第4章 女神覚醒 Ep3 護りし騎士 Part2
リーンは闇の者を捕らえた。
下僕たる魔獣グランと供に・・・
「グラン!あいつを拘束して!」
リーンの命に魔獣が吼える。
「御意!」
雄叫びと供に、獅子の魔獣が邪なる者に踊りかかった。
「大人しく縛に就け!さもないと・・・グラン!」
リーンが邪なる者に指差す。
((グルオオオォッ))
グランの牙に怯んだ闇の者が怯え竦み上がる。
「さあ!お前の目的を言いなさい。何が狙いだと言うの?」
睨む蒼き瞳に力を込めるリーンに、
「この国に居る女神を捕らえるように命じられたのです・・・魔王様に」
怯える邪なる者が答えると、
「この国の女神?そんな神様が居られると云うの?
・・・本当の事を言わないと・・・グランっ!」
リーンは下僕たる魔獣に向かって声をかけた・・・が。
「リーン様、コヤツの言う事に耳を傾けられては?」
グランが主人に忠告した。
「グラン・・・そうね。解ったわ・・・聴きましょう」
グランの束縛で捕らえられた闇の者が震えながらリーンを見上げる。
「では、今一度問う。お前は魔王に命じられて女神を狙っていたのね。
その女神様とやらは何処に居られると云うの?」
邪なる者はリーンを見詰めたまま口を閉ざす。
「答えない気?それなら消し去るまで・・・グラン!」
リーンの脅しに震え上がる闇の者。
「い・・・言いますっ、言います!女神は・・・」
邪なる者はリーンを見詰めたまま・・・
「この国の王・・・その娘。
フェアリア国王の娘の一人だと申されて居られたのですっ魔王様がっ」
邪なる者に眼を剝いたリーンが、
「何を言い出すかと思ったら・・・そんな言い訳がましい事を?
魔王たる者がそんな嘘を吐いてまで我が国王を辱めるとは。
呆れ果てたモノね・・・
女神なんて、私でもユーリお姉様でも在り得ない事よ!」
怒鳴りつけると。
「我が主たる南の魔王様が、嘘偽りを言ってまで我等に命じられる訳が無いでしょう?
この国の皇女の一人が女神なのは間違いの無い事。
その身体に秘められた女神たる徴が何処かにある筈です・・・」
闇の者がリーンに教えた。
「印ですって?」
リーンが眉を上げて聞き返す。
「いかにも・・・その徴を探すのが我等の務め。
その印を見つけ、女神を捕らえるのが魔王様の命令・・・」
じっとリーンを見返しながら邪なる者が答えた。
「じゃあ、あなたはまだ女神を探しあぐねていると?」
尋問するリーンに頷く闇の者。
「だったら・・・その印とやらはどんな物なの?」
尋問される邪なる者が口を開く・・・その時、グランの目に影が映った。
「その印とは・・・女神たる者には・・・神の紋章が首筋に・・・」
((ビシャッ))
リーンの前に居た邪なる者が一瞬の内に消し去られた。
黒き波動によって・・・
「誰っ!」
リーンは波動を放った者を探す。
「リーン様っ!危のうございますっ!お退きください!」
グランが身を挺してリーンを庇うが。
((ギャシャッ))
そのグランに黒き波動が突き刺さる。
「ぐぅっ!?」
腹部に一撃を受けたグランが苦悶の声をあげた。
「グランっ!大丈夫なのっ!?」
思わずリーンが魔獣に抱きより心配するが、
「リーン様、どうやら手強い相手のようです。
ここは私に任せてお退きください」
牙を剝いて自分に術を放った敵へ眼を向けた。
そこに居たのは邪なる者としては上位のモノ・・・悪魔。
「ぎひひっ、魔獣のくせに・・・裏切り者め」
グランを見詰める目が闇の色に染まっていた。
「どうやら・・・ワタクシの出番なようですの・・・」
栗毛の髪を靡かせたトアが魔獣と皇女を見ながら呟く。
そしてゆっくりと瞳を悪魔に向け、
「仕方が無い者達ですの・・・ワタクシの邪魔をしようなんて。
百万年早い・・・ですのっ!」
紅い瞳に映るのは邪なる者としては高位な者・・・悪魔だった。
「ワタクシのご主人になられるお方に、穢れた手を伸ばすなんて・・・
身の程を弁えないにも、程があるの・・・ですのっ!」
トアはブレスレットを翳し、変身する。
((パアアアアァッ))
蒼き騎士へと変身したトアが身を翻し悪魔とリーンの間に躍り出る。
「そこの悪魔!このお方に手を出す事は万死に値するっ・・・ですの!」
・・・・・
場違いな現れ方をしたトアに、誰しもが口を噤んだ。
「さあ!このワタクシがお相手するですのっ!かかって来なさいっですのっ!」
・・・・
ポカンとトアを観る悪魔。
呆れてモノを言えないリーンとグラン。
「そちらが手を出さないのなら。ワタクシから攻撃するっですの!」
悪魔を睨んだ紅き瞳で、トアが術を唱えだす。
「あ・・・そう?一応魔法使いみたいだな・・・ホレ」
悪魔が詠唱を続けるトアに術を放った。
((ゴワン))
「ひゃああぁっ!?」
黒き波動をモロに喰らったトアが吹き飛んだ。
・・・・
「アイツ・・・何しに来たんだ?」
グランが呆れて呟く横で、リーンが頭を抱える。
「・・・仕切り直しといくか。魔獣よ、その娘を渡して貰うぞ!」
悪魔が何事も無かったかのようにリーンを見詰める。
「誰がお前なんかの言う事を聴くか!
我が牙に賭けてリーン様をお守する!」
牙を剝いて魔獣が言い放つ。
「だ~か~らぁ、ワタクシが倒しますですの!」
シリアスなグランに対して、間の抜けた喋り方をする娘が。
「え?」
「な・・・に?」
吹き飛ばされた筈の損な娘の姿は其処には無かった。
悪魔に向かって紅き瞳を向けているのは、<蒼き騎士>。
「あなた・・・その服は?」
リーンが眼を見開き驚く。
「あなた・・・トア。
それは・・・魔法衣・・・騎士の魔法衣・・・」
白き上着を身に纏った<蒼き騎士>の姿に、
リーンが叫んだ。
「その姿は・・・光を授けられた者・・・闇を討つ魔法使い!」
現れた悪魔の前に佇むトアの姿は・・・
この世界で魔法力ある者だけが身に纏う事が出来る魔法衣を着けていた。
次回 護りし騎士 Part3
君は自らの意思で騎士になったというのか?それとも・・・