魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep1街道上の悪魔Act5偵察任務
ミハルは大男の戦車隊大尉、クーロフに捕えられてしまった。
ミハルの体に危機が迫る。
曳かれるままに連行されるミハル・・・
だが・・・その時!
「隊長さん。その娘を放してやってくださいな」
アリシアが走り寄って来て髭面の大男に言った。
「なんだ酒屋の小娘か。クーロフ大尉に向って良くそんな口を叩けるな?」
小銃を構えた男がアリシアを見て咎めるが、
「あんたに言ったんじゃないよ、ロカモフ上等兵。
あたしが喋っているのはクーロフ隊長なんだから」
アリシアはロカモフを睨んでから、
「クーロフ隊長、その娘を放してやってください。
旅の人なんですから、この村には関係ない人ですから」
髭面の大男クーロフ大尉はそんなアリシアを見ると。
「そうだな、アリシア君。
君の店でこの娘と話がしたいのだ、案内して貰おうか」
クーロフ大尉は大人しく連行されるミハルを見て、アリシアの店で尋問する事を提案した。
「・・・クーロフ大尉、その娘はまだ何も知らない生娘みたいです。
あなたの様な大男の相手をさせられれば壊れてしまいますよ?」
そう言ったアリシアは、クーロフ大尉を睨んだ。
「・・・それはこの娘次第だな」
一言だけ言うと、クーロフはミハルの手を引いて酒屋の中へ入って行った。
2人の会話を聞いたミハルは自分の耳を疑った。
ー そ、そんな。
私、こんな大きな人に尋問されて抱かれてしまうの?
村の娘さん・・・アリシアさんが言った通りなら・・・
私、私はこの帝国軍人に・・・犯される・・の?
ミハルは目を曇らせてクーロフに酒屋へと連れ込まれる。
「おいっ!主人。奥の部屋を使うぞ。酒を持って来てくれ!」
そう命じるとミハルを個室に連れ込み、部下にも命じる。
「お前達は酒でも飲んでいろ。暫く掛かるからな!」
そう言ってドアを閉めた。
ミハルが連れ込まれた部屋には、窓等脱出を計れるものは無かった。
ミハルは部屋の中を見回して何処かに脱出を計れる場所が無いか探す。
だが・・・
((バタン))
ドアが閉ざされる音に振り返ると、
クーロフ大尉が軍服のシャツのボタンを外しながら近付く。
そして傍にあった椅子にその大きな身体をしずめた。
「勘違いしないで欲しい。まあ、そこの椅子に座って」
大男とは思えない気遣いで、ミハルに座る事を勧めて来る。
おずおずと座るミハルに大男が話しかけた。
「ヒノモトノ カタデスネ」
片言のヤポン語で聞いてきた。
「え?どうして?」
ミハルの耳に、母国語で呼びかけられた懐かしいアクセントが届く。
「はっはっはっ、ほーら、引っ掛かったな。
その美しい黒髪を見れば解るんだよ。
オレの出身はウラジオでね。
日の本に近くてね、友人も居るんだよ」
クーロフ大尉は大笑いしながらミハルを見た。
びっくりして大きく見開いた眼を見ながら訊ねてくる。
「どうして日の本の娘がこんな遠い、そして戦争中の国に居るのだね。それに一人で?」
クーロフ大尉の質問に最初は身を固くしていたミハルであったが。
「それは・・・戦争に巻き込まれて、父母を亡くしたからです」
ミハルが本当の事を告げる。
「そうかい・・・」
クーロフ大尉はじっと見つめてから頷いた。
「信じよう。
ところで君の名は?私はクーロフ。
クーロフ・フォンスキー陸軍戦車大尉だ」
極めて紳士的にクーロフ大尉は訊いて来る。
まるで近くに引っ越してきた隣人に名を訊く様に。
「ミハル。島田美春・・・って言います」
ミハルが本名を名乗ると、ミハルの前にすっと手が伸びる。
「え?」
ミハルが戸惑うと、クーロフはミハルの手を握って、
「日の本のミハル君というのだね?
君の国には感謝に耐えない。
我々極東育ちの人間には君達の祖国にはお礼の言い様も無い。ありがとう!」
早口で帝国語で喋られて意味が良く解らなかったが、
クーロフ大尉はミハルに感謝の意を告げているらしいのがなんとなく解った。
クーロフ大尉がミハルと握手しているとアリシアが酒を持って入って来た。
「あら?何かいい雰囲気ね。素晴しいわ、ハラショー!」
アリシアが強張った顔を緩めて笑顔になった。
横から茶化されたクーロフ大尉は咳払いをして威厳を正した。
「アリシア君。この方は遠く日の本・・・
いや、ヤポンからやって来られたミハル・・・シマダ・ミハル君だ。
君のご両親と同じ様に亡くなられたそうだが・・・残念な事だ」
そう言ったクーロフを、アリシアが睨む。
「両親を殺したのは、何処の誰なのよ」
アリシアに睨まれてクーロフが肩を窄ませる。
「歩兵部隊長だろ。オレは見せしめ等しない。
ましてやオレは戦車乗りだ。駐屯部隊の長ではないんだ!」
クーロフ大尉は立ち上がってアリシアが盛ってきた酒を手に持ち、こう叫んで酒を呷る。
「帝国万歳!くそ皇帝万歳!」
呷ったグラスが手の中で震えていた。
「すまない。アリシア君、許してくれ・・・」
大男のクーロフ大尉がアリシアに頭を下げて謝る。
「いつも謝ってくれるのは、クーロフ大尉だけ。信用出来るのはクーロフ大尉一人だけ・・・」
アリシアはクーロフ大尉の肩をそっと掴んでそう言った。
「で?クーロフ大尉。この人をどうする気なの?」
アリシアがミハルを指差し処分の方法を訊ねる。
「うむ。戦争終結まで身柄を拘束しなければいけないのだが、
ミハル君を本国へ連行すれば多分・・・」
クーロフは口篭もる。
その後をアリシアが結ぶ。
「多分、シマダさんは玩具にされた上に殺されてしまう。そうでしょ、クーロフ大尉?」
ミハルはアリシアの言葉にぞっとして、クーロフ大尉を見る。
「その通り・・・それが腐敗した帝国軍がやってきた事だ。
オレの前任者がこの村でも行った残虐で、卑劣な行為だ!」
クーロフは吐き捨てる様に言い放った。
そして思いの丈を吐く。
「オレはそんな帝国が嫌いだ。
そんな帝国にした皇帝が許せない。
シマダ君は日の本へ帰るべきだ。いや、帰してあげたい。
我々シベリアの民を救って頂いた礼をして差し上げたい」
クーロフ大尉はミハルに向き直ると、一気にまくし立てた。
「シマダ君、もう一つだけ訊きたい。
先程林の方で会った時、君の瞳にオレと同じ悲しみの色を感じたのだが・・・
君は一体何を見て来たのだ。
何を背負っているのだ?
君は本当に民間人なのか?
オレには解らない。譬え君が軍人だとしても構わない。
本当の君は一体何を背負ってここに居るのだ?」
クーロフ大尉はミハルを見詰て問う。
ー この人に本当の事を話してもいいのだろうか?
私は初めて知った、同じ人間として生きている敵を。
同じ様に笑い、同じ様に苦しむ人間としての敵を・・・
「クーロフ大尉、私は・・・私の本当の姿は・・・」
ミハルは左手で右手の袖をまくり、母美雪から貰った魔法力を放つ宝珠を見せる。
薄っすらと神の盾を現す紋章が浮かぶ宝珠を見てクーロフが小さく言った。
「魔砲使い。紋章を現す宝玉・・・
君は、シマダ・ミハル君は魔鋼の力を?!」
クーロフがミハルの宝珠を見て呟いた時、
突然、店の中で銃声が聞こえた。
クーロフ大尉に、自分が魔鋼の力が有る事を教えたミハル。
その時、店内から銃声が聞こえた。
何者かが襲撃して来たらしいのだが・・・。
次回偵察任務 Act6
君は敵と心を通わせる事が出来るか?





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