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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act33さよならは言わない・・・また逢う日までPart2

オスマンへの派遣部隊が編成されるという。


その一員にミハルは加わるのか・・・。


リーンを「フェアリア」に残したままで。

「部隊編成は終っていたのですか?」


リーンがユーリとカスターに訊き直した。


「ああ。オスマンが求める様に、一個連隊なんて規模は送れないがね。」


カスターが肩を窄めて答える。


「先ず、先遣隊として一個中隊約100名を送る事にしたよ。

 海路ヤポン駆逐艦に乗艦させて貰って・・・ね。」


続けてカスターが第1陣として、中隊規模の兵員を海路で送ると伝えた。


「どうして駆逐艦なのです?

  輸送船でも善いのでは?」


リーンが尋ねると、横からマジカが叫ぶ様に。


「のらりくらり輸送船なんかで向ったら、リンが悪魔に何をされるか解らないでしょ。

 スピードの出る駆逐艦で一刻も早くリンを救い出すの!

 いい?これは部隊の最優先事項よ。解ったかしらリーン!」


姉貴面をするマジカに、リーンは苦笑いを浮かべる。


「確かにマジカさんの仰るとおりです。

 リンちゃんの身体に邪な者が、何をするか判りませんから。

 先遣隊はリンちゃんの確保を優先すべきだと思います。」


送られる部隊が、まず何をすべきなのかを告げられたリーンも認めた。


「まあ、その為に送る様なものだが・・・。」


二人にカスターは頷き、


「逃げたクワイガンの目的が何なのかを調べる事も重要だ。」


真総統と呼ばれる者が、彼の地で何を企んでいるのかを、調べようと付け加えた。


「カスターの言う事も最もだね。

 でもそれは、危険過ぎない?

 下手をすると邪な者達によって部隊に危害が及ぶかもしれないわよ。」


リーンが相手が相手だけに、並みの部隊を差し向ける事に危惧する。


「うん・・・でも、リンを救うにはどの道真総統と接触しなければならないだろう。

 並みの軍隊では歯も立たないかもしれない・・・そこで。」


カスターは話を切ると、ユーリを見て促した。


「ミハル・・・頼まれてくれないかしら。

 派遣部隊に加わって貰いたいの・・・リンを救い出す為と・・・。」


ユーリがミハルを見て頼んだ。


「真総統クワイガンの野望を打ち砕く事を。

 そしてあなたの御両親を救って欲しいの。」


それはミハルの願いとも、重なる依頼。


「ユーリ様・・・でも・・・私は。」


心していたのかミハルは驚きもしなかったが、

チラリとリーンを見て、返事を濁した。


「ああ・・・君はリーンを守ると約束を交わしていたのだったね。

 戦争が終った今、リーンの身は此処に居る限り安心だ。

 もうリーンの身体を狙う者も居なくなったのだからね。」


カスターがユーリと共に、リーンの身を保障する。


「リーンと離れる・・・私が?」


リーンを見詰めて戸惑うミハルに、


「ミハルっあなたにしか頼めないの。

 あなただけがリンを救ってくれると頼っているの。

 どうかリンを邪な者から救ってあげて・・・。

  お願い・・・もう一人の聖巫女。」


マジカが必死の形相で、ミハルに頼んでくる。


「ミハル君、僕からも頼む。

 クワイガンをこのまま放置しておけば、第2第3の戦争が始まるかもしれない。

 数多あまたの命を救えるのは君しか居ない。

 頼む、どうか人々を救って欲しい。」


カスターが頭を下げて頼んだ。


「ミハル・・・あなたに全てを委ねます。

 部隊の編成以外は。

 出発は明後日の朝。ヤポンの駆逐艦に乗艦してオスマンに向って貰います。」


ユーリがもう決まったかの様に命じた。


「まっ、待って下さい。まだ往くとは言ってませんから。」


挿絵(By みてみん)


ユーリの命令を慌てて停めるミハルに、意外な一言が掛けられる。


「往きなさいよ、ミハル。」

「えっ!?」


掛けられたリーンの声に、驚いて顔を向けたミハルの瞳に映ったのは笑顔。


「行ってリンを救い、クワイガンを倒し・・・。」


驚くミハルの両肩に手を置いたリーンが、


「御両親を無事に救い出すのよ、ミハル。」


笑顔の中に、瞳だけは真剣さを湛えて諭す様に言ってのけた。


「リーン・・・。」


その瞳を見返したミハルは言葉を詰まらせる。


「そして・・・もう一度此処へ・・・フェアリアに帰って来るの・・・いいわねミハル。」


「・・・。」


リーンの言葉に何も答えられず、

ミハルはその瞳を、笑顔を見詰め続けた。





夜の静けさの中、2人は話し合う。


「姉さん・・・往くんだろ。オスマンに・・・。」


マモルが口を開いた。


「決めたんだろ、派遣隊に加わる事を。」


尋ねられたミハルは黙ってマモルを見詰め続ける。


「そして、僕を此処へ置いて行く気なんだろ?」


やや口調が強くなるマモルにも、ミハルはじっと身を見詰めたまま口を開かなかった。


「やっぱりそうなんだね。

 僕は足手纏いなんだと思っているのかい姉さんは?」


じっと自分を見詰めて口を開かない姉を見て、マモルがその本心を訊く。


「姉さんが何と言おうと、僕も派遣隊に加えて貰える様に直訴する。

 父さん母さんを救いに行くんだ。

 姉さんの迷惑になんかならないから。」


必死にオスマンに行くと言い張るマモルが、ミハルの肩を掴んで訴えた。


「迷惑なんかじゃないよ・・・足手纏いなんて思っていないよマモル。

 私はマモルの本心が知りたかっただけ。

 でも・・・本当は残ると言って欲しかった・・・。でも・・・でも。」


マモルの顔を見上げるミハルは、言い澱む。


「でも?何だいミハル姉さん。

 僕はミハル姉より強くない。魔法力だって戦闘だって・・・

 だけど僕はもう嫌なんだ、待つのが。

 たった一人で大切な人が還って来てくれるのを待つだけなんて!

 だから僕は姉さんと一緒に往きたい。いいや、往くんだ!」


<ポロ ポロ ポロ>


大粒の涙が溢れる。


ミハルの瞳から・・・。


「私も・・・私も同じ。

 マモルの本心と同じだよ。

 もう別れ別れで居るのは耐えられない・・・マモルと一緒が良いの。」


「姉さん・・・それじゃあ!」


マモルが聴き返す。


「マモルも往ってくれる?

 父さん母さんを救う旅に。

 私達の約束の地・・・<オスマン>へと!」


ミハルが頼む様に答えを求める。


「勿論!

 ミハル姉と一緒ならどんな事だって乗り越えてみせる。

 絶対皆で帰るって約束したんだから。」


頭一つ背の高い弟が、姉を抱締める。


「・・・うん。約束だものね。」


抱締められたミハルが弟の胸に身を預けて頷いた。

次回 予告


挿絵(By みてみん)


海原へ出港するふねの上で、

  君は想い人の影を求める。

旅立つ君は何を想うというのか?

次回! 「魔鋼騎戦記フェアリア」最終回。

      さよならは言わない・・・また逢う日まで。

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