身体を私に預けて・・・私を呼ぶの。・・・リーンって!」
デレるリーンが眼をハートマークにして教えた。
<リーン様・・・嘆かわしい・・・ですぞ>
こっそり見張っている魔獣グランが冷や汗を掻いて呟いた。
「それに・・・ミハルは誰よりもこの私に愛を捧げてくれている。
どんなに離れていても私の事を想ってくれているの。いつまでも・・・」
紅く頬を染めたリーンがモジモジと身体をくねらせる。
<リーン様・・・エロい・・・ですぞ>
魔獣が・・・失神してしまった・・・
「・・・って。ごほんっ、兎に角・・・あなたなんかよりずっと可愛いの!」
咳払いをしたリーンが威厳を正すようにトアを見返した。
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「ぶるっ」
炎天下の砂漠でミハルが身震いをする。
「どうかなさいましたか、センパイ?」
顔色を伺ったミリアに尋ねられたミハル先遣隊戦車隊分隊長が冷や汗を垂らして答える。
「いやあのね・・・寒気がしたの。誰かがいかがわしい事を想像している気がしたんだ。
私の事をオモチャにする様な・・・身に危険が迫るような・・・そんな感じがしたの」
ミハルが何か得体の知れない身の危険を察知して身震いする。
「むむっ!?センパイにそのような気配をさせるとは・・・リーン様じゃあないのですか?」
半分冗談でミリアが答えると、
「強ち・・・嘘じゃないかも・・・」
ミハルが苦笑いして遠くを見詰めた。
「まあ。直ぐに解りますよ先輩。直にフェアリアに還れますから・・・ね」
困った様な顔をしている分隊長にミリア准尉が笑って言った。
あああっ。
とうとう・・・リーンまで。
最期の砦まで陥落したというのか・・・って。
リーンだけはって、想っていたのにぃ・・・BY・ミハル
さて・・・次回は・・・マトモなのかい?
次回 護りし騎士 Part5
君は心に秘めた想いを知らされる・・・真摯な瞳を見詰めながら